飲食店の中には、自店の「数字」を正しく把握していないところがあります。
「個人店だからかまわない」とか、「オーナーが感覚的に数字を把握している」など、さまざまな言い訳が聞こえてきますが、果たしてそうでしょうか?

食材費や人件費が高騰する中、経営を正しいデータで把握することの重要性は年々高くなっています。
「儲かっていればどんぶり勘定でよい」という意見もありますが、それはごく限られた飲食店のみのこと。多くの店でそれが通用しないことは、飲食店の淘汰の数を見れば分かることでしょう。

ここではPOSレジを導入し、得られるデータでどのような変化を起こせるかを見ていきます。

 

データに基づいた経営の必要性

数字で捉えることが苦手だと感じているオーナーは、意外に多いものです。私が以前に関わったオーナーは、「数字でお客の心は把握できない」と豪語していました。主力スタッフも大きく頷いていましたが、その店舗は1年後にはなくなっていました。

確かにお客の心は、数字だけでは把握できないのかもしれません。しかし、真意を把握するという部分では客観的なデータも重要です。なぜなら、数字はオーナーの感覚や思い込みがない分、非常に客観的に現実を現してくれるからです

その証拠に、成功していると言われる飲食店で、どんぶり勘定を続けているところありません。お客の心を捉えるソフトな思考と、実際の数字の動きを知る経営的感覚。この2つが合わさらなければ店舗はうまくいかないのです。

それでもなお、感覚だと言い張る人は、データに基づくことで、今まで自分たちがやってきたことが否定されるようなイメージを強く持っているのかもしれません。その気持ちはわかります。実際数字で見てみると、思っていたものと違うということも多々あるからです。

しかし、数字だけで経営がうまくいくわけではありません。数字は経営判断をする上で、また、お客のことを正しく把握する上で重要な情報に過ぎず、そこから何をやるかは、やはりオーナーの判断によるところ。判断の精度を上げるためにも、数字で把握する習慣をつけてください。

特に今は、営業に関するデータはPOSレジを導入するだけで把握できるようになっています。これほど簡単にシステムがあるわけですから使わない手はありません。

 

状況を客観的に、数字で把握する

ではここから、POSレジを使うことで、どのようなことがわかり、またどのように活用できるのかを見ていきましょう。

 

売り上げをタイムリーに、正確に把握する

店舗の数字の基本中の基本。売り上げデータの把握がタイムリーにできます。
「それはPOSレジがなくても分かる」といる方もいるかもしれません。しかし、タイムリーに、かつ詳細に把握できるということが重要です。

POSレジ分析画面
POSレジ分析画面

POS レジを導入していれば、営業終了時にいくらの売り上げがあったのかということはもちろん、営業時間内に途中経過を把握したり、時間帯あたりいくら売り上げたのかということが即座に把握したりできます

ちなみにスタッフは、感覚だけを評価基準にされることを快く思っていません。もちろん評価される人はそれで満足なのですが、それ以外の人のやっかみなどを生んでしまう可能性があるのです。

そんなときに役立つのが客観的データに基づく評価です。店にピークがあるようならば、「これだけの売上を上げたのは素晴らしいことだ」というストレートな評価に繋がります。また、「○○さんがオペレーションに入ると、スムーズに回る」など、それまでにはなかった新たな評価基準ができてきます。

それによる副次効果は大きなもの。スタッフも目標設定がしやすくなり、売り上げを向上させることにも意識が向いていきます。

 

売れ筋、死に筋商品が何なのかを把握する

POSレジを導入すれば、どの商品がどれぐらい売れたのかがわかるようになります。これは単純に人気商品を知るだけでなく、死に筋商品を知ることにもなります。

例えば、季節の新商品を売り出したのに、定番商品の方が圧倒的に出数が多い場合、季節商品は顧客のニーズに合っていないのかもしれません。または、アピールが足りないのかもしれません。どちらにしろ、次の展開を立案できるのです。

ハンバーガー例を挙げましょう。あるチェーン店では、どんな商品を出そうとも、その店の店名にもなっているハンバーガーの出数を超えることはできませんでした。ところがスタッフの認識では、定番商品がたくさん出ることは習慣的に身についている一方、新商品は製造のとき新しい工程が加わるのでインパクトがあり、「季節の新商品は売れている」と信じていました

ところが POS レジを導入してみると、一概にそうは言えないということが分かったわけです。これ以降、この店舗では、新商品を出すことと並行して、定番商品に注目したキャンペーンを定期的に行うようにしました。その店舗はさらに人気になっています。

これは客観的な数字で把握したからこそ見えてきた現実。もし、POSレジを導入していなければ、この例のようにお客のニーズと現実が沿っていないことがあるかもしれません。

 

在庫不足や在庫過剰になりやすい食材を分析

商品の出数をメニューごとに細かく把握できることにより、在庫も把握できるようになります。もちろん人気商品もそうですが、いくつものメニューに使われているにもかかわらず、明らかに使用数が少ない食材なども把握できるのです。

食材これらを生かして在庫調整をしたり、また新たに商品開発をするさいに、そう言ったタイムロスを起こしがちな食材を積極的に使ったりすることで、食材の適正量を調整できるようにします。

飲食店では利益を出すために、「FL コスト」のコントロールが重要です。「F」とは食材費、「L」とは人件費のこと。人件費が高騰する中、大きなウェイトを占める食材費も合わせてコントロールすることで細かいロスをなくし、利益改善をすることが非常に重要なのです。そのためには、まず細い数値を正確に把握しなければならないのです。

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売り上げが伸びたのは、どの商品の影響かが分析できる

飲食店は売り上げが外的要因に左右されることが大きいビジネスです。例えば、近くで大きなイベントがあったり、もっと身近なところでは、単純に気温が上がっただけでドリンクの売り上げが倍増したりします。

これを感覚的に把握している人は多いのですが、より具体的に把握することで新たな対策を打つことができます。

イベント会場近くの店舗では、「売り上げが上がるから」と言って、すべての食材を大量に仕入れていたものが、客層によって出数に差があることを把握し、調整できるようになった例があります。こうなると逆に、イベントの内容をあらかじめ把握することで強化すべきメニューが分かるようになり、ニーズに合わせてオペレーションを強化することで、より高い売上を記録することができます。

売り上げが向上すると、その結果だけを見てテンションが上がり、詳細な分析をしない人が増えます。しかし、「勝って兜の緒を締めよ」と言われるように、そういった時の分析ほどさらなる売上貢献に役立つことはないのです。

 

同時に注文されるのはどの商品かが分かる

ハイボールと唐揚げを同時に注文するCMが流れたとき、実際の居酒屋でも、この2つを合わせて注文する人が増えました。飲食店では相性のよい組み合わせがあり、それが売上を支えています。その組み合わせは感覚的に把握できることもあれば、意外すぎて気づいてさえいないこともあります。

特定の組み合わせで注文される商品が分かれば、それらを使って新たなセットメニューを作ることもできます。そして、意外なヒットになる可能性もあるのです。また、それまで日陰の商品だったものが、一気に看板メニューになることも。これもPOSデータがあるからこそ分かる数字なのです。

 

店舗がどのようなお客に支持されているのかが分かる

インバウンド対策どの客層が多く来店しているのか、正しく把握できていますか?
あるスポーツバーのオーナーは、「最近外国人が増えたなあ」と感覚的に思っていました。しかし、どれぐらい増えているのかはわかっていませんでした。

そこでPOSレジに客層を入れるようにしたところ、多い日には6割もの外国人が来店していることがわかったのです。外国人が望むスポーツバーの利用方法は、日本人とはまったく異なります。お通しはなく、支払いはキャッシュオンが望まれます。そこで会計方法を大きく変えたとこと、外国人客がさらに増え、売り上げは倍増したそうです。

 

滞在時間が分かる

飲食店は客席に限りがあり、回転率を高めなければ売り上げは上がりません。とはいえ、滞在時間は短ければいいというものではなく、価格と見合ったものである必要があります。

ディナー例えば居酒屋の場合、滞在時間は2時間半、客単価3000円で想定していたものが、実際には滞在時間が3時間であれば、それだけ売上は予想とズレていくことになります。それであれば、滞在時間は3時間に想定し、客単価が3600円になるように想定を変更する必要が出てきます。

このような分析は、POSレジあれば意識せずとも簡単にできます。入店時間または1品目の注文から会計までの時間を自動的に計測してくれるので、特に意識はしなくても、重要な分析用データが蓄積されていることになります。

また飲み放題の時間なども計測し、30分前になったらラストコール、10分前になったら会計を促すなど、オペレーション面でも楽になる部分が多くあります。

 

予約・顧客管理の効率化を図る

POS レジには予約管理を効率的に行う機能もあります。これまでは手書きで行なっていたことでモレやダブルブッキングがあったものが、効率的に行えるようになるのです。単純に予約席としてキープするということもできますし、前述の滞在時間を把握することと合わせ、席を効率よく回すことも可能になります。

POSレジから出てくるデータは、それだけで終わるのではなく、関連させながら応用できる点に魅力があります。POSレジを導入することでデータを集約し、それを有効に活用できるところがすばらしいメリットなわけですね。

 

他にもある便利な機能

近年のPOSレジは進化がめざましく、他にも有効に使える機能がたくさんあります。どうせ導入するのであれば、これらも活用してみてはいかがでしょうか。

 

クレジットカード、電子マネー決済

今やキャッシュレス決済機能はあって当たり前になりました。以前であれば、クレジットカード専用端末を導入しなければならなかったのですが、今はPOSレジ本体に併設されていたり、付属機器としてとりつけられていたりします。

しかも、クレジットカードだけではなく、電子マネーにも対応。これからはキャッシュレス化が進むのは間違いありません。これらを使えることは、強力な武器になるはずです。

 

手軽なハンディによるオーダーエントリー

ハンディ端末

ハンディによるオーダーエントリーを可能にするPOSレジもあります。これを利用すればオーダーをいち早く通せるようになります。また、提供にかかった時間を把握したり、作り忘れなどのトラブルもなくなったります。

しかも最近は、ハンディに専用の端末ではなく小型のタブレットやスマートフォンを利用することで低コストで導入が可能になりました。さらに、アルバイトでも抵抗なく、すぐに使用できるメリットもあります。

もっと言うなら、客席にタブレット置いておくことで、お客が自らオーダーエントリーできるシステムもあります。これを使えば、人不足の解消にもなりますね。

 

スタッフの勤怠管理

スタッフの勤怠もPOSレジと連携して管理できるようになっています。スタッフの勤怠は、どこかのタイミングでデータ化され計算されるものです。それであれば、わざわざバックオフィス作業として入力作業するのではなく、スタッフが個人で入力できることで無駄の排除になります。

今はPOSレジにスタッフの勤怠機能が付いているのは一般的となっています。違うシステムを使っている人も、この機会に合わせてしまうのがいいかもしれません。

 

まとめ

飲食店を取り巻く環境は年々厳しくなっています。特に人件費の高騰は目に余るものがあり、これからも上がっていくことを想定すれば、細かな数字を把握し、調整できることが、これからの生き残りを左右すると言っても過言ではありません

儲かる状況を作り出すのが非常に難しい時代に、オーナーの経営的判断をサポートできる POSレジは大きな武器になるはずです。まだPOSレジを導入していない店舗はもちろんのこと、古いシステムを使っている店舗も、この機会に導入してみてはいかがでしょうか。

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ライタープロフィール
原田 園子
兵庫県出身。  株式会社モスフードサービス、「月刊起業塾」「わたしのきれい」編集長を経てフリーライター、WEBディレクターとして活動中。