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アメリカでプロテインブームが拡大する理由とは?飲食店や日本への影響を解説

アメリカでプロテインブームが拡大する理由とは?飲食店や日本への影響を解説|飲食店経営PRO by poscube

アメリカでプロテイン(タンパク質)ブームが拡大している。

IFIC(国際食品情報会議)が2025年に実施した調査によると、アメリカ人の70%が日常の食生活に意識的にプロテインを摂取するよう心がけているという。

アメリカでは健康志向や体重管理への関心の高まりを背景に、プロテインが重要な栄養素として定着し、食品だけでなく飲食店のメニューにもその影響が広がり始めている。その背景にあるものは何だろうか。アメリカのプロテインブームの実情をお伝えするとともに、飲食店や日本への影響などについて考察してみた。

拡大を続けるアメリカのプロテインブーム

冒頭のIFICの調査結果は現在アメリカで進行中のプロテインブームを裏付けるに十分なものだが、2022年時点の数字は59%であり、わずか三年で11ポイントも上昇している。プロテインは現在のアメリカ人がもっとも関心を寄せているダイエットテーマであり、「ローカーボ」「ケトジェニック」「パレオ」といった他のテーマを大きく引き離している。

今やアメリカ人が食品を選択する際のポイントは「この食材はプロテインの優れた供給源であるのか?」であり、スーパーマーケットの棚に並べられた製品のパッケージに「プロテイン」の一文字が印刷された方を選択している。実際にIFICの調査では、80%以上のアメリカ人が毎日の食事のうち最低一回は「プロテイン摂取を最優先するよう心がけている」と回答している。

日常食にも広がるプロテイン

現在のアメリカのプロテインブームを実感するには、アメリカのスーパーマーケットを覗いて見るのがいいだろう。

定番のシリアル、グラノラバー、オートミール、パンケーキミックスから始まり、ポテトチップス、トルティアチップス、ポップコーンなどのスナック類、パスタやマカロニアンドチーズ、ベーグル、ソーダ、アイスクリームなどにも及んでいる。

デヴィッド・フローズンデザート「デヴィッド・プロテイン」| 30g Protein
出典:David Frozen Desert

プロテインは、これまでコモディティとされてきた食品にプレミアムを付加する「スーパー栄養素」として使われ、実際に多くがプレミアム価格で販売されている。

例えば、デヴィッド・フローズンデザート社のアイスクリーム「デヴィッド・プロテイン」は1パイント(約473ml)あたり30グラムのプロテインを含んでおり、1パイントサイズの六個入りパックが価格90ドル(約1万4400円)で販売されている。1パイント15ドル(約2400円)のプレミアム価格だ。

 

プロテインブームの飲食店への影響

プロテインブームは一般の飲食店にも広がっている。

スターバックスコーヒーは、プロテインをブレンドした牛乳を使ったラテ製品「ハイプロテイン・ラテ」や、プロテイン入り牛乳で作ったミルクフォームを乗せた「プロテイン・コールドフォームドリンク」などの販売を始め、話題を呼んでいる。

Starbucks-Protein-Beverages
出典:Starbucks

中華ファストフードチェーンのパンダエクスプレスはプロテインを強化した新メニュー「バランス・プロテインプレート」の提供を開始、そのうち『Double Protein Plate』は一食あたり76グラムのプロテインを摂取可能だとアピールしている。(QSR Magazine

Double Protein Plate – double Grilled Teriyaki Chicken, Half White Rice and Half Super Greens (76 g of protein)
出典:Panda Express

ファストカジュアルレストランのスウィートグリーンも「パワーマックス・プロテインボウル」を期間限定で提供し、一食当たり106グラムのプロテインが摂取可能であるとアピールしていた。
チポトレ・メキシカングリルも各種の高プロテインメニューを開発、一食当たりそれぞれ15グラムから81グラムのプロテインが摂取可能だとしている。

Chipotle Mexican Grill|High Protein PR Option 2
出典:Chipotle Mexican Grill

プロテインブームは、多くの飲食店を巻き込みながら百花繚乱の様相を呈し始めている。このトレンドが勢いを落とす気配は、今のところ見られない。

プロテインブームの背景にあるものは?

ところで、何がプロテインブームの背景にあるのだろうか。

健康志向や筋力維持、体重管理など複数の要因があると考えられる中、筆者は近年大幅に利用者を増やしているGLP-1受容体作動薬の利用拡大がドライバーのひとつになっているとする説を支持している。

GLP-1|GALLUP
出典:GALLUP

GLP-1受容体作動薬とは近年開発された糖尿病治療薬で、GLP-1(グルカゴン様ペプチド−1)というホルモンと同様にその受容体へ作用することで血糖に応じて膵臓からのインスリン分泌を促し、分泌されたインスリンによって血糖値を下げる薬である。「オゼンピック」「トルリシティ」「マンジャロ」などが代表的なものとして知られている。

「マンジャロ」と聞いてピンと来た人がいるかと思うが、GLP-1受容体作動薬は元来糖尿病の治療薬として開発された薬である。

しかし、GLP-1受容体作動薬に強烈な減量効果があることから、肥満治療やダイエットを目的に利用する人も相当数増えているとされている。ギャロップの2026年調査によると、アメリカ成人の11%が現在、減量目的でGLP-1系の薬を使用しており、過去に利用したことがある人まで含めると15%に達しているという。しかもダイエット目的にGLP-1受容体作動薬を利用する人は今も増加し続けていて、増加傾向がおさまる兆しはない。

IFICでは、GLP-1受容体作動薬を使用している人など一部の人では、一般成人よりタンパク質の必要量が高くなる場合があるとしている。GLP-1受容体作動薬の利用者が分解されて失われてゆくプロテインを摂取しようと躍起になったとしても、不思議でも何でもないだろう。

日本への影響

GLP-1受容体作動薬をダイエット目的に利用する人の数は、日本でも増加の兆しを見せているようだ。

例えば「マンジャロ」は医師による処方でのみ入手可能な医療用医薬品だが、スマホやパソコンなどでオンライン診療を利用し、入手している人が相当数存在すると推察される。

日本におけるダイエット目的でのGLP-1受容体作動薬の利用実態については、現時点で全体像を示す十分な公的データは確認できない。一方で、SNSでの投稿や利用者同士のやりとりなどを見るに、「マンジャロ」をダイエットに使っている様子も見られる。こうした動きだけで利用者数の増加を判断することはできないが、関心が広がっている兆候のひとつとして見ることはできるだろう。

GLP-1受容体作動薬の利用者増加が現在のアメリカのプロテインブームのドライバーになっているとすれば、今後の日本でも同様にプロテイン市場が広がる可能性は大いにある。

日本で今後起きる可能性が高いプロテインブームを先取りしたいと考える飲食店経営者には、先行しているアメリカの事例を今のうちから十分に研究しておくことお勧めする。

 

日本の飲食店はプロテインブームをどう捉えるべき?

まず注意すべきなのは、アメリカで起きていることが、そのまま日本でも同じように起きるとは限らないということだ。

しかし一方で、プロテインが単なる筋力トレーニング向けの栄養素ではなく、食品やメニューを選択する際の「付加価値」のひとつになりつつある動きについては、今後も注視しておく必要があるだろう。

 

高プロテインを「付加価値」のひとつとして捉える

IFICの2025年調査では、アメリカ人の35%が過去1年間でプロテインの摂取量を増やしたと回答している。

また、高プロテイン食は3年連続でアメリカ人が最も実践している食事パターンとなっており、食品を「健康的」と判断する基準でも「良質なプロテイン源であること」が最も多く選ばれている。つまり、現在のアメリカでは「どれだけプロテインを摂れるか」が、商品の価値を判断するひとつの尺度になり始めていると言える。(IFICの調査

 

自店の客層に需要があるかを見極める

とはいえ、日本の飲食店がすぐにプロテイン専門メニューを開発する必要があるという話ではない。

例えば、既存メニューに肉や卵、魚、大豆製品などを追加できるようにしたり、肉の量を選べるようにしたりといった方法でも、高プロテインを求める顧客のニーズに対応することは可能だろう。新たなメニューを一から開発するよりも、まずは現在のメニューの中でプロテインを付加価値として訴求できるものがないかを見直してみるのもひとつの方法だ。

また、プロテインを増やせば必ず商品が売れるというわけでもない。

IFICが2026年に行った調査では、アメリカ人がプロテイン源を選ぶ際にも、価格と味がもっとも重要な判断材料となっている。プロテインの量だけを前面に押し出すのではなく、美味しさや価格とのバランスを考える必要がある点は、日本の飲食店でも同じだろう。(IFIC2026年調査

新しいメニューを導入した後は、感覚だけで判断するのではなく、販売実績を見ながら継続や見直しを判断していくことも重要だ。売上データから売れ筋・死に筋を整理する方法としては、ABC分析も活用できる。詳しくは「飲食店経営者のためのABC分析の基本」で紹介している。

【今さら聞けない】飲食店経営者のための「ABC分析」の基本

もうひとつ考えておきたいのが、自店の客層との相性である。

健康志向の強いビジネスパーソンが多い店舗、スポーツジムの近くにある店舗、ランチ需要の多い店舗などでは、高プロテインを訴求した商品が受け入れられる可能性がある。一方で、すべての業態や客層で同じ需要が存在するとは限らない。

したがって、いきなり大規模にメニューを変更するのではなく、期間限定商品や追加トッピングなどから試し、実際の販売数や客単価などを確認しながら判断する方が現実的だろう。トレンドを追うことそのものが目的ではなく、自店の顧客が高プロテインという価値に実際にお金を払うのかを見極めることが重要だ。

日本でも同じ規模のプロテインブームが起きるのかは現時点ではわからない。しかし、アメリカで「プロテイン」が食品や飲食店メニューの付加価値として急速に存在感を高めている事実は、日本の飲食店にとっても参考になる。

高プロテインを付加価値として訴求する場合でも、原価率だけでなく、販売価格や粗利とのバランスを考える必要がある。飲食店の原価率や粗利の考え方については、「飲食店の原価率は40%以下を目指せ!原価のあるべき姿とは?」でも詳しく解説している。


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参考:FAQ

Q. アメリカでプロテインブームが広がっているのはなぜですか?

A. 健康志向や体重管理への関心の高まりを背景に、プロテインを積極的に摂取しようとする人が増えているためです。IFICの2025年調査では、アメリカ人の70%が日常の食生活で意識的にプロテインを摂取しようとしているとされています。

Q. アメリカではどのような高プロテイン商品が増えていますか?

A. シリアルやグラノラバーだけでなく、ポテトチップス、パスタ、アイスクリームなど、日常的な食品にも高プロテインを訴求する商品が広がっています。飲食店でも、高プロテインを特徴としたメニューが登場しており、Panda ExpressやSweetgreen、Chipotle Mexican Grillなどでは、1食あたりのプロテイン量を明示した高プロテインメニューが展開されています。

Q. GLP-1受容体作動薬とプロテインブームには関係がありますか?

A. GLP-1受容体作動薬の利用拡大は、アメリカの高プロテイン志向を後押ししている要因のひとつと考えられています。ただし、プロテインブームの原因がGLP-1だけであると断定することはできません。

Q. 日本の飲食店も高プロテインメニューを導入すべきですか?

A. 必ずしもすぐに専用メニューを開発する必要はありません。既存メニューへの肉・卵・魚・大豆製品の追加や、量を選べる仕組みなどから試し、自店の客層や販売状況を見ながら判断するのが現実的です。

Q. 飲食店が高プロテインメニューを導入する際の注意点は?

A. プロテイン量だけでなく、味や価格、原価率、粗利、自店の客層との相性を確認することが重要です。期間限定商品や追加トッピングなどから試し、販売数や客単価を確認しながら判断するとよいでしょう。

 


参考データ・出典

・IFIC「Bridging the Protein Knowledge-Action Gap」
https://ific.org/insights/bridging-the-protein-knowledge-action-gap

・David Protein「Frozen Dessert Pints | 30g Protein, Rich and Creamy」
https://davidprotein.com/pages/frozen-dessert

・Restaurant Business「The food and drink trends that defined 2025」
https://www.restaurantbusinessonline.com/food/food-drink-trends-defined-2025

・日経メディカル「GLP-1受容体作動薬」
https://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/drugdic/article/556e7e5c83815011bdcf82d9.html

・Gallup「In U.S., GLP-1 Usage Reaches New High」
https://news.gallup.com/poll/712157/glp-usage-reaches-new-high.aspx

・IFIC「Spotlight Survey: Americans’ Perceptions Of Protein」
https://ific.org/research/ific-spotlight-survey-americans-perceptions-of-protein/

・IFIC「2025 Food & Health Survey」
https://ific.org/wp-content/uploads/2025-Food-Health-Survey-Wellbeing-Body-Weight-1.pdf

・IFIC「Americans’ Perceptions Of Protein Quality & Labeling」
https://ific.org/research/perceptions-protein-quality-labeling/

・Starbucks「Starbucks Goes all in on Protein: Announces Arrival of New Protein Lattes and Protein Cold Foam to the Menu on Sept. 29」
https://about.starbucks.com/press/2025/starbucks-goes-all-in-on-protein-announces-arrival-of-new-protein-lattes-and-protein-cold-foam-to-the-menu/

・QSR Magazine「Panda Express Introduces Balanced Protein Plates」
https://www.qsrmagazine.com/news/panda-express-introduces-balanced-protein-plates/

・Sweetgreen「Sweetgreen Launches First-Ever 106g Power Max Protein Bowl」
https://s28.q4cdn.com/367108596/files/doc_news/Sweetgreen-Launches-First-Ever-106g-Power-Max-Protein-Bowl-Expanding-Its-Protein-Forward-Menu-Alongside-New-Caramelized-Garlic-Steak–RRU2X.pdf

・Chipotle Mexican Grill「Chipotle Unveils Its First-Ever High Protein Menu Featuring a New Snack-Ready High Protein Cup」
https://newsroom.chipotle.com/2025-12-18-CHIPOTLE-UNVEILS-ITS-FIRST-EVER-HIGH-PROTEIN-MENU-FEATURING-A-NEW-SNACK-READY-HIGH-PROTEIN-CUP


執筆者プロフィール
前田 健二(まえだ・けんじ)
maeda大学卒業後渡米し、ロサンゼルスで飲食ビジネスを立ち上げる。帰国後複数の企業の起業や経営に携わり、2001年に経営コンサルタントとして独立。新規事業立上げ、マーケティング、アメリカ市場進出のコンサルティングを行っている。米国のベストセラー『インバウンド マーケティング』(すばる舎リンケージ)の翻訳者。明治学院大学経済学部経営学科博士課程修了、経営学修士。