コンテンツへスキップ

ゴーストキッチン・ゴーストレストランはなぜ苦戦?コロナで期待された急成長の裏で見えてきた問題点

ゴーストキッチン苦戦の理由とは?コロナで期待された急成長の裏で見えてきた問題点|飲食店経営PRO by poscube

ゴーストキッチンが苦戦している。

2020年から始まったコロナウィルスの世界的な感染拡大を背景に、対人接触機会を最小限に抑え、デリバリーを主体とする「ゴーストキッチン」は、ロックダウンに苦しむ飲食店を尻目に順調に事業を拡大してきた。

ゴーストキッチンやゴーストレストランが苦戦した背景には、デリバリー手数料や賃料などのコスト負担、ブランド認知の難しさ、厨房オペレーションの複雑化などがある。
コロナ禍には客席を持たず低コストで出店できる新しい飲食店モデルとして注目されたが、その後、事業縮小やビジネスモデルの転換を迫られた企業も現れた。

一方で、ゴーストキッチンという仕組みそのものがなくなったわけではない。現在はどのような形で活用されているのだろうか。本記事では、苦戦した理由や問題点、アメリカで進む事業再編、日本の飲食店での可能性について考えてみたい。

飲食店の店舗運営をもっと効率化したい方へ

注文・会計・売上管理など、飲食店の日々の業務をまとめて見直しませんか?

poscubeについて詳しく見る ▶

ゴーストキッチンとゴーストレストランの違い

ゴーストキッチン「ゴーストキッチン」(Ghost Kitchen)とは、店舗を持たずにキッチンだけを拠点に営業する飲食店の総称である。

デリバリーまたはピックアップ専門で、Uber Eatsなどのデリバリーサービスを通じて料理を提供する。「バーチャルレストラン」「クラウドキッチン」などとも呼ばれ、ブランド的な意味合いが強い「ゴーストレストラン」とは区別して使われるケースが多い。
「ゴーストレストラン」は、デリバリーアプリ上に存在する個別ブランドという意味で使われている。

用語主に指すもの
ゴーストキッチン客席を持たない調理拠点・厨房
ゴーストレストランデリバリーアプリ上の店舗・ブランド
クラウドキッチンゴーストキッチンと近い意味で使われる厨房形態
バーチャルレストラン実店舗を持たずオンライン上で展開するブランド

※厳密な定義は事業者・媒体によって異なる。

「ゴーストキッチン」は、2020年春に始まった新型コロナウィルスの世界的な感染拡大と歩調を合わせる形で急速にプレゼンスを拡げた。

世界中の都市がロックダウンにより外出禁止となり、飲食店で外食が出来なくなった消費者にデリバリーサービスで料理を届けたのだ。「ゴーストキッチンは」発祥の地アメリカで雨後の竹の子のように続々と誕生し、日本やヨーロッパ諸国へもそのトレンドが伝播した。

しかし、コロナの収束と共に「ゴーストキッチン」も往時の勢いが止まり、ブームは終息へと向かった。「ゴーストキッチン」は今、大きな過渡期を迎えている。

 

アメリカのゴーストキッチンはどうなった?事業縮小・再編が進む

コロナ禍には、大量の資金を集めて全米規模で拠点を増やそうとするゴーストキッチン事業者が相次いだ。

しかし、その後は事業縮小や戦略変更が目立つようになった。ここで重要なのは、単純に「ゴーストキッチン企業が倒産した」と捉えるのではなく、デリバリー専用厨房を大量に展開するビジネスモデルそのものが見直されているという点である。

Kitchen Unitedは実店舗型からソフトウェア事業へ転換

Kitchen Unitedは2023年、Kroger内で運営していた拠点を閉鎖し、物理的なゴーストキッチン事業からソフトウェア事業へ軸足を移した。Restaurant Businessによると、同社は2023年11月にKroger内の全拠点を閉鎖し、ソフトウェア事業へ回帰する方針を明らかにしている。

さらに2024年には、Kitchen Unitedの一部資産や知的財産をC3のSam Nazarian氏が取得し、新たなデジタルレストラン事業「Everybody Eats」へ活用することが報じられた。

当初の「拠点を大量に増やす」モデルは縮小したが、設備や技術まで消えたわけではなく、別の形へ再編されたと見る方が近い。

Chipotleもゴーストレストラン「Farmesa」を終了

Chipotleは2023年、Kitchen United内でゴーストレストラン「Farmesa」のテストを開始したが、2024年に同拠点が閉鎖されたことを受けて展開を終了した。QSR Magazineは、FarmesaがKitchen UnitedのSanta Monica拠点で展開されており、同拠点の閉鎖後にブランドを終了したと報じている。

大手外食企業でも、新しいゴーストレストランブランドを育てるのは簡単ではないことを示す一例と言えるだろう。

CloudKitchensなど、現在も続くモデルもある

一方で、ゴーストキッチン自体がなくなったわけではない。2024年にはStarbucks、Taco Bell、Jack in the BoxなどがCloudKitchensを利用していることも報じられている。Restaurant Businessによると、Starbucks、Taco Bell、Jack in the BoxがCloudKitchensに出店し、Jack in the Boxは2024年に6拠点を開設した。

同記事では、CloudKitchensが30か国に施設を展開していることも紹介されている。

コロナ禍のように無名ブランドを大量に立ち上げる形ではなく、すでに認知のあるブランドが商圏拡大や既存店舗の補完に利用するなど、活用方法が変わってきていると見た方がよさそうだ。Restaurant Businessも、大手チェーンによる利用について「既存店舗の支援、新市場への進出、デジタル事業の拡大」という使い方を指摘している。

共有厨房として生き残る事業者も

Maker Kitchensは、飲食店だけでなくケータリングや食品製造などにも厨房スペースを提供し、2025年時点で14拠点を展開している。 Restaurant Businessによると、同社は約10年間にわたり事業を継続しており、ゴーストキッチン専業企業が相次いで苦戦する中でも拠点を増やしてきた。

つまり、ゴーストキッチンが消えたというより、「低コストで大量のゴーストレストランを作れば成長できる」という当初の前提が見直され、用途や運営方法が変わってきていると考える方が実態に近いだろう。

 

ゴーストキッチン・ゴーストレストランはなぜ苦戦した?

一時は「飲食店のゲームチェンジャーになる」との期待を集めた「ゴーストキッチン」だが、苦戦を強いられた理由は何だろうか。

最大の理由は消費者の「日常生活への復帰」だ。
ゴーストキッチンは、コロナのパンデミックによって自宅隔離を余儀なくされた消費者をメインターゲットに立ち上がった。パンデミックが収束し、消費者がコロナ以前の日常生活へ復帰し始めると需要は相応に落ち込んだ。人々は外出して普通の飲食店で食事を楽しむようになり、わざわざゴーストキッチンを使う必要がなくなった。

消費者は、普通の飲食店でのダイニングエクスペリエンスをゴーストキッチンより優先するライフスタイルへと戻っていった。

ゴーストキッチンのオペレーティングコストが想定以上に大きかったのも理由に挙げられるだろう。
ゴーストキッチンは接客施設を持たず、接客スタッフも抱えていない。それゆえ、普通の飲食店が強いられている店舗コストや人件費などを負担する必要がない。

しかし、ゴーストキッチンの営業はほぼ100%デリバリーサービスに依存しており、そのためのコストを負担する必要がある。
デリバリーサービスの手数料は契約内容などによって異なるが、売上の一定割合を占めるため、収益を圧迫する要因になりやすい。実際にアメリカでは、売上の25〜30%程度をデリバリー事業者に支払っていた事例も報告されている。

ゴーストキッチンは借りている施設の賃料ないし使用料を支払う必要もあり、その負担も想定以上に大きいケースが多かったようだ。1円でも高く賃料を徴収したい施設オーナーと、1円でも安く施設を借りたい利用者の間で利害対立が生じ、ウィンウィンの関係を築けなかったケースは少なくないだろう。

オペレーティングコスト

さらに、ゴーストキッチンの「不透明性」が消費者に忌避された可能性も疑われる。
多くのゴーストキッチンはビルの一室などの閉鎖された空間に設置され、運営されている。普通の飲食店のようにウィンドウ越しに店内を観察できるわけではない。言うなれば消費者からは見えない「ブラックボックス」の中で料理が作られているのだ。

一部のゴーストキッチンは、同じ場所で複数のゴーストレストランを運営し、まったく違うタイプの料理をそれぞれのブランドで提供している。そして、どのようなスタッフがどのようなプロセスで料理をしているかを覗き見ることができない。

賢明な消費者が、そうしたゴーストキッチンの「不透明性」に不信を抱き、離れていったとしても不思議でも何でもないだろう。

当時期待されたメリット実際に見えてきた課題
客席不要で低コストデリバリー手数料や厨房賃料が発生
少ない人員で運営できる調理・注文管理など運営負荷は残る
デリバリー需要を取り込めるコロナ後に店内飲食が回復
複数ブランドを展開できるブランド認知・信頼形成が難しい
立地の制約を受けにくい配送圏や配達時間に左右される

 

ゴーストキッチン・ゴーストレストランはもう終わった?

ゴーストキッチンの苦戦が相次いだことで、「このビジネスモデルはもう終わったのではないか」と見る向きもある。

しかし、実際にはゴーストキッチンそのものがなくなったわけではない。コロナ禍に急拡大した大規模な共有厨房モデルは縮小した一方で、既存ブランドの商圏拡大や、ケータリング、食品製造など用途を広げた共有キッチンとして事業を続けるケースも見られる。

つまり、ゴーストキッチンという仕組みが失敗したというより、「低コストで急速に拡大できる万能な飲食店モデル」という期待が修正されたと見る方が実態に近いだろう。

既存店舗の厨房を活用する「ハイブリッド型」という選択肢

ハイブリッド・ゴーストキッチン新たに専用厨房を持つのではなく、既存店舗の厨房や食材、人員を活用しながら別ブランドの商品を販売する方法も考えられる。

アメリカでは今、ゴーストキッチンの進化系として「ハイブリッド・ゴーストキッチン」が注目されている。「ハイブリッド・ゴーストキッチン」とは、普通の飲食店のキッチンをゴーストキッチンにして、新たなゴーストレストランブランドを立ち上げるビジネスモデルだ。これまでのゴーストキッチンと違って追加の設備投資を必要とせず、既存のキッチンを活用してエクストラの売上をもたらす仕組みだ。

例えば、普通のメキシカンレストランがブリトーのデリバリー専門ブランドを立上げ、デリバリーサービスアプリを通じて受注するといったイメージだ。レストランの通常の売上に加えて、既存のキッチンから追加の売上を獲得できるので、レストランオーナーにとっては大いにウェルカムだろう。

「ハイブリッド・ゴーストキッチン」の具体的な拠点数などの数字については明らかにされていないが、アメリカの飲食店専門誌などの報道を見るに、その数は確かに増えているようだ。過渡期を経た「ゴーストキッチン」の新形態としての「ハイブリッド・ゴーストキッチン」の今後の展開に注目したい。

 

ゴーストキッチン・ゴーストレストランは日本の飲食店でも活用できる?

すべての飲食店に向いているわけではないが、厨房やスタッフに余力があり、デリバリーでも品質を維持しやすい商品を持つ店舗であれば、既存設備を活用して売上機会を広げられる可能性はある。

ゴーストキッチンは、日本のすべての飲食店に適したモデルとは限らない。

一方で、既存店舗の厨房や人員に余力があり、デリバリーに適した商品を提供できる店舗では、新たに専用施設を構えずに販売機会を増やす方法の一つとして活用できる可能性がある。

特に、営業時間外やアイドルタイムに厨房を活用できる店舗、既存メニューの食材や調理工程を流用して別ブランドを展開できる店舗では、追加投資を抑えながら新たな需要を取り込める余地があると言える。

ただし、「客席が不要だから低コスト」という理由だけで参入を判断するのは避けるべきだ。デリバリーサービスの手数料、包材費、厨房の処理能力、配送後の商品品質、ブランドごとの採算性などを含めて収益性を確認する必要がある。店内営業とデリバリー注文が重なる店舗では、注文管理や調理オペレーションが複雑になる点にも注意が必要だ。

ゴーストキッチンを活用する際は、新しい業態を始めること自体を目的にするのではなく、自店の厨房、人員、商品、商圏を生かして利益を上乗せできるかという視点で判断することが重要だろう。

店舗運営の効率化や売上管理を見直したい飲食店の方へ

新たな販売方法を取り入れる際は、通常営業も含めた店舗全体のオペレーションを整理し、注文・厨房・会計・売上管理の流れを整えておくことが重要です。

poscubeの機能を見る ▶

 

参考:FAQ

Q. ゴーストキッチンとは何ですか?

A. ゴーストキッチンとは、客席を持たず、調理用の厨房を拠点としてデリバリーやピックアップを中心に料理を提供する飲食店の運営形態です。一般的な飲食店とは異なり、店内での飲食スペースを設けない点が特徴です。

Q. ゴーストキッチンとゴーストレストランの違いは何ですか?

A. 一般的に、ゴーストキッチンは料理を調理する厨房・拠点を指し、ゴーストレストランはデリバリーアプリ上などで展開する店舗・ブランドを指します。ただし、クラウドキッチンやバーチャルレストランを含め、事業者や媒体によって用語の使われ方は異なります。

Q. ゴーストキッチンが苦戦している理由は何ですか?

A. 主な理由として、コロナ後の店内飲食の回復、デリバリーサービスへの手数料負担、厨房の賃料や運営コスト、ブランドの認知や信頼を形成しにくいことなどが挙げられます。客席を持たないことで削減できる費用がある一方、デリバリー中心ならではのコストや運営上の課題もあります。

Q. ハイブリッド・ゴーストキッチンとは何ですか?

A. 既存の飲食店の厨房を活用し、通常営業とは別にデリバリー向けのブランドを展開する運営方法です。新たに専用厨房を設ける場合と比べて既存設備を活用できる一方、注文管理や厨房オペレーションが複雑になる可能性があります。

Q. ゴーストキッチンは日本の飲食店でも活用できますか?

A. すべての飲食店に適しているわけではありませんが、既存厨房や人員に余力があり、デリバリーに適した商品を持つ店舗では活用できる可能性があります。導入する際は、デリバリー手数料や包材費、厨房の処理能力、配送後の商品品質、ブランドごとの採算性などを含めて収益性を判断することが重要です。

フードテック企業ローカルキッチンズが展開するバーチャルフードコートとは?


参考データ・出典


執筆者プロフィール
前田 健二(まえだ・けんじ)
maeda大学卒業後渡米し、ロサンゼルスで飲食ビジネスを立ち上げる。帰国後複数の企業の起業や経営に携わり、2001年に経営コンサルタントとして独立。新規事業立上げ、マーケティング、アメリカ市場進出のコンサルティングを行っている。米国のベストセラー『インバウンド マーケティング』(すばる舎リンケージ)の翻訳者。明治学院大学経済学部経営学科博士課程修了、経営学修士。