2024年度一年間に我が国を訪問した訪日外国人数は3,686万9,900人で、過去最高を記録した。コロナ前の2019年に記録した3,188万人を500万人以上上回る数字となったが、多くの訪日客が楽しみにしているのが日本の飲食店でのダイニング体験だ。紙の英語メニューを用意する店が増える中、注目されているのが多言語に対応したオーダリングシステムだ。本記事では、旅行レビューサイトのトリップアドバイザーが高評価している日本のレストラン三店をご紹介し、ポイントなどについて考察する。
利用が広がるタッチパネルによるオーダリングシステム
株式会社リクルートが行った調査によると、我が国の2024年時点の飲食店利用者のスマートフォン、タブレット含めたオーダリングシステムの利用経験率は78.9%で、利用者の四人に三人以上という結果であった。今やタッチパネルによるオーダリングシステムは初期の導入期のフェーズを越えて普及期に入り、今後も増加が続くことは間違いなさそうだ。
いわゆるインバウンド訪日客が多いエリアの飲食店では多言語に対応したオーダリングシステムの利用も広がっており、一部の回転寿司チェーンのように、タッチパネルによるオーダリングシステムが標準仕様として認識されるケースも増えてきている。多言語に対応したオーダリングシステムは、インバウンド訪日客にとってもそれを導入している店舗にとっても便利で重要な機能になりつつある。
それを裏付けるように、大手旅行レビューサイトのトリップアドバイザーが、多言語に対応したオーダリングシステムを導入・活用している日本の飲食店についてのレビューを多く掲載している。以下にレビューを受けた店舗の中から高評価の店舗三店をご紹介する。
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「魚べい渋谷道玄坂店」
魚べいは、東京証券取引所スタンダート市場上場の元気グローバルダイニングコンセプツが運営している寿司レストランチェーンだ。元々は「回転寿司レストラン」をチェーン展開していたが、今日までに「回転しない寿司レストラン」へと業態転換し、タッチパネルによる個別注文を受け付けるスタイルで運営している。
数ある店舗の中でも「魚べい渋谷道玄坂店」は、渋谷の中心部という場所柄インバウンド外国人の利用が多く、トリップアドバイザーにも同店を利用したインバウンド客によるレビューが数多く掲載されている。特にタッチパネルによるオーダリングシステムに関するポジティブなコメントが少なくない。
「魚べい渋谷道玄坂店は楽しい、ペースの速い、お手頃な価格で楽しめるコンベヤーベルト寿司店です。ユニークなタブレットベースのオーダリングシステムで効率よく注文ができ、ウェイターなどのスタッフを待つ必要がありません。手早く効率的に食事をするのにぴったりのお店です」（カリフォルニア州からの訪日客Cさん）
「このコンベヤーベルト寿司店は楽しい、速いペースのメニューの種類が豊富なお店です。お寿司のクオリティは高く、多言語に対応した注文方法は極めて便利です。混雑を避けるためにピーク時間帯の前に利用することをおすすめします」（一人で利用したNさん）
「てけてけ新宿本店」
「てけてけ」は、独自開発した「にんにく醤油だれ」で焼き上げる焼き鳥を看板メニューとする、博多発祥の焼き鳥居酒屋チェーンだ。豊富な焼き鳥のバラエティに加え、「博多水炊き」なども提供しており、「九州風焼き鳥居酒屋」という独自のスタイルを確立している。「てけてけ」では、注文は各テーブルに設置されたタッチパネルから行うシステムになっている。「てけてけ新宿本店」も、場所柄インバウンド外国人客の利用が多く、トリップアドバイザーに数多くのレビューが掲載されている。
「日曜日の遅めの昼過ぎに利用しました。注文はテーブル備え付けのタブレットで出来、英語にも対応していました。タブレットのおかげで追加の注文も問題なく出来ました。価格はお手頃でサービスはスピーディーです。このお店は絶対におすすめです」（家族で利用したKさん）
「偶然にこのお店を見つけて入店してみました。英語メニューが用意されていて、ディナーの注文を簡単に行うことが出来ました。メニューは鶏肉中心ですが、バラエティが豊富です。注文したすべてのアイテムが美味しかったです」（一人で利用したJさん）
「一蘭渋谷店」
「一蘭」は、博多を発祥の地とする、国内外で88店舗（2024年12月時点）を運営するとんこつラーメンチェーンだ。海外でもニューヨークや香港などで8店舗を運営し、その知名度をグローバルに広げつつある。多くのインバウンド外国人にとって「一蘭」は「日本に来たら訪れるべきラーメンレストラン」のひとつであり、実際に「一蘭渋谷店」には、連日多くの外国人旅行客が押し寄せ、活況を呈している。「一蘭渋谷店」についても、実際に利用した外国人観光客によるレビューがトリップアドバイザーに多数投稿されている。
「夫と二人で、有名なハチ公像を見物した後に利用しました。ダイニングエリアはブースで区画が分けられていて、注文は列に並んで店入口の英語に対応した自動発券機で行いました。チケットを購入すると辛さのレベルやスープの濃さ、麺の固さなどが選択できるようになります。味は、今までに味わったことのないもので、最高でした。まだ利用したことがない人には絶対におすすめします」（カップルで利用したAさん）
「初めて一蘭を利用しましたが、クールな体験でした。区画に分けられたブースはパーソナルで、ラーメンを楽しむための最高の環境でした。オーダリングシステムは極めて効率的で、ラーメンのカスタマイジングも簡単にできました。ラーメンの味そのものは、まさに「正統な日本の味」と表現すべきものでした」（カップルで利用したVさん）
現在の一蘭渋谷店では多言語対応したタッチパネル式の自動券売機が導入されており、本店のある福岡県新宮店では2024年春から各座席にあるタッチパネルからの注文ができるようになっている。
インバウンド客の多い場所の店舗では今後さらに普及していくであろう。
インバウンド客の取り込みには多言語対応のオーダリングシステムの導入を
以上、トリップアドバイザーが高評価している日本のタッチパネルレストラン三店をご紹介させていただいた。いずれのお店に共通しているのは、タッチパネルによるオーダリングシステムを導入することで外国人客が英語で簡単に注文できる環境を整えており、ウェイターなどによる人的スタッフの接客頻度と時間を削減し、さらには会計時のミスやトラブルなどを防ぐことに成功しているという点だ。
スマートフォンなどに搭載する音声対応の翻訳アプリの普及が始まっているものの、今のところ飲食店での接客で積極的に使えるレベルには至っていない。現時点においては、いや今後当面の間は、タッチパネルによるオーダリングシステムの導入がインバウンド客取り込みの必要条件になることは間違いないだろう。
なお、本ブログを主宰・運営しているposcubeは、飲食店利用者のスマートフォンを注文端末にした注文システム「poscubeモバイルオーダー」を開発、提供している。日本語メニューを用意すればAIによる自動翻訳機能も利用できるので、インバウンド客に対する多言語対応も可能だ。また、タブレットなどのタッチパネルオーダリングシステムにも対応しているので、興味がある人は相談してみるといいだろう。
参考サイト
https://www.tripadvisor.com/Restaurant_Review-g1066456-d3823843-Reviews-Torikizoku-Shibuya_Tokyo_Tokyo_Prefecture_Kanto.html
https://www.uobei.info/sticking/
https://ichiran.com/shop/howto.html
大学卒業後渡米し、ロサンゼルスで飲食ビジネスを立ち上げる。帰国後複数の企業の起業や経営に携わり、2001年に経営コンサルタントとして独立。新規事業立上げ、マーケティング、アメリカ市場進出のコンサルティングを行っている。米国のベストセラー『インバウンド マーケティング』（すばる舎リンケージ）の翻訳者。明治学院大学経済学部経営学科博士課程修了、経営学修士。
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