飲食店は、食材費や人件費、光熱費など、さまざまなコストの影響を受けやすい業種です。農林水産省の資料でも、食料の消費者物価指数は上昇傾向にあり、2026年2月の生鮮食品を除く食料は前年同月比5.7%上昇しています。
こうした状況が続く中、「通常営業以外にも収益源を持ちたい」と考える飲食店経営者もいるのではないでしょうか。
飲食店には、店舗という「場所」と、料理や食材という「商品」があります。営業時間外の空きスペースを貸す、別の事業者に間借りしてもらう、オリジナルのソースや食品を販売するといった方法なら、現在持っている設備やノウハウを活かしながら新たな売上をつくることができます。
ただし、何を始めても利益が出るわけではありません。契約や営業許可、製造コスト、スタッフの負担まで含めて考える必要があります。
この記事では、飲食店が取り組みやすい新たな収益源として「空きスペース活用」と「物販」を中心に、その方法や始める前に確認したいポイントを紹介します。
飲食店で新たな収益をつくる方法は大きく2つ
飲食店の特徴を活かして新たな収益源をつくる方法は、大きく分けると次の2つです。
まったく新しい業種を始める方法もありますが、新たなノウハウや設備が必要になります。それよりも、今ある店舗・厨房・レシピ・仕入れルートなどを活用する方が、比較的小さく始めやすいでしょう。
それぞれ詳しく見ていきます。
店舗の空きスペースを収益化する
飲食店は営業時間以外にも家賃が発生します。ランチ営業だけの店舗なら夜、居酒屋なら昼、定休日には丸一日店舗が使われていないこともあるでしょう。
この時間を他の用途に使うことで、これまで売上が発生していなかった時間から収益を得られる可能性があります。
店舗をレンタルスペースとして貸す

まず考えられるのが、飲食とは別の用途で店舗を貸し出す方法です。
例えば、
- 会議やミーティング
- ワークショップ
- カルチャースクール
- 撮影
- 地域の集まり
- 小規模イベント
などがあります。
店内の内装に特徴がある店舗であれば撮影場所として使う、地下店舗で音が外へ漏れにくい場合は音楽関連の用途に使うなど、店舗そのものの特徴を商品として考えることもできます。
最近ではレンタルスペースを探す人と貸したい人をつなぐサービスもあるため、自店だけで利用者を探す必要はありません。ただし、店舗には厨房機器や食材、備品などがあります。
貸し出す場合は「厨房には入らない」「使用できる設備はここまで」など利用ルールをあらかじめ決めておくことが重要です。
また、店舗を借りて営業している場合は、賃貸借契約や施設規約で第三者への貸し出しが制限されていないかも事前に確認しておきましょう。
地域の団体に貸すという方法も
筆者が知るカフェでは、定休日に近隣の団体へ店舗を貸し出していました。
利用するのは自治体が関係する地域活動で、講師や参加者も近隣住民が中心です。利用後の清掃やゴミの持ち帰りまでルール化し、最後は講師が店内の状態を確認する仕組みにしていました。そのため、店舗側に大きな負担はなかったそうです。
さらに興味深いのは、スペースを利用した人が後日、通常のお客として店舗を利用するようになったことです。場所貸しそのものの売上だけでなく、新しいお客に店を知ってもらうきっかけにもなったわけです。
このようにスペース活用を考える際には、「いくらで貸せるか」だけでなく、店舗の認知や新規顧客との接点という効果まで見ておくとよいでしょう。
スタッフを常駐させて飲食売上もつくる
「食材や設備がある店舗を無人で貸すのは不安」という場合は、スタッフを1人常駐させる方法もあります。
その場合、場所代だけで収益を出そうとするのではなく、利用者からドリンクなどを注文してもらうことも考えられます。
筆者が知る例では、コロナ禍以前の事例ですが、最大30人ほど利用できる店舗を1時間2,000円で貸し、ドリンクのみ注文できるようにしていました。
店舗側は当初、2,000円をスタッフ1人分の人件費と考え、それ以外に少し売上があればよいという考えだったそうです。
しかし実際には、数時間滞在する参加者がドリンクを複数回注文することも多く、イベントによっては数万円の飲食売上につながることもあったといいます。
単純な「場所貸し」ではなく、スペース利用と飲食を組み合わせることで客単価を上げる方法です。
飲食店開業希望者に「間借り・間貸し」してもらう
空き時間の活用方法として、もうひとつ考えられるのが「間借り・間貸し」です。
例えば夜だけ営業する居酒屋であれば、昼間は厨房も客席もほとんど使われません。そこでランチタイムだけ別の事業者に店舗を貸し、カレー店やラーメン店などを営業してもらう方法です。このスタイル自体は以前からありましたが、間借り店舗を探す人と空き時間を貸したい飲食店をつなぐサービスも登場し、以前より相手を探しやすくなっています。
筆者が知る例では、大きな厨房を持つアジア料理店が、移動販売を行っている若者に仕込み場所として厨房を貸していました。また、居酒屋の昼時間を週2日だけ借りてカレー専門店を営業し、経験を積んだ後に自分の店舗を開業した人もいます。
貸し方には、
- 定額
- 売上に応じた料金
- 水道光熱費込み
- 冷蔵・冷凍スペースだけ別料金
などさまざまな方法があります。
一方で、通常のレンタルスペースと違い、間借りでは厨房を使って実際に食品を提供します。そのため、営業許可や食品衛生上の管理を誰がどのように行うのか、厨房設備や食材の保管場所をどう分けるのかなども事前に確認しておく必要があります。
厚生労働省では、食品営業について営業許可制度と営業届出制度を定めています。実際にどの手続きが必要になるかは営業形態によって異なるため、間借り営業を始める場合は管轄の保健所へ確認しておく方が確実です。
飲食店の物販で新たな売上をつくる
店舗スペースだけでなく、飲食店が持っている「味」そのものを新たな収益源にする方法もあります。
例えば、
- オリジナルソース
- ドレッシング
- 調味料
- 焼き菓子
- 冷凍食品
- 仕入れている野菜
- 店舗オリジナル商品
などです。
「この店のドレッシングを家でも使いたい」「このソースを買って帰りたい」といった声が多い店舗なら、物販との相性がよいかもしれません。
通常営業とは違い、一度商品化すれば来店時だけでなく持ち帰って利用してもらうことができ、商品によってはECなどへ販売チャネルを広げることもできます。
物販では「家庭でどう使われるか」まで考える
店舗で提供している料理と、家庭で使ってもらう商品は同じではありません。
例えばパスタソースを販売する場合、お客は「温めて麺にかければ、お店と同じ味になる」と考えるかもしれません。
しかし実際には、
「麺と一緒に炒めた方がおいしい」
「仕上げにチーズを加える」
「ソースを温めすぎない」
など、店の味を再現するためのポイントがあることもあります。その場合は調理方法を書いたカードを付けたり、パッケージに使い方を記載したりすることで、購入後の満足度も変わるでしょう。
商品そのものだけでなく、家庭でおいしく食べてもらうところまでを商品設計として考えることが重要です。
保存方法・賞味期限・食品表示も確認する
物販では、店舗内で提供する料理とは異なる管理も必要になります。特に容器包装された加工食品を販売する場合、食品表示への対応が必要です。
消費者庁によると、容器包装された加工食品には、名称、原材料名、添加物、内容量、賞味期限または消費期限、保存方法、製造者など、食品表示基準に基づいた表示が求められます。
また、賞味期限は単に「店では○日程度大丈夫だった」という感覚だけで設定するものではありません。店舗の業務用冷蔵庫と家庭用冷蔵庫では、保管環境が異なる場合もあります。
自宅へ持ち帰った後にどのような温度で保存されるのかまで考え、安全性や品質を確認した上で期限や保存方法を設定する必要があります。
ソースやドレッシングの販売に許可・届出は必要?

ここは飲食店が物販を始める際に、特に注意したいところです。
「店内で普段作っているソースだから、そのまま容器に入れて販売できる」とは限りません。2021年6月に食品衛生法に基づく営業許可制度が見直され、あわせて営業届出制度が創設されました。現在は食品の種類や製造方法、包装・保存方法などによって、営業許可や営業届出が必要になる場合があります。
例えば「密封包装食品製造業」という許可業種がありますが、対象となる食品についてもその後見直しが行われています。厚生労働省は2023年にも、同許可の対象から除外される食品を追加しています。
したがって、「ソースならこの許可」「テイクアウトなら許可不要」と一律に判断することはできません。
何を、どのように製造し、どのような容器で、どこまで販売するのかによって必要な対応は変わります。商品化を検討する段階で、まず管轄の保健所に製造方法や販売方法を伝え、必要な許可・届出を確認することをおすすめします。
設備を整えるのが難しい場合はOEMという方法も
「オリジナル商品を販売したいが、店舗に製造設備を追加するのは難しい」
そんな場合に選択肢となるのがOEMです。OEM(Original Equipment Manufacturing)とは、商品を自社で製造するのではなく、製造設備を持つ事業者に製造を委託し、自店ブランドの商品として販売する方法です。
食品分野でも、
- ソース
- ドレッシング
- レトルト食品
- 冷凍食品
- 菓子
など、さまざまな商品のOEMがあります。
小ロットから対応する事業者もあるため、必ずしも大手チェーンだけが利用する方法ではありません。
自店に新しい製造設備を設置する必要がない一方で、
製造単価、最低ロット、保管費、パッケージ費、賞味期限、配送費
などが発生します。「店舗で人気だから商品化する」というだけでなく、販売予定数量まで含めて採算を確認しておく必要があります。
OEMで味の統一と物販を両立した例
筆者が知るある飲食チェーンでは、当初、料理長が店舗で使うソースを作っていました。
店舗数が少ないうちは問題ありませんでしたが、店舗数が増えるにつれて各店舗でソースを作るようになると、同じレシピでも味にばらつきが出るようになります。
一方、そのソースはさまざまな料理に使えることから、一部のお客向けに販売しており、物販商品としての需要も生まれていました。
そこで選んだのがOEMです。
店舗で使用するソースは大容量のパウチ、一般のお客に販売する商品は瓶詰めと用途を分けて製造しました。その結果、店舗で提供する料理の味を統一しながら、同じソースを物販商品として展開できるようになったといいます。
OEMは単なる物販の方法ではありません。店舗数を増やす際の仕込み負担や品質のばらつきを減らすなど、店舗運営の標準化につながる場合もあります。
新しい収益源は「売上」ではなく「利益」で判断する
空きスペースを貸したり、商品を販売したりすれば、その分だけ売上は増えます。
しかし、「売上が増えた=儲かった」ではありません。
例えば物販商品が月10万円売れたとしても、
- 原材料費
- 容器・包装費
- OEM製造費
- 保管費
- スタッフの作業時間
- 廃棄
などで8万円かかっていれば、単純計算で残るのは2万円です。
レンタルスペースも同じです。
売上が3万円あっても、そのためにスタッフを配置し、清掃や予約管理に多くの時間を使っていれば、本業とのバランスまで考える必要があります。
そこで重要になるのが、「新しい事業でいくら売れたか」ではなく、「追加で発生した費用を差し引いて、最終的にいくら利益が残ったか」という視点です。物販の販売価格を決める際にも、感覚だけで値付けするのではなく、原価率や粗利を確認しておく必要があります。
飲食店の原価については「原価率とは?計算方法と業態別の適正目安をわかりやすく解説」も参考にしてください。スタッフを追加する場合は、人件費まで含めたFLコストを見ることも重要です。
空きスペース・物販を始める前に数字を把握する
飲食店が新たな収益源をつくる方法として、空きスペースの活用や物販は有力な選択肢です。
特に、使われていない時間を貸す、すでに店で提供している味を商品化するといった方法なら、現在持っている店舗やノウハウを活かしやすいでしょう。ただし、本業の飲食店営業に負担をかけてしまっては意味がありません。
始める前には、
- どのくらい売上が見込めるのか
- 追加コストはいくらかかるのか
- スタッフの作業はどれくらい増えるのか
- 必要な許可や届出はあるか
- 本業に影響しないか
を確認しておきたいところです。
そして、実際に始めた後は、通常営業と新しい取り組みの数字を分けて見られるようにしておくことも重要です。店舗の売上データを把握できていれば、「どの商品が売れているのか」「どの時間帯を活用できそうか」「新しい取り組みが本当に利益を生んでいるのか」を判断しやすくなります。
新しいことをゼロから始めるだけが、売上を増やす方法ではありません。今ある店舗・時間・商品・データを見直してみると、まだ活用できていない収益源が見つかるかもしれません。
最後に・・・
今回は飲食店が行える、実現可能な収益獲得策を探ってみました。基本は場所貸しと食材販売。どちらにしても、価格設定が重要となります。
特に食材販売については、店舗での価格設定とかけ離れたのでは売れませんし、かといって製造コストを度外視するわけにはいきません。
そこで重要となるのは、感覚で値付けをするのではなく、データを元にした理論的な値付けをすることです。例えば、飲食店では3~4割が原価となりますが、物販ではもっと高くなります。
最終的には経営者のさじ加減となりますが、そもそものデータの有無は重要となります。
しかし、残念なことに、元となるデータが正しく集約できていないところもあります。不安定なデータから算出した価格設定は、プラスにならないことも多いので注意が必要です。
今はPOSを導入するだけでさまざまなデータを集め、戦略に活かすことができます。税率が違っても、問題なく一緒に会計ができるので安心。まずは汎用性の高いPOSを導入することからはじめ、戦略的な収益確保をスタートさせてください。
多くの方の成功を願っています!
参考:FAQ
Q. 飲食店の空きスペースはどのように活用できますか?
A. レンタルスペース、イベントやワークショップの会場、別の飲食事業者への間借り・間貸しなどに活用できます。店舗の立地や内装、営業時間、設備などに合わせて方法を選ぶことが重要です。
Q. 営業時間外だけ店舗を貸すことはできますか?
A. 営業時間外や定休日だけ貸し出す方法もあります。ただし、賃貸店舗の場合は契約や施設規約で第三者利用が制限されていないか確認しておきましょう。また、厨房を使用する場合は営業許可や衛生管理について管轄の保健所への確認も必要です。
Q. 飲食店でソースやドレッシングを販売するには営業許可が必要ですか?
A. 必要な手続きは、食品の種類や製造方法、包装・保存方法などによって異なります。食品衛生法では営業許可制度と営業届出制度が設けられているため、「飲食店営業許可があればすべての商品を販売できる」とは限りません。商品化する前に管轄の保健所へ確認することをおすすめします。
Q. 飲食店の物販では食品表示が必要ですか?
A. 容器包装された加工食品を販売する場合は、食品表示基準に基づき、名称、原材料名、内容量、賞味期限または消費期限、保存方法などの表示が必要になります。商品によって必要な表示内容が異なるため、消費者庁の食品表示基準を確認しましょう。
Q. 飲食店でもOEMを利用できますか?
A. 利用できます。自店で製造設備を整えるのが難しい場合でも、OEM事業者へ製造を委託することで、オリジナルソースやドレッシング、冷凍食品などを商品化できる場合があります。製造単価だけでなく、最低ロットや包装費、保管費、配送費まで含めて採算を確認することが重要です。
Q. 空きスペース活用や物販が成功しているかは何を見ればよいですか?
A. 売上だけではなく、原材料費や人件費、容器代、清掃・予約対応などの追加コストを差し引いた利益で判断することが重要です。本業への負担も含めて、取り組みを続ける価値があるか確認しましょう。
参考データ・出典
農林水産省「第5節 食料消費の動向と食・農のつながり」
https://www.maff.go.jp/j/council/seisaku/kikaku/bukai/attach/pdf/260416-3.pdf
厚生労働省「食品衛生法の改正について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000197196.html
厚生労働省「営業規制(営業許可、営業届出)に関する情報」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/kigu/index_00010.html
消費者庁「食品を安心して選ぶために」
https://www.caa.go.jp/about_us/about/caa_pamphlet/jp_2026_010.html
消費者庁「食品表示法等(法令及び一元化情報)」
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/
