アメリカのレストラン宅配市場が過熱している。調査会社のエディソン・トレンズが行った調査によると、アメリカのレストラン宅配市場の直近のシェアはドアダッシュ(Doordash)27.6%、グラブハブ(Grubhub)26.7%、Uber Eats25.2%で、三社で市場をほぼ独占する状態になっている。特にドアダッシュの伸びが目立っていて、過去1年間でグラブハブのシェアのおよそ半分を奪取し、業界一位の座を獲得している。

 

4億ドルの資金調達に成功したドアダッシュ

Doordashアプリ
Doordashアプリ

業績好調なドアダッシュだが、最近4億ドル(約440億円)もの資金調達を成功させている。出資したのは民間のベンチャーキャピタルとシンガポールの公立ファンドだが、これにより、同社の時価総額は一年前から14億ドル(約1540億円)増加し、71億ドル(約7810億円)となった。たかがレストラン宅配ビジネスと侮ることなかれ、アメリカのレストラン宅配ビジネスは、シリコンバレーのテックベンチャー並みに投資家から高く評価されているのだ。

 

ファストフードチェーンとの連携を強める各社

McD UberEats

市場の寡占化が進む中、大手各社は揃ってファストフードチェーンとの連携を強化している。Uber Eatsはマクドナルドとの連携を強化し、連携店舗数を2016年の5000店から37000店へ増やし、今年だけでもさらに10000店増やすという。最大手のドアダッシュもウェンディーズとの連携を強化し、年末までに6700店と連携する予定だ。

業界大手がファストフードチェーンとの連携を強化する目的は明確だ。大手ファストフードチェーンは単立の飲食店よりもユーザーのリピート率が高く、安定した売り上げが見込めるからだ。また、大手ファストフードチェーンは潤沢なマーケティング予算を持っており、デリバリーサービスの開始の告知を配達業者が負担する必要がない。さらにはクーポンなどのインセンティブも提供してもらえる。

いうなれば大手ファストフードチェーンの配達事業をアウトソーシングする形でビジネスを成立させているわけだが、すべての配達ビジネスと同様、最終的にはコスト面での体力勝負にならざるを得ないだろう。ユーザーの他社へのスイッチングを防ぎ、リピート率を高め、コストを抑える。シンプルな経営の原則を貫けるプレーヤーが勝ち残る厳しいレースだ。

 

チップの取り扱いをめぐって対立も

一方で、業界的にはチップの取り扱いをめぐって会社と配達員とのトラブルが一部で生じている。ユーザーが支払ったチップを会社が賃金の一部として処理してしまい、配達員へ渡されないというトラブルだ。会社が配達員へ支払う給与は低く、ユーザーから渡されるチップは配達員にとって非常に重要だ。

なお、業界最大手のドアダッシュは、チップを賃金に含める仕組みを二年前から導入している。ドアダッシュによると、チップを賃金に含めることにより配達員の離職率を下げ、仕事の満足度を上げ、配達時間を短縮しているという。チップを支払っていた二年前と比較してとのことだが、にわかには信じがたいが、すべてデータが証明しているという。

しかし、ドアダッシュのチップ受領の仕組みは不透明だとする意見もある。ワシントンを拠点に活動する個人事業主の労働組合のスポークスマンは、「ドアダッシュでオーダーする際、チップのオプションメニューが表示されますが、ユーザーはあくまでも配達員へチップを支払うものと認識しています。それをドアダッシュが社内で処理してしまうわけですが、透明性がなく、問題だと思います」とコメントしている。

 

どうなるアメリカのレストラン宅配市場?

デリバリー自転車市場調査会社のシオン・アンド・シオンによると、現時点のアメリカではミレニアル世代(20代から30代はじめの世代)と呼ばれる世代がもっともレストラン宅配サービスを利用しており、ミレニアル世代が結婚して家庭を持ち始める今後、レストラン宅配ビジネスはさらに拡大するとしている。時間の浪費を嫌い、自分の生活や趣味を大事にするミレニアル世代にとって、レストラン宅配サービスはうってつけのサービスなのだ。

米国レストラン協会によると、アメリカの飲食業全体の売上におけるレストラン宅配ビジネスの売上の割合はわずか3%で、今後確実に拡大が期待できるという。レストラン宅配ビジネスを利用していない飲食店は多く、さらにレストラン宅配ビジネスがテイクアウトやドライブスルーのビジネスを侵食できる余地が残っているからだ。

なお、直近のアメリカのレストラン宅配ビジネスの市場規模は1800億ドル(19兆8000億円)で、2023年までに2400億ドル(約26兆4000億円)に拡大すると見込まれている。本格的な市場競争が始まってまだ日が浅い業界だが、すでに大手三社による寡占状態が始まっている。そして業界全体はやがて、一人の勝者が全体を独占する勝者総取りの様相を呈するかもしれない。そして、そのアメリカの飲食業界の大きなトレンドは、数年のタイムラグを経て、太平洋のこちら側にある日本に押し寄せてくるのは間違いないだろう。


参考URL:
https://table.skift.com/2019/02/22/doordash-closes-400-million-funding-round/
http://fortune.com/2019/03/11/doordash-tops-grubhub-on-demand-food/
https://www.restaurantdive.com/news/why-the-delivery-market-will-look-different-in-5-years/546936/


ライタープロフィール:
前田健二
東京都出身。2001年より経営コンサルタントの活動を開始し、新規事業立上げ、ネットマーケティングのコンサルティングを行っている。アメリカのIT、3Dプリンター、ロボット、ドローン、医療、飲食などのベンチャー・ニュービジネス事情に詳しく、現地の人脈・ネットワークから情報を収集している。