新型コロナウィルスの感染拡大が続くアメリカで、飲食店が営業再開へ向けて動きだしている。長らく店内での飲食が禁止されていたニューヨークでは、現地時間の2020年9月30日から定員の25%までを上限に飲食が再開される予定だ。そうした中、ニューヨークに拠点を置くあるスタートアップ企業が注目を集めている。コロナ時代の飲食店に新たなソリューションを提供するBbotを紹介する。

 

Bbotというスタートアップ企業

Bbot 公式サイト
Bbot 公式サイト

Bbot(ビーボット)は、スティーブン・シモーニ、グレッグ・ジャオルスキ、ルーク・アレンの三人の若者が2017年に設立したスタートアップ企業だ。Bbot設立前、アメリカ海軍で原子力潜水艦の原子炉のメンテナンスの仕事をしていたシモーニが、ある日バーでビールを注文しようとしてもウェイターが注文をとりに来ないことに腹を立て、オンラインオーダリングの仕組みを開発できないかと発案した。その後、シモーニは海軍の同僚のジャオルスキ、アレンの二人とBbotを設立した。

新型コロナウィルスの感染拡大が続くアメリカでは、飲食店は軒並みコロナ時代の「新たな日常」への対応を余儀なくされている。2020年9月末から店内での飲食が再開されるニューヨークの飲食店は、再開後の店内のキャパシティを定員の最大25%までと制限される。いうなれば飲食店の店内における客同士や店員とのソーシャルディスタンシングが求められるわけだが、Bbotのソリューションは、そうした飲食店の「新たな日常」をアシストする強力なツールになると期待されている。

 

Bbotのオンラインオーダリングシステムとは?

Bbot 注文イメージ
Bbot 注文イメージ

Bbotが提供するオンラインオーダリングシステムの仕組みはシンプルだ。利用者は自分のスマートフォンから飲食店の店内に設置されたQRコードを読み取る。スマートフォンがQRコードを読み取るとスマートフォンのブラウザに飲食店のデジタルメニューが表示され、注文可能となる。注文はデジタルメニューから客が直接注文する。注文されると情報が飲食店のキッチンに設置された端末に表示され、調理スタッフが調理する。注文の品ができるとウェイターが客のテーブルへ届けて完了となり、支払はスマートフォンのAppleペイかGoogleペイ、またはクレジットカードのオンライン決済で行う。

Bbotのオンラインオーダリングシステムは、一見すると最近の日本でも普及の兆しを見せているタブレットを使ったオーダリングシステムに似ている。どちらも画面に表示されたデジタルメニューから客が直接注文する点は同じだが、客自身のスマートフォンで注文し、さらに客自身のスマートフォンで決済する点が決定的に違う。それにより、飲食店は投資コストゼロでオンラインオーダリングシステムが導入でき、決済などを行うスタッフの人件費を削減することが可能になる。ウェイターなどのサービススタッフも、一人でより多くの客にサービスすることが可能になり、生産性が大きく向上する。



コンタクトレスオーダリングというコンセプト

ところで、Bbotのオンラインオーダリングシステムの背景にあるのはコンタクトレスオーダリングというコンセプトだ。コンタクトレスオーダリングとは、文字通りウェイターなどのサービススタッフとコンタクトせずにオーダリングする仕組だ。新型コロナウィルスの感染拡大が続くアメリカでは、飲食業界における共通のキーワードとして急速に浮上しつつある。

実際、売上を増やしているテイクアウトやデリバリーの注文の多くは、パソコンやスマートフォンなどを使ってリモートオーダリングで注文されている。リモートオーダリングであれば飲食店スタッフとコンタクトすることもなく注文でき、品物の受け取りも最短時間で行える。そして、間もなく店内での飲食が再開される飲食店にとっては、いかにコンタクトレスオーダリングを実現するかが大きな課題の一つであったのだ。

 

POSシステムとの連動も

なお、Bbotのオンラインオーダリングシステムは、客の注文データをデータベース化し、売上の詳細データや売れ筋トレンドのデータなどをオンラインレポートで提供する仕組も提供している。複数の店を運営している場合は、すべての店のデータを統合して一括して分析することも可能だ。また、店がすでにPOSシステムなどを導入している場合、Bbotのデータをリンクさせることも可能だ。

Bbotのオンラインオーダリングシステムは、客にコンタクトレスオーダリングの仕組みを提供するだけでなく、店側にもデジタルマネジメントシステムを提供する。それにより、投資コストゼロで店の経営をDX化し、経営の近代化を一気に進めることが可能になる。これまでどんぶり勘定で経営を行ってきた多くの飲食店経営者にとっては、福音以外の何物でもないだろう。

 

飲食店でのソーシャルディスタンシングが「新たな日常」に

新型コロナウィルスと共に生きねばならない現代の飲食店にとっては、ソーシャルディスタンシングが「新たな日常」になる。そして、その新たな日常においては、客に接客しないということが、「新たなホスピタリティ」となる。そして、その新たなホスピタリティを提供するには、Bbotのオンラインオーダリングシステムのような仕組みを導入することが、多くの飲食店にとって必須になる。

Bbotのオンラインオーダリングシステムは、いずれは接客ロボットなどとも連動し、飲食店の無人化をさらに進めることになるだろう。客同士が十分なソーシャルディスタンシングを確保し、透明フェンスで覆われた各テーブルに接客ロボットが料理を運び、客は食べ終わるとスマートフォンで決済して店を出てゆく。なんとも寒々しい光景だが、それが飲食店にとっての「新たな日常」となるかもしれない。

今や飲食店にとって「密」は「悪」となった。2020年以前は当たり前であったことが、2020年以降は当たり前ではなくなる。少なくとも、飲食店にとって「距離をとる」「接客しない」は、コロナ時代における「善」なのだ。日本の飲食店経営者の多くも、アメリカ同様厳しい状況に置かれているが、そうした新たな常識を、新たな常識として正しく認識することが求められている。

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参考URL:
https://restauranttechnologynews.com/2020/07/bbot-secures-3-million-in-funding-for-its-contactless-restaurant-ordering-and-payment-processing-solution/