飲食店にとって予約はありがたいものですが、その一方で無断キャンセルは何としてもさけたいものであり、実に腹立たしいことです。最近は政府が調査レポートを出し、マスコミが騒ぐほど、無断キャンセルは明らかに増加しています。
飲食店では、なぜ無断キャンセルが出てしまうのか?
また、無断キャンセルを防ぐ策はないのか?
ここで詳しく紹介します。

 

最近になって急増した飲食店の無断キャンセル

先日テレビで見かけた飲食店を舞台にしたドキュメンタリー。年老いた店主が息子に実権を譲るために、さまざまな取り組みをしているというものでした。この中で無断キャンセルが発生したことに対し、店主が「お前の威厳がないからバックレられるんだ!」と憤っていたシーンがあったのです。

飲食店を長年営んできた店主からすると、予約をしておきながら何の連絡もなくキャンセルする人は全く理解ができないし、昔はそんな人はいなかったと主張します。一方息子は、「今の時代、100%防ぐことはできない」と考えています。実際の店舗に立っている人ですら原因が分からないほど無断キャンセルが急激した、象徴的なシーンだと思いました。

筆者の感覚では、無断キャンセルは10年ほど前から増え始め、ここ5年で一気に増加しました。10年以上店舗を経営しているオーナーに聞くと、どの店舗でも同じような感覚をもっているので、大きくズレてはいないと思います。

 

キャンセルの年間発生額は1兆6000億円!

2018年11月、経済産業省が増加する無断キャンセルの実態を把握するために、全国的な調査を実施し、『No show(飲食店における無断キャンセル)対策レポート』https://www.meti.go.jp/press/2018/11/20181101002/20181101002-1.pdf)を発表しました。これによれば、無断キャンセルが飲食店業界全体に与えている損害は年間約2千億円。また、2日前までに申し出のあったキャンセルも含めると発生率は6%強、金額にして1兆6000億円にものぼるそうです。これだけの金額になれば、社会問題と言われるのは当然のことです。

 

とりあえず場所を確保し、気軽に無断キャンセルする現状

まず考えたいのは、なぜ無断キャンセルをするのかと言う点です。
これについては、株式会社TableCheckが20~60代の男女に行った「飲食店の無断キャンセルに関する消費者意識調査」が参考になるでしょう。

無断キャンセルをした理由はトップから順に、
「とりあえず場所を確保するために予約」34.1%
「人気店なのでとりあえず予約」32.5%
「予約したことをうっかり忘れた」30.2%。

気軽に予約をすることと平行して、気軽に無断キャンセルもしてしまう現状に腹立たしさを覚えます。

そう言えば、無断キャンセルの質が変容していると言われています。
以前からキャンセルはあったものの、電話をすると繋がり、「忘れていた」とのうのうと言われたり、「インフルエンザで苦しんでいるのに電話をかけてくるなんて非常識だ」と逆ギレされたり・・・。理由は非常識であっても、何らかの形で連絡がついたのが過去のケースでした。

しかし最近では、時間になって電話をしてもコールがなるばかりで出てもらえないケースや、着信拒否をされていることすらあります。気軽な無断キャンセルの背景には、簡単に連絡を絶ってしまえることがあるのかもしれません。

 

飲食店の弱いところにつけ込んだ無断キャンセル

そもそも予約が入る時間は、店舗が満席である時間帯です。また、満席の時間は短く、「お客さんが遅れているだけではないか?」と30分待ってしまうと、もう席が埋まることがなく、大きなチャンスロスにつながることもあります。

また、貸切予約であれば、特別な下準備をしていることも多く、空席によるチャンスロスに加え、食材のロスも大量に発生させることになってしまいます。ときには人件費も・・・。

それでも、「お客さんを信じて待つ」というオーナーが多いのが飲食店のつらいところ。業種は違いますが、年末年始に宿泊施設でも同じような事例がありました。正月に最上級の部屋が無断キャンセルにより空室のままだったケースです。ここでは、確認のために事前に電話をし、つながらなかったので郵便を出し、それも不着で戻ってきたのに、「お客さんが来る可能性があるから・・・」と空室のままにしていました。

他の業種から見れば、「信じられない」と言われるかもしれませんが、飲食店関係者なら、「わかる」という人の方が多いでしょう。これがサービス業の宿命なのかもしれません。

 

キャンセル料に対する考え方に変化

一方で、「キャンセルをしたら、キャンセル料を払ってもらうのが当然」としている業界もあります。身近なところでは、映画館。事前にネットを通じて予約をする人が増えていますが、予約の時点でクレジットカード支払いをすると、当日行かなくても返金はありません(一定の時間までであれば変更できるケースはあり)。言い方を変えれば、「キャンセルした場合、キャンセル料を払って当然」と考える風潮が強くなっているということです。

実際、前出の経済産業省が出したレポートでも、「損害賠償を請求できる」としています。また、「飲食店の無断キャンセルに関する消費者意識調査」では、1人1万円以上の高級レストランという縛りはあるものの、「キャンセル料支払いは妥当」と考えている人が7割以上もいるのです。

そしてついに、2019年秋。無断キャンセルを原因とした逮捕者が出ました。これにより社会全体が、「無断キャンセルは罪だ」という意識が植え付けられたのです。逮捕に至ったのは有楽町にある同じ系列の複数の居酒屋に団体予約をし、無断キャンセルをしたというもの。罪状は業務妨害です。逮捕されたのは職業不詳の59歳の男性で、個人的な恨みがあったのかもしれませんが、事情はどうあれ、無断キャンセルをすると逮捕されることがあるという認識が広またことは、今後に大きな影響を与えてくれます。

 

本心はキャンセル料を請求したいが、現実には難しい

しかし、実際にキャンセル料を回収しているところは少ないのが現状です。それにはふたつの問題点があります。

印象が悪くなることを恐れる店舗

一つめは、キャンセル料を請求することで、お客を大切にしない店だと思われてしまうことを恐れ、自ら請求しないパターンです。飲食店がサービス業であるがゆえに陥るジレンマと言えるでしょう。

たとえば、都内の大学近くの飲食店では50名の新歓コンパが無断キャンセルされたとネットで騒がれたことがありました。その関係性や、どういった流れで解決につながったのかは不明ですが、その店舗ではキャンセル料は請求しないことで話し合いがついたようです。

請求したくても連絡をつけられない

もう一つは、キャンセル料を請求したくても、相手に連絡がつかないケースです。最近の予約はスマホから行われることが多く、時間になって何度電話をしても出ないことがほとんどです。電話番号を登録しておけば、どこからの電話かは分かるわけで、キャンセルをした後ろめたさから出ないものと思われます。

サイレントモードにしておけばコールがなっても気になりませんし、それ以降はブロックしてしまえば、二度と連絡がくることはありません。中には、習慣的に電話に出てしまい、「今向かっているところです」とその場しのぎのことを言い、結局あらわれなかったという最悪なケースもあります。もちろん、電話はすぐに着信拒否されるのですから、連絡のしようがありません。

WEB予約も同じこと。会員登録が必要なサイトからの予約でさえ、その登録を抹消してしまえばアクセスされることはないのです。結局、飲食店は泣き寝入りするしかないわけです。

 

過去のブラックリスト作成には大きな逆風が吹いた

過去には、飲食店が自ら無断キャンセルを防ごうと、「予約キャンセルデータベース」が立ち上がりました。これはいわゆるブラックリストであり、飲食店が無断キャンセルをされたら、サイトに電話番号を登録。その情報を飲食店間で共有するというものでした。

いくつかのサイトが立ち上がったものの、多くは個人作成だったこともあり、「個人が個人情報を扱うのは問題だ」と言う声が上がります。その後、協会化したところもあったようですが、個人情報への過敏な反応から尻すぼみになりました。今でもサイトは残っていますが、どれくらいの利用があるのかは分かりません。

「客の承諾なく電話番号を登録するなんてけしからん」という意見に対し、「利用しなかったんだからお客じゃない!」というのが飲食店側の本心かもしれませんが、それを強く言えないのがサービス業と言うわけです。

 

飲食店ができる無断キャンセル予防策(対策)

共有の防衛策(対策)ができないのなら、自ら防衛しようと積極的な策を打っている店舗もでています。

たとえば、予約で週末のほとんどの席が埋まるレストランでは、徹底した電話確認を行っています。ネットで予約をすると折り返しメールが来て、これに返信することで予約が確定となります。しかし、予約前日と当日朝に複数回の電話がかかってきます。この電話に出ず、折り返しの電話もしないと、確定したはずの予約は強制的にキャンセル。予約者としてはなかなかの緊張感ですが、そうまでして行きたい店であれば、有効な手段でしょう。

また、電話を何度もかけるのは店側の負担も大きくなります。そこで、SNSを活用する方法も増えています。予約したお客に対し、時間や場所などを何度か自動的に連絡するシステムです。こうすることで無断キャンセルが発生しなくなったという店舗もあります

そのほかにも、WEB予約時にペイパルなどを使って一定額の支払いをしてもらうところもあります。コース料理分の料金をもらう店や、イベント営業では入場料を高めに設定し、その分を事前に決済することで予約確定となるところもあります。

この場合、キャンセルでも返金しないのが一般的。映画館と同じようなシステムで、意外なことに、クレームになるケースはほとんどないそうです。

 

無断キャンセル対応の保険や弁護士も登場

強気の無断キャンセル対策ができないという飲食店向けに、損害をサポートする保険も登場しています。Gardia株式会社がはじめた「No Show保証サービス」では、無断キャンセルをされた店舗が被る被害を保証してくれます。(https://gardia.jp/news/201903/cancel/
飲食店の規模にもよりますが、一般的な居酒屋なら5千円程度で月額20万円までサポートしてくれるので、安心です。

また、弁護士を使うサービスも登場しています。その代表的なのが、ノーキャンドットコム。(https://noshow.life/
初期費用無料で、キャンセルが発生するとお客に代金回収を代行してくれるサービスです。手数料は30%と手頃なことから利用店舗は増えており、キャンセル回収依頼金額は約700万円(2019年7月からの累計。2020年1月31日現在)となっています。

さまざまなサービスも登場し、泣き寝入りをしなくてもよくなりつつある無断キャンセル。自分の店に向いた策をとり、万が一に備えたいものです。

 

まとめ

長年飲食店を悩ませてきてきた無断キャンセルに、新しい流れができているように感じます。発生を未然に防ぐことに加え、実際に発生した後の対策をとることで、売上げ減や食材ロスなどの損害を抑えることができます。
快適な店舗経営のためにも、さまざまな策を検討し、快く予約を受け付けたいものです。

 

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