20代、30代のスマホ個人保有率は90%を超え、全体を見ても7割を超えるようになりました。いつでもどこでも、インタ―ネット経由で情報を得られるようになり、飲食店を探すときにも「WEB検索する」という人が増えています。そこで気になるのが、インターネットを使った予約システムの導入がどれくらい広がっているのか、ということ。
何割の店舗が導入し、どんなシステムを使っているのか。また、メリット、デメリットはどういったものか。この記事では、今や無視できなくなったネット予約導入について掘り下げたいと思います。

 

 

飲食店探しは紙媒体からインターネットへ

まずは、お客が飲食店情報を調べるときのネット利用率を見ていきましょう。数年前までは、即効性のある店舗販促といえば、フリーペーパーにクーポンを載せることでした。もちろん、今でもクーポンを載せた紙媒体は存続しています。しかし、フリーペーパーを一気に根付かせた「R25」はWEBメディアとなり、紙媒体は廃止。これは象徴的なできごとであり、情報を得る手段が印刷物からインターネットになったことを証明しています。

 

今や、ほとんどの人が、飲食店をネットで探す

飲食店を探すシーンについては、2017年8月にMyVoiceが行った[飲食店情報の検索に関するアンケート調査(第9回)]
https://myel.myvoice.jp/products/detail.php?product_id=22911)が参考になります。

飲食店を探す時の媒体について、以下のような回答が得られています(複数回答)。

 

パソコンのインターネットサイトを使う73.4%
スマートフォンのサイトを使う34.7%
フリーペーパーやグルメ雑誌などの紙媒体を使う 30.1%

 

インターネットを利用した調査ですので、通常の調査よりもインターネット利用率が高めに出る傾向はありますが、それを加味しても、多くの人がインターネットを使って飲食店を探していることが分かります。ちなみに、2010年に行った調査では、紙媒体を使う人が57.4%もいましたし、スマホは選択肢にすら入っていませんでした。

今や、情報はインターネットから得るのが当たり前です。また、飲食店を検索したときに上位表示される「食べログ」や「ぐるなび」などには、店舗情報の他に口コミが多数あり、「リアルな評価を見られる」ことも好んで活用される理由でしょう。



ネット予約、未導入は少数派に

このような状況の中、飲食店側もインターネットを利用した予約システムを無視できなくなっています。では、飲食店の中で、すでにインターネット経由での予約を受けているところはどれくらいあるのでしょうか?

これについては、株式会社シンクロ・フードが2018年3月に行った「飲食店におけるネット予約の導入状況の調査」(http://www.synchro-food.co.jp/news/press/2470)を参照したいと思います。

このアンケートに回答したのは、飲食店経営者及び運営者。そのうち、1店舗のみを運営しているという人が、67.9%存在します。単独店は、新しい取り組みに着手するのが遅れる傾向があることを念頭に置きながら、結果を見ていきましょう。

 

すでに6割の店舗がネット予約を導入している

まず、 ネット予約の受付状況については、以下のような結果になっています。

 

受け付けている62.4%
受け付けていない(電話予約のみ)32.6%
予約自体受け付けていない 5.0%

 

ネット予約を導入していない店舗は、驚いているかもしれません。
いつの間にか、ネット予約はできて当たり前。電話予約のみの店舗は約3割で、少数派になっているのです。

 

ネット予約=即予約完了としている店舗が6割

この調査では「ネット予約を受け付けている」と回答した飲食店に対し、予約の形態についても聞いています。インターネットから予約が入った時点で予約確定となる「即予約」か、インターネットで予約を受け付けた後、折り返し連絡することにより予約が確定する「リクエスト予約」の2択になっていますです。

その結果が、以下です。

即予約59.4%
リクエスト予約 40.6%

 

約6割の店舗は、インターネット経由の予約だけで予約を完了させています。以前は、ネット予約を受けたら、メール返信か電話確認で予約完了としていたところが多かったので、新しい傾向といえるのかも知れません。実はこれは、美容院の予約で利用される「ホットペッパービューティー」などでも主流となっています。「業界が違う」と感じる人もいるかもしれませんが、利用者は同じ一般消費者。何かの店舗を利用するとき、「気軽にネットで予約する」という感覚は、もはや当然のことだと考えた方がよいのです。

 

利用メディアは、食べログ、くるなび、ホットペッパーが三強!

インターネット経由の予約といっても、さまざまな方法があります。では、どのメディアが多いのかを見ていきましょう。

この回答は、「予約が多かった順」になっています。

食べログ 50.0%
ぐるなび42.8%
ホットペッパーグルメ42.8%
自社ホームページ34.1%
一休.comレストラン15.9%
Yahoo!ダイニング12.3%
ヒトサラ11.6%
Rettyグルメ10.1%
Ozmall8.0%
favy 0.7%
 その他 13.0%

 

ここで注目したいのは、自社ホームページからの予約が34.1%あることです。飲食店の中には、「食べログに情報があるから」「ホームページを作っても、上位表示されないから」との理由で、独自サイトを作っていない店舗があります。また、独自サイトがあっても、予約受付機能がないところも多くありますが、この結果を見ると、機会損失になっている可能性を考えた方がいいかもしれません。

さらに、約65%の飲食店が2つ以上のメディアを併用していることも判明しています。予約流入の窓口を多く確保することが、客数確保に欠かせない条件となっているのです。

 

意外に安い? ネット予約導入は月額1万円から

ネット予約の導入にはどれくらいの費用がかかるのでしょうか?
大手メディアを例に、費用を紹介したいと思います。

「食べログ」の場合、ネット予約を利用するにはサービスプランを申し込む必要があります。最も安い「ライトプランS」から対応しており、月額固定費10,000円に加え、ディナーであれば200円×客数。ランチであれば100円×客数の従量課金となっています(すべて税別)。

「ぐるなび」の場合、ビギナー会員プランからネット予約を利用でき、こちらは月額固定費が10,000円。
「ホットペッパーグルメ」は、地域によって会員価格に差があるので詳細は省きますが、カメラマンが店内を撮影するなどのサービスが含まれるため、最も安いものでも月額40,000円ほどかかります。

ただし、ご注意いただきたいのは、ここに書いた費用はネット予約機能だけの価格ではないという点です。各サイトに店舗専用のページを作成する費用であり、そこにはいくつものサービスがついており、その中の一つがネット予約ということ。申し込みをする際には、他のサービスも含めて比較することをオススメします。

 

ネット予約は、デメリットよりメリットの方が大きい

では、ここから、インタ―ネット予約のメリットとデメリットを見ていきましょう。まずはメリットです。

 

検索して気に入った店があれば、そのまま予約したい顧客心理

インタ―ネットを使って飲食店を探す場合、Googleなどで飲食店を検索し、そのまま予約できることは非常に便利です。これは、ホテルや旅館などでも同じ現象が起きているのですが、インターネットで気に入ったところを見つけたものの、電話をしなければならないという状況は、「めんどくさいから、あきらめる」という決断につながります。これを避けるには、検索からの自然な流れで予約まで完了させてしまうことが重要なのです。

地図イラストまた、飲食店は「複数で利用することが多い」という特徴があります。この場合、友達や同僚との情報交換にLINE やメールなどを使っていることが多く、予約した飲食店の情報共有も、その手法で行われます。このため、「店を見つける→電話する→パソコンに戻って情報を共有する」という流れは非常に面倒。飲食店は、この「共有」という作業がある分、ネット予約が重宝されるという状況も理解しておく必要があるでしょう。

また、最近の傾向として、電話で話すことが苦手で、「電話は避けたい」と感じている人が増えています。このため、「電話でしか予約ができないから、他の店にする」という選択肢が選ばれやすくなっています。こういった人は、今後ますます増えることが予想されていることも考えておかなければなりません。

 

忙しいときや営業時間外でも予約を受けられる

他にも、「予約を受けやすい」という店側のメリットもあります。電話予約は忙しい時間にかかってくることが多いものです。たとえば、1日の中でも最も忙しいといわれるランチタイムに、夜の予約をする人が多くいます。「昼休みにランチを食べる」のと、「昼休みに予約をする」のがかぶるのは当然のことであり、避けられないものです。

しかし、忙しい時間にかかってくる電話は、対応がおざなりになり、必要なことを聞かなかったり、伝えるべきことを伝えなかったり、時には「対応が悪かったからキャンセルしよう」と言うことになりがちです。

さらに、電話が殺到したときや営業時間外に、取りこぼしが発生することもあります。その点、インターネット経由の予約であれば、「お客のペースで予約してもらって、店は手が空いたときに確認する」ことができるため、双方にとって便利な方法なのです。

 

正確な情報を得られるため、ミスがなくなる

予約イラストさらに、お客の情報をあれこれ聞かずとも、お客みずから必要な情報を提示してくれるというのも大きなメリットです。「名前を聞き忘れた」「確認用の電話番号を聞き間違えた」などというトラブルは、飲食店の多くの人が経験しています。その点、インターネットであれば、必要な情報は予約の時点ですべて把握できるので安心です。

さらに、正確性が高いことに加え、記録が残るのもメリットといえるでしょう。たとえば、予約時間外にお客が来店して待たせてしまうとき、「予約した意味がない!」とクレームになってしまうことがあります。ところが、実際には、お客が時間を伝え間違えているケースが多いもの。そこで、記録が残っていれば納得してもらいやすく、クレームに発展することを避けられます。

他にも、お祝いのデザートプレートに入れる名前や、避けるべき食材を正確に把握することもできます。

 

デメリットは考え方、やり方次第でクリアできる

次に、デメリットも見ていきましょう。

 

キャンセルとノーショーが多いものの、予約増加のメリットと相殺できる

ネット予約で最も問題視されているのが、キャンセルとノーショー(来店しない)が多いことです。インタ―ネットを使えば人を介さず気軽に予約ができる分、悪びれもせず気軽にキャンセルもできてしまうという心理的要因がこの多さにつながっています。中には、複数店舗を「とりあえず」予約し、実際に行くのは、その中の1つの店舗のみということを繰り返す困ったお客もいます。

予約席店舗側にしてみれば、ノーショーほど困ったものはありません。時間になって確認の電話をかけても出ないことが多く、何かの事情で遅れていることを想定して、しばらく席を空けて待っておくべきか、他のお客に席を利用してもらっていいのかの判断もつかず、いらだちを覚える店長やオーナーも多いでしょう。

ところが、インターネット予約を積極的に行っている店舗の中には、この問題を重要視していないところが多くあります。その理由は、「キャンセルやノーショーはあるけれど、それを上回る予約件数の増加がある」から。デメリットを上回るメリットを感じているために、リスクは甘んじて受けるというのです。

もちろん、ノーショーを避けるために、当日電話で予約確認を行ったり、予約時間を10分過ぎて連絡もない場合は自動的にキャンセルことを最初に伝えたりして、できるだけ空席のままになってしまうロスを減らすという対策をとっているところが多くあります。

 

作業の増加など、避けられないデメリットも

他にも、複数のサイトを窓口として活用している場合、予約が入るたびに残席の確認をし、他のサイトの残席を調整しなければならなかったり、予約中止にしたりといった作業が発生し、面倒だと感じている人もいます。

さらに、お客が特別な要望を備考欄などに書き、「やってくれて当然」と思ってしまうことも面倒な点です。実際には、実現不可能だったり、費用が追加で発生したりするのですが、その相談は電話やメールで行う必要があり、スムーズに行かないこともあります。

 

デメリットを避けていたのでは、メリットも受けられない

これらのデメリットは、店舗にとってはありがたいものではありません。しかし、デメリットを避けていたのでは、メリットも受けられないという支店を忘れてはなりません。まして、競合店はインタ―ネット予約を導入しているのが当然となっており、お客のニーズも増しています。このタイミングで、「デメリットがあるからやらない」という一方的な視点が許されるのは、常連客で毎日満席になる一部の店舗だけでしょう。

デメリットをできるだけ最小にするために、たとえば、ネット予約をしなくても満席になる日については、「電話でご予約ください」と表示しておき、満席にならない日だけネット予約を受け付ける方法があります。

また、一方的に要望を書かれても対応に苦慮するという場合、「備考欄に書かれたご要望については、電話での確認の後、対応の可否を決定します」と明記しておけばクリアできます。他にも、デメリットを回避する方法は必ずあります。まだ、ネット予約を導入していないという店舗は、早急に導入を考えた方がよさそうです。



まとめ

今後、ますます一般化すると考えられるインターネット予約。食べログやぐるなびなどのシステムを使えば、非常に安価で、かつスムーズにスタートすることが可能です。もし、まだ導入していないのであれば、デメリットを最小の抑える方法を模索しながら、早めに導入することをおすすめします。

 

 


参考


 

ライタープロフィール
原田 園子

兵庫県出身。  株式会社モスフードサービス、「月刊起業塾」「わたしのきれい」編集長を経てフリーライター、WEBディレクターとして活動中。