新型コロナ禍では、さまざまな事業が苦戦を強いられました。中でも大きな影響を受けたのが飲食店。時短要請にはじまり、「酒類を提供するなら休業要請」となり、従わなかったことで罰金を請求された店舗もでてきました。
しかし店舗側から見れば、店舗を維持するにはやむを得ない事情も。
ここでは、新型コロナを通じて変化した出店の立地について考えていきます。

コロナ禍で苦戦を強いられた飲食店

これまでの常識では、飲食店でもっともすぐれた立地はターミナル駅だとされ、駅近の物件は常に人気でした。ただし、それらの物件に出店するには契約料や家賃が高く、安定した経営をするには、それなりの大きさが必要となります。そのためにはスタッフも多く必要で、経営はさらに難しくなります。そのため出店できるのはノウハウを持ったチェーン店か、やり手の勝ち組オーナーに限られていました。

そこで多くのオーナーは、駅から距離がある物件を選んだり、路面店ではなく地下や上階などにすることで、出店可能な範囲に納めていました。できるだけ大きな駅の、できるだけ駅に近い物件にしようと考えたのです。

ところが、今回のコロナ禍でもっとも苦戦したのは、これらの飲食店。家賃を払い続けるために夜しか営業をしていなかった居酒屋が、利益率の悪いランチに参入する姿も目にしました。

また、通常営業再開後、多くのスタッフがいなければ店が回らないことから、何とかつなぎとめるために腐心したオーナーも多いはずです。それでもやむなく閉店の選択をした店舗も少なくありませんでした。筆者の知人は、12店舗あった店を5店閉め、借金が3倍に増加したところがあります。

リモートワークが定着し、オフィス街の人は減る

では、これからの飲食店立地はどのように考えればよいのでしょうか。
まずはオフィス街から考えていきます。

コロナ禍の大きな変化と言えば、リモートワークが増加したことです。今後、コロナが収束すれば、元通りに通勤しなければならない仕事や会社もあるでしょう。

しかし、一方で、「出社の必要はない」として地方に住むことを認めだした企業があります。また、業種によっては「毎日出社しなくても問題はない」とか、「出先から会社に帰ってこなくてもよい」と考える会社も増えています。そうして、オフィスを縮小する動きがでており、こうなるとオフィス街の日中人口が減り、それに伴って飲食店利用者も減ることになります。

また、近年は酒離れが進んでいました。これは今回のコロナを機に、さらに加速すると考えられます。飲みに行く場合でも、腰を落ち着けて飲む居酒屋ではなく、軽く飲める業態が好まれる傾向にあります。いわゆる「ちょい飲み」と言われるもので、こうなると居酒屋などではなく、ファミレスや牛丼屋、丸亀製麺などのうどん屋などでも十分となります。

こうなると客単価は上がりません。それでも利益を出そうと思えば回転率を上げる必要が生じ、ピーク時間に働くスタッフの数を増やさなければなりません。今は人材の確保が難しい時代。現状を見れば、オフィス街への出店は、ますます魅力がなくなってしまいます。

学生街もますます不利になる

これまでも言われてきたことですが、学生街は一見するとにぎわっているように見えます。ですが、詳しく見ていくと、決してそうとは言えません。実際、フル稼働できる日は1年の3分の2程度。3分の1は十分に稼働しません。

これは夏休みなどの長期休暇があるため。特に大学の夏休みは長く、試験休みも加味すると実質2か月以上の休みがあるところも珍しくありません。春休みも2か月近くありますので、これだけでも4か月。他にも冬休みなどもあります。

さらに今回の新型コロナで、リモート講義が増えました。今の2年生は、これまでの1年半の間、ずっとフルリモートという学生もいます。今後は改善されるでしょうが、講義によってはリモートをライブ配信する例も多くあると聞きます。その結果、大学に足を運ぶ学生が完全に元に戻る日はないかもしれません。

学生は経済的に余裕がない一方、料理にボリュームを求めます。さらに学校内の学食などが強力なライバルであったため、薄利な商売でした。これからはさらに難しい立地となりそうです。

オフィス街と住宅地の顔をもつ立地が最良

では、どのような立地が有利なのでしょうか?

これから最有力だと考えられるのは、駅近にはちょっとしたオフィスがあるものの、少し歩けば住宅街という立地となります。駅の乗降客数としては5万人程度。このような場所は必ずしも駅前にこだわる必要はなく、場所を選べば徒歩5分圏内でも問題はなくなるケースが多くなります。

これらの場所は仕事帰りのサラリーマンのちょい飲み需要も期待できますし、帰宅客の来店も見込めます。また、完全なオフィス街ではないので、週末にもにぎわうことでしょう。

何より、ライバル店が少ないため、無用な割引合戦に巻き込まれることもありません。
仕事帰りのテイクアウト需要も期待できますので、今回のような新型コロナのパンデミックが起きても、生き残る手段が出てきます。
実際、住宅地の飲食店は増加傾向にあり、新たな店舗に入れ替わる例も出ています。新型コロナが収まれば、これらの新陳代謝はさらに本格化すると見ています。

住宅立地にも種類がある

ここで改めて、住宅立地について考えてみたいと思います。

これまでは、飲食店の住宅立地を出店分析するのはファミリーレストランくらいでしたので、「住宅立地」とひとくくりにされることも多いものでした。しかし、詳しく見ていくと、細かく分類することができ、戦略的に出店しなければ勝てなくなっています。

店舗ここで、住宅立地の分類をしてみましょう。
住宅地を分けると、以下のようなものがあります。

【住宅地の種類】
● 新興住宅地
● 旧新興住宅地
● 高級住宅地
● 下町
● 単身者中心
● 団地

新興住宅地の特徴

新興住宅地は、新しく開発された分譲住宅やマンションが多い街で、住んでいる人は子育て世代が中心。ファッショナブルな店舗が好まれ、外食頻度も高い傾向にあります。

店舗としては子連れでも利用しやすいこと。また、共稼ぎ世帯が多いことから、平日夜のテイクアウト需要も見込めます。開発されて間がない場所であれば飲食店はほとんどなく、出店コストも安い特徴もあります。

旧新興住宅地

旧新興住宅地とは、過去に新興住宅地として開発されたエリアです。特に入れ替わりが少ない一戸建てが多い地域や分譲マンションが多いエリアは、月日の経過とともに住民の年齢も上がっていきます。

多くの場合、一定期間は教育費が上がり、子ども世代が独立すると親世代の消費意欲がしぼむと言われています。しかし、食については一定のニーズは見込めます。また一方で、子どもが成熟しても同居を続ける家庭が多く、新しいニーズがうまれやすい面もあります。魅力的な立地かもしれません。

ただし、人口が徐々に減っていくところもありますので、見極めが重要です。

高級住宅地

昔からの高級住宅地もあれば、近年タワーマンションが建つなど、新しい高級住宅地もあります。どちらにしても所得が高い人が集まっていることから、客単価が多少高くてもこだわりの専門店などが適しています。

気を付ける点としては、味はもちろん、店舗の装飾や演出などにもこだわらなければならない点でしょう。ターミナル駅などと比べれば割安で出店できますが、安っぽい店は避けなければなりません。

下町

下町は人のつながりが深く、支えあいの意識の強い街です。若い人から高齢者までさまざまな年齢の人が混在し、お洒落な要素よりも日常的なものが好まれる傾向があります。

商店会など地域の人とのつながりを重視し、関係性を深めれば地域顧客を獲得しやすく、長きにわたって安定します。しかし、逆の場合もあるので注意が必要です。

単身者中心

ワンルームから1DK程度のマンションが多い立地です。若い世代の夫婦のみの世帯と混在しているところが多くなります。

近年のおひとり様ブームもあり、ひとりで外食を楽しむ人が増加。少量のメニュー作りが必須となり、低単価であることも重要です。また、テイクアウトの需要も見込めるでしょう。

ただし、転入・転出者が多く、常に新規客を求め続ける仕掛けが必要となります。

集合団地

団地などが多い立地は、その雰囲気によって年齢層が変わってきます。一般的に団地は、所得が低めの方が多く、子育て世帯、または高齢者が多く住んでいます。

高齢者中心の団地であれば、日常的なお弁当などリーズナブルなメニューのデリバリーを実施すれば利用機会が増加します。子育て世帯が多いなら、店頭でテイクアウト商品を販売するのがよいでしょう。それぞれの顧客ニーズにあわせた対策がカギを握ります。

経営面から見た住宅立地への出店

一般的に住宅立地への出店とターミナル駅への出店を比較すれば、住宅地の方が売り上げは少なくなります。それなら、オーナーが得られる収益も少ないかと言えば、必ずしもそうとは言えません。

経営の基本は固定費を低く抑えること。これはどの業種も同じことです。飲食店の固定費でもっとも高額なのは家賃であり、これを低く抑えることはとても有効となります。

また家賃は売り上げの3日分が適正だと言われており、高ければそれだけ高い売り上げが必要になります。高い売り上げを上げるためにはスタッフが必要になり、経費はどんどんと増えていきます。

人件費も高騰し、食材費も年々上がる中、コンパクトな経営をすることは非常に有効なのです。

筆者の知る飲食店は3店舗経営していますが、2店舗はかなり大きな駅近物件。1店舗は乗降客数3万人程度の駅から歩いて3分ほどの物件です。明らかに住宅地に分類されるところですが、もっとも多くの収益を出しているのが住宅地の店舗。このような例は決して珍しくありません。

住宅立地で成功するコツ

では、住宅立地で成功するコツは何でしょうか?

最大のポイントは、「正しい理解と対応」です。理解の対象はお客、商品、スタッフなどすべてのもの。コンパクトな売り上げだからといって現状を正しく把握しなければ、あっと言う間に傾いてしまいます。

具体的には、客層を予想してオープンしたものの、予想した人と現状が違うと感じれば、雰囲気やメニュー構成をいち早く変えます。

また、予想通りの売れ筋だったとしても、食材が値上げすれば、それに合わせて食材を減らすか代替え品で補うか、あるいはメニューをなくしてしまうかをスピーディに判断します。このスピーディな対応ができることが重要となります。

規模が小さくても感覚的な経営はNO!

ただし、売り上げが低いからと言って、やるべきことが減るわけではありません。また、売り上げが低いと感覚的な経営でも何とかなると思う傾向がありますが、これは決して正しいものではありません。

労務管理や経理作業など、時間をかければ自分でできそうなことでも、肝心の時間がないというのはよくあること。外注できることは外部にやってもらい、経営判断に精力を割くようにします。

また、POSレジは必ず導入し、勘に頼った経営にならないように心がけてください。日ごろの管理が容易になるだけでなく、迷いが出てきた時の決断をサポートしてくれます。

まとめ

コロナを体験したことで、さまざまな感覚が変わりました。これから飲食店を長く続けるポイントは、ターミナル駅で大きな店をやるのではなく、住宅地でコンパクトな経営で着実に利益を上げていく方法だと言えます。なぜなら、売り上げが少なくても、利益が少ないわけではないからです。

また無用な競争に巻き込まれず、固定客を相手に商売ができるので安定しやすいのも特徴。

新しい展開を考えるなら、住宅地への出店を計画してみてはいかがでしょうか?