2月、3月は1年の業績を振り返る時期というところも多いのではないでしょうか。
個人事業主であれば確定申告の時期ですし、法人であれば3月決算の会社が多いと思います。

そこで今回は、飲食店で発生する経費のうち、どの項目で落とせばよいのか、間違えやすいものについて説明します。経営者や経理担当者はもちろん、店舗の責任者である店長にも一読いただきたい内容です。



毎年頭を悩ませる経理処理

ある程度の規模感の法人であれば、経理担当の人が専門知識を持っていて、税理士とのやり取りを任せてしまえばよいかもしれません。しかし実際には、経理担当の人がいても、会計ソフトに入力する程度。とりあえず領収書の入力をしてもらい、後は経営者自らが税理士さんと一緒に税金対策を考えているというところも多いでしょう。

もちろん決算作業は毎年するものですが、これがなかなか曲者。書類作成が煩雑なのに、前回作業から1年ぶりにやるわけで、混乱するのも当たり前だと言えます。

その証拠に、個人事業主がやる確定申告の時期には、全国の税務署や役所などに税理士などが派遣され、相談窓口を設けています。現在はコロナ禍ということもあり事前予約をしなければならず、それほど混雑していませんが、例年であれば、会場に入りきれないところも珍しくありません。これを考えても、いかに大変なことかが分かります。

またそのような状態では、経費を正しい会計項目で落とすことで精一杯となり、節税まで意識が回りません。知らない間に余計に税金を納めている人も少ないわけではないようで、何とかしたいものです。

飲食店で経費になり得るもの

まず飲食店で発生する主な経費を見ていきましょう。

飲食店では、「とりあえず立て替えて払う」というケースが多いですし、「店長が部下に奢る」ということもあります。事業に使うものは基本的に経費として認められて当然であり、正しく請求すべきですが、なかなかされていないのも現状のようです。

まずは飲食店で経費になるものを一覧にしました。

仕入れ料理に使う食材、ドリンクなど商品の提供に必要な原材料
水道光熱費店舗や事務所の水道料金、ガス代、電気代など
地代家賃店舗や事務所の家賃やテナント料
消耗品費おしぼり、割り箸、ストロー、事務用品など
衛生費洗剤や殺虫剤、制服のクリーニング代、おしぼり代、ゴミ処理代など、衛生上必要なもの
外注工賃食品の加工など、外部に依頼するのにかかった費用
給与賃金社員やアルバイトの給与や賞与など
研修費勉強会への参加費、市場調査の飲食費など
荷造運賃商品を送るときの送料や包装資材(段ボール)など
広告宣伝費チラシやショップカードの制作費、Webサイトの作成費、ポータルサイトへの掲載料など
サービス費店内で流す音楽の使用料など
修繕費店舗や厨房機器などの修繕費用
損害保険料店舗や厨房機器など事業用の資産が加入する保険料
減価償却費厨房機器やパソコンなど、高額な事業用資産を購入した場合、その費用を数年に分けて計上する費用(使用可能期間が1年以上で、取得価額が10万円以上の固定資産)
福利厚生費用従業員の健康保険料、雇用保険料、労働災害保険など
接待交際費取引先との交際費など
会議費会議に使った場所代や飲食費など
租税公課事業税、固定資産税、印紙代など店舗に関する税金

「仕入れ」や「給与賃金」など、聞けばイメージが分かるものもあれば、「それって何?」というものもあるでしょう。

また、日常的に使用しているものでも、どれに該当するのかわからないものもあります。例えば、飲食店で使用している洗剤。衛生上必要と認められるという観点であるなら「衛生費」に分類されます。しかし、消耗品として計上しているところや「福利厚生費」とするところもあり、混乱しますよね。

これについては、「絶対にこれに分類しなければならない」というルールがあるわけではなく、事業内容や用途によって柔軟に対応させればよいようです。衛生費は地方公共団体や飲食業などで主に使用されてきた費用科目で、企業として衛生費がないところもあります。こうやって、経理作業がややこしくなるのですね。

スタッフに出す「まかない」は何費になる?

飲食店ではスタッフにまかないを出しているところがあります。昼と夜の営業の間に、みんなで食べるという店舗もあり、交流の場として活用されていることも。

またアルバイトを募集する時、「美味しいまかない付き」としているなど、さまざまな活用方法があるようです。

ところで、このまかないは、何という費用に当たるのでしょうか?
これがなかなか難しいのです。

もし、スタッフの金銭的負担がなく、無料で出しているならば、「給料」として計上するのが正しい方法となります。

給料に計上する以上、源泉徴収額が増えるなど、店舗側の負担はさらに大きくなります。また店舗としては親切心で出していても、「扶養の範囲内で働きたい」と考えているパートさんなどには不評なこともあります。トラブルにならないよう、事前に扱いを明確にし、告知しておく必要があります。

また無料ではなく、スタッフが半額以上を負担し、なおかつ店舗が負担する額が一人当たり一ヶ月3500円以下の場合は、「福利厚生費」となります。この場合は特に、税務署から指摘を受けることがありますので、まかないに使った費用や内訳をしっかりと計上する必要があります

外で支払った飲食代は経費になるか?

他店舗での飲食費はどうなるでしょうか?
会議のこともあれば、ライバル店の市場調査の場合もあるでしょう。

まず、市場調査の場合、「研修費」として計上します。市場調査を研修費というのは、何だかおもしろいですね。

研修費ですから、領収書を出してそれで終わりとはいきません。なぜなら、プライベートな飲食費と混同することもありえるからです。

では、どうすればよいのかと言えば、どのような調査を行ったのかをレポートやメモ書きで一緒に提出させるのです。こうなると、少し敷居が高くなり、悪用はされにくくなります。

次に、関連会社の人を飲食に連れて行ったり、懇親会などに誘われた場合はどうすればよいでしょうか。この場合は、「接待交際費」となります。

また、打ち合わせのためにレンタルスペースを借りたり、そこで食事をした場合は「会議費」で落とします。

社外ではなく、主に社内のスタッフに対し歓迎会や送別会などをした場合は、「福利厚生費」となります。

同じ飲食に関わるものでも、何の目的で使ったのかによって経費の項目が変わるのは非常にややこしいところです。もちろんプライベートなものと混同してはなりませんし、誰が見ても一目瞭然でわからなければなりません。

どの場合も、何の目的で行ったのか、また誰と行ったのかがわかるように記録しておくことが重要です。当然ながら領収書の添付は必須。会社によっては、飲食の内容を把握するために、領収書ではなくレシートを添付することを基本としているところもあります。

個人事業主にはないのに、法人にはある接待交際費の上限

接待交際費や会議費、福利厚生費は個人事業主と法人で取り扱いが変わります。

接待交際費について、個人事業主では上限金額は決まってませんが、法人の場合は上限が決まっています。

接待交際費とは、業務上の得意先との飲食に関わるもの。主には以下のものが該当します。

● 得意先との外食代
● 得意先へ出す弁当やお茶代
● 得意先と開催するパーティ代
● 得意先主催のイベント参加費
● 接待後のタクシー送迎代
● 得意先へのお歳暮やお中元、あいさつの品代
● 得意先との旅行や交遊代など

もちろん、業務に関わるものである必要があります。たとえ得意先との付き合いでも、仕事に関係なく、プライベートなものと判断されれば経費としては認められません。

そして法人の場合、資本金の額が1億円以下であれば、どちらかを選択しなければなりません。
●  定額控除限度額(年間800万円)以下の接待交際費の全額
●  接待交際費のなかの接待飲食費の金額×50%の金額

「うちの会社は儲かってるから、接待交際費はじゃんじゃん使う」とは行きません。

会社では経費として認める金額に上限を決めている会社があります。その理由の多くは、経費として国に認められる金額に上限があるからであり、年度末になって接待交際費がオーバーすることがないよう、日頃から細かなルールを設けているわけです。

なお、総支出額を参加者の人数で割った金額が5000円以下の飲食代は、接待交際費ではなく、会議費として処理することもできます(計上できないものもあります)。

個人事業主は1回あたりの会計金額や総額に上限はありません。当然ですが、夫婦や親子で飲食店をやっていれば、その関係のまま食事に行くこともあります。この場合、単なる友人や家族との旅行や食事なのか、事業に関わることなのかはレシート1枚ではわかりません。

この辺りが混同してくると税務署からの指摘があり、修正申告をさせられることもありますので、必要な事は明確にメモなどしておく必要があります

なお、法人・個人に関わらず、以下のことを残しておくとよいでしょう。

● 飲食をした日にち
● 同席した人(個人名)や会社名、関係性
● 懇親会やパーティーに参加した人の数
● その費用の用途

同じ場所を利用しても認められないことのある会議費

会議費とは、会議に使う場所代とそこで出す飲食代が主なものになります。具体的には以下が該当します。

● 貸会議室や個室などの会場費
● 会議で出す弁当代やドリンク代
● 会議で使う機器類(カメラやプロジェクターなど)のレンタル代
● 会議のために飲食店を利用した場合の飲食代
● 接待交際費のうち、1人あたり5,000円以下の飲食代

会議費については個人事業主はもちろん、法人についても上限が設けられていません(飲食代は5000円以下)

当然ですが、これもプライベートな利用と区別しなければなりません。例えば、店舗スタッフのうち、「気のあう仲間とカラオケに行って楽しんだ」というのは会議費にはなりません。

業務とは直接関係なくても従業員のためであれば計上できる福利厚生費

福利厚生費は大きく2つに分類できます。

一つは法定福利厚生。いわゆる社会保険に分類されるもので、雇用保険、健康保険、介護保険、労災保険、厚生年金保険などです。

もう一つは法定外福利厚生。これは企業独自に設けられるもので、交通費や住宅手当から、スポーツクラブの割引利用券、スタッフのまかないなどが含まれます。

法定福利厚生は、無謀な金額になることはまずありませんが、法定外福利厚生は自社裁量になる分、危うい設定も可能となります。ここで基本となるのは、全従業員が利用可能であり、常識の範囲内であること。

また、福利厚生費は従業員のためのものなので、基本的に家族のみで経営している個人事業主には認められていません。福利厚生はスタッフのために計上するものであり、スタッフとして働いていても家族の満足度アップはこれには当たらないからです。

ただし、個人事業主でもスタッフを雇っている場合は計上できます。

福利厚生費はその特性上、明確な定義があるわけではありません。従業員に対し費用を使ったにも関わらず、経費として認められないということがないよう、判断に困ったら税理士や税務署などに事前に相談することが正しくなります。

意外と見落とされている特別控除

特別控除については、意外と見落としている人が多くいます。例えば飲食店経営をしていて、コロナ発生前までは赤字が出ていなかったところが、コロナ禍で初めて赤字を計上してしまった場合、今年黒字が出れば相殺することができます。

また、去年も今年も赤字が出ていたという場合は、来年または再来年に相殺することができます。

経理作業に同じソフトを活用していたり、同じ税理士に担当してもらったりしていれば見落とされることがないのですが、実際には様々なところで見落とされているそうです。本来、払わなくてもいい税金を納めることになるので、ここはしっかりと押さえておいてください

例えば、確定申告の場合、赤字になった年があっても、その分は翌年から3年間に渡って繰り越すことができます。

例えば、以下のような業績だったとします。

● 1年目は200万円の赤字
● 2年目は100万円の赤字
● 3年目は100万円の黒字
● 4年目は150万円黒字
● 5年目は300万円黒字

この場合、1年目の200万円の赤字は、3年目の黒字100万円と、4年目の黒字100万円で相殺されます。そして2年目の100万円の赤字は、4年目の残り50万円と、残りの50万円は5年目に相殺できます。

こうなると、赤字だった1年目と2年目はもちろん、黒字となった3年目、4年目も所得税を支払う必要はなく、5年目も減額させることができます。



申告をしないとどうなるか?

税申告をしないと、当然ながら罰則の対象となります。

個人事業主が行う確定申告を例にすれば、申告をしない場合、払うべき税額に加えて「無申告加算税」が加算されます。

無申告加算税は、税額が50万円以下なら15%、50万円を超える場合は20%となります。

ただし、期限に1日でも遅れると無申告加算税が必要になるというものではなく、期限が過ぎ、税務署の調査が入る前に自主的に申告すれば対象となりません。また申告をする意思があると認められた場合は、無申告加算税が軽減されることもあります。

何かの事情があって申告できなかったという場合は、一刻も早く申告をするか、税務署に相談に行くようにするべきです。

まとめ

飲食店は経費の多くを店舗で使うため、複数店舗を経営している場合、実情が把握できず、計上ミスや計上もれが多発することになります。

また、店長に裁量を持たせると、過剰に経費を使ったり、無用に締め付けが多いとポケットマネーを使うことになり、”自腹を使わさせられた”と悪評の原因になったりします。

飲食店では店舗で働くスタッフにも通常業務のなかで基本的な経理の知識、特に費用項目の知識を共有する機会を設けることが賢明です。
POSレジによる入出金の管理に加え、会議費や接待交際費、研修費、福利厚生費などは特に理解をすすめ、毎年必ず行う手続きに積極的な姿勢で望みましょう。