キャッシュレス・ポイント還元事業の後押しもあり、普及が広まるキャッシュレス決済。キャッシュレス化により、売上増加や生産性向上などへ繋がる店舗も多いのではないかと思います。一方で、2020年6月末での還元事業終了後のキャッシュレス決済の行方や、キャッシュレス多様化による決済の複雑化などの懸念もあります。これらの懸念を解消するため、現在のキャッシュレス決済の広まり具合や、キャッシュレス多様化への取り組みについて解説していきます。

 

キャッシュレス決済は今後も普及していくのか?

クレジットカード決済サービス大手のVISAによる調査では、キャッシュレス決済利用者を対象に「キャッシュレス決済を使う理由は」、「ポイント還元事業後にキャッシュレス決済の利用頻度はどう変わると思うか?」と聞いたところ、「ポイントがたくさん貯まる」、「素早く会計したい」という声とともに、ほとんどの年齢層で利用頻度が「増えると思う」と考えているという結果が出ています。では実際にキャッシュレス決済は、どれくらい増えているのか注目していきます。また、新型コロナウィルスの影響に伴う、キャッシュレス決済への意識の変化についても考えていきます。

キャッシュレス決済はどれくらい増えたのか

経済産業省によると、キャッシュレス・ポイント還元事業に伴う加盟店登録数は、約114万店に到達したと発表しました。この内、中小・小規模事業者の登録数は、約102万店(約90%)。コンビニ以外のフランチャイズチェーンの登録数は、約5.2万店(約5%)。コンビニの登録数は、約5.5万店(約5%)と発表しています。事業開始時点と比べると、約63万店増加していることがわかります。
※ 2020年5月21日時点の発表になります。

新型コロナに伴う、キャッシュレス化について

新型コロナウィルスの影響に伴い、不特定多数の方が触れる紙幣に対して、警戒感が高まっています。したがって、さらにキャッシュレス化が進むのではないかという見方もあります。
実際に米国では、新型コロナウィルスの対応策として、アジアから戻ってきたドル紙幣を流通させる前に、7〜10日間の隔離、検疫を実施しました。各国でも、紙幣の消毒が行われています。日本でも、レジ担当者に対してゴム手袋の着用を義務付ける店舗も出てきていることから、紙幣に対する警戒感が高まっていることがわかります。
これに伴い、新型コロナウィルスの流行終息後も、現金でのやりとりを控える店舗や顧客が増えることは間違いないのではないでしょうか。



キャッシュレス多様化に対する取り組みとは?

キャッシュレス・ポイント還元に伴い、新規にキャッシュレス決済を導入した企業では、クレジットカードだけでなく電子マネーの支払いにも対応したマルチ決済端末の導入が増えています。また、国の取り組みとして経済産業省が主導している、現在はPaypay、LINE PayなどQRコード決済サービスそれぞれが店舗に掲示しているQRコードを一つにまとめるための統一規格「JPQR」の全国展開がスタートしました。今回は「マルチ決済端末」と「JPQR」について注目していきます。

 

マルチ決済端末とは

マルチ決済端末とは、1台の端末で様々なキャッシュレス決済に対応する決済端末システムのことです。つまり、1台の端末で、クレジットカード・電子マネー・QRコード決済などの様々な支払い方法に対応することが可能です。

 

マルチ決済端末のメリット

マルチ決済端末のメリットは、前述の通り、1台の端末で様々なキャッシュレス決済に対応できることから、決済に係る手続きが簡素化するといえます。海外のクレジットカードやQRコード決済にも対応しているものが多いためキャッシュレス決済の利用率が高い外国人観光客など、より多くのお客様を囲い込むことができます。またPOSシステムとの連携により、店舗運営のさらなる効率化や生産性向上へも繋げることが可能です。

マルチ決済端末の例

マルチ決済端末の例として以下紹介いたします。

【 楽天Pay 】

楽天グループの楽天ペイメント株式会社による、マルチ決済端末
主要なクレジットカード及びデビットカードと電子マネーブランド、いくつかのQRコード(楽天Pay、auPAY、Alipay、WeChat Pay)などの決済が可能です。
クレジットカード決済では、主要6ブランドに対応。また、楽天ポイント支払いにも対応しています。入金管理面では、楽天ペイの指定銀行を楽天銀行にすると、365日いつでも決済の翌日に自動で入金が可能です。

【 PAYGATE Station 】

大和ハウスグループの株式会社ロイヤルゲートによる、マルチ決済端末。
主要なクレジットカード及びデビットカードと電子マネーブランド、QRコード、共通ポイントなど国内で利用されている多くのキャッシュレス決済に対応。磁気クレジットカード、接触ICクレジットカード、タッチ決済(NFC)、Felica系電子マネー、読取りQRコード決済など多くの決済方法を可能にしています。

どちらのマルチ決済端末もPOSレジシステムと連携することで売上の管理も容易になり、入金管理がまとめられることがメリットになります。

 

統一QRコード「JPQR」とは

統一QRコード「JPQR」は、一般社団法人キャッシュレス推進協議会により策定されたQRコード決済の統一規格です。つまり、複数社ある決済QRコードを1枚のQRコードに統一化することで、1枚のQRコード(JPQR)で複数社の決済が可能になるのです。
コード決済で用いられるQRコード仕様は、各コード決済事業者によって異なることから、店舗側は複数のQRコードを設置しなければなりませんでした。JPQRを活用することで、このような店舗側の負担を軽減するメリットがあります。
統一QRコード「JPQR」
全国を対象としたJPQRのお申し込み受付は、Web受付システム「PLUG」で2020年6月22日より行われる予定です。PLUG経由での申込みにより、複数の事業者への登録を一括で行なえるようになるということです。詳細は、総務省の統一QR「JPQR」普及事業公式HPにてご確認ください。
総務省公式HP:統一QR「JPQR」普及事業
https://jpqr-start.jp/

 

まとめ

現在、すでに113万の店舗にてキャッシュレス決済が導入されていることや、現金に対しての意識の変化により、事業終了後もキャッシュレス決済は普及していくのではないでしょうか。さらに国や企業により、キャッシュレス多様化に伴う懸念を、解消しようと取り組んでいることもわかりました。決済手数料の負担等の懸念はまだ残りますが、店舗側の利便性は高まっているといえます。キャッシュレス化に取り組んでいない方は、この機会に是非、導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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参考URL:
MMDLabo株式会社とビザ・ワールドワイド・ジャパン株式会社との共同調査 https://www.visa.co.jp/about-visa/newsroom/press-releases/nr-jp-200205.html