料理を載せたドローンが、注文者の自宅まで飛んでゆく。そんなデリバリーが、アメリカの飲食業界で行われている。
フライトレックスなどの企業による取り組みに加え、大手デリバリーサービスとの提携も進んできた。ドローンデリバリーは、飲食店や利用者にどのような変化をもたらすのだろうか。
初期の導入事例を振り返りながら、最近の動きと日本での可能性を紹介する。
フライトレックスというスタートアップ企業

フライトレックス(Flytrex)は、イスラエル・テルアビブに拠点を置く2013年設立のスタートアップ企業だ。同社は飲食業者と小売業者に対し、ドローンを使ったデリバリーサービスを提供している。2017年にアイスランドの首都レイキャビクで飲食店とスーパーマーケットのドローンデリバリーサービスを開始し、2020年にアメリカ連邦航空局(FAA)の飛行許可を取得、ノースカロライナ州の三つの町でドローンデリバリーサービスを開始している。
フライトレックスは、料理などを運ぶ自律飛行のドローンを使ってデリバリーを行っている。ただし、運べる重さや飛行距離は機体によって異なり、配達できる地域にも条件がある。
飲食店での活用を考える際は、料理の重さや容器の大きさ、届け先までの距離などが、そのサービスの条件に合うかを確認する必要がある。
使い方は簡単、専用アプリで注文

フライトレックスのドローンデリバリーの使い方は簡単だ。専用アプリをスマートフォンにインストールしてドローンの配達場所を登録する。配達場所は通常、戸建て住宅のバックヤードを登録する。そして、アプリを起動すると画面に注文できる料理や品物が表示されるので、好きなものをタップしてオーダーするだけだ。アプリのインターフェースは、ドアダッシュやUber Eatsなどのデリバリーサービスのものとほとんど変わらない。
注文を受け付けると飲食店に情報が通知され、飲食店が料理して料理を容器に入れて専用袋に袋詰めする。ドローンが着陸スペースに到着したら専用袋をドローンのコンテナに入れてハッチを閉める。するとドローンが自動操縦で飛行を開始し、注文者の自宅へデリバリーする。登録された配達場所の上空に到着したら、着陸はせずに高度18フィート(約5.48メートル)の高さでホバリングしてワイヤーで料理が入った専用袋をゆっくりと降ろし、着地したらワイヤーから専用袋を分離する。終わったらそのまま基地へ戻ってゆく。
なお、注文受付からデリバリーまでのドローンの一連の動きはアプリでリアルタイムに確認できる。また注文者はアプリでドローンの到着予定時間なども知ることも可能だ。
ここで紹介したのは、初期のサービスで使われていた注文・受け取り方法だ。注文できるアプリや配送先の条件、荷物の受け取り方は、地域やサービスによって異なる。利用する際は、その時点で提供されているサービスの案内を確認したい。
大手レストランチェーンもドローンデリバリーサービスを開始
なお、フライトレックスは、大手メキシカンレストランチェーンのエル・ポヨ・ロコと共同でドローンデリバリーサービスのパイロットプログラムをロサンゼルス近郊の街コスタメサで行っている。人気レストランチェーンがドローンデリバリーサービスを開始したというニュースは地元の大きな話題となり、エル・ポヨ・ロコのドローンデリバリーサービスのランディングページにはユーザー登録を求める人のアクセスが殺到して10万人を超える登録申し込みがあったという。
エル・ポヨ・ロコのデジタル担当副社長のアンディ・レブハン氏は、「ドローンが最初のデリバリーを行ったというニュースは非常に多くの人の関心を集め、我々のソーシャルメディアのチャンネルやYouTube動画には100万を超えるアクセスが集まりました」と、ドローンデリバリーサービスの人気の高さを説明している。
大手デリバリーサービスとの提携も進む
その後、大手デリバリーサービスとの提携も発表されている。Uberは2025年9月、フライトレックスとの提携と同社への投資を発表した。発表時には、アメリカの一部地域でUber Eatsを通じたドローン配送を試験的に始める計画が示されていた。さらに2026年8月には、Uberとドローン配送企業Ziplineの提携も発表された。
こちらも、同年中に最初のサービス展開を始める計画として紹介されている。ドローンは、人による配達に代わるだけでなく、既存のデリバリーサービスと組み合わせて使う方法も模索されているようだ。
ドローンデリバリーのメリットとは?
ドローンデリバリーが人々の関心を集めることはわかったが、そもそも飲食店がドローンデリバリーを行うメリットは何だろうか。

まず考えられるのは、配達時間を短くできる可能性だ。空を飛ぶドローンは、道路の渋滞を避けて料理を届けられる。ただし、注文を受けてから到着するまでには、調理や積み込みにも時間がかかる。飛行時間の短さだけで、注文から配達までの速さを判断することはできない。
次に期待されるのは、配送にかかる作業や費用の軽減だ。自律飛行によって配達作業の一部を担える一方、機体の保守や運航管理、積み込みなどの作業は必要になる。機体の購入価格だけでなく、何件の注文を運べるか、継続して運用するためにいくらかかるかも見ておきたい。
また、配達員の確保が難しい地域では、配送手段の一つになる可能性もある。ただし、人口が少ない地域なら必ず採算が合うというわけではない。注文数や配送距離、受け取り場所などによって、使いやすさも変わるだろう。
飲食店にとっては、料理をどのような容器に入れ、どこで積み込み、どう受け取ってもらうかも大切な点だ。配達の速さだけでなく、料理の状態を保ちながら届けられるかという視点でも考えたい。
日本での可能性は?
日本でも、飲食物をドローンで届ける取り組みが行われてきた。初期の例として、2022年に行われた実証実験を見てみよう。
報道によると、2022年9月に新潟市信濃川万代テラスエリアで、株式会社出前館などによるドローンのフードデリバリーのテストマーケティングが行われたという。配送の担い手が不足している地元において、特に飲食店のデリバリー需要が見込まれているという。
また、神戸市でも、2022年10月に同様のテストマーケティングが行われたという。なお、神戸市の取り組みについては、出前館の発表資料に、2022年10月15日の飛行時に機体の不具合が生じ、実証実験を一時中止したことが追記されている。
制度面でも動きがあった。日本では2022年12月、ドローンの機体認証や操縦者の技能証明などの制度が始まり、一定の条件のもとで「レベル4飛行」が可能になった。これは、有人地帯で補助者を置かず、操縦者の目が直接届かない範囲を飛行するものだ。
ただし、飲食店がドローンを用意すれば、すぐにどこへでも配達できるというわけではない。飛行の方法に応じた手続きや安全管理に加え、配送先で荷物を受け取れる場所も必要になる。
ドローンデリバリーが飲食店の身近な選択肢になるかどうかは、こうした条件と、費用や使いやすさによっても変わってくるだろう。配達の担い手が不足している地域などで、どのような形で活用されていくのか。日本での今後の取り組みにも注目したい。
参考:FAQ
Q1.ドローンデリバリーとは何ですか?
料理や商品をドローンで届ける配送方法だ。注文された商品を機体に積み込み、指定された場所へ運ぶ。注文方法や荷物の受け取り方、配送できる地域はサービスによって異なる。
Q2.飲食店がドローンデリバリーを使うメリットは何ですか?
道路の渋滞を避けた配送や、配達作業の一部を自動化できることが挙げられる。配達の担い手が不足している地域での活用も期待される。ただし、実際の効果は配送距離や注文数、運航条件などによって変わる。
Q3.ドローンを使えば、配送コストは安くなりますか?
配送にかかる費用を抑えられる可能性はあるが、必ず安くなるとは限らない。機体の保守や運航管理、商品の積み込みなどにも費用や作業がかかる。機体の価格だけでなく、継続して運用するための費用と配送件数を合わせて考える必要がある。
Q4.日本でもドローンで料理を配達できますか?
日本でも、出前館などによる飲食物の配送実証が行われている。また、2022年12月には、一定の条件のもとで有人地帯の補助者なし目視外飛行を行う「レベル4飛行」が可能になった。ただし、飲食店が自由に配達できるという意味ではなく、飛行の方法に応じた手続きや安全管理が必要だ。
Q5.飲食店が利用を検討する際は、何を確認すればよいですか?
まずは配送事業者の対応地域と利用条件を確認したい。料理や容器の重さ・大きさ、配送距離、積み込み場所、受け取り場所も確認する。料金や配送できない場合の対応に加え、料理の状態を保ちながら届けられるかも大切な点だ。
出典・参考データ
・Flytrex公式サイト
https://www.flytrex.com/
・dot.LA「El Pollo Loco Tests ‘Air Loco’ Drone Delivery Despite Concerns」(エル・ポヨ・ロコの初期の取り組みに関する報道)
https://dot.la/el-pollo-loco-drone-delivery-2655918248.html
・ロボスタ「出前館で注文された各店舗の飲食物をドローンが配送 新潟市信濃川で10日間のテストマーケティングを実施」(2022年9月9日)
https://robotstart.info/article/2022/09/09/307747.html
・出前館「『出前館』、ドローンデリバリー、神戸学院大学生6,000人や一般客を対象に開始」(2022年10月13日発表、同月17日に一時中止の追記/PDF)
https://corporate.demae-can.com/files/19b8bac9c21ca4f9a672416bf6dd17efae1847c7.pdf
・Uber「Uber Partners with Flytrex to Launch Drone Delivery」(2025年9月18日発表)
https://investor.uber.com/news-events/news/press-release-details/2025/Uber-Partners-with-Flytrex-to-Launch-Drone-Delivery/
・Uber「Uber and Zipline Partner to Bring Drone Delivery to Millions of Americans」(2026年8月17日発表)
https://investor.uber.com/news-events/news/press-release-details/2026/Uber-and-Zipline-Partner-to-Bring-Drone-Delivery-to-Millions-of-Americans/default.aspx
・国土交通省「無人航空機レベル4飛行ポータルサイト」
https://www.mlit.go.jp/koku/level4/
大学卒業後渡米し、ロサンゼルスで飲食ビジネスを立ち上げる。帰国後複数の企業の起業や経営に携わり、2001年に経営コンサルタントとして独立。新規事業立上げ、マーケティング、アメリカ市場進出のコンサルティングを行っている。米国のベストセラー『インバウンド マーケティング』(すばる舎リンケージ)の翻訳者。明治学院大学経済学部経営学科博士課程修了、経営学修士。
