飲食店でゴキブリやネズミが発生すると、食材の汚染や食品ロス、機器の故障だけでなく、お客によるSNS投稿や店舗への信用低下につながるおそれがあります。
だからこそ、対策で重要なのは、見つけた個体をその都度駆除することだけではありません。食べかすや水分を残さない、侵入経路をふさぐ、発生状況を定期的に確認するといった予防を継続することが基本です。
2021年6月からは、原則としてすべての食品等事業者にHACCPに沿った衛生管理が求められており、飲食店でも日々の衛生管理と記録が必要です。2026年6月には、厚生労働省が小規模な一般飲食店向けの「HACCP衛生管理記録アプリ」も公開しています。
本記事では、飲食店でゴキブリやネズミが発生しやすい理由、考えられる被害、日常的にできる予防策、専門業者へ相談する目安、HACCPに沿った衛生管理まで解説します。
飲食店でゴキブリ・ネズミ対策が重要な理由
飲食店では、お客が「衛生的な環境で安全な料理が提供される」ことを前提に来店します。
そのため、店内でゴキブリやネズミを見かけるだけでも、店舗への印象を大きく損ねる可能性があります。特に現在は、店内で撮影された写真や動画がSNSに投稿され、短時間で広く拡散されることもあります。実際に健康被害が発生していなくても、衛生管理に対する不安が広がれば、店舗の信用低下につながりかねません。
一方、ゴキブリやネズミは飲食店にとって珍しい問題ではありません。
東京都の保健所でも、ゴキブリやネズミなどの衛生害虫・衛生動物について、生態や防除方法に関する相談を受け付けています。
大切なのは、「見かけたら対策する」のではなく、「侵入・繁殖させない状態を日常的に維持する」という考え方です。
飲食店にゴキブリやネズミが発生しやすい理由
飲食店には、ゴキブリやネズミが生息しやすい条件がそろっています。
代表的なのが、
- 食品や食べかすがある
- 水を使用する場所が多い
- 厨房機器など暖かい場所がある
- 冷蔵庫や棚の裏など暗く狭い場所がある
- 配管や排水設備など侵入経路になり得る場所が多い
といった環境です。
特に厨房では、床に落ちた食材や油汚れ、排水口周辺の汚れなどがエサになる可能性があります。
また、店舗単独で営業している建物だけでなく、複数の飲食店が入るビルの場合は、壁の内部や天井裏、配管周辺などを通って別の区画から侵入する可能性もあります。
そのため、自店だけを清掃していれば絶対に発生しないとは言い切れません。
厚生労働省の衛生管理基準でも、ねずみや昆虫について、繁殖場所を排除するとともに、窓、ドア、吸排気口、排水溝などから施設内へ侵入しないよう措置を講じることが求められています。
ゴキブリ・ネズミによって起こる4つの被害
食品汚染・衛生上のリスク
最も注意したいのが、食品や調理環境への汚染です。東京都では、ゴキブリなどを、感染症を媒介することが知られている衛生害虫として扱い、生態や防除方法について相談を受け付けています。
ゴキブリやネズミが食品や調理器具、作業台などに触れれば、衛生上のリスクが高まります。食材を直接かじられた場合だけでなく、フンや尿、死骸などが確認された場合にも、その周辺の食品や設備を含めて適切に対応する必要があります。
食材廃棄・食品ロス
ネズミに食品の袋をかじられたり、ゴキブリが食品に侵入したりした場合、その商品を使用することはできません。特に倉庫で大量の食材を保管している店舗では、一部の商品だけでなく、周辺の商品まで廃棄が必要になることもあります。
廃棄する食材そのものの損失だけでなく、欠品によって注文を受けられなくなれば、販売機会の損失にもつながります。害虫・ネズミ対策は、衛生管理だけでなく食品ロスや原価管理の面でも重要です。
配線や機器の破損
ネズミはものをかじる習性があるため、電気配線や通信ケーブルなどを傷つける場合があります。厨房機器や冷蔵設備、POSレジ周辺の配線が損傷すれば、営業そのものに影響する可能性があります。
ゴキブリなどの昆虫も、電気機器の内部に入り込むことで故障の原因になるケースがあります。ただし、害虫対策のために機器を買い替えるというより、機器周辺も含めた清掃と侵入防止を徹底することが基本です。
SNS投稿・店舗の信用低下
店内でゴキブリやネズミを見かけたお客が、写真や動画をSNSへ投稿する可能性もあります。店舗側から見れば「そのとき偶然出ただけ」だったとしても、投稿を見た人には日常的に発生している店舗のように受け取られることもあります。
また、保健所へ相談や通報が行われ、衛生状態について確認を受ける可能性もあります。そのため、目に見える被害が出てから対応するのではなく、普段から発生しにくい環境をつくることが重要です。
飲食店でできるゴキブリ対策
ゴキブリ対策では、店内で見つけた個体を駆除するだけでは十分ではありません。
ゴキブリは、厨房機器の隙間や棚の裏、配管周辺など、目につきにくい場所に潜んでいる場合があります。そのため、まずは「ゴキブリが住みやすい環境をつくらない」ことから始めます。
具体的には、
- 床や調理台に食べかすを残さない
- 油汚れを放置しない
- シンク周辺に水分を残さない
- 排水口やグリストラップを清掃する
- 段ボールや廃棄物を長期間店内に置かない
- 配管やドア周辺の隙間を確認する
といった対策が基本です。
特に段ボールは、そのまま倉庫や厨房に長期間保管するよりも、納品後できるだけ早く中身を出し、不要になったものを店舗内にため込まない方がよいでしょう。
また、店内で薬剤を使用する場合は、食品や調理器具に薬剤がかからないよう注意し、製品に記載された使用方法を守る必要があります。
発生が繰り返されている場合には、自力で薬剤を使い続けるよりも、発生場所や侵入経路を調査できる専門業者に相談した方がよいでしょう。
飲食店でできるネズミ対策
ネズミ対策で重要なのは、捕獲だけでなく侵入経路を特定してふさぐことです。
例えば、
- ドアの下や周辺
- 配管が壁を通る部分
- 排水設備
- 換気口
- 天井裏
- 壁や床の隙間
などが侵入経路になる場合があります。
穴や隙間が見つかった場合は、ガムテープなどによる一時的な補修ではなく、金属製の網や補修材など、簡単にかじられにくい方法で閉鎖することが重要です。
また、食材は床へ直接置かず、フタのできる容器などで管理すると被害を抑えやすくなります。ネズミの生息場所や侵入経路は店舗ごとに異なるため、捕獲器や薬剤だけで完全に解決できるとは限りません。
東京都の保健所でもネズミやゴキブリの防除方法について相談を受け付けていますが、実際の駆除作業は行わず、必要に応じて専門団体を案内しています。
発生を防ぐために日常的に確認したい5つのポイント
ゴキブリやネズミ対策は、発生したときだけ行うのではなく、日々の店舗運営の中に組み込むことが重要です。
1. 食品を適切に保管する
食材は開封したまま放置せず、必要に応じてフタのある容器に移します。
床へ直接置かず、棚などを使って保管すると、清掃や害虫の痕跡確認もしやすくなります。
2. 食べかすや油を残さない
調理台の上だけでなく、厨房機器の下や壁際、棚の裏なども確認します。
少量の食べかすや油汚れでも、害虫のエサになる可能性があります。
3. 排水口・グリストラップを清掃する
水分や食品残渣がたまりやすい排水設備は、ゴキブリなどが発生しやすい場所のひとつです。
店舗で決めた頻度で清掃し、汚れをためないようにします。
4. 隙間や侵入口を確認する
窓、ドア、吸排気口、配管周辺、排水設備などを定期的に確認します。
厚生労働省の衛生管理基準でも、これらの場所からねずみや昆虫が侵入しないよう措置を講じることが求められています。
5. 段ボールや廃棄物をためない
納品された段ボールやゴミを長時間店舗内に置いたままにしないことも重要です。
「閉店後にまとめて片付ける」だけでなく、営業中も不要になったものをできるだけ整理する習慣をつくっておきましょう。
専門業者に相談した方がよいケース
清掃や侵入防止をしていても、何度もゴキブリを見かける、ネズミのフンやかじり跡が繰り返し見つかるといった場合は、店舗側だけでの対応が難しくなっている可能性があります。
天井裏や壁の中から物音がする、どこから入ってきているのか分からないといったケースも同様です。特に、複数の飲食店が入っている建物では、自店だけ対策しても別の区画や共用部から入り込むことがあります。こうした場合は、早めに専門業者へ相談した方がよいでしょう。
業者を選ぶときは、薬剤を散布するだけでなく、店内のどこで発生しているのか、どこから侵入しているのかまで確認してくれるかがポイントです。必要に応じて防除を行い、その後の点検まで対応してもらえると、再発防止にもつながります。
東京都の保健所でも、実際の防除や駆除作業については、必要に応じて専門のペストコントロール団体を案内しています。
HACCPに沿った衛生管理として記録を残す
ゴキブリやネズミ対策は、単発の駆除ではなく、店舗の衛生管理の一部として考える必要があります。
2021年6月1日から、原則としてすべての食品等事業者にHACCPに沿った衛生管理への取り組みが求められています。
小規模な一般飲食店については、HACCPの考え方を取り入れた衛生管理として、
- 衛生管理計画をつくる
- 計画に基づいて実施する
- 実施内容を記録する
- 定期的に振り返る
といった運用を行います。
害虫やネズミについても、「いつ確認したか」「どこで痕跡があったか」「どのような対策をしたか」を記録しておけば、繰り返し発生する場所や時期の傾向を把握しやすくなります。
さらに2026年6月5日、厚生労働省は小規模な一般飲食店向けに「HACCP衛生管理記録アプリ」を公開しました。このアプリでは、スマートフォンやタブレットを使って、衛生管理計画、日々の実施記録、毎月の振り返りを行うことができます。
紙での記録が負担になっている店舗であれば、こうしたツールを利用するのもひとつの方法です。
飲食店のゴキブリ・ネズミ対策は「発生させない仕組み」が重要
ゴキブリやネズミの対策は、見つけたときだけ慌てて駆除すれば済むものではありません。むしろ、普段から「入りにくい、住みつきにくい環境」をつくっておくことの方が大切です。
厨房には食材や水分があり、配管や機器の隙間など、どうしても侵入されやすい場所があります。だからこそ、日々の清掃や食材管理、隙間の確認といった地道な対策が効いてきます。
また、HACCPに沿った衛生管理を考えるうえでも、害虫やネズミへの対応は切り離せません。いつ、どこで確認したのか、どのような対策をしたのかを記録しておけば、発生傾向にも気づきやすくなります。
それでも繰り返し発生する場合や、天井裏・壁の中など自分たちでは確認しにくい場所に原因がありそうな場合は、無理に自力で解決しようとせず、専門業者に相談した方がよいでしょう。
お客から見えない厨房の状態も、店舗への信頼をつくる大切な要素です。大きなトラブルになる前に、普段の衛生管理の中で少しずつ対策を積み重ねていくことが、結果的にいちばん確実な予防になります。
店舗運営全体を見直すなら、日々のデータ活用も
衛生管理は、問題が起きたときだけ対応するのではなく、日々の点検や記録を続けることが大切です。
これは店舗運営全体にも同じことが言えます。売上や商品ごとの販売状況、時間帯ごとの動きを継続して確認しておけば、店舗の変化や課題にも気づきやすくなります。飲食店向けPOSレジ「poscube」では、日次・月次の売上集計に加えて、商品別・カテゴリー別・時間帯別などの売上を確認できます。
衛生面だけでなく、店舗全体の運営を見直したい場合は、こうしたデータを日々の改善に活かせる環境を整えておくのも一つの方法です。
飲食店向けPOSレジ「poscube」なら、売上や商品別・時間帯別の販売状況を確認しながら、店舗運営の改善に活用できます。
参考:FAQ
Q. 飲食店でゴキブリが発生する原因は何ですか?
A. 食べかすや油汚れ、水分、暖かく暗い場所などがあると、ゴキブリが生息しやすくなります。また、ドアや配管、排水口、吸排気口などから侵入することもあるため、清掃だけでなく侵入経路への対策も重要です。
Q. 飲食店でゴキブリを見つけたらどうすればいいですか?
A. 見つけた個体を処理するだけでなく、周辺の清掃、食品や調理器具への影響確認、発生場所や侵入経路の確認を行いましょう。繰り返し発生する場合は、専門業者への相談も検討した方がよいでしょう。
Q. 飲食店のネズミ対策で重要なことは何ですか?
A. 食品を適切に保管すること、食べかすを残さないことに加え、ドアや配管、壁、天井などの侵入経路を確認してふさぐことが重要です。捕獲だけでなく、再侵入を防ぐ対策まで行う必要があります。
Q. ゴキブリやネズミ対策はHACCPにも関係しますか?
A. はい。2021年6月から原則すべての食品等事業者にHACCPに沿った衛生管理が求められています。害虫・ネズミ対策も一般衛生管理の一部として、発生防止や確認、対策、記録を継続することが重要です。
Q. HACCPの衛生管理記録を簡単に残す方法はありますか?
A. 厚生労働省は2026年6月、小規模な一般飲食店向けの「HACCP衛生管理記録アプリ」を公開しています。スマートフォンやタブレットから衛生管理計画、日々の記録、毎月の振り返りを入力できます。
Q. 害虫やネズミの駆除は専門業者に依頼した方がいいですか?
A. 必ずしもすべてのケースで必要とは限りませんが、清掃や侵入防止を行っても繰り返し発生する場合、侵入経路を特定できない場合、天井裏や壁内で被害が疑われる場合などは、専門業者への相談を検討した方がよいでしょう。東京都の保健所でも、防除・駆除作業については専門団体を案内しています。
参考データ・出典
厚生労働省「HACCP(ハサップ)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/haccp/
厚生労働省「HACCP 衛生管理記録アプリの公開について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_73595.html
厚生労働省「一般飲食店事業者向けHACCP衛生管理記録アプリ」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000161539_00003.html
東京都保健医療局「ねずみ・衛生害虫等」
https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/shisetsu/jigyosyo/hokenjyo/nisitama/soudan/nezukon
東京都保健医療局「ねずみ・衛生害虫」
https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/kankyo/eisei/nezukon
