新型コロナウイルスのような先行き不透明なことが起こると、真っ先に影響を受けるのが飲食店だと言われています。その一方で、緊急事態宣言下にもかかわらず、行列ができる店があったり、お客が絶えない店があったりするのも事実です。そのような店舗と一般的な店舗では何がちがうのでしょうか?
今回は強い飲食店に欠かせない、顧客のファン化について考えていきます。

 

立地に恵まれない飲食店に必要な”ファン”とは?

お客が多い飲食店とひとくちに言っても、その内容はさまざまです。ターミナル駅に近いなど立地に恵まれた場所であれば、自然とお客があふれる店舗になります。一方で、路地裏など立地には関係なく人知れずお客さんが集まり、いつも賑わいを見せる飲食店があります。

個人店はもちろん、資金面で恵まれていない中小のチェーン店は、どちらを選ぶべきでしょうか?

もちろん、後者です。駅前の一等地に店を構えられれば集客面の問題はクリアできますが、初期コストは膨大で、スタッフも多く集めなければなりません。こうなると、店長には高いマネジメント力が要求されるなど前途多難。どの面からみても、現実的な視点を持つならば、二等地、三等地に出店する道を選ぶべきです。たとえば駅から離れていたり、それほど離れていなくても地下や2階、3階に行くなど。

しかし、こういった店はお客を確保するのが難しくなります。ではどうするか?

店を安定させるには、常連客をどのように確保していくかが重要だと言われます。しかし、本当の意味で店を支えてくれるのは常連客から、さらに一歩踏み込んだお客。つまり、常連客を”ファン”化することが重要となります。

ファンとは単なる常連客ではなく、店を愛し、存在することを応援してくれる人たちのこと。この人たちが、なぜ重要な存在なのかを見ていきましょう。

飲食店にファンが重要な理由

ファンが店に対して、どのようなメリットを与えてくれるかを見ていきましょう。

● 店を利用してくれる(売上の確保)
● 仲間に店を宣伝してくれる
● チャレンジを後押ししてくれる
● ピンチのとき助けてくれる

店を利用してくれる(売上の確保)

これは、常連客と同じかもしれません。ただし、コロナ禍などの非常事態でも、「この店は信頼できるから」とか「店をつぶさないために」などと利用してくれるという部分は大きく違います。店内利用ができないならと、テイクアウトを積極的に利用してくれるケースもあります。

店を宣伝してくれる

ファンは、「お気に入りの店があるから一緒に行こうよ」と周りの人を誘い込み、「この店は○○が美味しい」などとよい点を積極的にアピールしてくれます。これは、店舗にとって最も大きなメリットになる部分です。

とはいえ、彼らは宣伝しているつもりはありません。ただ、自分の気に入った店を、友だちや同僚に知ってもらいたいと思っているに過ぎないのです。

口コミはどんなチラシやクーポンよりも大きな集客効果を持っています。しかも、連れてこられた人も店のファンになる可能性が高くなります。ファンが多い店は、新たなファンを作ることで、強固な店を作っているのです。

チャレンジを後押ししてくれる

飲食店では新商品の開発などが常に行われています。もちろん、いきなり完成品ができるわけではありません。この味はお客に受け入れてもらえるのだろうかと不安に思ったとき、意見をもらえるのはファンです。

常連客であれば味が未完成でも、自分ではあまり注文しないなと思いつつ、「美味しい」と言ってくれるでしょう。しかしファンは、「こういう風に変えた方がよいかも」などと意見を言ってくれます。こうやって味の改良を重ね、人気商品が仕上がったという例は多くあります。

また、新店をオープンしようというとき、後押ししてくれるのもファンです。

どんな時にも味方でいてくれる

どんなときも 店舗の味方でいてくれる存在というのは心強いものです。たとえばある店は、今回のコロナ禍で家賃も払えない状態になったとき、資金集めにクラウドファンディングを活用し、食事券を販売しました。この時、目標金額の4倍もの資金が集まったのですが、7割がファンと、ファンに紹介された人だったそうです。

中には、1万円の食事券を購入するのに10万円も払った人がいたそうで、驚いて連絡すると、「自分にとって、そこに店があることが重要だから」と言われたそうです。もちろん、金銭の大きさがすべてではありませんが、窮地に陥ったときにサポートをしてくれるのはファンなのです。


ファンづくりのためにやるべきこと

では、飲食店に大きなメリットを与えてくれるファンを作るために、どのようなことをするればよいのでしょうか?

おいしい料理やお酒の提供

飲食店ですから、食事やお酒がおいしいことは言うまでもありません。そのために、有名シェフが必要と言うわけではなく、「安定のうまさ」「なんだかホッとする味」「懐かしいお袋の味」というレベルの方が身近な存在になれるかもしれません。

個性的なサービス

次に大切なのは店の個性です。チェーン店などは、どこに行っても同じ雰囲気で、それが安心感につながります。しかし、チェーン店が与える印象と同じことを個人店や小さなチェーン店が目指したのでは意味がありません。

たとえば、万人に受け入れられやすい無難な雰囲気ではなく、一部の人の心をくすぐる洒落た演出があったり、思わずうなるディスプレイがあるとファンは増えやすくなります。一部の人に熱烈に愛される店づくりをすることで、そこから派生して多くの人に愛される店になると言うわけです。

例をひとつ挙げましょう。
ある居酒屋では、入浴の時に使う洗面器でサワーなどを提供し多くのファンを獲得していました(もちろん、他にもたくさんの工夫があります)。ところが、余りに有名になったことで洗面器の関連メーカーから「飲食用に作ったものではないので使用を避けて欲しい」とのコメントが出されました。これはYahoo!ニュースなどで取り上げられたこともあり、コメント欄には、「洗面器で酒を提供するなんて気持ち悪い」「店も悪いが、客も変だ」など散々なコメントがつきます。

しかし、このコメントを見たファンは、「私たちの大好きな店がたたかれている!」とかえって愛が深まり、客数は増えたと言われています。ピンチの時に立ち上がってくれるのがファンなのです。

お客とのコミュニケーション

オーナーや店長、スタッフの個性をいかすことも大切です。みんなが無難なサービスをしようというのはチェーン店と同じになってしまいます。とにかく面白いマスターがいる、みんな笑顔で気さくに話しかけてくれるなど、コミュニケーションを積極的にとることが大切です。

中には、手が空いた時間にやってくれる手相占いがよくあたるとか、恋愛相談に乗ってくれるなどで支持を集めている店もあります。

また、個性が必要なのは店長やオーナーだけではありません。スタッフがお客さんとコミュニケーションを取ることを推奨していれば、一人一人のスタッフにファンがつき、それがお店のファンになるということもよくある話です。

コミュニケーションのあり方

お客とのコミュニケーションをもう少し詳しく見ていきましょう。

まず、店側がお客を覚えることは絶対に必要です。その上で、「このメニューは特別なお客さんにだけ出す裏メニューなんですよ」とか、「久々に来てくれたお礼にサービスしますね」などと言ってちょっとした商品を提供する方法があります。この商品は高いものである必要はありません。提供したいのは感謝の心と特別感。コミュニケーションの手段としての商品なので、安価なものでも構いません。

逆に言えば、お会計のときに、こっそりドリンク代をサービスするなどは効果がないことになります。それならば、ドリンクを提供する時に、「この一杯はお店からのサービスです!」などとしっかり伝えるようにしましょう。

また、お客の側から店への愛情を表現してくれるときがあります。たとえば、一緒に来ている人に、店のことを自慢気に話していたり、入ってきた時に親しげに挨拶するなどがよい例です。このようなとき、店側がキョトンとしていたのでは意味がありません。あまり来店回数が多くないはずのお客が、「久しぶり」と入ってきても、「お久しぶりです!」と顔見知りのように返すことでお客は気分がよくなり、来店回数が増えることもあります。

前述の通り、ファンは単なる常連客と違う存在です。お客の望みに応えることで、愛情を深めあうということも大切なのです。

来店時だけでなく、頻繁なアプローチも欠かさない

ファン作りには来店時だけでなく、普段からのアプローチも重要となります。たとえば、ブログやInstagramを更新するのも一つの手です。しかし、その場を訪れなければ見てもらえないという弱さもあります。

そこで、肌身離さず持ち歩くスマートフォンに直接アプローチするのがよいでしょう。その代表は、LINE公式アカウント(旧LINE@)。友だち登録されていることが大前提となりますが、これさえクリアできれば、定期的にお店の情報を送ることができますし、オリジナルのクーポンを発行することも可能となります。

お友だち登録をしやすくするには、登録したその場で使えるドリンク券などを用意しておくこと。もちろん、その場限りの利用になるお客もいるかもしれませんが、それを気にする必要はありません。常連客に定期的にアプローチすることで、来店頻度を上げ、気づいたらファンになっていたというパターンが理想です。

LINE公式アカウントは無料で作れますし、小さな規模で活用するのであれば無料でできることも多いので、試しに使ってみてはいかがでしょうか。

まとめ

飲食店のファンづくりについて解説しました。
常連客から、さらに踏み込んだファンにすることで、店舗は売上を確保でき、また、あちこちで宣伝して回ってくれる専用部隊を作ることになります。知っている人の口コミのパワーは絶大で、今回のコロナのような大ピンチな状況では、「あの店は俺たちが守ってやる!」となり、かえって潤うという状況すら生まれてきます。

ファンづくりは決して簡単なことではありませんが、経営を安定させるという意味では欠かせないことです。先行き不透明な時代だからこそ、ぜひ取り組んでみてください。

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