アメリカでUber Eatsがデリバリーロボットの導入を進めている。Uber Eatsはロサンゼルスで2022年からデリバリーロボットの運用を始めているが、2024年までに他の都市でもサービスを開始し、合計2000台のデリバリーロボットの運用を開始するという。Uber Eatsがデリバリーロボットの導入を急ぐ背景には何があるのか。デリバリーロボットの今後の展開などを含めて諸々考察する。

もくじ

Uber Eatsが導入したデリバリーロボット

Uber Eatsは、2022年からロサンゼルスのウェストハリウッド地区で自動運転デリバリーロボットの運用を開始した。デリバリーロボットは、Uber Eatsが出資したスタートアップ企業のサーブ・ロボティクスが開発したもので、レベル4(限定された条件下における完全自動運転)の自動運転を実現している。

車道ではなく歩道を通行するロボットは小型コンテナ程度の大きさで、最大50ポンド(約22.67キログラム)の荷物を最大時速11キロメートルのスピードで運搬する。なお、レベル4の自動運転で運用されるものの、事故や事件などに備えて人間のスーパーバイザーが常時モニタリングを行っている。

ロサンゼルスで200店の飲食店が参加するまでに拡大したパイロットプログラムはテストフェーズを終え、Uber Eatsはロサンゼルス以外の都市でもデリバリーロボットの運用を開始するとしている。Uber Eatsによると、年内に全米で少なくとも2000台のデリバリーロボットの運用を開始するという。

Uber Eatsがデリバリーロボットの導入を急ぐ背景

いささか急に見えるUber Eatsによるデリバリーロボットの導入だが、その背景には何があるのだろうか。それは、やはりデリバリーコストの問題だろう。「飲食店がサブスクで利用できる注文サービスChownowとは」という記事で、現在アメリカで飲食店がフラットフィーのサブスクリプションで利用できるオンラインオーダリングプラットフォームの「Chownow」の利用が拡がっていることを紹介したが、その背景にあるのがUber Eatsなどのサードパーティーのフードデリバリーサービスが飲食店に請求するフィーの高さだ。

Chownowによると、サードパーティーのフードデリバリーサービスが請求するフィーは最大で売上額の40%にも達し、多くの飲食店を赤字倒れにさせているという。また、そうした飲食店の多くが高額なデリバリーコストを回収するためにUber Eats専用の価格設定をしており、結果的に消費者によるUber Eats離れを招く結果となっている。

確かに、サーブ・ロボティクスが主張するように、Uber Eatsは「重さ2ポンド(約907グラム)のブリトーを、車重2トンの自動車で配達する」という壮大なリソースの無駄遣いをしている。人間のドライバーを雇い、車重2トンの自動車にガソリンを注入してフードデリバリーをさせるよりも、自動運転のデリバリーロボットを使う方のコストが安く、ひいては飲食店が提示する価格も下げられると判断したのであろう。またデリバリーロボットであれば、ユーザーがチップを支払う必要もない。

デリバリーロボットが襲撃される事件も

導入するメリットが多いように見えるデリバリーロボットだが、懸念される事件も発生している。デリバリーロボットが運用中に襲撃される事件が複数発生しているのだ。デリバリーロボット運用のパイロットプログラムが実施されたのはウェストハリウッド地区だが、比較的治安が良いとされるウェストハリウッド地区においてホームレスやギャングの若者などに襲撃され、コンテナから商品が収奪される事件が発生している。

中には商品を収奪するだけでなく、ロボットを横倒しにして破損させる事件も起きている。デリバリーロボットの健全な運営に対する重大な脅威であり、実効性の高い対策が必要だろう。具体的には、リアルタイムでの警察への通報、サーベイランスカメラによる犯罪行為の撮影、サイレンの搭載、現場へのセキュリティスタッフの派遣等々であろう。

なお、実際に襲撃の被害にあったサーブ・ロボティクスによると、デリバリーロボットが襲撃されるのはあくまでもレアケースであり、サーブ・ロボティクスのデリバリー完了率は99.9%に達しているという

デリバリーロボットの今後はどうなる?

サーブ・ロボティクスの創業者でCEOのアリ・カシャーニ氏はCNBCのインタビューで、サーブ・ロボティクスのデリバリーロボットの現在の価格が「数万ドル程度」と示唆した上で、今後さらに下がる可能性について言及している。価格が下がることで導入する飲食店が増え、さらに価格が下がるという好循環が生まれる可能性は決して低くないだろう。

なお、デリバリーロボットについては日本でも普及に向けた機運が高まっている。2023年4月1日、デリバリーロボットの交通方法などを規定した改正道路交通法が施行され、一定の条件を満たして都道府県公安委員会へ届出をすれば、デリバリーロボット単体で歩行者同様に公道走行をすることが可能になった。これにより、デリバリーロボットがこれまでのようにナンバープレートを取得しなくても、自由に公道を走れるようになったのだ。

デリバリーロボットは、日本ではスーパーマーケットやコンビニエンスストアからのデリバリーに使われるケースが多く、アメリカのように飲食店による利用はまだ少ないようだ。しかし、2022年には東京都内でファミリーレストランの料理などを指定エリアへ配達するデリバリーロボットの実証実験が行われるなど、飲食店によるデリバリーロボット利用のトライアルが始まっている。

物流における配送元から最終届先までの最後の1マイル(1.6キロメートル)を「ラストワンマイル」と呼ぶが、デリバリーロボットは、そのラストワンマイルにおける今後の勢力圏を巡る争いの主要プレーヤーとなる可能性が高い。その意味において、デリバリーロボットの今後の展開については、日米どちらとも目が離せない。両者の今後にそれぞれ注目したい。

関連リンク
https://www.serverobotics.com/
https://mashable.com/article/uber-eats-delivery-robots