米オハイオ州に店内客席ゼロ、オンライン注文オンリーの「デジタルレストラン」がオープンして話題になっている。オハイオ州クヤホガ・フォールズにオープンしたデジタルレストランは、通常の店舗よりも小型で、注文はオンラインからしか受け付けない。店外のわずかなパティオ席を除いて店内に客席がまったくない「デジタルレストラン」は、ウィズコロナ時代の消費者ニーズを象徴するものなのか。アメリカ現地の報道をお伝えする。

チポトレ・メキシカングリルという会社

チポトレ・メキシカングリル
チポトレ・メキシカングリル 公式サイト

チポトレ・メキシカングリル(Chipotle Mexican Grill, Inc.)は、カリフォルニア州ニューポートビーチに拠点を置くメキシカン・レストランチェーンだ。1993年の設立以来順調に店舗数を増やし、今日までにアメリカ、カナダ、イギリス、ドイツ、フランスの各国で2788店舗を運営するまでに成長している。直近の売上高は55億8600万ドル(約6368億円)で、従業員4万5千人を雇用している。 チポトレ・メキシカングリルの名物メニューはブリトーだ。お客は店内のレーンに並び、ブリトーの中身をリクエストして自分が好きなように店員にアレンジしてもらう。肉は牛肉、鶏肉、豚肉、ヴィーガンから選択し、チーズ、アボカド、オリーブ、レタス、トマトなどのトッピングやサルサも好きなものを選べる。お好みでライスやビーンズなどを追加することも可能だ。要するに、チポトレ・メキシカングリルでは、お客が自由に自分好みにメニューをカスタマイズできるのだ。

デジタルレストランの仕組み

そんなチポトレ・メキシカングリルが先日、オハイオ州クヤホガ・フォールズに店内客席ゼロ、オンライン注文オンリーの「デジタルレストラン」をオープンさせると発表し、話題を集めた。その「デジタルレストラン」とは、いったいどのような「レストラン」なのだろうか。 まず、デジタルレストランの店内には客席がない。また接客スタッフも存在しない。店内はキッチンとピックアップ用レーンがあるだけだ。店の構造はゴーストキッチンとほぼ同じと言っていいだろう。 注文はチポトレ・メキシカングリルのウェブサイト、専用アプリ、または第三者のデリバリーサービスのウェブサイトから行う。お客はブリトーやボウルなどの料理を好きなようにカスタマイズして注文する。カスタマイズするプロセスはリアル店舗で行うのとほぼ同じだ。注文したあと、クレジットカードや電子マネーで支払いし、自分でピックアップするかドアダッシュなどのデリバリーサービスを利用する。なお、デジタルレストランの店頭へ出向いても注文は受け付けてもらえないので注意が必要だ。


全売上の半分以上がオンラインの売上から

チポトレ・メキシカングリルによると、同社は2008年からオンラインオーダリングシステムを導入し、近年は新型コロナウィルスの感染拡大に合わせてその規模を拡大してきたという。実際にオンラインでオーダーするお客が激増し、昨年2020年度の全売上の半分以上がオンラインの売上からもたらされたという。 チポトレ・メキシカングリルはまた、オンラインで注文を受け付け、ドライブスルーの窓口で手渡す「チポトレーン」(Chipotlane)を、2018年から一部の店舗で併設している。チポトレ・メキシカングリルのチーフ・ディベロップメントオフィサーのタバッサン・ザロトラワラ氏は、「これまでに300の店舗にチポトレーンを併設しましたが、かつてないほどの利益をあげています。今後もデジタルビジネスを強化し、さらなる売上と利益を確保してゆきます」とコメントしている。

オフライン・オンライン併設型の店舗を強化

チポトレーンの好調なパフォーマンスを受け、チポトレ・メキシカングリルはチポトレーンを併設したオフライン・オンライン併設型の店舗を強化するとしている。発表によると、チポトレ・メキシカングリルは、今後新設する店舗の75%にチポトレーンを併設し、オフライン・オンライン双方の需要に対応するとしている。 ザロトラワラ氏は、「チポトレーンは、チポトレ・メキシカングリルというブランドにとっての重要な成長戦略要素です。今後はチポトレーンを併設した店舗を増やすとともに、新たに開設するデジタルレストランも強化し、成長著しいデジタルニーズに対応してゆきます」と説明している。 なお、チポトレ・メキシカングリルによると、チポトレーンを併設したオフライン・オンライン併設型店舗の売上高は、オフライン専用店舗の売上高よりも平均で15%高いという。

アメリカ人の70%がオンラインオーダリングを志向

チポトレ・メキシカングリルの好調を裏付ける調査結果がある。アメリカのオンラインオーダリングシステム開発のコアラが行った調査によると、調査対象となったアメリカ人の70%が、オフラインの注文よりもスマートフォンなどによるオンラインオーダリングシステムを志向すると答えたという

また、オンラインオーダリングシステムを志向すると答えた人の77%が、オンラインオーダリングシステムを志向する理由を「便利だから」としている。また、調査対象者全員の98%が、過去18か月間に最低1度はオンラインオーダリングシステムを利用したと答えている。

飲食店利用者のオンラインオーダリングへのシフトは、単なるコロナウィルスのパンデミックの影響というだけでなく、デジタル時代に誕生した、まったく新しい飲食店の利用スタイルであるとすべきだろう。


日本でもデジタルトランスフォーメーションのトレンドが

なお、こうしたトレンドは日本においても感じることができる。飲食店利用者のスマートフォンにQRコードを読み込んでもらい、メニューを表示させて注文してもらう「モバイルオーダー」は、現在アメリカでチポトレ・メキシカングリルが展開しているデジタルレストランと同様の機能を取り入れていると言える。 デジタルレストランの登場は、飲食業界におけるひとつの大きなデジタルトランスフォーメーションの現在進行形として捉えることができる。オンラインオーダリングシステムに象徴される飲食業界のデジタルへのシフトは、いずれにせよ今後世界的なトレンドとなるのは間違いないだろう。そして日本の飲食業界も、決して例外にはならないだろう。

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参照サイト
https://www.chipotle.com/
https://restauranttechnologynews.com/2021/12/chipotle-unveils-its-first-digital-kitchen-restaurant-to-fulfill-orders-for-pick-up-and-delivery/
https://www.engadget.com/chipotle-digital-kitchen-ohio-205310521.html