「会社の利益構造を正確に把握していない…」 「利益を最大化したいけれど、どの数字を見ればいいかわからない…」
企業の経営状態を把握する上で、利益の理解は欠かせません。しかし、利益にはさまざまな種類があり、それぞれの意味を正しく理解できていないと感じる人もいるでしょう。
この記事では、ビジネスの基本となる「粗利益」の意味や計算方法、経営に活用できる理由を詳しく解説します。さらに、営業利益や経常利益など他の利益との違い、粗利益が少ない場合の改善方法まで、わかりやすくまとめました。
この記事を読めば、自社の利益構造を正しく理解し、経営改善につなげる第一歩を踏み出せます。日々の利益管理を効率化したい飲食店経営者の方は、記事の最後で紹介する「poscube」の情報もぜひ参考にしてください。
飲食店における粗利益(売上総利益)とは
粗利益(あらりえき)とは、売上総利益(うりあげそうりえき)とも呼ばれ、企業が商品やサービスを提供して得た直接的な利益のことです。具体的には、売上高から商品の仕入れや製造にかかった費用である「売上原価」を差し引いて計算します。
計算式は以下の通りです。
粗利益 = 売上高 – 売上原価
例えば、1杯500円のコーヒーを売るカフェを考えてみましょう。コーヒー豆や牛乳などの材料費(売上原価)が1杯あたり150円かかった場合、粗利益は350円(500円 – 150円)です。この粗利益は、企業の基本的な稼ぐ力を示す重要な指標といえます。
企業の成績表とも呼ばれている決算書の一つ「損益計算書」で最初に記載される利益のため、企業の収益性を分析する上でまず注目すべき項目です。一般的に、粗利益が高い企業は、提供している商品やサービスの競争力が高く、本業がうまくいっていると判断できます。
粗利益を経営に活用できる3つの理由
粗利益は、単に計算して終わりにする数字ではありません。正しく理解し分析すると、経営状態を改善するための重要なヒントが見えてきます。粗利益を経営に活用できる主な理由は、以下の3つです。
- 利益の出るメニュー構成を判断できる
- 商品の市場優位性を確認できる
- 営業利益と比較できる
これらの理由を深く知ることで、粗利益という指標をより戦略的に使えるようになります。それぞれ詳しく見ていきましょう。
利益の出るメニュー構成を判断できる
粗利益を分析すると、仕入れコストが適正かどうかを判断できます。粗利益は売上から食材など原価を直接差し引いた金額です。
例えば、前年に比べて粗利益率が10%下がったとします。その原因を調べてみると、「肉や魚、油など主要な食材の仕入れ価格が上がっていた」などのケースが考えられます。
このような状況では、市場全体の価格動向や同業の飲食店との比較が重要です。比較によって、原価の上昇が市場全体の影響によるものか、自店の仕入れ体制に問題があるのかを見極められます。
粗利益率を常に把握しておけば「仕入れ先を見直す」「メニューの原価を再設計する」など具体的な経営改善のアクションが必要かどうかを判断する材料になります。
商品の市場優位性を確認できる
粗利益は、メニューそのものが持つ価値や競争力をはかる指標としても活用できます。人件費や広告費など経費を差し引く前の、純粋な商品の利益を示すからです。
もし、競合の店舗よりも粗利率が高い場合、自店のメニュー構成や価格設定、品質が市場で高く評価されていると考えられます。
反対に、粗利率が低い場合は注意が必要です。メニューの価格が安すぎたり、仕入れコストが高すぎたりして、十分な利益を確保できていない可能性があります。
改善のためには、人気メニューの原価と販売価格のバランスを見直すことが有効です。同業他社と比較して自店のメニューが市場でどれだけ優位性を持つのかを客観的に把握し、新メニュー開発で付加価値を高めるなどの工夫で、改善の方向性を明確にできます。
営業利益と比較できる
粗利益は、人件費や家賃、水道光熱費などの運営コストを見直すきっかけにもなります。飲食店を運営するためには、食材の原価以外にもさまざまな費用が発生します。
どれだけ粗利益が多くても、人件費や水道光熱費など運営コストを使いすぎていれば、最終的に会社に残る利益は減少するものです。この運営コストを差し引いた後の利益が「営業利益」です。
粗利益と営業利益を比較すると、人件費や経費の使い方に無駄がないかを可視化できます。例えば、粗利益は高いのに営業利益が低い場合、運営コストがかかりすぎているかもしれません。
その場合は、スタッフのシフト体制を見直したり、仕入れのサイクルを改善したりする判断が可能になります。売上原価以外のコストの妥当性を把握し、無駄のない利益構造を築きましょう。
粗利益と他の利益の違い
会社の利益には、粗利益の他にもいくつかの種類が存在します。会社の経営状態を多角的に分析するためには、それぞれの利益が何を示しているのかを理解しておくことが大切です。
- 営業利益との違い
- 経常利益との違い
- 税引前当期純利益との違い
- 当期純利益との違い
ここでは、粗利益以外の4つの利益について、それぞれの意味と計算方法を解説します。
| 利益の種類 | 内容 | 計算式 |
| 粗利益(売上総利益) | 本業の基本的な稼ぐ力 | 売上高 – 売上原価 |
| 営業利益 | 本業で稼いだ最終的な利益 | 粗利益 – 販売費及び一般管理費 |
| 経常利益 | 会社全体の事業で得た利益 | 営業利益 + 営業外収益 – 営業外費用 |
| 税引前当期純利益 | 税金を支払う前の会社の全利益 | 経常利益 + 特別利益 – 特別損失 |
| 当期純利益 | 最終的に会社に残る利益 | 税引前当期純利益 – 法人税等 |
営業利益との違い
営業利益とは、会社が本業で稼ぎ出した利益のことです。粗利益から、販売費及び一般管理費(販管費)を差し引くことで求められます。
販管費には、従業員の給与・広告宣伝費・事務所の家賃・水道光熱費など、商品を販売するためにかかった間接的な費用が含まれます。つまり、営業利益は「本業の最終的な儲け」を示す指標です。
粗利益が多くても、販管費がかさむと営業利益は少なくなるため、コスト管理が適切に行われているかを見る上で重要な数字です。
経常利益との違い
経常利益は、会社が本業に加えて、それ以外の事業活動も含めて平常時(経常的)に得た利益を示します。営業利益に、本業以外で得た収益(営業外収益)を足し、本業以外でかかった費用(営業外費用)を差し引いて計算します。
営業外収益は、銀行預金の利息や保有している株式の配当金などです。一方で、営業外費用は銀行からの借入金の支払利息などが該当します。経常利益を見ることで、その会社全体の事業活動の収益力がわかります。
ただし、土地の売却益のような、その期にだけ発生した臨時的な利益や損失は含みません。
税引前当期純利益との違い
税引前当期純利益は、その会計期間に発生したすべての収益から、すべての費用を差し引いた利益です。
つまり、法人税などの税金を支払う前の、会社全体の最終的な利益を示します。
計算式は、経常利益に臨時的に発生した特別な利益(特別利益)を加え、特別な損失(特別損失)を差し引いて求められます。
特別利益の例としては、長年保有していた不動産を売却して得た利益などです。反対に、特別損失には、災害によって受けた損害なども含まれます。
会社のイレギュラーな出来事も含めた、その期の正確な利益状況がわかる指標です。
当期純利益との違い
当期純利益は、税引前当期純利益から法人税・住民税・事業税などの各種税金をすべて支払った後、最終的に会社の手元に残った利益です。これが、その会計期間の会社の最終的な経営成績となります。
この当期純利益がプラスであれば「黒字」、マイナスであれば「赤字(当期純損失)」です。株主への配当金の原資となったり、会社の将来の成長のために内部留保されたりするため、企業の持続的な成長に重要な利益です。
粗利益が赤字になる3つの原因
売上は立っているのに、粗利益が赤字になってしまうことがあります。その場合、ビジネスの根幹部分に問題が隠れているかもしれません。粗利益が赤字になる主な原因として、以下の3つが考えられます。
- メニューの原価が高すぎる
- メニューの販売価格が低すぎる
- 積み上げ型の価格設定になっている
これらの原因を理解し、自店の状況と照らし合わせてみましょう。
メニューの原価が高すぎる
粗利益が赤字になる最も直接的な原因は、メニューの原価が高すぎることです。メニューの原価には、食材費や調味料費だけでなく、調理にかかる人件費や水道光熱費なども含まれます。
これらの費用が高くなりすぎると、売上から原価を引いた際に利益が残らず、赤字に転じてしまいます。
例えば、高級な食材をふんだんに使っているにも関わらず、価格に反映できていないケースです。メニューごとに原価率は異なりますが、提供価格に対して原価が高すぎると、いくら販売しても利益はほとんど残りません。
定期的に原価計算を行い、適切な原価率の維持が重要です。
メニューの販売価格が低すぎる
食材の原価が適正な範囲に収まっていても、販売価格が低すぎると粗利益は確保できません。料理を提供する際には、食材原価に加えて、人件費・家賃などの経費を回収し、さらに一定の利益を上乗せした価格設定が必要です。
本来確保すべき利益をきちんと計算せずに価格を決めてしまうと、「原価に対して安すぎる価格設定」となり、結果として利益がほとんど出ない状況に陥ります。販売価格が低すぎると、たくさん売れても利益が少ない「薄利多売」の状態になりかねません。
売上はあっても経営が安定しないなどの事態を避けるためにも、適正な販売価格の設定が求められます。
積み上げ型の価格設定になっている
「積み上げ型」の価格設定も、利益を圧迫する一因です。積み上げ型とは、かかった原価や経費に、少しの利益を上乗せして販売価格を決める方法を指します。
この方法では、食材などの原価が上昇した際に、販売価格を上げなければ利益が簡単に削られてしまいます。「とにかく安く提供する」ことを優先してしまうと、いくら売っても利益が出にくい体質から抜け出せません。
飲食店経営では、まず確保したい利益額や利益率から逆算して目標原価を設定する方法が有効です。例えば「売上の60%を利益として確保したい」のであれば、原価率は40%以内に抑える必要があります。
確保したい利益から考える価格設計を行い、定期的に価格と原価を見直す仕組みを作ることが、経営改善のポイントです。
粗利益が少ない場合の改善方法4選
粗利益が少ない、あるいは赤字の状態を改善するためには、具体的な対策を講じる必要があります。ここでは、粗利益を増やすための改善方法を4つ紹介します。
- 客単価を上げる
- 食材原価を下げる
- 食材在庫の管理を最適化する
- メニュー販売戦略を見直す
自店の状況に合わせて、実行可能なものから取り組んでみましょう。
客単価を上げる
客単価を上げれば売上が増え、その分だけ粗利益も多くなります。最もシンプルな方法はメニューの値上げです。
ただし、単純な値上げは顧客離れを引き起こす可能性もあるため、競合店の動向や市場のニーズを見極めながら、慎重に行う必要があります。値上げをする際は、価格に見合うだけの付加価値の提供が重要です。
より高品質な食材を使ったり、独自のサービスを付け加えたりするなど、顧客が納得できる理由を用意しましょう。セットメニューの導入や、サイドメニューをおすすめして「ついで買い」を促すことも客単価を上げる有効な手段です。
食材原価を下げる
食材原価を下げれば、販売価格が同じでも、より多くの粗利益を確保できます。
具体的な方法は、「より安価な仕入れ先を探す」「共同仕入れで交渉力を高める」「一度に大量発注をして単価を下げる」などです。
また、これまで廃棄していた野菜の芯や皮を出汁に使うなど、食材を余すことなく活用する工夫も原価削減につながります。ただし、原価を下げることばかりに集中して、商品の品質が落ちてしまっては本末転倒です。
品質が下がると顧客満足度が低下し、結果的に売上が減少する恐れがあるため、品質とのバランスを常に意識しましょう。
食材在庫の管理を最適化する
過剰な在庫は、粗利益を圧迫する大きな要因です。使い切れずに廃棄する食材が増えれば、その分は売上につながらないコストとなり、粗利益を減らしてしまいます。
粗利益を増やすためには、在庫管理を最適化し、フードロスを減らす取り組みが必要です。過去の売上データを分析して日々の需要を予測し、発注量を最適化し、過剰な在庫や品切れによる販売機会の損失を防げます。
また、食材の先入れ先出しを徹底し、古いものから使うルールを従業員全員での共有も重要です。在庫管理を徹底すれば、コスト削減だけでなく、常に新鮮な食材の提供も可能になり、顧客満足度の向上にも貢献します。
メニュー販売戦略を見直す
メニューの販売戦略を見直して店舗全体の売上が伸びれば、その分、粗利益も増加します。
今のメニューが、本当にターゲットとしている顧客層に響いているか、価格設定は適切か、提供方法は最適かを見直してみましょう。
例えば、看板メニューをより魅力的に見せる写真に変えたり、お得なセットメニューを開発したりなどが考えられます。また、食材の品質や産地にこだわるなど、価格以外の面で他店との差別化をはかることも有効です。
ブランディングに力を入れ、お店独自の価値を顧客に感じてもらえるようになれば、新規顧客の獲得やリピーターの増加につながり、安定した売上と利益の確保が期待できます。
粗利益を正しく把握し飲食店を経営するなら「poscube」がおすすめ
この記事では、粗利益の概要から、経営に活用する理由、他の利益との違い、赤字になる原因、そして改善方法までを詳しく解説しました。
「会社の利益構造を正確に把握したい」「利益を最大化するために必要な指標を理解したい」などの悩みは解決できたでしょうか。粗利益は、自社の基本的な稼ぐ力を示す重要な指標であり、日々の経営判断に欠かせない数字です。
しかし、毎日の売上や原価を正確に計算し、利益を管理するのは簡単な作業ではありません。
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