飲食店経営にとってマーケティング、店を宣伝して集客し、来店してもらって売上を落としてもらい、さらにはリピーターになってもらう一連のプロセスは極めて重要である。一方で、マーケティングの仕組みややり方を知らないという飲食店経営者は多いだろう。本記事では、アメリカの著名飲食店コンサルタントが伝える飲食店マーケティング3つのステップをご紹介する。

ライアン・グロムフィンという飲食店コンサルタント

ライアン・グロムフィン(Ryan Gromfin)氏は、アメリカの飲食店専門の経営コンサルタントだ。子供の頃から料理が大好きだというグロムフィン氏は、ジョンソン&ウェールズ大学料理学部を卒業後、大手ホテルチェーン傘下のレストランに就職し、飲食業の世界に入った。

同レストランでは主に経営をまかされ、最終的には四つのレストランを同時に経営していたという。彼が経営するレストランの繁盛ぶりを見て驚いた他の系列レストランの経営者が彼に経営のアドバイスを求め始めたことから、グロムフィン氏の飲食店コンサルタントとしてのキャリアが始まった。

シンプルでわかりやすく、それでいて実現性が高いグロムフィン氏のコンサルティングは評判を呼び、これまでに数千を超える飲食店経営者が彼のアドバイスを受け、経営を改善してきた。グロムフィン氏はまた、ソーシャルメディアやYouTubeなどでも情報を発信し、数多くのフォロワーを獲得している。

そんなグロムフィン氏が、「飲食店マーケティング3つのステップ」という動画を公開しているので、内容を翻訳してご紹介しよう。

飲食店マーケティング第1ステップ「お客にとって価値がある料理を提供する」

第1ステップは「お客にとって価値がある料理を提供する」だ。当たり前のように聞こえるが、グロムフィン氏によると、世の多くの飲食店が「お客にとって価値がある料理」を提供できていない状態で集客をしようとしている。しかし、「お客にとって価値がある料理」が提供されていなければマーケティングを成功させることは不可能だ。

では、「お客にとって価値がある料理」とは何か?それは、「これであればお金を払う価値があると感じる料理」だ。「今まで見たことがない斬新な料理」「他では絶対に味わえない唯一無二の料理」「他店が真似出来ないほど美味しい料理」等々、とにかく何らかの形で「突き抜けた料理」を創造し、お客に提供しなければならない。

飲食店マーケティング第2ステップ「あらゆる手段を使って告知をする」

第2ステップは「あらゆる手段を使って告知をする」だ。ブログ、YouTube、Facebook、Instagram、Twitter、Eメールなどのインターネットメディアに加え、パンフレット、チラシ、名刺、ギフトカード、DMなどのオフラインメディア、地元の無料掲示板、クーポン、パーティーやイベントでの口コミ等々、とにかく使えるものはすべて使って告知をしなければならない。

SNSグロムフィン氏によると、世の多くの飲食店が告知を十分にせず、集客できていないという。いくら「お客にとって価値がある料理」を創造できたとしても、それを世に知らせる努力をしなければその存在が知られることはない。「うちの料理は最高だから、放っておいてもお客は来てくれるだろう」などという考えは、可能性ゼロではないにしても、ほぼゼロに近い。

クロムフィン氏は別の動画で、自らのクライアントのピザ店が新規に開業するにあたり、開業前にすでに千人以上の地元客のEメールアドレスを集めて開業時の集客を大成功させた事例を紹介している。その店はさらに、TwitterとInstagramで常に情報発信を行い、地元客を中心に大勢のフォロワーを集めているという。

飲食店マーケティング第3ステップ「ハードワークを継続する」

第3ステップは「ハードワークを継続する」だ。「ハードワークを継続する」とはどういう意味だろうか。グロムフィン氏はそれについて、「手を抜かずに誠実に仕事をし、それを毎日、毎月、毎年続けること」と説明し、さらに大手メキシカンレストランチェーン「チポトレ」のモンティ・モラン前CEOの言葉を引用している。すなわち「我々が行っているベストなマーケティング方法は、お客様の我々のレストランでの体験です。店のスタッフの仕事ぶりに接していただき、素晴らしい料理を堪能していただき、幸せな時間を過ごしていただく。それが我々のマーケティングです」という言葉だ。

つまり、「お客にとって価値がある料理」を創造し、「あらゆる手段を使って告知」をして集客したら、最終的にはお客にリピーターになってもらわなければならない。お客にリピーターになってもらうには、店を常に清潔な状態に保ち、料理のクオリティを維持し、サービスも徹底し、スムースなオペレーションを行う必要がある。そうしたものを実現するのはひとえに「ハードワーク」であり、ハードワークを継続することなくマーケティングを完結させることは不可能なのだ。

日本の飲食店も3つのステップの実践を

グロムフィン氏のアドバイスは、シンプルだが本質を突いている。何千という飲食店を指導してきたグロムフィン氏にしてみれば、多くの飲食店が「お客にとって価値がある料理」を提供しておらず、「あらゆる手段を使って告知」をしておらず、「ハードワークを継続」していないのだろう。そして、グロムフィン氏のこの嘆きは、そのまま日本の飲食店にも及びそうだ。

日本の飲食店においても、ただ何となく漫然と料理を提供し、お客が来るのを待っているといった風な店が少なくない。さらには「ハードワークを継続」しないどころか、スキがあれば仕事の手を抜いたりしている店もあるだろう。そのような店には、グロムフィン氏のアドバイスをしっかりと受け止めていただきたい。

また、現在十分に集客ができていないという店には、ぜひこのグロムフィン氏の3つのステップについて自分自身を問いただしていただきたい。すなわち、自分の店は

「お客にとって価値がある料理」を提供できているか?
「あらゆる手段を使って告知」をしているか?
「ハードワークを継続」しているか?

そして、もし出来ていないものがあれば、出来るようにしてみていただきたい。少なくとも今の状況よりネガティブになることはないだろう。

参照サイト
https://therestaurantboss.com/restaurant-marketing-in-3-steps/
https://www.youtube.com/watch?v=Jgu7szG_pYw