店舗を経営していると、「売り上げが思うように上がらない」、「新商品を出したい」、「改装を考えている」などの理由で専門家の意見を取り入れたくなります。そんなときに役立つのが飲食店コンサルタント。

しかし、コンサルタント選びを間違うと意味がないだけでなく、間違った方向に進み、最悪の場合、クローズという選択につながることもあります。

この記事では、飲食店コンサルタントがどのようなもので、どこにポイントをおいて選べばよいのかを掘り下げていきます。

飲食店コンサルタントは玉石混交

今は多くの飲食店コンサルタント(外食系コンサルタントとも言います)が存在します。Web使って簡単に探せるようになったことから、「意見を聞いてみたい」という人も増えています。

かくいう筆者も、20年ほど前から、いくつかの飲食店をコンサルタント的な立場でお手伝いしてきました。そんな立場から(自分のことを棚に上げて)言わせていただければ、コンサルタントは玉石混交。当たりもありますが、一方で、「どう考えてもハズレだ」という人も少なくありません。

飲食店を取り巻く環境は大きく変わっていて、店舗はそれにあわせて変化しなければ成功しません。そしてコンサルタントの側は、時代の流れを冷静に感じ取って分析し、各店舗に当てはめることが重要です。しかし実際に周りを見てみると、なかなか難しい人もいます。

例えば、外食で働いた経験がないコンサルタント。確かに Web 周りを見てもらうのであれば勤務経験は必要ではないのかも知れません。しかし飲食店は人と人とのつながりが重要視される仕事。店舗の強みを理解せず、時には無視して、持論だけを並べてもうまくいかないと思うのですが、いかがでしょうか?

では、筆者が出会った、困ったコンサルタントをいくつか紹介します。

コストをかけなければ売り上げが上がらないと主張するコンサルタント

自店を宣伝するにしても、人を増やすにしても、それらは全てコストが必要です。ド派手に広告宣伝をすれば売り上げがあがるのは事実ですが、そのコストを出すために首を絞める結果になることもあります。

あるターミナル駅近くの居酒屋は、コンサルタントに言われるままに広告宣伝をし、毎月80万円もの広告宣伝費をジャブジャブと使っていました。

この結果、確かに売り上げは上がったそうです。しかし、割引クーポンを乱発したせいで、正規料金でのリピーターにつながりにくく、「安く利用したい」というニーズのお客が中心となります。

ところが、一度上がった売り上げをキープし続けるには、ずっと80万円の宣伝をし続けるしかありません。そのためにバイトも増員し、気がついたときには悪循環に陥っていたそうです。

コンサルタント曰く、「ターミナル駅近くの飲食店は宣伝がすべて。コストはかけるだけよい結果につながる」らしいです。

結局その店舗は経営権を知り合いに譲渡することになりました。

状況を考えず、自分の意見をひたすら押し付けるコンサルタント

あるコンサルタントは、「自分の言うことを全て聞き、実行しなければよい結果にはつながらない」と言い切る人でした。そして結果がでないと、「私が言った通りにしなかったからだ」と責任転嫁がはじまります。

またその人は、「内部体制を整えてから」が口癖で、「一時的に売り上げが下がってもそれはよい結果の前触れだ」と言い切ります。

とはいえ、アルバイトを増やすには募集費と人件費が必要で、コンサルタントが望むようなコスト負担ができないケースもあります。アルバイトがたくさん入っても、そもそも教えられる人がいない場合もあるでしょう。

あるオーナーは、コンサルタントと契約して半年経ったとき、「理想論ばかり押しつけやがって!」と大喧嘩をし て決別したそうです。残念な結果です。

同じ傾向を持つコンサルタントは数多くいて、「店舗側が俺の言うことを聞かない」と平気で言います。しかし店舗の側には聞けない事情があるはず。それに寄り添う気がない姿勢はいかがなものかと思います。

自分のお金儲けに特化しているコンサルタント

コンサルタントの側も当然、商売としてやっているわけですから、一定の儲けを出すことは大切です。しかし中には、自分が儲かることが最優先のコンサルタントがいるのも事実です。

数年前に出会ったのは、「注目のUberを使ってデリバリーを強化しましょう」というコンサルタント会社。世間はコロナ禍で、飲食店が営業停止になっているタイミングでした。

この会社は、「成功報酬のみでやります」というのが売り文句。「それなら安心」と契約した店舗があったのですが、この成功報酬がなかなかのくせ者。「デリバリーの売り上げから2割をもらう」というものでした。

2割であれば許容範囲かと感じるかもしれませんが、Uberの場合、売り上げの約4割をUberに徴収されます。店舗側は6割しか受け取れません。さらに、2割をコンサルタント会社に支払えば、店舗側の取り分は4割。弁当の原価は高めなことが多く、4割の収入では、売っても売っても利益にはなりません。

そこである店舗では独自にUber以外のデリバリーにも手を出し、そこで大注目を浴びることとなります。夜の数時間の営業にもかかわらず、毎週30万円を超える売り上げとなったのですが、「それもデリバリー事業なので、2割をいただきます」と平然と言われたそうです。

確かに契約書はそうなっていたそうで、しかも1年間は途中解約ができず、不満ばかりが残ったそうです。

良いコンサルタントに出会うためにやるべきこと

では、よいコンサルタントに出会うためには、どのような点に気をつけるべきでしょうか。

もっとも重要なのは、コンサルタントを探す前に、「どの部分のアイデアが欲しいのか」を冷静に見つめることです。

売り上げはあるけれど利益が出ていないのであれば、 経営のエキスパートの意見が必要でしょう。売り上げを伸ばしたいのなら、マーケティングに長けた意見が重要です。今にも潰れてしまいそうだというのであれば、問題点をあぶり出し、改善に向けて並走してくれるようなコンサルタントが必要でしょう。

いずれにしても、コンサルタントは、「なんとなく頼めば適切なアドバイスをくれる」というものではありません。一方で、特定のジャンルについてはプロフェッショナルで、最強のアドバイスをくれます。

ニーズにピッタリとあった人を選ぶために、どのジャンルのアドバイスが必要なのかを考えることからスタートしてください。

飲食店コンサルタントの2つのタイプ

ここから、飲食店コンサルタントを分類していきます。

まず、飲食店コンサルタントは大きく分けて2つのタイプに大別できます。

一つは経営企画を得意とするタイプ。自店を含めたデータ収集を行い、経営戦略の立案やそれを実現するための業務のサポートをしてくれます。これは店舗に入って仕事をするのではなく、オーナーと打ち合わせを重ねるイメージです。

もう一つはいわゆるスーパーバイザー業務を担当するタイプ。実際の店舗運営を見ながら問題点を見つけて改善提案をします。アルバイト教育の方法や料理の改善、盛り付けや価格設定など、現場レベルの指導と考えると分かりやすいでしょう。

特化型か総合型かでも違ってくる

コンサルタントのアドバイスの範囲についても、タイプが違ってきます。大別すると、特定の分野に精通した特化型のコンサルタントと、対応範囲が広い総合型のコンサルタントです。

特化型は、例えば SNS 対策を得意としているなど、特定のジャンルについてアドバイスができます。ピンポイントの対応となりますが、情報量が多く、深いアドバイスをもらえます。

総合型は特にジャンルが決まっておらず、店舗運営や経営数値を見ながら問題点を発見し、改善していくタイプです。広い目線を持っているので、自分たちでは気づかなかった分野を発見できたり、オールジャンルの相談ができたりします。

自店にあったコンサルタントを選ぶ5つのポイント

飲食店コンサルタントを選ぶとき、ポイントにすべき点は何でしょうか。
特に重要なポイントを6つ紹介します。

1. 目的を明確化し、その分野が得意なコンサルタントを選ぶ
2. コンサルタントの実績を確認する
3. 実際に会って話をし、相性のよさを確認する
4. フットワークの軽いコンサルタントを選ぶ
5. 具体的な改善策を聞き、方向性を確認する
6. 契約料を確認する

順番に解説していきます。

1.目的を明確化し、その分野が得意なコンサルタントを選ぶ
Webマーケティングのアドバイスが欲しいのに、「アルバイトの育成ができていない」と言われたのでは意味がありません。

前述のように、まずはコンサルタントと契約する目的を明確にし、その分野に精通した人を選ぶべきです。

2.コンサルタントの実績を確認する
コンサルタント会社であれば、得意な分野や手掛けてきた実績などをWebサイトで紹介しています。隅々まで読み、質問があれば聞いてください。

個人のコンサルタントの場合、Webサイトがなくてもブログを書いていることもあるので、実績や活動内容を知ることができます。

また、紹介の場合、紹介者に契約するメリットを聞くのも重要です。中には、「紹介したら紹介料がもらえたから」などの理由もあるので注意が必要です。

情報がない場合、コンサルタント本人に確認するのも有効です。得意分野を聞くだけでなく、実績を聞くこともお忘れなく。

3.実際に会って話をして相性のよさを確認する
どんなに能力的に優れたコンサルタントでも、高圧的な態度で言いたいことが言えなかったり、話し方が鼻につくというのでは良好な関係は築けません。時には、誰にも言えないようなことも相談するわけですから、信頼関係が重要です。

人との関わりは難しく、周りの人の99%が、「あの人はいい人だ」と言っても、自分とはあわないと感じることもあります。周りの意見に左右されず、自分で決めるようにしてください。

4.フットワークの軽いコンサルタントを選ぶ
たとえ特化型のコンサルタントで、店舗を見なくてもアドバイスができるとしても、実際に足を運んでもらわないと伝わらないこともあります。また、Web会議ではなく、顔と顔を突き合わせるからこそできるディスカッションもあるはずです。ときには経営者だけでなく、店長などとも話す必要があるかもしれません。

総合型のコンサルタントならなおさら、「すぐに来て、アドバイスをしてほしい」ということもあるでしょう。

コンサルタントを選ぶときには、フットワークが軽い人。できれば、近隣で活躍している人を選ぶことも重要です。

5.具体的な改善策を聞き、方向性を確認する
契約後にアドバイスをもらったら、全然方向性が違った・・・とならないために、事前に、具体的な改善の方向性を確認することも重要です。

改善提案はコンサルタントの本業ですから、すべてを言ってもらえないかもしれません。そこで、最初に手を付けるべきことを聞き、その方向性が自分たちが目指す方向に沿ったものかを確認します。

筆者の知る限り、「契約しないと具体的な話はできない」と言って何も教えてくれない人は、まともなアドバイスができない人が多いと思っています

6.契約料を確認する
最後に重要になるのが契約料です。多くの場合、月額で契約し、売上規模によって金額は上下します。

また成功報酬型の場合、「売り上げの何パーセント」と決めるケースもあるようです。いくらが適切かは売り上げ規模によっても違いますが、売り上げの按分の場合、後になって「こんなにも支払うのはどうなんだろう」と考えるのではよくありません。

目安として、筆者の周りのコンサルタントの相場をお伝えしておきます。あくまでも売り上げによるので、参考程度にしてください。

多くは月額いくらと設定しています。店舗が増えたり、訪店回数によって見直すケースが多いのですが、安い人で月3万円。最も高い人で20万円(共に月額)です。高い人の場合、顧問契約をしていて、4店舗のアドバイスを行っています。最も多い価格帯は5万円~10万の価格帯です

まとめ

飲食店コンサルタントとよい関係を築け、適格なアドバイスをもらえれば、店舗は大きく発展します。しかし、方向性があわなかったり、得意分野でないコンサルタントと契約すると思わぬ方向に進んでしまいます。

店舗が成長できるコンサルタントと契約するためには、まずは目的を明確にすることが重要で、これは自分たちでやるしかありません。コンサルタントも人。よりよい関係が気づけるような出会いがあることをお祈りしています。