原材料費や人件費、物流費などの上昇が続き、飲食店では「売上はあるのに利益が残りにくい」という状況が起こりやすくなっています。
帝国データバンクの調査では、2026年9月だけで4,923品目の飲食料品が値上げ予定となり、2026年の値上げ品目数は1〜11月の判明分で1万9,083品目に達しています。原材料価格だけでなく、人件費や物流費なども含め、コスト環境は引き続き厳しい状況です。
こうした環境で利益を確保するには、単純に「安い食材に変える」「料理の量を減らす」だけでは十分ではありません。メニューごとの原価と売上、粗利、販売数を確認しながら、どこを見直せば利益への効果が大きいのかを判断することが重要です。
本記事では、飲食店が原価率を下げる方法について、値上げ、食材の見直し、メニュー構成、盛り付けなどの具体例を交えながら解説します。
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2026年も続く食品値上げ、飲食店のコスト負担は重い
食品価格の上昇は、一時的なものではなくなっています。
帝国データバンクによると、主要食品メーカー195社の2026年9月の値上げ予定は4,923品目となり、2026年で最も多い水準となりました。2026年通年でも、値上げ品目数は2万品目に達する見通しです。
値上げの背景も、原材料価格だけではありません。物流費、人件費、包装資材、エネルギー価格、為替など、複数のコストが重なっています。飲食店にとって厄介なのは、仕入れ価格が数%上がっただけでも、使用量の多い食材では月間の原価に大きな差が出ることです。
だからこそ、「仕入れ先から値上げの連絡が来たら考える」のではなく、普段から商品ごとの売上や原価、粗利を確認し、コストが変わったときにすぐ判断できる状態をつくっておく必要があります。
筆者の実例:鶏もも肉の仕入れ価格が2年間で約1.7倍に
※以下は、筆者が2022年当時に実際に仕入れていた際の事例です。現在の仕入れ価格を示すものではありません。
今回の売価上昇は食材の仕入れ値が上がったことによる部分が大きくなっています。ここでいくつかの例を挙げましょう。
ひとつ目は、輸入品の冷凍鶏もも肉(2キロ)です。筆者は飲食店経営をしていて、20年近くひとつの業者から仕入れています。
業者の好意もあり、長年、大幅な値上げはありませんでした。さらに、コロナ禍で弁当をはじめたことで仕入れ量が圧倒的に増え、「これだけ仕入れてくれるなら、ちょっとだけど安くするよ」と言われ、値を下げてもらえました。そのときの価格は2キロで630円(税別)でした。
しかし、2年経った現在、1080円(税別)にまで上がっています。実に1.7倍です。2年前と言えば、テイクアウトの唐揚げ店が続々とオープンした頃。利益が出やすい商材としてからあげが注目されましたが、経営環境はかなり悪化しているはずです。
世間では、「唐揚げブームが去って店舗が減っている」と言われていますが、実情は利益がでにくくなったので減っているのかもしれません。
筆者の実例:植物油は一斗缶3,000円弱から6,000円超へ
※以下は、筆者が2022年当時に実際に仕入れていた際の事例です。現在の仕入れ価格を示すものではありません。
さらに長いスパンでみれば、植物油の価格上昇は大きな問題です。
筆者の場合、現在の業者と取引をはじめたのは12年前。そのときは一斗缶あたり3000円しなかったと記憶しています(確か、2600円程度)。その後、徐々に値を上げたものの、「仕方がないな…」と思える範囲でした。
しかし、昨年から目に見えて上昇するようになり、2022年になってからは毎月のように値上がりをします。そしてついに、10月には6000円を超えました。衝撃としか言えません。
植物油は理論原価を計算するときに、加味しない店舗が多いはず。一方で、使用量が多く、まるで 痛みの少ないパンチを受け続け、内臓にダメージをためこんでいるボクサーのような状態です。
この状況は、円安が落ち着けば多少は改善されるのかもしれません。しかし、その日がいつ来るのかは分かりませんし、高くした商品の値下げは行われないこともあります。
一方で、経営は待ったなし。今、取り組めることをすぐにはじめなければ、店舗が消えてなくなってしまいます。
利益を確保するための検討ポイント
原価率を改善する方法は、大きく分けると次の4つです。
● 販売価格を見直す
● 使用する食材や量を見直す
● 食材や仕入れ先を見直す
ただし、原価率だけを下げることが目的になってはいけません。
例えば原価率の低い商品でも、ほとんど売れなければ利益への貢献は限定的です。反対に、原価率が多少高くても販売数が多く、十分な粗利額を確保できる商品であれば、店舗にとって重要なメニューになることがあります。
見るべきなのは「原価率が何%か」だけではなく、その商品が最終的にいくら利益を残しているかです。原価率・粗利の基本については、「飲食店の原価率は40%以下を目指せ!原価のあるべき姿とは?」でも詳しく解説しています。
食材費だけでなく人件費も含めて店舗収益を考える場合は、「飲食店で重要なFLコストとは?」も参考にしてください。
販売価格を見直す
原材料費や人件費が上昇する中、販売価格の見直しは避けて通れない場合があります。
ただし、「原価が上がったから、その分だけ価格を上げる」と考えるだけでは危険です。値上げによって客数や注文点数が減れば、商品単価が上がっても店舗全体の粗利が増えるとは限りません。価格を変更するときは、値上げ前後で販売数、客単価、注文点数、粗利額がどう変わったかまで確認することが大切です。
また、単品価格だけを上げるのではなく、セットメニューや追加注文、高付加価値商品の設定などによって客単価を上げる方法もあります。値上げそのものを目的にするのではなく、「お客様が支払う金額に対して、十分な価値を感じられるか」という視点を持って価格設計を考えましょう。
関連記事:焼肉店経営で見直したい3つの数字|客単価・回転率・リピート率の改善方法
使用する食材や量を見直す

食材の使用量を見直すことも、原価を改善する方法のひとつです。
ただし、単純に料理の量を減らすだけでは、お客様の満足度を下げてしまう可能性があります。特に、これまでと同じ価格なのに「量が減った」と感じられれば、店舗への印象にも影響します。
そこで考えたいのが、料理としての満足感を保ちながら、食材の使い方そのものを見直すことです。
カット方法を変える、盛り付けを見直す、付け合わせとのバランスを調整するなど、同じ食材でも見せ方や調理方法によって印象は変わります。
大切なのは「少なく見えないようにすること」ではなく、適正なポーションで、お客様が価格に見合った満足感を得られる商品をつくることです。
食材や仕入れ先を見直す
原価を見直す際には、現在使っている食材が本当に最適なのかを改めて検討してみましょう。
必ずしも「品質を落として安い食材に変える」という意味ではありません。仕入れ先を見直す、規格を変更する、使用部位を変える、旬の食材を取り入れるなど、方法はいくつもあります。また、食材によっては調理方法や味付けを工夫することで、コストを抑えながら商品の魅力を高められる場合もあります。
食材単価だけで判断せず、歩留まりや仕込み時間、廃棄量まで含めて比較することがポイントです。
食材だけでなく「売り方」を変える方法もある
食材を工夫できるほどの職人がいない場合、売り方を変える方法もあります。
持ち帰り専門の唐揚げ店の実例を紹介しましょう。
その店舗はずっと、鶏もも肉と鶏むね肉を選べる弁当が主力商品でした。具体的には、唐揚げを4つ入れた弁当を売っていて、「もも肉だけ」「むね肉だけ」「もも肉とむね肉を2つずつ」の3種から選べたのです。
鶏のもも肉とむね肉は仕入れ価格がまったく違い、もも肉の方が2倍くらいの価格です。しかし、その店舗ではどれを選んでも価格は同じ。その理由は、常連客はもも肉だけのものを買っていくからであり、「むね肉だけの注文が入ったらラッキー」くらいに考えていました。
なぜそうなっていたかと言えば、最初は両方の肉が入っているものを注文し、もも肉の方がジューシーなことが分かると、多くの人がもも肉だけのものに移行したからでした。
そんな中、原材料費が高騰しはじめ、むね肉の唐揚げの比率を上げなければ価格を維持できない状況となります。
そこで売り方を変え、「むね肉の方が脂身が少なくヘルシーである」ということを前面に出すことにします。また、むね肉の弁当の付け合わせを変え、徹底的にヘルシーを売りにしました。もちろん、POPなども作成。
唐揚げはヘルシーさとは真逆と考える方も多いですが、それでも唐揚げファンは多く、「罪悪感が少なくなる」といって売れ出します。そして今では、むね肉のから揚げの方が売れていると言うから驚きです。
この事例のポイントは、単に安い食材へ置き換えたことではありません。商品の価値の伝え方を変えることで、原価改善と販売促進を同時に行ったことにあります。食材を変更するときは、「コストを下げる」だけでなく、その食材をお客様に選んでもらう理由まで一緒に考えることが重要です。
実例:カットと盛り付けを変えて食材使用量を約25%見直す
ここからは、使用食材を減らしながら、ボリュームダウンをさせない方法を考えていきます。ここでも人気の唐揚げを例にします(唐揚げばかりで申し訳ありません)。
仮に下準備にちょっとした工夫をすることで、肉の原価を25%減らせるとしたらいかがでしょう?
実際の例を画像付きで紹介します。
画像にある鶏もも肉は、左側が70グラム。右側は92グラムです。原価にするとまさに25%の差となります。
切り分けただけの状態なので、当然ながら大きさに差があります。
しかし、この後、カット方法を工夫することで、変化が出てきます。それが次の画像です。
これも左側が70グラム、右側は92グラムですが、こうなるとどちらが大きいのか分からなくなってきます。
ちなみに揚げた状態の画像は以下です。
いかがでしょうか?
繰り返しとなりますが、左側が70グラム、右側は92グラムです。それほど大きさに変わりはありません。もちろん、じっくりと比較すれば大きさは違うのでしょうが、パッと見た目には変わりはありません。
では、どのような工夫をしたのでしょうか?
肉の厚みのあるところに包丁を入れ、肉を開くようにする。これだけです。時間にして3秒ほど。こうすれば実質的には肉は薄くなりますが、体感するほどのサイズの違いはなくなります。
また、揚げるのに必要な時間も短縮できるというメリットもあり、一石二鳥です。
盛り付けで工夫する
もうひとつ。盛り付けを変えることで、変化をつける方法もあります。
盛り付けには様々なこだわりがあると思いますが、もっとも簡単な方法を紹介します。
まずは、一般的な盛り付け例が以下です。滑り止めとして、から揚げの下にキャベツの千切りをしいています。
次に、皿を変えてみます。
皿の大きさはあまり変わりません。重ねると、四隅が若干出る程度です。
使っている唐揚げは、白い皿の方が約90グラムでしたが、ここからは70グラムのものに変更します。もちろん、前述のカットをほどこしています。
付け合わせの野菜はキャベツから葉物野菜に変更しています。その理由は、滑り止めとして使わないことで、あえて皿いっぱいに広がりをもたせるためです。
いかがでしょうか?
ボリュームアップしたように見えるのではないでしょうか?
さらに、半分にカットしたものが以下。
こちらの方が一口で食べやすくなり、皿全体にも広がりが出るため、盛り付けの印象も変わります。
この事例では、最初の白い皿から赤い皿に変えることで印象をガラリと変え、使用する鶏肉を約90gから70gに見直したことで、肉部分の使用量を約2割強抑えることができました。
いかがでしょうか?
少しの工夫で、原価をコントロールできることがお分かりいただけたと思います。ここに飲食店経営の面白さがあると言えます。
他にもいろいろな方法があると思います。ぜひ試行錯誤を楽しんでください。
原価率を改善するなら「何を削るか」より「どの商品を見直すか」
原価高騰が続くと、すべてのメニューで少しずつ食材を減らしたくなるかもしれません。しかし、店舗全体への影響を考えるなら、まず確認したいのはどの商品がどれだけ売れ、どれだけ利益に貢献しているかです。
例えば、月に10食しか出ない商品を数円改善するより、月に500食売れる商品の原価を見直した方が、利益への影響は大きくなります。
反対に、売上上位の商品を単純に削ればよいとも限りません。看板商品や集客につながっているメニューの場合、品質を下げることで店舗全体の売上に影響する可能性があります。
そのため、メニュー改善では、販売数・売上・原価・粗利を組み合わせて優先順位を決めることが重要です。
商品ごとの売上を整理する方法のひとつが「ABC分析」です。売上への貢献度をA・B・Cに分類することで、優先して見直したい商品を整理しやすくなります。
POSデータを使えば、改善前後も比較しやすい
メニューを変更した後は、「原価を下げられたか」だけでなく、実際に販売数や売上がどう変わったかを確認する必要があります。
例えば、価格を変更した結果、販売数は減ったのか。セットメニューを追加して客単価は上がったのか。商品を入れ替えて売上構成はどう変化したのか。こうした変化は、POSデータを継続して確認することで把握しやすくなります。
poscubeでは、日次・月次の売上に加えて、商品別・カテゴリー別・時間帯別などの売上を確認でき、CSVでの出力にも対応しています。
原価改善も、一度実施して終わりではありません。「変更する → 売れ方を確認する → 次の改善につなげる」というサイクルを回せる状態をつくっておくことが大切です。
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まとめ
原材料費が上がり続ける中、これまでと同じメニュー、同じ価格、同じ仕入れ方法を続けているだけでは、利益が少しずつ圧迫されてしまいます。値上げ、食材の見直し、ポーションの調整、盛り付けの工夫など、原価を改善する方法はひとつではありません。店舗や商品によって、選ぶべき方法も変わります。
一方で、原価率だけを下げることに集中しすぎると、お客様の満足度や商品の魅力まで下げてしまう可能性があります。だからこそ、「どの商品を見直すと利益への効果が大きいのか」「変更後に販売数や粗利がどう変わったのか」まで数字で確認することが大切です。
感覚だけで食材を削るのではなく、売上データと現場の状況を見ながら、小さな改善を積み重ねていく。その繰り返しが、原材料高騰が続く環境でも利益を残せる店舗づくりにつながります。
参考:FAQ
Q. 飲食店の原価率を下げる方法は?
販売価格の見直し、食材や使用量の変更、仕入れ先の見直し、メニュー構成の改善などがあります。原価率だけでなく、販売数や粗利額も確認しながら判断することが重要です。
Q. 原価率が高いメニューは廃止した方がいいですか?
必ずしも廃止する必要はありません。原価率が高くても販売数が多く、十分な粗利額を生み出している商品や、集客につながる看板商品もあります。
Q. 飲食店が値上げするときに確認する数字は?
値上げ前後の販売数、客単価、注文点数、売上、粗利額などを確認するとよいでしょう。価格を上げても販売数が大きく減れば、店舗全体の利益が増えない場合があります。
Q. 食材の量を減らせば原価率は下がりますか?
使用量を減らせば原価は下がりますが、満足度が低下すると客離れにつながる可能性があります。ポーション、調理方法、盛り付けなどを含めて商品全体で見直すことが重要です。
Q. どのメニューから原価を見直せばいいですか?
販売数や売上への貢献度が大きい商品から確認すると、改善効果を把握しやすくなります。ABC分析などを使って売れ筋と見直す商品を整理する方法もあります。
Q. POSレジは原価改善に役立ちますか?
POSレジを使えば、商品別や時間帯別などの売上を確認できるため、メニュー変更前後の比較に活用できます。poscubeでも、商品別・カテゴリー別・時間帯別などの売上確認とCSV出力に対応しています。
出典・参考データ
帝国データバンク「『食品主要195社』価格改定動向調査 ― 2026年9月」
https://www.tdb.co.jp/report/economic/pricepass-on202608/
帝国データバンク「『食品主要195社』価格改定動向調査 ― 2026年7月」
https://www.tdb.co.jp/report/economic/20260630-neage26y07/
ライタープロフィール
原田 園子
兵庫県出身。
株式会社モスフードサービス、「月刊起業塾」「わたしのきれい」編集長を経てフリーライター、WEBディレクターとして活動中。 https://radasono.wixsite.com/portfolio
