ここ数年、野菜価格の高騰が顕著になっています。野菜は料理そのものに使うものはもちろん付け合わせにも使用することが多く、その価格変動は原価にも直結します。あとで、「しまった!」とならないために、何を基準に価格設定を行えばいいのか? また、野菜が高騰したとき、どういった対応策ができるのか?を考察していきます。

 

 

100円と500円? 乱高下したレタスの価格

野菜価格の乱高下は飲食店にとって頭の痛いことの一つです。まずは直近1年の野菜価格を見てみましょう。

身近な例として、ここではレタスの価格を見ていきます。最も安い時期は、1玉100円程度。この頃のレタスは非常に葉がしっかりとしていて、実にみずみずしく、ずっしりと重く、かといって結球が強くなく、使い勝手もよいのが特徴です。

一方、最も高かったのは、2018年の初頭。年始の価格高騰が収まる時期になってもレタスの価格は高いまま。小売価格では、1玉500円を超えたところもあったほど、とんでもない価格となりました。さらに、この頃のレタスは小さくて貧相。辛うじて結球しているかと思えば、ぎっちり結球しているものもあり、使い勝手もよくありません。通常は2L玉を仕入れていたところでもM玉しか仕入れられず、困った人も多かったのではないでしょうか。

100円と500円を比較すると単純に5倍ですが、ロス率等を考えるとそれ以上の価格差になっていたことがわかります。仮に、サラダを通年同じ価格で出しているとすれば、その原価は当然5倍以上になるわけです。野菜サラダは多くの飲食店でなければならないものであり、さらにレタスを付け合わせにも使っているとするならば、たまったものではありません。

では、レタスをキャベツに変えたらどうか?という風に考える人もいるかもしれません。ですが、こういった時期は葉物全体が総じて高額になっており、キャベツについても非常に高額。代替品に変えて問題クリア・・・とはいきません。

乱高下の理由は需給バランスの崩れによる

では、なぜ野菜の価格は安定しないのでしょうか。

野菜の多くは露地栽培で作られています。トマトなどはビニールハウスで、モヤシやスプラウト系の野菜は工場で作っていますが、それはごく一部。ほとんどの野菜は、太陽の光を浴び、風雨にさらされながら育っています。そのため、露地栽培の野菜は日照時間や長雨の影響を受けやすく、不作の原因となってしまいます(豊作の原因にもなります)。

ここ数年の天気を見てみると、「近年稀に見る」とか「50年に一度の」などという言葉に代表されるように異常気象が続いています。これは台風や水害を指す言葉ですが、このような異常気象は普段から続いており、これが農作物の生育に影響を与えていることは言うまでもありません。

例えば、年中見かけるレタスですが、本来の旬は4~8月と11~12月の年に2回です。一方、夏は長野などの高原レタス、冬は香川や九州などの暖かいところから出荷されることにより、通年購入することができます。

いわゆる旬の時期は非常に栽培がしやすく、さらに複数の箇所で栽培されています。そのため、例えひとつの地域で収穫ができなかったとしても他のところで収穫ができるために、安定的に供給されます。一方、収穫が少ない時期は特定の地域で栽培されているため、何らかの気候的な影響により収穫が遅れたり、収穫できなかったりとなれば、あっという間に品薄となってしまいます。価格は、需要と供給のバランスで成り立っています。そのため、品質的に悪いものが、異常に高い価格取引されることになるのです。

野菜の価格は、農水省の価格見通しを参照する

では、このような野菜の価格の高騰を事前に知ることはできないのでしょうか?
買い物に行ってみて高かったとか、八百屋から納品された価格表を見て驚いたと言うのでは、メニューに反映することはできません。できれば、これから先の見通しについて把握しておきたいものです。

そこで参照できるのが、農水省の発表する「野菜の生育状況及び価格見通し」http://www.maff.go.jp/j/seisan/ryutu/yasai_zyukyu/)です。これは原則、毎月更新されるもので、月末または月初に発表されます。その月の野菜の価格予測を直近5か年平均と比較し、「平年並みで推移」「安値水準で推移」「高値水準で推移」で表します。

もちろん、ここでは突発的に起こる台風や水害、地震による影響は考慮されませんが、天候による影響の予測はできます。これを見て、代替品を準備するなどの対策をある程度立てることはできます。

メニュー価格の決め方

では、これらの価格をどのように商品価格に反映すればいいのでしょうか?
それを順に見ていきましょう。

季節メニューは、旬の食材のみを使う

野菜付け合わせ季節メニューは、多くのお店で旬を意識したメニューを展開していることでしょう。これは非常に重要なことですが、同じように旬でない商品を外すという発想も重要となります。例えば、冬の魚のアンコウや寒ブリを出すのに、夏野菜のインゲンやオクラ、シシトウを組み合わせてはいけないと言うこと。夏野菜とはいえ冬でも見かけますが、価格は数倍にもなっているのです。たかが付け合わせ・・・と感じるかもしれませんが、意外に高くなっていることが多いので、注意が必要です。

また、「○○のサラダ」など季節の食材を使っていても、実は主食材は周りの野菜などの場合はもっと注意が必要です。計算上では、季節の食材の原価が高くても、実際にフタを開けてみると、価格高騰で周りの野菜の方が価格は高かったというのでは洒落になりません。とくに、冬の季節メニューを考える10~11月はレタスの価格が安定している時期。でも、実際に売れる年明けには、1年で最も高くなる時期というケースには注意が必要です。

定番メニューは年間平均価格を参照して価格設定する

続いて気になるのが定番メニューをどうするかという点です。これに関しては、 二つの考え方を重要視します。それは、その食材を使わなければいけないのか、または他のものに変えることができるのかです。

例えば、レタスが高いシーズンに他の食材に変えることができるのかです。ただし、ここでは多くの場合、レタスが高い時期は葉物全体が高騰しているため、キャベツも高くなっています。そのため、「レタスを止めて千切りのキャベツにする」という発想ではカバーできません。正しくは、葉野菜の代わりに根菜の温野菜に変えるといった大胆な発想が重要です。

このように変更か可能な場合、原価はメインとなる食材の価格と代替の食材の価格を比較し、その中間値で原価を決めます。その後、その原価を元に売価を決めていきます。

一方変えられない場合を考えてみましょう。
その場合は、一年間の野菜の価格の平均値で考えます。一番やってはいけないのは、秋や春にそのメニューを開発したからといって、その季節の価格を参照し売価を決めてしまうこと。春秋は野菜の価格が最も安定している時期であり、これを参照することで、冬になると価格高騰でとんでもない原価率を負担することになってしまいます。これは絶対に避けるべきこと。通年の平均値を参照することが重要です。

野菜が高い季節は、冷凍野菜に置き換える

最近は、冷凍技術が向上し、さまざまな食材を冷凍で仕入れられるようになりました。たとえば、ゆで野菜やスチーム野菜は見劣りもせず、気軽に使えるようになっています。もちろん、野菜によっては生の野菜を店舗で仕込んで使うのと比べると、食感や風味に違いがでているとも言えます。ですが、野菜が高騰している時期だけ、そういった冷凍食材を使うこともできます。もちろん、お客様に黙ってと言うことに抵抗を感じるかもしれませんので、「野菜価格が高騰しておりますので、一部の野菜に冷凍品を使用しています」などと告知をした上で行います。野菜価格が高くなっているのは周知の事実ですので、お客さんも「しょうがない」と受け入れてくれるのではないでしょうか。

冷凍品は、食材が豊富にとれた時期、つまり旬の野菜を使っています。そのため、非常に安い価格で提供されるのが特徴です。冷凍技術もいくつかあり、ひとつのメーカーのものがダメでも、別のメーカーのものであれば問題ないということもあります。

料理人は野菜価格を知らない

料理人が野菜の時勢価格を知らないということに驚きを感じる人もいるでしょう。でも、実際には非常に多い事例ですので注意したい点でもあります。

サラダ例えば、料理人が一番大切にするのは価格よりも野菜のクオリティーです。肉付きはどうで、包丁で切ったときに空洞がないかなど、意識が高い料理人であるほど、質には徹底してこだわります。その一方で、毎日の仕入れは自分が八百屋に足を運び、財布を開いて買っていることはほとんどありません。「野菜は電話で発注し、八百屋が持ってくるもの」であり、ちょっとした価格変動には興味を持っていないのです。さすがに、ひと玉500円のレタスをどうも思わないということはありませんが、100円のレタスが300円になっていても意外に気がつかないという人が多いのです。

それどころか、「もっと良い商品はないの?」と言うように、より高いものを望むような傾向すらあります。それによって価格が高くなったとしても、「一時的なことだから・・・」と自分を納得させてしまうのです。そして、納品伝票はそのまま納品ファイルに入れられるということを繰り返すうちに、価格に対する感覚がどんどん鈍くなっていてしまいます。
これは非常に危険なこと。常に野菜の価格に敏感になり細かな指示を出せるようにしたいものです

まとめ

野菜の価格が乱高下する理由と、その対策について考えてきました。
天候不順はこれからますます顕著になり、店舗の努力だけではどうにもならない時代がやってきます。今は野菜があまりにも高価になると、その商品の販売を休止するしかありませんが、この先は「季節変動」によってシーズンで価格を変える等の方法も出てくるのかもしれません。何がベストなのかを冷静に判断し、経営判断を見誤らないようにすべきです。

 

 


 

ライタープロフィール
原田 園子

兵庫県出身。  株式会社モスフードサービス、「月刊起業塾」「わたしのきれい」編集長を経てフリーライター、WEBディレクターとして活動中。