「仕入れコストが上昇し、経営を圧迫している」「最近在庫が増加し、回転が悪くなっている」といった悩みを抱えている飲食店経営者は少なくないでしょう。そのような場合、数的にメニュー構成を検証し、効率化を図ってみるのも有効です。中でも「ABC分析」は、飲食店経営に長く広く使われている数的管理スキームのひとつです。本記事では、飲食店経営者のための「ABC分析」の基本をお伝えします。
「ABC分析」とは何か?
「ABC分析」は、メニューを構成する各アイテムを売上高や利益額順にリスティングして、多い順からABCの三グループに分類する数的管理スキームです。「ABC分析」は、1951年にアメリカの大手電機メーカー・ゼネラルエレクトリックのマネージャー、フォード・ディッキー(Ford Dickie)が発案したもので、発表直後から各業界で広く採用され、飲食業界においても導入が進みました。
ディッキーは当初、工場で使われる部品や材料などの在庫の適正化を図るため、「死蔵在庫」を見つけ出すためにABC分析を活用しましたが、ABC分析はやがて「売れ筋」をハイライトするための売上分析や、アイテムごとの利益貢献度を図る利益分析などにも使われるようになり、飲食業界においては、特に売上分析などにおいて広く使われるようになりました。
上位20%のアイテムが全体売上の80%を構成?
ディッキーが「ABC分析」の母体としたのが、イタリアの経済学者ヴィルフレド・パレートが発見した「パレートの法則」です。1900年代初頭、ローザンヌ大学で教鞭を執っていたパレートは、当時のイタリア国土の80%が全人口の20%によって所有されているという事実に気付きました。パレートはその原理を経済学的に広く応用し、特に経営学的に活用し、多くの事業においては「売上の80%は、上位20%のアイテムが生み出している」という原則を導いたのです。なお、このことから「パレートの法則」は、一般的に「80:20の法則」とも呼ばれています。
「ABC分析」のやり方
では、「ABC分析」の実際のやり方を説明します。例えば、ある飲食店におけるメニューアイテムが以下の10品であったとします。
カツ丼・天丼・牛丼・親子丼・卵丼・中華丼・マーボー丼・うなぎ丼・ビビンバ丼・海鮮丼
「売上高順」にABC分析を行う場合、上記メニューアイテムの直近1ヶ月の合計売上高を計算し、売上高が多い順にリストアップします。

次いで、各アイテムの売上高の総売上高に占める割合と、累計パーセンテージを求めます。

累計パーセンテージが出たら、累計80パーセンテージまでをA、80%から90%までをB、90%超をCと、それぞれランク分けします。
Aランクのアイテムは定番メニューとすべきアイテムです。野球で言えば一軍スターティングメンバーで、チーム最強のレギュラーメンバーです。Aランクのアイテムについては、さらなる品質の向上や、関連アイテムをセットで販売するクロスセル戦略などが適用できないか検討します。
Bランクのアイテムは準一軍とすべきメンバーです。普段は控えに回っているものの、時と場合によっては一軍入りする可能性があります。Bランクのアイテムについては様子見をして、付加価値を付けるなどしても一軍入りが難しいと判断されれば、新アイテムと入れ替えの検討などを行います。
Cランクのアイテムは戦力外とすべきアイテムです。Cランクのアイテムは相応の売上を上げていないばかりか、余剰在庫などで不必要なコストを発生させます。速やかに廃番とするべきです。
理想的には、Aランクが恒常的に稼ぎ頭となる一方で、BランクがAランク入りを目指す状態に置かれ、Cランクはスクラップされて全体的にメニューの新陳代謝がスピーディーに行われる状態を目指します。
なお、上の例では一カ月単位で集計しましたが、業態に合わせて一週間単位などのより短い期間や、あるいは四半期などのより長い期間等々、適切な期間を設定してください。
「ABC分析」のメリットとデメリット
では、「ABC分析」のメリットとデメリットは何でしょうか。それぞれ説明します。
「ABC分析」のメリット
「ABC分析」の最大のメリットは、メニュー構成に新陳代謝を加えることができ、常に売れ筋のアイテムが売上全体を引っ張る好循環を実現できることです。売れ筋を把握して販売機会を最大化させる戦略は飲食店や小売業などが広く採用している販売戦略です。コンビニなどでも「死に筋」のアイテムは常時棚から降ろされ、売れ筋商品とリプレースされています。飲食店も同様に、メニュー構成を常に売れ筋で満たすことで顧客ニーズに対応し、売上の向上が期待できます。
「ABC分析」のデメリット
一方、「ABC分析」のデメリットですが、売れ筋アイテムをメニュー構成の主軸に据えることで、「裏メニュー」などの特殊なニーズに応えることができなくなる点が挙げられます。特に「死に筋」アイテムには、往々にして熱心なファンがついているケースが少なくなく、Cランクのアイテムを廃番にすることでそのような熱心なファンを切り捨てる結果になることがあります。意図的にメニューアイテム数を多くする「ロングテール戦略」を採用している飲食店の場合、ABC分析の結果「ロングテール戦略」そのものを否定することになる可能性があります。
「ABC分析」を簡単に行える、POSシステム「ポス・キューブ」
なお、飲食店における「ABC分析」は、一般的にはPOSレジなどのPOSシステムを使って行われています。本ブログ「飲食店経営プロ」を主催している株式会社フォウカスのPOSシステム「ポス・キューブ(poscube)」は、売上入力、注文、会計、売上管理までをワンストップで実行できる優れたアプリケーションです。売上詳細を日毎、月毎、あるいは指定した期間で表示でき、売れ筋アイテムを簡単に確認できます。CSV形式のファイルでダウンロード可能で、エクセルなどの表計算ソフトなどと連動もできます。
紙の伝票などをベースにして、手動でABC分析を行うことも可能ですが、メニュー数や売上高がそれなりに多いお店の場合、現実的ではありません。
特にABC分析を定期的に行って時系列で管理したいといった場合、poscubeなどのPOSシステムをお使いになることをおすすめします。
「ABC分析」は、売上分析のほかにも利益分析や在庫分析、顧客のデモグラフィ分析なども利用できます。「ABC分析」を上手にお店の経営に取り入れ、さらなる業績のアップと顧客満足度の向上を目指しましょう。
導入後のサポート体制も整ってます、お気軽にお問い合わせください。
参考サイト
https://www.can-do.de/en/info/knowledge/abc-analysis
https://managerestaurant.info/en/abc-analysis-in-restaurant/
大学卒業後渡米し、ロサンゼルスで飲食ビジネスを立ち上げる。帰国後複数の企業の起業や経営に携わり、2001年に経営コンサルタントとして独立。新規事業立上げ、マーケティング、アメリカ市場進出のコンサルティングを行っている。米国のベストセラー『インバウンド マーケティング』(すばる舎リンケージ)の翻訳者。明治学院大学経済学部経営学科博士課程修了、経営学修士。


