テイクアウトが当たり前になった今、利益確保にはさらなる工夫が必要となっています。そのひとつがパッケージ選びではないでしょうか。
これは単なる備品選びではなく、売上と利益を左右する重要な戦略とも言えます。同じ料理でも、容器の選び方一つで美味しさが変わり、見栄えがよくなり、多少価格が上がっても顧客満足度やリピート率に直結します。
逆に、容器コストは利益率を圧迫する要因にもなり得るため、素材や形状、デザインの選択を誤ると収益性に影響します。
今回は、素材ごとの特徴やメニュー別の最適な容器、オペレーションを効率化する工夫、さらにはブランディングやコスト管理の観点まで、飲食店が実務で活かせる方法をお届けします。
なぜ今、テイクアウトが重要か
ここ数年、飲食業界を取り巻く環境は大きく変化しました。人口減少や人件費高騰といった課題に加え、消費者の食生活の多様化が進んだからです。
テイクアウトが増えたのはコロナ禍。当初は「やむを得ず」利用されていたUber EATS、出前館などテイクアウトやデリバリーが、その利便性から日常生活に根付きました。もはや「一時的な売上補完」ではなく、経営戦略の柱として位置づけられる存在になったと言えます。
消費者は「自宅や職場で外食の味を楽しむ」習慣を持ち、テイクアウト市場は継続的に拡大。特に都市部ではランチタイムの需要、郊外では家庭向けの夕食需要が拡大しており、店内席数や営業時間に縛られない収益を生み出せることが魅力です。
つまり飲食店経営者にとって、今後もテイクアウトを強化することは避けて通れないといっても過言ではありません。
成功するテイクアウトの条件
テイクアウトは導入さえすれば何でもよいというわけではありません。成功するためにはメニュー選びと、使用するパッケージを見極める必要があります。
持ち帰りでも“味が落ちない”メニューの見極め
店内で人気の料理が、そのままテイクアウトでも受け入れられるとは限りません。揚げ物が冷めてベタついたり、麺が伸びてしまったり、サラダが水っぽくなると、お客は期待を裏切られたと感じます。
そうならないために、テイクアウト用には「時間が経っても味や見た目が大きく劣化しない料理」を選ぶことが重要です。自分たちで候補を挙げ、実際に時間をおいて試食することが重要です。その上で、サラダのドレッシングや料理のソース類を別の容器にするなどし、できるだけ店内と同じ味わいになることを目指してください。
また、テイクアウト専用メニューを開発することも有効な場合もあります。
パッケージ・容器選びの重要性
パッケージや容器は味や品質を守る役割だけではありません。見た目の印象は料理そのものの評価を大きく左右します。透明感のある蓋で中身が美味しそうに見えれば食欲が増す一方、蓋が曇って見えにくければ味に自信があっても伝わりません。
例えば、唐揚げは通気孔付きの容器を使えば揚げたて感をある程度維持できますし、麺類はセパレート容器を活用すれば、食べる直前にスープを合わせられ、麺がのびません。
また、人気商品であっても、持ち帰り容器に入れると少なく見えてしまったり、盛り付けが貧相になったりすることもあります。これを避けるためにも容器選びは重要です。
さらに、選ぶ容器によって利便性も大きく変わります。フタの開けやすさ、電子レンジ対応の可否、スプーンや箸のセット方法など、小さな違いが顧客体験を左右します。テイクアウトがどれだけ利用されるかは、料理の味だけでなく「容器を含めた総合的な体験」によって決まるのです。
価格設定と利益確保
テイクアウトでは、容器や袋、ラベル、割り箸などのコストが必ず発生します。これらを考慮せずに価格を設定すると、知らない間に利益率が下がってしまいます。
では、容器などにどれくらいのコストをかければよいのでしょうか?
基本的には「販売価格の5〜10%」を容器コストに収めることが理想とされます。例えば、800円のお弁当なら容器コストは40〜80円程度が目安です。容器を工夫すれば、見栄えを損なわずにコストを抑えられる場合も多いため、コストとブランド性のバランスを考えることが求められます。
丸亀製麺のうどん弁当は表示価格に50円の容器代を取っています。
つまり、テイクアウトの価格設定は「料理原価+容器コスト」を含めた上で、しっかりと利益を残せる構造を作ることが不可欠です。
箸やスプーン、おしぼりなどをデフォルトで付けず、「希望者のみ」に切り替えることで、年間で数十万円単位のコスト削減になる場合もあります。ロット数による単価ブレイク(1,000個・5,000個・10,000個など)も把握しておき、仕入れ計画を立てるとより安定したコスト管理が可能になります。
「美味しさを運ぶ」設計思想:温度・食感・香りを守る3要素
容器を選ぶ際に重要なのは、温度保持、食感維持、香り移りの3点です。それぞれについて解説していきます。
温度保持
料理の美味しさは「温度」に大きく左右されます。ラーメンやカレーなどの温かい料理は、熱が逃げにくい容器を選ぶことで満足度が上がります。断熱性の高い二重構造容器やPSP(発泡ポリスチレン)素材の容器を活用すると温かいまま持ち帰れます。
一方で、冷たいスイーツやサラダは保冷効果を高める必要があります。防曇蓋や保冷剤を組み合わせることで、見た目と鮮度を維持できます。温度帯ごとに容器を分けることが、品質維持の第一歩です。
食感維持(揚げ物の“湿気対策”など)
揚げ物は「サクサク感」が命です。ところが、温かいまま密閉容器に入れると蒸気でべちゃっとしてしまいます。そこで有効なのが、通気孔付きの蓋や内トレイです。余分な水分を逃がし、衣が湿気を吸わないようにすることで、揚げたてに近い食感を楽しんでもらえます。
麺類では逆に乾燥が問題になる場合があります。セパレート容器を活用し、麺とスープを分けることで「伸び」と「汁漏れ」の両方を防げます。
松屋では牛丼を直盛りかセパレートか容器を選べるようにしておりこうした細かな容器への工夫が、顧客満足度を大きく左右します。
香りの逃げ・移り
料理は香りも含めて楽しむものです。カレーやガーリック系料理は香りが飛びやすい一方、他の商品に移りやすい特徴もあります。ここでは密閉度の高い容器を選ぶとともに、通気性とのバランスを取る必要があります。
例えば、ラーメンのスープは完全密閉で漏れを防ぎつつ、揚げ物は通気孔を確保するなど、メニューごとに最適な香り管理を行うことが重要です。これもまた、容器スタイルをどう組み合わせるかの戦略的判断です。
素材別、容器の最適解
ここではテイクアウト容器を「素材」の面から見ていきましょう。どの素材も一長一短があり、メニューや提供シーンに応じて最適解は変わります。テイクアウト容器としてよく使われる代表的な素材の特徴を紹介します。
• PP(ポリプロピレン)

耐熱性が高く、電子レンジ対応が可能。油にも強いため、丼物やカレー、炒め物系に最適です。デメリットは透明度が低いことですが、耐久性とコストのバランスに優れた容器です。
• PET(ポリエチレンテレフタレート)
透明度と剛性に優れ、サラダやスイーツなど「見せる」商品に適しています。冷蔵保存にも強い一方、耐熱性は低く、レンジ加熱には向きません。見栄えを重視したい場合に有効です。
• PSP(発泡ポリスチレン)
非常に軽量で保温性も高く、コストも安価。短距離・短時間の持ち帰りに適しています。ただし熱に弱く(耐熱温度は80℃)、耐久性も劣るため、スープや油分の多い料理には不向き。電子レンジも使用できません。
• 紙・クラフト

ナチュラル感があり、環境配慮型として好印象を持たれる素材。内側にラミネート加工を施すことで油や水分にも対応できます。軽食やベーカリー商品に多用されます。
• バガス(サトウキビ繊維)
サステナブル素材として注目されており、耐油性・耐熱性に優れています。レンジ対応規格も増え、環境配慮をアピールしたい店舗におすすめです。
• アルミ
高い保温性と耐熱性を持ち、オーブン調理にも対応可能。グラタンや焼き料理、パエリアなどに活用できます。高級感を演出できる反面、電子レンジ不可のため利用シーンは限定されます。
容器を決めるときは素材の特徴を踏まえ、「何を守りたいのか(温度・見栄え・コスト・環境)」を明確にすることから始めるとよいでしょう。
容器を選ぶさまざまな観点
容器選びは単純に「入ればよい」という発想では成功しません。飲食店が考えるべきは、調理オペレーションから顧客体験、さらにコスト構造やブランディングまで一貫した視点です。
温度と湿度のコントロール設計
断熱性のある二重構造や、通気孔を設けたフタで、揚げ物のサクサク感を維持します。結露を防ぐために防曇加工を選ぶことも重要です。
漏れ・破損ゼロのための“ふた”選定基準
嵌合タイプやスクリュー式など、強度の異なるフタを使い分けます。デリバリー用途ではテープ止めやカチッとロックが必須です。
電子レンジ・食べやすさ対応
電子レンジの使用の可否に関する表示の有無はクレーム防止につながります。開封のしやすさや持ちやすさも重要な要素です。温めなおしが想定される商品は、「レンジ使用可」などのシールで分かりやすく表示すると親切です。
ブランディング×情報設計
ロゴ印刷、ステッカー、アレルゲン表示、再加熱方法などを容器上で伝えることで、顧客に「安心」と「ブランド感」を同時に届けられます。
スターバックスコーヒーのロゴは度重なる更新でブランド名の文字まで省略されるまで浸透した例になります。
エコ対応とコストの最適点
紙やバイオマス素材を取り入れると環境意識の高い層に響きます。ただしパッケージの単価が高くなる場合もあるため、費用対効果を見極める必要があります。
容器起点のオペレーション設計
詰めやすさ(作業秒数)やラベル動線を考えることで、調理から受け渡しまでの流れがスムーズになります。オペレーションに合った容器を選ぶことが効率化の鍵です。
マーケティング視点
低コストでブランド効果を高める方法としてステッカーや帯(スリーブ)をつける方法があります。容器に印刷するよりも安価でありながら、ブランドカラーやロゴを強調できます。さらに、QRコードを印刷して公式LINEやInstagramへ誘導すれば、受け取った後の顧客をリピーターへと育成できます。容器は「料理を運ぶ道具」であると同時に「マーケティングツール」でもあることも意識してください。
メニュー別 “勝てる容器”の見つけ方
料理ごとに求められる容器条件は大きく異なります。ここでは代表的なメニューごとの容器選びのポイントを整理します。
• 揚げ物
上蓋にベンチ穴を開け、内トレイで油を下に落とすスタイルが効果的。耐油紙袋を併用すれば、サクサク感をキープできます。
• ラーメン
スープと麺を分けるセパレート容器が最適。食べる直前にスープとあわせる仕様にすれば、伸びを防ぎつつ熱々感も再現可能です。
• 丼・カレー
ルーとご飯を分ける容器スタイルで、漏れとベタつきが防止できます。ドーム蓋を使えば見栄えが増し、同じ量でも満足感が高まります。
• 寿司・生もの
PET透明蓋に防曇加工を施し、見栄えと鮮度を確保。保冷剤を組み合わせることで食中毒リスクを低減できます。
• サラダ・冷惣菜
防曇蓋で鮮度を見せつつ、ドレッシングは別添にするのが鉄則。時間が経っても野菜が水っぽくなりません。
• スイーツ
結露を防ぐ防曇蓋+容器内に空間を確保し、崩れを防止。透明感のある容器は「映え」に直結します。
• スープ・汁物
スクリュー式の蓋やタッパー型を採用し、デリバリー中の漏れをゼロに。熱保持力も高いのが特徴です。
• ドリンク
二重カップやスリーブで温冷両対応。カフェ業態では見た目の統一感がブランド印象を強めます。
メニュー別に容器スタイルを最適化することが、顧客満足度を継続的に高める鍵です。
発注先は「容器スタイル」がおすすめ

パッケージを選ぶときにもう一つ重要なのが、サプライヤーの選択です。
こだわりの容器があっても、発注から納品までの期間が長いとチャンスロスになりますし、ケース単位でしか発注ができないと在庫であふれてしまうからです。
この観点から考えると、「容器スタイル」がお勧めです。
容器スタイルでは使い捨て食品容器と紙箱・紙皿をあわせると4000種以上の品揃えがあり、箸や袋などの消耗品の他、洗剤や販促用品など、飲食店運営に必要なものが一通り揃います。弁当箱の多くはケースではなく、50セット程度のバラ発注が可能で、本体と蓋をわけて発注するスタイルなので、蓋を共用で使うなどすれば保管スペースも少量で済みます。
そして何よりも、納品が早いことが評価のポイント。弁当箱をバラ発注する場合、当日発送のものが多いので便利です。また、パッケージへの印刷などの名入れも可能。サンプルを発注できるものも多いので、店舗戦略にあった容器を探したいときに最適なサプライヤーと言えるでしょう。
デリバリーの不安を解消する

テイクアウトと同時に考えたいのがデリバリーです。
これは「運ぶ」という工程が加わる分、店内提供や持ち帰りよりもトラブルリスクが高くなります。代表的なのは、スープやソースの漏れ、容器の破損、あるいはドライバーによるいたずらへの不安です。これらを防ぐには容器の工夫と、追加の安全対策が不可欠です。
特に有効なのが「タンパーエビデントシール(改ざん防止証拠)」です。これは一度開けると元に戻せない封印シールのことで、「受け取った商品は誰にも触れられていない」という安心感を顧客に与えます。アメリカや欧州では義務化の動きがあるほどで、日本でも導入する飲食店が増えています。コストは1枚数円ですが、「安心を買う」と思えば十分に投資価値があります。
また、容器自体の強度も重要です。持ち帰り用では問題なくても、デリバリーでバイクや自転車に乗せると傾きや衝撃に耐えられないケースがあります。テストとして「実際に揺らす・逆さにする」などを行い、商品特性に合った容器を選びましょう。
まとめ
テイクアウトの成功は「美味しい料理を作ること」だけでは成り立ちません。温度や食感を守るための容器の工夫、ブランディングを意識したデザイン、利益を確保するためのコスト管理、そのすべてが連動して初めて成果につながります。
飲食店経営者は、容器を単なる消耗品と考えるのではなく、売上と利益を左右する経営戦略の一部として位置づけるべきです。容器を含めた総合的な発想でテイクアウトに取り組むことで、新しい顧客を獲得し、ブランド価値を高め、安定した収益を確保することが可能になります。
ライタープロフィール
原田 園子
兵庫県出身。
株式会社モスフードサービス、「月刊起業塾」「わたしのきれい」編集長を経てフリーライター、WEBディレクターとして活動中。 https://radasono.wixsite.com/portfolio
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