アメリカ現地時間の2025年4月2日、トランプ大統領が世界各国からの輸入品に対して関税を発動する大統領令に署名、いわゆるトランプ関税が本格的にスタートした。同関税はその後、日本などの報復措置をとらなかった国などを対象に90日間発動が猶予されたが、先行きは以前不透明なままだ。トランプ関税により世界中が混乱しつつある中、当のアメリカ国民も多大な影響を受け始めている。トランプ関税によるアメリカの飲食店に与える影響について解説する。
世界中に衝撃を与えた「トランプ関税」
日本24%、EU20%、韓国25%、インド26%、タイ36%、インドネシア32%、ベトナム46%、台湾32%。2025年4月2日にホワイトハウスでトランプ大統領が誇らしげに発表した各国に対する関税率だ。各国ともに軒並み高い関税が発表さられた。圧巻は何といっても中国に対する関税だろう。
トランプ大統領は中国からの輸入品に対する関税率を徐々に引き上げ、一番高い時では145%もの関税を課していた。対する中国も報復としてアメリカからの輸入品に125%の関税を課したが、結果アメリカに有利な展開で進んでいるようだ。アメリカへの輸出を事実上ストップさせられた中国では、各輸出港の埠頭にカーゴコンテナが野ざらしで山積みにされ、行くあてがないまま放置されている。荷主の中には、コンテナごと海中へ投棄し始める者も出たという。
2022年度の中国からアメリカへの食品の輸出額は40億ドル(約5800億円)で、アメリカの食料サプライチェーンを構成する重要な一部となっているが、それが突然ストップさせられてしまったのだから関係者が受ける影響は果てしなく大きいだろう。
トランプ関税がアメリカの飲食店に与える影響
トランプ関税がアメリカの飲食店に与える影響のうち、最大のものはやはり食材などの仕入れコストの上昇だ。州によって違いがあるが、広大な国土を持つアメリカ自身が巨大な農業大国である一方、農産物の大口輸入国でもある。
特に隣接しているカナダとメキシコからの輸入品が多く、2024年度におけるメキシコからのアメリカへの農産物の輸入額416億ドル(約6兆320億円)、カナダからアメリカへの農産物の輸入額350億ドル(約5兆750億円)で、それぞれアメリカの農産物輸入額では一位と二位だ。特にメキシコからアメリカへ輸入される果物が多く、2023年の一年間にアメリカ国内で消費される果物の47%がメキシコから輸入されている。
米レストラン協会のミシェル・コーズモ会長は、
「輸入農産物などに課せられる関税の影響により仕入れコストが大幅に上昇し、多くの飲食店が経営を続けることが困難になるでしょう。価格の上昇とともに食材の在庫管理も不安定になり、仕入れそのものに支障を来すことになる可能性もあります」
と、飲食店に与える影響を危惧している。
EUからの輸入ワインのコストが5倍に?
隣国のカナダとメキシコと共に、EUもトランプ政権により高率の関税が課せられようとしている。EUはトランプ政権と「報復関税合戦」を開始しているが、直近でトランプ大統領はEUから輸入されるワインやシャンパンなどのアルコール飲料に200%の関税を課すと表明している。仮にそれが実現すると価格100ドルのフランス産ワインの輸入につき200ドルの関税が課せられることになり、コストが一挙に三倍に跳ね上がってしまう。
ニューヨーク・イーストビレッジでワインバーを経営するチェイス・シンザー氏は、
「我々の売上はワインに依存しています。アメリカのワインの流通ルートは非常に複雑で、我々は長年かけて独自の調達ルートを築いてきました。それが、我々のビジネスの強みとなったのです。しかし、トランプ政権によりヨーロッパからの輸入ワインに高率の関税が課せられると、我々のビジネスそのものが成り立たたなくなります。メニュー価格が相応に上昇するとともに、アメリカへのワイン輸出を停止する現地の業者も出てくることでしょう。トランプ関税は、ヨーロッパ産ワインを提供しているすべての飲食店の経営に悪影響を与えるでしょう」
と警告を発している。
現地の日本食レストランはどうなる?
トランプ関税の影響を受けるのはヨーロッパ産ワインを提供しているレストランだけではない。日本から食材を輸入しているアメリカ国内の日本食レストランも大きな影響を受けることになる。特に本格的な寿司を提供している高級和食レストランは、相応に大きな影響を受けることになるだろう。
アメリカの高級和食レストランの多くは、寿司ネタなどの食材を日本からの輸入に頼っている。寿司ネタは東京の豊洲市場などでバイヤーが買付け、冷凍・冷蔵便でほぼ毎日アメリカへ空輸されている。アメリカの「寿司文化」は、日本の寿司サプライチェーンの延長として発展してきた歴史があり、現在もそのサプライチェーンをベースに全米の多くの寿司店に寿司ネタが供給されている。その寿司ネタに対しても、トランプ政権は24%の関税を課そうとしている。
寿司ネタ以外にも、地酒などの日本酒、醬油や味醂などの和食調味料、食器類、厨房機器といった日本食レストランの運営に必要な物のほぼすべてに対して関税がかけられると、出店コストと出店後の運営コストも相応にアップすることになる。現在、アメリカで運営している日本食レストランの多くは、食材などの値上がりにより経営が難しくなってきているが、トランプ関税によりコストがさらに上昇すると、経営がますます困難になってくる。
トランプ関税は、一般のアメリカ国民に多大な影響を与えるとともに、アメリカ国内で営業するほぼすべての飲食店にも大きな影響を与えつつある。トランプ関税と言う名の大嵐が一刻も早く過ぎ去り、飲食店経営者に平安が訪れるよう祈るばかりである。
参考サイト
https://www.eater.com/24401316/trump-tariffs-effects-on-food-spices-explained-burlap-barrel-natoora-tuk-tuk-snack-shop-interview
https://restaurant.org/research-and-media/media/press-releases/national-restaurant-association-statement-on-trump-reciprocal-tariff-announcement/
大学卒業後渡米し、ロサンゼルスで飲食ビジネスを立ち上げる。帰国後複数の企業の起業や経営に携わり、2001年に経営コンサルタントとして独立。新規事業立上げ、マーケティング、アメリカ市場進出のコンサルティングを行っている。米国のベストセラー『インバウンド マーケティング』(すばる舎リンケージ)の翻訳者。明治学院大学経済学部経営学科博士課程修了、経営学修士。飲食店のPOSレジ&モバイルオーダーなら「poscube」がおすすめ!
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