飲食店は清潔感が重要。これは飲食店では常識と言えるでしょう。実際に耳にする機会も多くあります。
ですが、「なぜ掃除が重要か?」と聞かれると答えられないも多いのかもしれません。自らが動くだけでなく、アルバイトを含む全員で取り組まなければいけない清掃。
ここでは、なぜ掃除が大切なのかを考えた上で、実際に掃除をする際のポイントを解説します。



清掃を重視する店舗だけが生き残れる

繁盛している飲食店の中には、「1日の仕事はトイレ掃除から始める」というところが多くあります。また、飲食店に限らず、実際に繁盛している店舗は掃除が行き届いており、不快感を持つことはありません。

中には、「あまり衛生的ではないのに繁盛している?」という印象を持つ店舗もありますが、よく見てみると、単に店舗が古ぼけているだけ。むしろ、清掃は十分すぎるほどに行き届いている場合もあります。

逆に、オープンして数年は店舗の新しさに支えられ清潔感があったのに、数年後には見る影もないほどに汚れが目立つようになり、結局つぶれていく店もあります。

 

清掃の行き届いた飲食店しか流行らない3つの理由

では、清潔な印象の飲食店しか流行らないのは、なぜでしょうか。
これには3つの理由があると思います。

飲食クラウドファンディング1つ目は、人は整理された空間を心地よいと感じるということです。
誰もが子供の頃、親に「片付けなさい」と言われたことがあるはずです。整理整頓が行き届いていることが好ましい状態であり、そういった場所でこそリラックスできたり、新しいアイデアが浮かんだりするのです。

次に、お客様は非日常を求めて飲食店に来るということ。整理整頓が行き届いていない店舗に置いてあるものの定番は、会計の伝票やもう使わなくなった販促グッズなど。中には店舗運営に関係ないものもあり、生活感が溢れてしまいます。これでは、お客が求める非日常とはかけ離れてしまいます。そういった場では、リラックスできるはずがありません。

そして3つ目は衛生面の問題です。一般的に考えて、店内に余分なものがごちゃごちゃと置いてあるけれど、衛生面では問題がないとは考えづらいものです。書類などが積まれていれば、そこに害虫が発生し、食品も汚染してしまいます。整理整頓ができていないのなら、衛生面に無頓着であると思われて当然です。その結果、客足は減ることになります。

 

特に高いレベルを求められる日本

日本人は特に清潔好きだと言われます。プライベートな外出でも除菌シート持ち歩き、トイレに行けばウォシュレット。しかも、便座のフタは手を触れずに開けることができる国は、日本以外にありません。

また、毎日お風呂に入るのは当然。ちょっと汗をかいただけでシャワーを浴びることを見ても、日本人が清潔好きなことは一目瞭然です。このような日本で求められるのは、清掃が行き届いていて、常に清潔な場所となるわけです。

飲食店では、テーブルクロスについた小さなシミも大きなマイナスポイント。また、見た目がきれいなだけではなく、ちょっと生ゴミの臭いがしたというだけで敬遠されてしまいます。これに関しては客席だけでなく、厨房内の清潔までも心がけることが必要なのです。

ちなみに海外では、すべての飲食店に整理整頓された空間や清潔感を求めない国もあります。

 

クレンリネスとサニテーションの違い

ここまで、清掃と清潔を一緒に書いてきましたが、ここで一旦整理しましょう。飲食店が心がけるべきことに、クレンリネスとサニテーションがあることはご存知でしょうか。

クレンリネスとはいわゆる清掃に大きく関わる部分です。店頭や店内がきれいに掃除されていること、ディスプレイなどがホコリひとつなく、正しく管理されていることもクレンリネスに含まれます。

Photo by The Honest Company on Unsplash
Photo by The Honest Company on Unsplash

一方、サニテーションとは安心安全に関わることです。食品が正しい温度管理のもと整理整頓されて保管されることで食中毒を防止することなどを指します。

特に飲食店においてはサニテーションが重要です。食中毒菌は目に見えません。それゆえ、食材や備品などが正しく管理、使用されることが食中毒の予防には欠かせません。先にも述べたように、クレンリネスは行き届いているのにサニテーションに問題があるということは考えにくく、これらは合わせて考えるべきと言えるでしょう。

もちろん、「いかにして食中毒を予防するか」など理論の部分は別で考える必要があります。ただ、日頃心がけることとしては一致している部分が多いという意味です。

 

不衛生な店が抱えるリスク

整理整頓ができない店、不衛生な店が抱えるリスクを考えていましょう。

まず直接的なものとして、食材の先入れ先出しや正しい温度管理での保管ができないことで食中毒の発生リスクが高まります。たとえば、冷蔵庫の中の整理整頓ができていなければ、冷風が全体に行き渡ることはありません。そのため冷凍冷蔵庫の温度表示は正しくても、場所によっては温度が高くなり、食中毒菌が繁殖することになります。

また、鍋などの厨房備品を正しく洗っていない、洗ったとしても不衛生な場所に保存されていると、思わぬ形で食中毒発生のリスクが高まります。中には、夜になるとネズミが大量発生しているのに、侵入経路を特定できないということがあります。ネズミの駆除は通路を防ぐことが必須。そのため、ものが乱雑に置かれた場所では侵入を防ぐことができません。

他にも、グリストラップの清掃が行き届いておらず、フタを開けたらゴキブリが大量発生しているというケースもよく見られます。こういう状況では、いつ食中毒が発生するとも限りません。

さらに、このような店舗では、思わぬ風評に悩まされることもあります。食あたりを起こしたお客が、「あの店で食事をしたら食中毒になった」と騒ぎ立て、妙な噂が立ったというケースはよくある話です。

 

思わぬトラブルが起こるケースも

思わぬトラブルが起こるケースも
さらに、整理整頓ができてないためにお客に不慮の事故など、トラブルを引き起こすこともあります。

筆者が知っている中では、店の隅に大量に積んであった書類とディスプレイなどの山が崩れ、近くにいたお客が大怪我をするという例がありました。

また、不衛生な店に対してストレスを感じるのはお客だけではありません。アルバイトが居着かない理由を聞き取り調査したところ、「事務所が汚くて行く気にならない」という声が多く聞かれたケースもあります。さらに、ユニフォームが汚くて匂うという場合は、店舗に残ったアルバイトが不潔な感じの人だけだったということも。

このような店舗では、お客も来ず、従業員もいないという悲劇的な結果となり、最終的には閉店という道を辿るしかなくなります。

このように整理整頓ができてない店舗に良いことはありません。清掃は本来、時間をかけなければできないことではなく、少しの隙間時間に心がければよいこと。その習慣が店舗を清潔な状態に保つ唯一の手段となります。

 

掃除は日々の積み重ね。効果的な清掃管理のポイント

店舗が目指すべきレベルは、一般家庭の一歩上です。一般家庭レベルで妥協していると、「なんとなく汚い店」というイメージを持つ人がいるのです。その一方、毎日店舗にいる人は汚いところが目に入らなくなっています。その点を理解し、注意深く店内をチェックするべきです。

Photo by Zhanjiang Chen on Unsplash
Photo by Zhanjiang Chen on Unsplash

最初に取りかかるのは、明らかに掃除ができていないと思われるところをゼロにすること。もちろんこれは最低レベルの話。不要なものは廃棄し、置いておくものはキッチリと整理します。

また、毎日しなければならないこと、たとえばトイレ掃除やフロア、店頭のホウキがけなどをリストアップし、できていないところがあれば、どの時間帯にやるべきなのかを決めてしまいます。

上記かできるようになったら、次は本格的にきれいな店を目指しましょう。

掃除や整理整頓は、定例化することでクリアできます。たとえば、厨房であればフードやグリストラップ、客席であれば椅子やテーブルの脚など、完全に汚れてからでは清掃は大変でも、汚れきる前に定期的にやることで、短時間で完了できるはずです

これらは毎日やるべきこと、週に1回のこと、月に1回でいいこと、年に1回で十分なことといろいろあるはず。リストアップしたら一覧表にして貼り出し、手が空いたらやるべきこととして習慣化します。

具体例をあげれば、牛丼屋の場合、客席に置いてあるソース類は毎日補充する必要があるでしょう。ですが、それが置いてあるプレートは週に1回程度の掃除でよいものです。また、窓拭きも、毎日やるべきところと週に1回でよいところがあるかもしれません。これらをわかりやすく書き出し、貼っておくというわけです。

 

清掃用具もしっかりと用意をする

清潔感のない店に共通することとして、清掃用具が完備されていないことがあげられます。掃除をしようと思っても、手にしたくないような雑巾しかなければ、手が空いたからといって気軽に掃除はできません。これを防ぐために、清掃用具の置き場所を決め、管理するようにします。

また、必要な部分には、しっかりとお金をかけます。たとえばモップであれば、柄の部分がおれていたり、木材で黒くなっていたりしたのでは掃除をする気が失せてしまいます。これは丈夫で、洗える素材のものを購入しておく方がよいでしょう。その一方、モップの先の部分は頻繁に変える方が清潔かもしれません。その意味では、安いものでいいわけですから、100均のものでも問題はないと言えるでしょう。

雑巾も同じこと。 使い捨てを推奨するわけではありませんが、ある程度汚れたらさっさと捨てて、新しいものに変えることが掃除のしやすさにつながります。意外に盲点になっているのですが、雑巾はドリンクを床にこぼした場合など、お客の目に触れるケースが多くあります。持っていった雑巾が汚なければ、よい印象は与えられません。バケツも同じこと。お客の目に触れることを考え、掃除道具にも清潔さが重要なのです。

 

掃除の仕方、道具の扱いはしっかりと教える

掃除がある程度できる人は、そのやり方を教えない傾向があります。その典型的な例は、アルバイトに対し、「裏にあるホウキとちりとりで店頭をはいておいて」と言うだけのパターン。

指示を出したスタッフからすれば、掃除は誰にでもできることだと言う思い込みがあります。しかしアルバイトの側からすれば、どこからどこまでの場所をどのようにはけばよいのかが分からず、戸惑ってしまいます。今は学校でも掃除は専門の人が来る時代です。ともすれば、ホウキを使ったことがない人もいます。それなのに、「やり方が間違っている」と怒られたのではたまったものではありません。

掃除をやらせる際には必ず、どの道具を使って、どのように掃除をするのかをやって見せること。掃除が終わったら、その道具をどのようにして、どこにしまうかというところまで教えることが基本となります。

店舗をきれいに保つには、オーナーががんばればよいという問題ではなく、アルバイトを含んだ従業員すべてが、日頃からどのように行動するかが重要です。そのためにどうすればよいのかを考えて行動するようにしてください。



定期清掃を外注化している店ほど店内が汚い現実

筆者は多くの飲食店に行きますが、掃除がいまひとつ行き届いていないと感じる店舗には、定期清掃を外注化しているところが意外に多いと感じています。

このような場合、清掃頻度あげればいいのかと言うと、必ずしもそうではありません。なぜなら、外注業者がどこを掃除してくれるのかを把握しておらず、結局、誰も掃除していないところが存在するからです。その結果、掃除が行き届いてない店だと思われてしまうのです。

清潔感とはトータルで判断されるものであり、定期清掃が入る直前は激しく汚れていてもしょうがないと考えるのは店舗側であり、お客はそう考えていません

定期清掃を外注化するのは正しいことですが、だからといって掃除をしなくてよいと考えるのは大きな間違い。定期清掃は大掃除のようなものです。掃除してくれるところとしてくれないところを明確にしつつ、常に清潔感のある店にするためにはどうすればいいのかを今一度、考えてみるとよいでしょう。

 

まとめ

お店の売り上げが伸びない時、販促やディスカウントなど決して安くはないコストをかけようとする店舗が多くありますが、基本となる掃除ができていなければ、結果的に売り上げが安定して上がることはありません。

飲食店は整理整頓された空間であり、清潔感があるのは基本中の基本。時には客席に座り、どのようなところが気になるのかをチェックしながら、掃除箇所を洗い直すことからはじめてください。

 

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