アメリカで現在活躍中の日本人と言えば、ロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平選手を頭に浮かべる人が多いだろう。一方、現在のアメリカでは多くの日本発飲食店もアメリカ人に受け入れられ、順調に業績を伸ばしている。そんな中でも特に注目なのが、長年「うどん市場の空白地帯」とされてきたアメリカで着実にファンを増やしている丸亀製麺だ。今回は、丸亀製麺とそのアメリカでのパフォーマンスなどをご紹介する。
丸亀製麺について
丸亀製麵の歴史は、2000年11月に第一号店を兵庫県加古川市にオープンしたことから始まる。「釜揚げうどん専門」の「セルフうどん業態店」は低価格で高品質、セントラルキッチンを持たない「自家製麵」とスピーディーなセルフサービスなどが消費者の心に刺さり、丸亀製麺は順調なスタートを切る。翌年2011年11月にはアメリカ・ハワイに海外第一号店を出店し、旺盛な海外展開意欲を見せている。丸亀製麺はその後、日本国内で驚くべきスピードで成長を始め、第一号店オープンの翌年2011年8月には、早くも国内500店舗を達成し、その名を一躍全国ブランドへと押し上げている。
2016年10月には持ち株会社体制に移行し、株式会社丸亀製麵は新たに「株式会社トリドールホールディングス」へ商号変更した。その後、会社分割により改めて株式会社丸亀製麵となり、現在は株式会社トリドールホールディングスの連結子会社として丸亀製麺の事業を展開している。丸亀製麺は現在も郊外型ロードサイド店舗や、ショッピングモール内のフードコート、都心部のビルトイン店舗などを中心に積極的な出店攻勢を仕掛けている。
アメリカの丸亀製麺
アメリカの丸亀製麺の歴史は、2011年11月にアメリカ・ハワイ州ワイキキに「Marukame Udon Waikiki Shop」がオープンしたことから始まる。その後事業主体をMarugame Udon USA, LLC(本社米デラウェア州)へ移行し、ハワイ州、カリフォルニア州、テキサス州を中心に14店舗を運営するまでに事業を拡大している。2024年4月にはカナダ初となるバンクーバー店もオープンさせている。なお、ハワイ出店当初は店名を「Marukame Seimen」と称していたが、今日までに「Marukame Udon」に統一している。
Marugame Udonは、北カリフォルニアではサンフランシスコやシリコンバレーを含むサンフランシスコベイエリアの各主要都市、南カリフォルニアではトーランスやウェストロサンゼルスなどの日本人・日系人が多く住むエリアなどに集中的に出店している。テキサス州では唯一ダラスに、ハワイ州ではワイキキとダウンタウンに二店舗出店している。筆者の見たところ、アメリカの丸亀製麵は日本人・日系人が多く居住するカリフォルニアの各都市から出店攻勢を開始し、現在はテキサス市場へ展開、テキサス州を足場に今後の全米進出への足掛かりを得ようとしているように見える。
主なメニューと価格
アメリカの丸亀製麵のメニューは、見たところ日本のものと大きく変わらないようだ。一方で、価格は昨今の物価高騰の影響などもあり、日本よりも相応に高めの設定となっている。例えば、Marukame Udon トーランス店のメニュー(1ドル 155円で換算)では、
かけうどん(レギュラーサイズ) | 5.95ドル(約922円) |
かけうどん(ラージサイズ) | 6.95ドル(約1,077円) |
きつねうどん(レギュラーサイズ) | 9.45ドル(約1,465円) |
きつねうどん(ラージサイズ) | 10.45ドル(約1,620円) |
ビーフ(肉)うどん(レギュラーサイズ) | 11.55ドル(約1,790円) |
ビーフ(肉)うどん(ラージサイズ) | 12.95ドル(約2,007円) |
肉玉うどん(レギュラーサイズ) | 12.55ドル(約1,945円) |
肉玉うどん(ラージサイズ) | 13.95ドル(約2,162円) |
海老の天ぷら | 2.25ドル(約349円) |
ビッグチキンカツ | 4.85ドル(約751円) |
鶏の天ぷら | 2.85ドル(約442円) |
サツマイモの天ぷら | 1.95ドル(約302円) |
ズッキーニの天ぷら | 1.95ドル(約302円) |
ポテトコロッケ | 2.25ドル(約349円) |
などとなっている。例えば、かけうどんのレギュラーサイズにえびの天ぷらを乗せると合計で、8.20ドル(約1,271円)となる。カリフォルニア州では売上税8%が課されるので65セント上乗せで8.85ドル(約1,371円)となる。さらにチップを20%支払うと1.77ドル追加で10.62ドル(約1,646円)となる。日本と比べると一見高めだが、物価高が続くカリフォルニア州では相当「リーズナブルな価格」に見える。
Marugame Udonの業績はどうなっている?
なお、トリドールホールディングスでは、アメリカを含む海外事業全体をひとつの事業セグメントとしており、アメリカの丸亀製麵「Marugame Udon, LLC」もそのセグメントに含まれている。
2024年6月発表株式会社トリドールホールディングス2024年3月期有価証券報告書によると、2024年3月期の海外事業セグメントの売上収益は886億3700万円で、対前年比で44.2%増のプラスとなっている。事業利益は29億7000万円で、対前年比で64.2%の大幅なプラスとなっている。トリドールホールディングスは、特にアメリカ市場において、「既存店の客数増加や新店が好調に推移したことなどにより増収増益を果たした」と説明している。
Marugame Udonに対するアメリカの消費者の反応は軒並み良好で、旅行・飲食店レビューガイド「Tripadvisor」にはMarugame Udonに対する好意的な評価が多数寄せられている。特にオープンキッチンとビュッフェスタイルの注文方式がアメリカ人にとって斬新なようで、「非常に日本的なスタイルの飲食店だ」「日本にいるような雰囲気を味わえる」といったコメントなどが寄せられている。
アメリカ市場における丸亀製麺の拡大戦略は、そのスタートを切ったばかりだ。今後はニューヨークやシカゴなどのアメリカの他の都市部への進出が想定されている。初動でアメリカ人のハートを掴んだ丸亀製麺の、今後のアメリカでの展開に大いに期待したい。
【参考サイト】