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【自分たちで作れる!】飲食店の店頭販促ツール作成のコツ

お客の「足を止める力」が、繁盛店をつくると言われます。どんなにSNS広告やWebサイトに力を入れても、最初にお客様の目に入るのはファサード(店舗の前)。人通りが多い場所でも、足を止めて中を覗いてもらえなければ意味がありません。
そこで重要になるのが、店頭販促ツール(POP・看板・ポスターなど)。そして、それらを外注せず、スタッフ自身が作るスタイルが広がっています。
理由は明確です。外注コストを抑えられるだけでなく、“お店の個性”をそのまま形にできるから。現場のスタッフが手づくりした販促物には「温かさ」「リアルな言葉」「その店らしさ」があります。それこそが、お客様の心を動かす力になるのです。
ここでは、自分たちで作る店頭販促ツールを作成するコツなどについて掘り下げます。

なぜ今「自作販促ツール」が注目されているのか

スマートフォンSNSで話題を作ることも大事ですが、最終的にお客が来店を決めるのはリアル店舗の存在感です。ある飲食店に向かっていたとき、気になる看板を見つけて、引き寄せられるように入ってしまった。そんな経験は誰もが持っていると思います。
そのとき、何が魅力だったのかと言えば、ファサード(店頭)の演出です。
かつてはチラシや看板制作といえば、印刷会社やデザイン事務所に頼むのが当たり前でした。しかし近年は、デザインツールの普及とSNS発信の文化が後押ししたこともあり、飲食店自身が「デザイナー兼発信者」になる時代が到来しています。つまり、現場発信の販促ツールです。
「写真のままの雰囲気」「店員さんの笑顔」「手書きPOPの一言」。それらが、お客にリアルな印象を残します。

デザインを外注するコストを大幅カットできる

看板やポスターを1枚外注するだけで、数万円の費用が必要となります。チラシを印刷すれば数千枚単位の発注が必要。しかも、テキストをつくって写真を用意してイメージを伝える。さらに、デザイン案が提出されたらイメージの違いを指摘し、細かな文言のチェックもしなければなりません。こうした費用もコストも、小規模店舗にとっては重い負担です。

ところが近年では、無料デザインツールの登場により、店舗側が自分たちで販促物を作ること、つまり”インハウス化”が加速しています。
こうすれば、スピードも柔軟性も段違い。新たな商品を出したり、価格改定をしたときには素早く対応できます。

現場スタッフの感性が、お客の心に響く理由

スタッフが描くPOPやコメントには、その場の空気感とリアルな声があります。

このスープ、仕込みに3時間かけてます!
今日は店長の気まぐれカレーあります

こうした言葉が、お客にとって一番信頼できる情報源なのです。

店頭販促ツールの基本を押さえる

まずは店頭販促ツール作成に必要な知識から紹介していきます。

店頭販促とは?

店頭販促とは、お客が店に入る前に目にする“情報のすべて”を指します。代表的なものは以下の通りです。

ツール名 主な目的 特徴

    • POP(手書きカード)
      おすすめや新メニューの訴求 小さくても印象的。持ち帰れるのもポイント
    • 看板(A型・ブラックボード)
      通行人の注目を集める 瞬間的に「行ってみよう」と思わせる
    • ポスター 季節限定・イベント告知
      店頭全体の雰囲気づくりにも活用
    • のぼり
      店舗の存在やメニューの告知遠くからでも視認できる集客効果
    • メニュー表
      店内外での継続的なPR ブランドイメージを支える。価格があらかじめ分かる安心感を与えるチラシ・クーポン テイクアウト・再来店促進・お得な情報の伝達 エリア内の認知拡大に有効

ターゲットと目的を明確にする

販促は「誰に」「何を」伝えたいかを最初に決めることがポイントです。
たとえば、新規客向けの情報は、看板・チラシ・のぼりを活用し、リピーター向けには店内POP・スタンプカード・LINE登録促進を活用しようなどです。
目的を明確にすることで、デザインやメッセージを考えるのも容易となります。これは、プロが販促物を作成する際に必ずしていることです。

店頭ツールの「三原則」

店頭ツールには重要な三原則があります。これを抑えておけば役割としては十分。逆に言えば、多くの情報を詰め込む必要はありません。

店頭ツールの三原則
1. 見やすい:遠くからでも伝わる大きさと色使い
2. わかりやすい:一瞬で内容が理解できる構成
3. 心が動く:言葉に“人の気持ち”が感じられること

店で作れる!実践的ツール例

【POP】:スタッフおすすめメニューを手書きで伝える

手書きのPOPは最もコスパの高い販促ツールです。
「人気No.1」や「店長のおすすめ」だけでなく、少しユーモアを入れるのがコツです。
例えば「今日は“からあげ”を美味しく作りすぎました!止まらなくなるのでご注意を」
POPの一言が、お客との会話のきっかけにもなります。

【A型看板】:通行客の興味を一瞬でつかむコツ

看板は「遠くからでも読めること」が最優先。メニューを全部書くのではなく、写真+キャッチコピー+価格に絞ります。読んでもらうのではなく、一瞬「見る」だけで伝わることがポイントです。
例:「平日限定!からあげ定食500円」「雨の日ドリンク半額」
天候や曜日で変化をつけると、リピーターにも新鮮な印象を与えます

【チラシ・ショップカード】:テイクアウト・予約促進に使う

ショップカードは“お客の財布に残るメディア”とも呼ばれます。住所・営業時間・SNSアカウントを明記します。また、小さなショップカードに記載できる情報が限られるので、QRコードを入れて、LINE公式アカウントへの友だち登録案内やInstagramアカウントにつなげるのがよいでしょう。

【メニュー表】:更新のしやすさを意識した構成

複数ページ(複数枚)になったメニューなら、すべてのページを印刷前提で作り込むより、「自分で差し替えられる」構成に。キレイなフォントで整列して書かれたメニューの中に、手書きのメニューがあるとかえって注目を集めます。差し替えができないタイプなら、クリアファイルなどに差し込んで使うのもよいでしょう。
また、おすすめや品切れをすぐ更新できるようにしておくと、スタッフも動きやすくなります。
デザインはメニュー本体を意識する必要はありません。違う方が目立ちますし、リニューアル感もでます。

【デジタル販促】:店頭モニター・QRコードの活用法

最近はモニターなどを使い、動画で店の雰囲気を伝える店も増えています。また、POPやレシートにQRコードを付け、LINE公式アカウントに誘導したり、SNSフォローやネット予約につなげたりできます
印刷ツールとデジタルを組み合わせることで、販促効果は一気に高まります。
モバイルオーダーにLINE連携があれば注文したお客様に友だち登録してもらいリーピートのきっかけにもなります。

ツール制作のポイントとデザインの基本

デザイナーに依頼するのと素人が作成するのは差があって当たり前。ですが最近は、いくつかのポイントを抑えれば、それなりのものを作れるようになったのも事実です。ここではツール作成のポイントを紹介します。

手書きでも伝わる“温かさ”と“整える力”

不揃いでも構いません。重要なのは「整える意識」です。線を引くときは定規を使う。文字を書くときは整列させる。――それだけで印象がぐっと良くなります。清潔感と丁寧さが、お客の信頼につながります。

フォント・色・レイアウトの黄金比

1. フォントは2種類まで(見出しと本文)
パソコンを使うとさまざまなフォントがあり、いろいろ使いたくなりますが、どんどんと品がなくなります。また本文は読みやすいフォントを使ってください。スマホのカメラ機能を使って英語訳できることを確認するのもお忘れなく。

2. 色は3色以内(ブランドカラー+白黒)
色も上手に使わなければ品がなくなります。基本はブランドカラーに白と黒。これに濃淡をつけて調整します。色遣いに自信がある方はもう少しプラスしても構いませんが、難しいことに挑戦していることを忘れず、スタッフなどに客観的な判断を求めてください。

3. 余白を意識する(詰め込みすぎない)
情報を詰め込みすぎて、どこを読めばよいのかわからないものを見かけます。 “見やすさ”はプロのデザインよりも重要。そのために、最低限の情報を載せることを意識します。余白はあっても問題ありません。

お客の視線導線を意識する

人の視線は「左上から右下」へ流れます(すべてが縦書きの場合は右上から左下に)。横書きなら、メインメッセージは左上にし、価格や詳細は右下に配置すると自然に読まれます。
逆に言えば、すべてのお客に読まれなくても問題ないけれど、書かなくてはならない情報は左下に書くと目立ちません。例えば、「妊娠中や授乳期の飲酒は・・・」といった注意書きなどです。

写真撮影のコツ(スマホでできる照明・構図)

写真は何よりも大切なポイントであり、写真のクオリティが高ければ、プロ顔負けの仕上がりのものを作成できます。
その最大のポイントは明るさ(照明)です。 自然光が入る場所で日中に撮ると料理がより美味しそうに見えます。照明を使うときは、“真上”ではなく“斜め前”から。フラッシュは陰影が強く映りあまり美味しそうな写真にならないので使わないのが基本です。また、背景には木目や白布を使うと清潔感が出ます。
とはいえ、最近はデジタルで簡単に修正できるので、まずは最低限のポイントに気をつけながら撮影し、後で修正を加えるのでもよいと思います。ただし、ポスターなどを作る場合、かなり大きく伸ばすため、画素数を高くして撮影することと、可能な限り細かくチェックをすることが必要です。
構図に凝りたい場合、他の飲食店の気に入ったポスターなどを真似るのもよいでしょう。人気の構図は真上からまっすぐ撮影する方法(俯瞰)と斜め上から撮影する方法です。

プリントパックやラクスルを使って低コストに仕上げる

では、実際にデザインして印刷をしてもらうにはどうすればよいでしょうか。私は「プリントパック」と「ラスクル」が最良だと思っています。その理由と特徴を紹介します。

テンプレートを使えば“プロ風”に仕上がる

両社とも無料テンプレートが充実しており、初心者でも数分でデザインが完成します。
サイズや紙質、折り方まで指定でき、店舗ごとに最適な仕様を選べます。

プリントパックの特徴と使い方

プリントパックはチラシやポスター、小冊子、ラベル、シール、コースター、のぼりなどを業界最安クラスの価格設定で作成してくれるサイトです。チラシ100枚など小ロットでも依頼でき、PDF入稿が可能なため簡単。納期も最短翌日発送になっています。

オンラインデザインパック」が用意されていて、完成されたデザインの文字や写真を入れ替えていけば高クオリティのポスターなどが簡単に作成できます。一度作成したデザインは保存していてくれる点も親切です。

ラクスルの特徴と使い方

ラクスルは、ショップカードやカタログ、シール、ステッカーの他、テイクアウトで活躍するパッケージ印刷やユニフォーム、ノベルティなどの印刷もできます。小ロットからの発注が可能で、スピーディな納品もしてくれるのが魅力です。

デザインはオンラインででき、テンプレートが豊富なのが最大の特徴です。デザインをしてそのまま印刷してくれるので安心です。

印刷・ラミネート・掲示のコツと注意点

ポスターなどを屋外に掲示する場合、屋外掲示専用の用紙を選ぶか、ラミネート加工するようにします。専用紙は防水加工がされているほか、色あせしにくいようになっています。ただし、用紙がよいと高額になることもあります。ラミネートとどちらがよいか料金を比較するのもよいでしょう。

掲示場所は、目線より少し下がベストポジションだと言われています。道路を歩くときはうつむきがちなので、直立したときの目の高さではなく、さらに若干下だと考えてください。

スタッフを巻き込む「販促文化」の作り方

せっかく店舗でオリジナルの店頭販促をするのですから、スタッフを巻き込むことができればモチベーションや団結感のアップに役立ちます。

「現場発アイデア」を拾い上げる仕組みづくり

日々の会話やLINEグループで「今日のおすすめ」を共有し、その中からPOPネタを選ぶようにすれば、スタッフも意識して情報を探そうとしてくれます。また発信も店長やオーナーだけがするのではなく、時にはスタッフから発信してもらうのもよいでしょう。それがやる気につながる人もでてきますし、店の活気も伝わりやすくなります。
モバイルオーダーのLINE連携で友だち登録してもらったお客様に期間限定メニュー、クーポンプレゼントをするのも効果的です。
当然のことながら、発信する前に責任者がチェックすることを忘れずに。

売上よりも“会話”を生む販促を目指す

販促は直接的な数字だけで測ろうとしてはいけません。その場でその商品が売れなかったとしても、 「店頭のPOPの商品、おいしそうね」と話しかけてもらえること自体が成功の証。他のメニューをオーダーしたとしても、そのPOPが来店につながった時点で成功なのです。
また、会話が生まれれば、再来店率が上がります。これこそ成功への一歩です。

スタッフのやる気を引き出す「採用POP」成功例

スタッフのやる気を出させるには、変わったアプローチをするのもよいでしょう。とくにアルバイト採用のポスターなどには、一緒に働くスタッフの個性を出すことが成功につながるのです。
「うちのバイト、まかないが本気です」
「笑顔に自信がある仲間募集!お待ちしています!」
ユーモアある採用POPがSNSで話題となり、バイト募集が増えた事例もあります。スタッフが“自分の店を発信したい”と思える環境が、強いチームを育てます。ぜひスタッフに意見を聞いてみてください。

まとめ

手作りの店頭販促は、“店の声”を形にするものであり、来店の最後の一押しをするものです。どんなに小さなPOPでも、そこに店の想いがこもっていれば、しっかりとお客に届きます。
デザイン技術よりも大切なのは「継続力」。
発信し続けることで、店は街に“存在感”を持ちます。
今は専門的なソフトを使わなくても簡単でローコストでスピーディに形にできるようになりました。手作りでお客の足を止め、会話を生み、次の来店へとつなげ、売上げアップを図ってください。