飲食店の魅力的な出店先としてフードコートを上げる人がいます。なぜなら、売上げを上げるのが容易だからです。
しかし、ショッピングモールやビジネスビル、遊園地などに併設されるフードコートは、路面店などの一般的な飲食店とは違う部分も多く、出店方法や売上げアップの戦略も違った工夫が必要です。また、通常の家賃と違う設定があり、撤退の条件が厳しいところもあります。
この記事では、フードコートへの出店から近隣店舗との差別化、売上げ向上のポイントまで、筆者の経験を交えて紹介します。
フードコート内の飲食店の特徴
フードコートと言ってもさまざまな形態があります。最近はちょっとしたブームになっており、1000席もある大型なところや、ソファ席もありゆったりと利用できるところなど、個性的なものも増えています。
ここでは、多くのフードコートで共通するスタイル。各店舗で注文し、共有スペースで食事をするものをフードコートとして進めます。
フードコートの飲食店は、路面店と比較するとさまざまな間違いがあります。例えば、営業時間や店休日は施設が決めることで、店舗の都合で変更できません。しかも、スタッフが片付けをして、施設を出る時間が厳しく管理されているところも多くあります。
また、フードコートの飲食スペースは、施設側が管理するのが一般的。通常の店舗ならお客が帰った後の片付けや、テーブル・椅子の管理、トイレの清掃などをしなければなりませんが、この負担がありません。店舗は与えられたスペース内に厨房だけを作り、料理を出すことに専念すればよいわけです。
一方で、客層を選ぶことができません。なぜなら、客層は商業施設の客層とイコールだからです。例えば、自店がビジネスパーソンを対象にしたくても、その商業施設のターゲット層がファミリーや学生であれば、そちらにあわせるしかありません。これがフードコートの難しさです。
どのようにしてフードコートに出店するか?
フードコートは商業施設と客層がマッチしていれば、比較的容易に売上げを伸ばすことができると言われています。それゆえ出店したいと考える店が多いのですが、どのようにすればよいのでしょうか。
一般的にイオンモール、ららぽーと、ゆめタウンなど、大型スーパーやデパート、の大型ショッピングモールなどでは、出店する店舗を選ぶ権利は施設側にあります。その証拠に、「突然、出店依頼が来た」というオーナーもいます。こうなると「出店したい」と思ったからといって、店舗側から何かをできるわけではなくなります。
ただし、地方の商業施設や小型のショッピングモールなどでは事情が変わり、店舗側からアプローチも可能なところが多くあります。
筆者が見かけた例では、スーパーのフードコートに「出店者募集」は張り紙を見たこともあります。
また、空きがない施設に出店したケースでは、すでに出店している店舗のオーナーを通じて商業施設の担当者と顔見知りになり、「空きが出たら声をかけてください」と言っておき、出店を叶えた店舗があります。まずは、ポップアップ出店からはじめ、数年がかりで出店にこぎつけたそうです。
フードコートは賃料が個性的
フードコートの賃料(テナント料)は一般的な店舗とは違った設定をされることが多いようです。また、商業施設によっては、テナント料に水光熱費が含まれていることもあるので、事前に内容を確認する必要があります。
主には、以下の3つになります。
・完全固定賃料型
・売上歩合型(%賃料)
・固定家賃+歩合併用型
それぞれを説明します。
完全固定賃料型
完全固定賃料型は売上げに関係なく一定の額を支払うもので、路面店など通常の店舗と同じです。フードコートでは少ない契約方法だと言われますが、地方モールや小規模商業施設の他、スーパーの店頭に設置したフードトラックなども含めると一定数あると思われます。
売上げが上がらないときにも同じ金額を払わなくてはならないため、設定金額によってはリスクは高いですが、売上が安定して高い場合には利益率が高くなり、大きなメリットとなります。
売上歩合型(%賃料)
売上歩合型(ロイヤリティ)は、月間売上の一定分を家賃として支払う方式です。売上が少ない月は家賃も抑えられるメリットがあります。
歩合率について、一般的には(水光熱費を含まず)8〜15%前後と言われますが、筆者が知るだけでも5
%程度のところから、20%を越えるところもあります。後者は繁華街や大規模施設に多いようです。
一般的に飲食店の家賃は2〜3日分の売上が適正だと言われます。パーセンテージにすれば、売上の約
2%〜10%程度です。これだけを考えれば、歩合15%は高いですし、20%を越えると経営が立ちゆかないと考えるかもしれません。
しかし、客席を管理する必要はなく、厨房内の作業に集中するだけでよいことを考えれば、その分の人件費負担がなく、人材教育の負担も減るため、メリットがあると考えるところも増えてくるわけです。
固定賃料+歩合併用型
上記の固定賃料型と売上歩合型をあわせたものです。基本(最低)の固定家賃があらかじめ決められていて、それプラス売上に応じた歩合分を払うスタイルです。ただし、一定の売上げがなければ追加分を支払わなくてよいところと、売上げが少なくても支払わなければならないところがあります。
筆者の印象では、商業施設の中堅以上のテナントで多い印象ですが、小規模なところでもあります。
低い固定家賃に低い歩合だと問題はないのですが、当初の計画よりも売上げが少ない場合、固定家賃が総売上げに対して高くなり、それに加えて歩合となると負担が大きすぎることになり、経営が圧迫されます。
この契約は特に、売上げによってメリットにもデメリットにもなり得るので、事前の調査に基づいた売上額の算定が重要になります。
売り上げは施設側に管理される
賃料が歩合であることでも分かるように、フードコートに出店している店舗の売上げは施設側に管理されます。
現金売り上げ分はその現金を毎日納め、クレジットカードや電子決済分も一旦施設側に納金されるのが普通です。そこから家賃などを差し引いた金額が月に一度、指定口座に振り込まれます。つまり、現金を扱っていても、日々の現金収入はないことになります。
ただし、スーパーに出店している場合、仕入れをそのスーパーにすればあわせて精算されるため、現金で支払う必要はありません。その点はメリットとも言えます。
施設側が売上げを管理するためにどのようにしているかといえば、POSレジが普及する前は、簡易的なレジが施設側から支給され、それに入力することがほとんどでした。しかし最近は、POSレジを使うケースが増えているようです。
施設内の全店舗に同じPOSレジを入れるケースもあれば、個別でPOSレジを入れ、そのデータを確認できるようにしている施設もあります。いずれにせよ、ルールを決めるのは施設側ですので、それに従うしかありません。
テナント料以外に施設に払う費用
施設に支払う費用は、テナント料以外にもあります。共益費(施設維持費)などは一般的なビルでもありますが、客席やスタッフの更衣室や休憩スペースは施設側が管理するので、高めに設定されているのが一般的です。
他にも、「販促協力金」などと言う名目で一定の金額、あるいは歩合を求められることもあります。例えば、施設全体のプロモーション活動に協力する費用や共同のデジタルサイネージにかかる費用です。
イニシャルコストのひとつである保証金は、商業施設によってさまざまで、家賃の6〜12か月分となっているところや、独自のルールが採用されているところもあります。これは十分に確認する必要があります。
また、スペースを造作する費用を誰が負担するのかについても様々なパターンがあります。自分で業者を選び、費用も自分たちで払うところもあれば、指定業者を使わなければならないところもあります。意外なことに、最初の工事費は施設側で負担してくれるケースもあります。
どれも契約前に施設側に確認するようにしてください。
撤退条件も確認しておく
フードコートへの出店は撤退条件も確認しておく必要があります。筆者の知っているケースでは、保証金は多少高いくらいの設定だったものの、厨房設備を含め施設側が工事をしてくれる条件だったため、「これは好条件だ」と飛びついたオーナーがいました。
しかし、売上げが伸びず、さらにオーナーが体調を崩したことで、2年目に撤退希望を伝えました。その段階になって、契約で最低5年間継続しなければ撤退できず、大きな違約金が発生することや、施設側の指定業者を使ってスケルトン状態に戻さなければならないことを知り、逃げ道を失ってしまった人がいます。
フードコートで売上を伸ばす方法
フードコートは施設内にあり、その施設全体の集客は一つの飲食店の力ではどうすることもできません。つまり外部に施策をするよりも、フードコートに来たお客に選んでもらう施策の方が重要となります。
選んでもらうためには以下のような方法があります。
1.商品力の強化
看板商品をつくることは一般の店舗でも同じですが、フードコートでは「これを頼めば間違いない1品」をつくっておくことが大きな強みになります。例えば、大盛りの唐揚げ丼や映えるスイーツ、食べ歩き可能なワンハンドフードなどです。
なぜなら、家族連れなどで違う店舗を選びたい場合、子どもたちに好きなものを選ばせるだけで疲れ、親はゆっくり選べないという利用者が多いからです。また、選ぶのが面倒だという人は、「あの店のあのメニューを買ってきて」と言える気軽さは重要です。
これに加え、限定メニューや季節商品も加えると効果的です。イベントを開くような施設なら、フードコート限定メニューやセットなどがあると喜ばれます。
2.視覚的な工夫
大型のフードコートは、全体の雰囲気が統一されています。そのため、工夫はしにくいと考える人もいますが、実際には細かなところで取り組めることがたくさんあります。
例えば、レジ前に置いてあるメニューは店舗がそれぞれ作るので、大きな写真を使うこともできます。また、スペース内に食品サンプルを置くことも可能です。そうやって、ふと立ち止まらせる工夫をすることが重要です。
3.オペレーションスピードの改善
ならんでいることが人気店のバロメーターだと考える人もいますが、フードコートを複数で利用する場合、いろいろな店で買うのが一般的で、1人だけ料理がこないとなると事情が違ってきます。
そのため、提供時間の短縮と並ばせ過ぎない工夫が重要となります。提供時間は3分以内が理想的とされ、それ以上かかる場合、呼び出しベルなどを渡し、出来上がったら知らせるスタイルにします。
モバイルオーダーを利用して注文を受けつけることで調理する時間を確保する、ピーク前に仕込みをしておくなど提供時間の短縮のための工夫をして、オーダー後の提供工程を可能な限り削減します。特に昼時など時間帯によっての工夫は重要です。
ただし、フードコートの場合、スペースは限られています。通常店舗なら考えられる、客席を減らして厨房を広げる技も使えません。そのため、チェーン店化しているなら、他の店舗で仕込みをする方法も考えるとよいかもしれません。
4.プロモーション・販促は施設と連携する
独自のプロモーションは認められていないケースもあります。そのため、施設が運営するホームページやアプリとの連携を積極的に進めることも重要です。なぜなら、すべての店舗が同じように宣伝されることもあれば、チラシなどに載せる店舗は限られるというケースもあるからです。
例えば、新商品の情報はいち早く施設側に知らせることで、施設のニュースとして告知してもらうこともできます。質のよい情報発信は双方にとってよいことです。
また、店のファンになってもらうことが売り上げにつながるのは一般の店と同じ。そのため、店のストーリーやこだわりは積極的に伝えるべきです。例えば、「○○県産の○○を使用」や「3日煮込んだ自家製スープ」など、小さな差が選ばれる理由につながります。商品情報を伝える場合はキャッチーな言葉も伝えるようにしてください。
施設との関係構築は非常に重要で、イベントへの参加や有料プロモ―ションにも積極的な協力は長い出店にも有利に働きます。
LINEと連携したモバイルオーダーを利用することでお客様にお友だち登録してもらい、期間限定商品をアピールするなど人手不足対策とリピーター取得対策を併せて行うのも手です。
まとめ
今回はフードコートへの出店についてまとめました。フードコートは客層がマッチしていれば、売上げを上げやすいと言われています。テナント料が歩合だったりと勝手がちがう部分もありますが、目論見がはずれなければ大きな利益をだすこともできます。
出店が困難だと考えている人も多いかも知れませんが、意外にチャンスは身近にあるもの。気になるフードコートがある場合、積極的に動いてみてはいかがでしょうか。
LINE連携のモバイルオーダーなら「poscube」がおすすめ!
飲食店の運営にあたり、LINE連携でのリピーター獲得、インバウンド対策で多言語対応のモバイルオーダーの導入をご検討なら「poscube」。
また注文・会計・売上分析が一体化しており、通常メニューとモバイルオーダー用のメニューの管理もシンプルで簡単です。
導入後のサポート体制も整ってます、お気軽にお問い合わせください。
ライタープロフィール
原田 園子
兵庫県出身。
株式会社モスフードサービス、「月刊起業塾」「わたしのきれい」編集長を経てフリーライター、WEBディレクターとして活動中。


