アメリカでスマートフォンやオンラインでパソコンからの注文のみを受け付け、現金が利用できない「モバイルオーダーオンリー」の飲食店が増えている。飲食店の中でもファストフードレストランのようなQSR(Quick Service Restaurant)やカフェなどの、テイクアウトオーダーの比率が比較的高い飲食店において特に導入が広がる兆しを見せている。アメリカにおける「モバイルオーダーオンリー」の飲食店の現状をお伝えする。
Chick-Fil-AがNYにオープンした「モバイルオーダーオンリー」店
大手チキンファストフードレストランチェーンのChick-Fil-A(チックフィレイ)が、ニューヨーク市内にスマートフォンやパソコンからの注文のみを受け付け、現金は利用できない「モバイルオーダーオンリー」の店を出店して話題になっている。Chick-Fil-Aといえば、ケンタッキー・フライド・チキンに次ぐアメリカ第二のチキンファストフードレストランチェーンだ。全米で1300以上の店舗を運営し、看板メニューの「チキンサンドウィッチ」を目当てに多くのお客が列に並ぶ光景がお馴染みの店だ。
Chick-Fil-Aがオープンさせた店はキッチンと注文品の受取カウンターだけで構成される、シンプルな構造だ。店内にダイニング用のテーブルや椅子などはなく、店内で飲食することはできない。キッチンスタッフは注文客のジオフェンシング情報を元に料理を開始し、注文客の来店時間に合わせて用意する。店内に飲食スペースがない分店舗スペースは小さく、見た目はショッピングモールのChick-Fil-Aポップアップ店といった感じだ。
スターバックスも「モバイルオーダーオンリー」店をオープン
Chick-Fil-A以外でも「モバイルオーダーオンリー」のトレンドは広がっている。大手カフェチェーンのスターバックスコーヒーも「モバイルオーダーオンリー」の店をオープンさせて話題になっている。
Starbucks Pick Up(スターバックス・ピックアップ)と名付けられたお店は文字通りピックアップ専門で、Chick-Fil-A同様注文はスマートフォンやオンラインでパソコンから行う。スマートフォンの場合、専用アプリをダウンロード・インストールして起動すれば注文画面が表示され、指示に従って操作するだけで注文できる。注文した品物をスターバックス・ピックアップの店舗の窓口で受け取れば完了だ。支払はアプリを設定する際に登録したクレジットカードや電子マネーで行う。また、注文に応じてポイントも付与される。
スターバックス・ピックアップは、ニューヨークに一号店がオープンしたのを皮切りに、これまでに全米の都市部を中心に店舗数を増やし続けている。忙しいビジネスパーソンが多く行き来するニューヨークのマンハッタンなどでは、数えきれないほどのスターバックス・ピックアップが「乱立」する状態になっている。
「モバイルオーダーオンリー」店が普及する背景

アメリカで「モバイルオーダーオンリー」店が普及する背景には、スマートフォンと電子マネーの普及があることは間違いない。調査会社フォレスターによると、2023年時点のアメリカの電子マネーの普及率は69%で、特にオンラインでの決済手段としてはクレジットカードよりも利用者数が多いという。忙しいビジネスパーソンなどにとっては、店頭で注文して品物が用意されるまで待って支払を現金で行うよりも、モバイルオーダーで注文と支払いを瞬時に終わらせて店頭で品物を受け取る方がはるかに手っ取り速く、効率的だろう。
また、店舗のサイズを縮小したいというサービス提供側の事情も存在していると考えられる。上述のChick-Fil-Aにせよスターバックス・ピックアップにせよ、店内に飲食スペースがない分、店舗スペースを大きく削減できる。店舗家賃は飲食店経営コストの中でも大きなウェイトを占めるので、店舗スペース削減による家賃削減の効果は大きい。また、メニューの絞り込みを行えば、冷蔵庫などの食材ストックスペースやキッチンスぺースを縮小することも可能になる。
人材確保の上でも「モバイルオーダーオンリー」店は有利だ。日本でも、ある飲食店が「モバイルオーダー導入により、接客して注文を取る必要がありません」というコピーでホールスタッフを募集しているという話を聞いたことがあるが、モバイルオーダーオンリーにすることで接客を苦手とする人材の採用可能性を拡げることもできる。さらに、モバイルオーダーオンリーのお店ではお客と現金をやりとりする必要がなくなり、現金を管理する必要もなくなる。現金が集まる飲食店が強盗などに襲われるリスクが高いアメリカの飲食店にとっては切実な問題だろう。
「モバイルオーダーオンリー」のトレンドは日本にもやってくるか?
アメリカで進行中の「モバイルオーダーオンリー」のトレンドだが、日本にもやってくることは間違いないだろう。いや、すでに日本においても「モバイルオーダーオンリー」のトレンドは広がり始めている。
本ブログ「飲食店経営プロ」を主宰している株式会社フォウカスは、利用客のスマートフォンを注文端末にしてモバイルオーダリングの仕組みを実現する「poscubeモバイルオーダー」を開発・提供している。「モバイルオーダーオンリー」のお店だけでなく、ダイニングスペースがある一般的な飲食店でも、ホールスタッフがハンディ端末で注文を受け付け、接客サービスを提供することができる。株式会社フォウカスによると、「poscubeモバイルオーダー」を導入した先行導入店舗では、「poscubeモバイルオーダー」導入により客単価が約11パーセント増加し、ホールスタッフによる注文受付回数が約50パーセントも減少したという。売上増とスタッフの業務量減という二つのメリットを同時に享受する結果になったわけだ。
「モバイルオーダーオンリー」のトレンドは、テイクアウト専門店やQSRを中心に広がり、やがては一般の飲食店にも広がってゆくだろう。スマートフォンを1人1台保有する時代においては、この流れは必然とすべきだ。日本の飲食店経営者も、この大きな波に備え、対応する必要があるのは間違いない。
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poscube モバイルオーダー
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【参考サイト】
TRENDHUNTER:Mobile-Order-Only Restaurants
FORRESTER:Digital Payments Have Surpassed Traditional Payments In The US
