飲食店の経営を改善するために、客単価を上げたいと考えている関係者は多いでしょう。確かに有効な手段です。しかし、単純に値上げをしただけでは、結局は注文量が減ったり、足が遠いて来店回数が減少したりと、一時的に客単価が上がっても、長い目で見ると売上向上につながりません。
そこで今回は、飲食店が客単価を上げる最良の方法、メニューにレクリエーション的要素を加える工夫について考えていきます。

 

既存商品の値上げと深夜料金では補えない 

コロナが明け、それ以前と比べて商品単価を上げた飲食店は多いでしょう。むしろ、価格を上げていないところの方が少ないのかもしれません。
これは当然のことです。原材料は輸入品、国産品を問わずあらゆるものが値上げとなり、水光熱費や人件費も上がっているので、その値上がり分を少しでも補おうと、商品単価を上げたところが多いからです。いうなれば、後ろ向きの値上げといえるのかもしれません。
また、深夜料金を設定する店舗も多くなりました。身近なところで言えば牛丼 チェーン。「うまい・安い・早い」を売り文句にしていたチェーン店も、ことごとく深夜料金を設定しています。これは深夜時給を補うためですが、飲食店はそれほど切迫した状況になっているのです。
しかし、個人店が簡単に深夜料金を設定するわけにはいきませんし、多少の値上げは可能でも、大幅に客単価を上げることは難しい部分もあります。それでは経営的に厳しい・・・というのが本音ではないでしょうか。
 

 

大きなサイズメニューという選択 

では、どうすればよいのでしょうか。
その1つとして、大きなサイズの商品を作ることが考えられます。

例えば、ジョッキに入れたビッグパフェが挙げられます。普通サイズはパフェグラスに入っているのですが、大きいサイズはビールのジョッキに。さらに大きなジョッキを用意し、各種サイズを取り揃え、価格もそれに見合ったものにするのです。
ただ単に価格が高いだけの商品は注文する人が少なくても、そこにビジュアル的満足度が加わったり、「見てみたい」「食べてみたい」という欲求が重なれば、 オーダーする人は必然的に増えるでしょう。 またそこで満足度が高ければ、「友人にも紹介したい」となり、継続的な売上向上につながります。
他にもビッグサイズの餃子や、ハンバーグなどもありますし、基本サイズのフライをデコレーションケーキのように盛りつけるのもよい方法です。
何にしろ、新たにレクリエーション的、またはエンタメ的要素を含んだメニューを追加すること。これにより店舗側は助かり、お客も納得して支払ってもらえます。また、その店舗でしか食べられないものを提供することで話題作りに貢献することにもなります。 

 

ビッグサイズメニューのメリット

大きなサイズの商品をおすすめするには理由があります。それは新たな仕入れがないこと。
ビッグパフェであれば、新しい容器は必要ですが、食材の新たな仕入れはないはずです。主な食材としては フルーツ、アイスクリーム、生クリーム、ソース、コーンフレークでしょうか。これらの食材をそのまま使えばよく、 新しい食材を入れる必要はないわけです。
もちろん量的には多く仕入れることになりますが、使い回せることを考えれば、ロスの心配も少なくなるはずです。
実は、新たな食材の仕入れが伴わないこと。そのメニューにしか使えない食材がないことは、非常に重要なポイントです。食材数が増えることで管理が難しくなり、また独自の食材が必要となれば、一定数が出なければロスが増えるだけとなります。これでは意味がありません。食材を1つも増やさないというのは難しいかもしれません。ですが、すでに店舗で使っている食材をうまく使い、新しい商品を作るという方向性でプランニングすることをおすすめします。
また、大きなサイズの商品には別のメリットもあります。ブックパフェで考えれば、コーンフレークなど比較的安価な食材を使う比率を上げることができます。つまり、サイズが2倍になったからと言って、原価も2倍とはならないのです
考えてみてください。サイズが2倍のパフェを作る場合、1人で食べることを想定すれば、全ての食材を倍にすることがベストバランスとは考えにくく、 その点でもお客のニーズに沿った商品作りといえるはずです。

 

単価が上がる仕組み

 大きなサイズの商品の導入を勧めると、「大きなサイズの商品を増やしたからと言って、複数の人でシェアして食べられると客単価アップには貢献しない。むしろ安くなる」という方がいます。
この意見は、ある部分ではあっています。2倍のサイズのパフェを作ったからと言って、価格を2倍にはしないことが多く、原価率が若干上がるからです。

客単価アップ

それは5倍のパフェを作るときも同じことです。にも関わらず、いつもは2人でそれぞれパフェを頼んでいる人が2倍サイズにパフェを2人でシェアすれば単価は下がります。同じく、5倍サイズを5人でシェアしたのではさらに下がります。
もちろん、そのようなお客もいるでしょう。でも、多くの場合、パフェ好きな人が、通常であれば普通サイズのパフェをたのむところ、2倍サイズのパフェを注文するというケースの方が多くあります。同じように、5倍のパフェを5人で食べるのは稀で、2~3人でワイワイと食べるケースが多くなるのです。こうなれば、客単価はしっかりと上がってきます。
  

 

オーダーしない人にも効果あり

もう一つ。大きなサイズについては、「ニーズがない」と言い切る人もいます。確かに、3倍、5倍、10倍の大きなサイズを注文する人はごく一部。1日に1個も出ないかもしれません。それでも、注文されなくても大きなメリットがあります。なぜなら、大きなパフェを出している店と認識する人が増えれば、その店のパフェ自体の認知度が上がり、デザートにパフェを頼んでみようかという人が増えます。
もちろん多くは、普通サイズのパフェか2倍サイズのパフェだと思います。ですが、だからと言って大きなサイズのパフェを出す意味がないわけではありません。「次回はパフェ好きな人を誘ってこよう」と考えてもらえば効果があったと言えるわけです。
また、パフェで言えば、普通サイズでもディナープレートと同じぐらいの価格にしているところも多く、客単価はずっと上がります。さらにカフェタイムにケーキとコーヒーを注文していた人が、パフェとコーヒーになればこの場合も客単価が上がることになります。
つまり、それほど出ないと分かっているビッグサイズのパフェを、あえて導入することに価値があるわけです。お客の興味を引くこと、そして話題の商品になることを目指すことに目的があるわけです。

 

ビッグサイズ導入のポイント

ビッグサイズ商品を導入するのには、いくつかのポイントがあります。導入したのにもかかわらず認知が広がらず、知る人ぞ知るという商品になったのではもったいないと思いませんか?
では、そうならないようにするには、どうすればよいのかポイントを上げてみます。

その1 ビジュアルを重視する

この記事ではパフェ中心にしましたが、それはビジュアルに秀でているからです。もちろんパフェ以外にも、お肉がもりもりに乗ったどんぶりや具だくさんで下が見えないラーメン、皿いっぱいの餃子などでもよいわけです。とにかくビジュアルで人目を引く商品にするべきです。

parfaitついでに言うなら、思わず写真を撮りたくなるという要素を含んでいることが重要です
また彩りよい商品ができても、それをしっかりと分かってもらえなければ意味がありません。食品サンプルもよいでしょうし、写真でもよいでしょう。とにかく目に付くようにビジュアルで見せるようにしてください。 

その2 単価は高くても問題ない

ビッグサイズの商品は2倍だから2倍とはいかないものの、必要以上に安くする必要はありません。なぜなら、この商品はただのメニューではなく、レクリエーション要素が高いメニューだからです
特にサイズが大きいほどこの効果は高くなりますので、価格設定のときは強気で勧めてください

その3 食材バランスは大きく変える

食材のバランスについては、前述の通り、通常サイズと変更して構いません。むしろ、食べきりやすいように変更すべきです。あまり通常サイズに捕らわれすぎないようにしてください。もちろん、「詐欺だ!」と言われない範囲でというのは当然となります。

事前予約が必要としてもよい

では、どのような商品を自分の店で導入することができるでしょうか。
ひとつはパフェに代表されるデザートやスイーツです。スイーツといっても、ケーキのように作りおきするものではなく、受注後に作る商品の方が適しています。また、冷凍してストックしておける商品も同じ意味でOKです。
また他にも、事前予約を必要とする方法もあります。例えば大きいサイズの餃子の場合、冷凍すると調理が難しくなってしまいます。そのため、「3日前までに予約をした人のみ提供可」等としている例もあります。

大食いメニューとは違う認識を

大きなサイズの商品と言えば、大食いメニューを思い浮かべる人もいるでしょう。これは大きな商品を用意し、設定した時間内に食べきったら無料に、食べきれなければ代金をいただくというものです。
この商品もビッグサイズという意味では同じですが、まったく違うことをご理解ください。
この大食いメニューは、食べきったらゼロ円になるため、食べ切られると大赤字となります。ただし、 多くの方は 食べきることができず、それなりの代金を払うことになりますが、そもそもこの代金設定が高いと挑戦する人が出てこず、せっかく商品を導入しても意味がありません。
例えば大きなサイズの10人盛りのカレーの場合、1杯1000円で出しているなら10人分で1万円欲しいところです。そうなのですが、1万円でビッグサイズのカレーに挑戦する人がいるかといえば 難しいでしょう。それならば、 5000円くらいになりますが、普通の商品の原価が40%程度とすると少し利益がでる程度になります。
さらに、その商品があるからと言って大食いをしない人が、その店に行くかと言うと難しいのではないでしょうか。つまりマーケティングにもならないということで、この商品は客単価を上げる目的にはつながらないと考えるべきです。
さらに言えば、大きなサイズのメニューの場合、食べ残される方が多くなります。飲食店には、自分が作った商品を平気で残していかれることを、快く思っていないスタッフは多くいます。それなのにわざわざ食べ残される商品を作るわけですから、その点が許される心の広い(というのとは違うかもしれませんが)店舗しか導入できない商品であることも書き添えておきます。 

 

まとめ

今回は個性派のメニューを導入して、客単価を上げる方法を考えました。筆者が最良だと考えるビッグサイズメニューの導入を中心に進めましたが、これにはメリットがたくさんあります。新たな食材を仕入れなくてもよい点や、注文しないお客に対してもピーアールでき、顧客満足度を高めながら、単価をアップすることができます。
イチからメニューを考えるのは大変ですが、今あるメニューを大きくするのであれば比較的簡単なはず。この機会にメニューを見直し、大型化に挑戦してみるのはいかがでしょうか。