外国人客、いわゆるインバウンドを見かける機会が多くなりました。欧米の物価高騰に円安が重なり、日本人よりも多くのお金を使っても、「安くて得をした!」とよろこんでいる姿を見かけます。
こうなると、海外からの観光客を惹きつけ、たくさんのお金を落としてもらう方策が必要になってきます。その筆頭にあげられるのが、魅力的な英語メニューの作成です。
そこで今回は、アプリや翻訳サイトを使って、できるだけ簡単に英語のメニューを作成する方法を考えていきます。英語メニューを作ることで、親切さを伝える。これが今回のゴールです。
なぜ英語メニューか?
インバウンド需要は、これからも増え続けると予想されます。そうした状況をうけて、少しでも多くの外国人客を迎え入れるために、「メニューを多言語化しよう」とよく聞きます。ですが、それはあまりにハードルが高いです。
中学高校と6年間(加えて大学で2年間)も習ってきた英語でのメニュー作りもできないのに、英語だけでなく、あれもこれも必要と言われては、手も足もでなくなります。
もちろん、インバウンドと言っても、「世界各国から来ているわけで、英語を理解できる人ばかりではない」という人がいます。それは 正しいのですが、ちょっと角度を変えて考えてみましょう。
多くの日本人は、フランス語やスペイン語で書かれたメニューを見ても、何が書かれているのか、それが魚料理なのか肉料理なのか、メイン料理なのかデザートなのかも分からないという方がほとんどです。しかし、英語で書かれていれば、少なくとも何料理なのかは分かるという方が多くなるのではないでしょうか?
また、英語は世界標準語ということだけあり、多くの国で学習されています。スマートフォンでGoogle翻訳アプリを使って訳すものも、英語から各母国語に翻訳するのは比較的正しく訳されます。
ですが、例えば日本語は、世界の80億人のうち、1億数千人しか話さない言語。そのため、英語以外の言語の翻訳精度は、なかなか微妙になります。これは、他の言語でも同じこと。
だから、英語のメニューを作っておくことが重要なのです。
もちろん、各言語のメニューを用意できることは理想かもしれません。ですが、精度の高いメニューを作ることは、プロの手を借りなければ難しくなってしまいます。その点、英語であれば、100点満点ではないにしても、工夫次第で70~80点ぐらいのメニューは作れます。
もちろん、「うちに来るインバウンドは、韓国人しかいない」というのなら韓国語のメニュー、「中国人しか来ない」というなら、中国語のメニューを用意しておく必要があるでしょうけど…。
英語メニューを作るときの最大のポイント
飲食店の中には英語を話せる人がいて、ほぼ完璧な英語メニューができるという店舗もあります。完璧な英語で、素晴らしいメニューを作って、「これで安心」と考えたのもつかの間、そのメニューを使ったことで、大変なことになったという例があります。
これは非常に、意外な点かもしれません。
それは、オーダーを受けるスタッフが全員、英語を話せるわけではないということ。例えば、「うなぎ」は英語で「Eel」と書きます。発音をあえてカタカナに直すと、「イーヨゥ」と言った感じでしょうか(かなりムリがありますが…)。
インバウンドとしては、 英語メニューが準備されているのだから、そこに表記されていることを言って通じないとは心にも思っていません。ところが、スタッフの側からすれば、 突然、「Eel」と言われて、「うなぎのことだな」と直感的に思える人が全てとは言えません。こうして、「外国人のオーダーを聞きたくない」という人が増えてしまったのです。
また、日本人が 話す英語を「ジャパングリッシュ」、シンガポール人が話す英語を「シングリッシュ」と言うように、各国の母国語によって英語の発音は違ってきます。そのため、全員が「イーヨゥ」と発音し、また、そう聞こえるわけではないため、結局は注文を聞くことができなくなってしまいます。
つまり、英語メニューを作る時、最大に注意しなくてはいけないことは、 注文の受け答えが可能な限りスムーズに行われること。英語を話せる人に訳してメニューを作ると、この観点が抜け落ち、苦労する英語メニューができてしまいます。
例えば、「カツカレー」を直訳すると「Cutlet Curry」。これを英語が得意な人が英訳すると、「Japanese Style Curry with Breaded Pork Cutlet」と表記しがちです。もちろん、後者がダメだと言っているわけではありません。むしろ、すばらしい!
ですが、これは説明として書き加える程度にし、インバウンドがスタッフに伝える オーダー名は、「Cutlet Curry」とした方が受け答えがスムーズです。
また、和食はそれに相当する英語がないことがほとんどです。これは寿司が海外でも「SUSI」と言われるように、ここは潔く、日本語をローマ字表記したものにするのが正解かと思います。
すき焼きは「SUKIYAKI」。照り焼きは「TERIYAKI」。 肉じゃがは「NIKUJYAGA」と表記し、若干の説明を小さな文字で添える程度がベストです。
手書きメニューはNG。分かりやすいフォントをつかう
文字の記載は手書きよりも、クリアで見やすいよう、印刷して作ってください。手書きにこだわる方もいますが、これも発音同様、日本人独特の癖が出て、丁寧に書いていても字を読み解くことが難しいことが多くあります。ですので、必ず印刷すること。
また、フォントを選ぶときには、デザインされたものではなく、できるだけ分かりやすい一般的なものを使用します。
どうしても手書きにしたい場合、一定の世代以上が学校で習った筆記体は、国によってはほぼ読めない(現在では使っていない)ということがあるので、ブロック体で書いてください。
便利なアプリと使うコツ
ではここから、「英語メニューを作りたいけど、英語は苦手だ」と思っている方におすすめの方法をお伝えします。
翻訳の王道「Google 翻訳」
まずは、Google 翻訳です。Google 先生とも呼ばれるこのシステムは、誰でも使用でき、 AI を活用していることから進化を続け、精度が高いことでも有名です。
はじめて使うという方は、WEBの検索画面で、「Google 翻訳」と入れてください。使い方は説明するまでもありません。
基本的には、「日本語→ 英語」と設定し、日本語を入れれば、自動的に英語に翻訳された文章がでてきます。ただし、中には不思議な訳もあるので、確認にはコツがあります。
それは、一度英語に訳したものを、「英語→ 日本語」として、逆翻訳をしてみること(中央の両矢印をクリックすればできます)。 これで問題がなければOK。時には、自分が伝えたかったものと違う訳し方を していることがあるので、そうなったらもう一度「日本語→ 英語」に戻して、分かりやすい日本語に直して英訳してみてください。
なお、「分厚いカツのカレー」を英語にすると、「thick cutlet curry」となります。これを日本語化すると、「濃厚カツカレー」となり若干印象が違ってきます。このような場合は、「cutlet curry」の部分は間違っていないので、「thick」の部分が怪しいことが予想できます。
そこで、Google 翻訳を使って、「thick」だけを日本語に訳すと、「厚い」とでてきます。つまり、「thick cutlet curry」でも言いたいことは通じることが分かるはず。こうやって精度を上げていくわけです。少し手間はかかりますが、参考にしていただければと思います。
都が運営する「EAT TOKYO」
続いては、飲食店にとって非常に便利なサイトです。
「EAT TOKYO – 多言語メニュー作成支援ウェブサイト」(https://www.menu-tokyo.jp/menu)の中の「おもてなしツール」の中に、日本名の料理を英語化してくれるサービスがあります。日本名の料理を英語化してくれるサービス:https://www.menu-tokyo.jp/menu/tool/demo
このページは、東京都が管理・運営を行っているサイトで、登録やログインをしなくても使用できるので便利です。
使い方のコツは、「海鮮あんかけ焼きそば」を検索したい場合でも、もっとも一般的なメニュー名である「やきそば」と検索すること(検索はひらがな限定)。こうすることで、関連した焼きそばメニューがズラッとでてきます。
より親切なメニューにするためのポイント
どうせ英語メニューを作るなら、より親切で、客単価アップにつながるメニューにしてみましょう。
まずは、持ち帰りが可能なメニューがある場合、「この店はお持ち帰りも可能です」などの情報を追加すること。
具体的な表記としては、”Takeout Available”(テイクアウト可)や “Available To Go”(お持ち帰り可能)などがあります。
また、ベジタリアンやビーガン対応メニューがあるなら、それを書き加えることをおすすめします。それらの情報を明確にすることで、安心して注文を行うことができます。食生活に制限がある客にも配慮する。これが外国人客を増やす大切なポイントです。
さらに、アレルギー情報の掲載も考慮に入れてください。インバウンドは、特定の食材に対するアレルギーを持っていることも少なくありません。アレルギー情報を提供することは、飲食店としての信頼性向上にもつながり、リピートの可能性も広がります。
モバイルメニューがベストチョイス!
英語メニューを作成するにあたって、言葉だけでは伝わりにくいもの。そのため、料理の写真やイラストを一緒に掲載することがベストだと言われています。食欲をそそるビジュアルは、メニュー選択の決め手となります。
ですが、ビジュアル重視のメニューは印刷コストがかかり、制作はもちろん、修正にも手間がかかります。
そこで、最近増えてきたモバイルオーダーシステムを活用するのも賢い選択。モバイルオーダーは、テーブルで手間取ることなく、スムーズな注文が可能。インバウンドにとって利便性の向上はとても魅力的です。
また、英語表記が間違っていたり、もっと伝わりやすい翻訳が見つかったとき、素早く対応できます。
英語に苦手意識をもっているスタッフは、インバウンドが入店してきただけでドキドキするとも言われますが、モバイルオーダーシステムがあれば、最初に案内するだけで、自動的に注文してくれます。
また、厨房のオペレーションも効率化でき、スタッフもお客も、ストレスフリーとなるだけでなく、人件費削減も叶います。つまり、よいことずくめと言うこと。
モバイルオーダーは、インバウンド需要への対応という、大きなチャンスを飲食店に与えてくれます。言葉の壁を越え、より多くの人々が飲食店を楽しむための新しい道を切り開く存在。この機会に導入するのも正しい選択です。
まとめ
今回は、英語メニューを簡単に作る方法を紹介しました。
英語が苦手な人にとって、ハードルが高いメニューの多言語化ですが、英語メニューがあることが最初のステップ。WEBの力を借りながら、まずは作成してみてください。
心を込めた接客は、日本のレストランや料亭での食事を、ただ食べるだけでなく特別な体験に変えてくれるはず。それをサポートする英語メニューですから、多少微妙な英語表現でも、構わないと思います。
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