日本ではワクチン接種が進んでいます。また、イングランドでは2021年7月19日から、新型コロナウイルス流行に伴う法的規制の多くが解除されました。さまざまな我慢を強いられた飲食店も、これからを考える時期にきたと言えるでしょう。
ここでは、遠ざかってしまったお客をいかにして取り戻すか、また新規客を増やすためにとるべき施策について考えていきます。
消費者は外食できる日を心待ちにしている
東京ではオリンピック・パラリンピックが開かれる一方、都心部の飲食店は酒類なしの時短営業か、休業を余儀なくされています。もうしばらくはこの状態が続くのかもしれません。しかし、世界の流れを見ても、この状況はいずれ解除されるのは明白。こうなると次は、減少していた売上をいかに早期に回復させるかが重要になります。
まずは、世間の人々が、アフターコロナにどのような期待感をもっているのかを探っていきましょう。これには、ぐるなびが2021年6月に発表した調査が参考になります。
これは、新型コロナワクチン接種後の行動意識について調べたものです。
この中で、「ワクチン接種後に期待すること」として、最も多かったのは、「安心して外食する機会を増やせる」。次いで多かったのが、「安心して人と会う機会を増やせる」となっています。
出典:【ぐるなびリサーチ部】新型コロナワクチン接種後の行動意向に関する調査
https://corporate.gnavi.co.jp/release/2021/20210618-019439.html
つまり多くの人は、複数の人と安心して外食することを楽しみにしているということです。これは飲食店にとって、とても嬉しい結果です。閉店を選択した飲食店の中には、「新型コロナでこなくなったお客は戻ってこない」といった発言をする人も多くいました。しかしこのアンケート結果を見る限り、その理論は当てはまらなそうです。
アフターコロナで実施すべき施策とは?
とはいえ、全ての店舗が新型コロナ以前と、無条件に同じ状況になるとは言えません。なぜなら、多くの消費者は衛生問題に敏感になったからです。先に解禁が進んでいるアメリカやヨーロッパの状況を見ると、「マスクが義務化されなくなったから外してしまう」という人がいる一方、「義務化はなくなっても安心のためにマスクは手放せない」と考えている人がいます。
この感覚は当面は続くと思われます。特に日本人は非常に用心深いため、緊急事態宣言が解除されても、しばらくは信頼できる店にしか出かけないという人もいるでしょう。この結果、これまでの営業スタイルとは関係なく、比較的早く売上を回復できる店舗と、いつまでもお客が戻ってこない店舗とに分かれることになります。
ではどういう店が求められるのでしょうか?
衛生の対策が万全であること
新型コロナに限って言えば、殺菌用アルコールとアクリル板の設置があればよいかもしれません。しかし、消費者は新型コロナを機に、全般的な衛生観念を求めるようになっています。
例えば、長期間営業しなかったことで、グラスや皿が埃っぽくなっていることがあります。もちろん汚れがついてあるのは問題外ですが、多少の埃っぽさについては、これまでであれば、あまり気にされなかったのかもしれません。
しかし、少しの疑念でもあれば不安になるという感覚で過ごしてきた人の中には、「この店は衛生に対する概念が低いのではないか」と考えるようになりいます。営業を始める前には、グラスや皿などはしっかり洗浄し、体制を整える必要がありそうです。
ここでもう一つポイントがあります。
一気にグラスを洗うには、食器洗浄機を使うところが多いかと思います。この場合、水滴の痕がグラスに残ることがあります。これも以前であれば気にする人は少なかったのですが、つい先日、「グラスに殺菌液がついていた。体に悪そう」と言っている人を見かけました。
実際についているのは水滴だったかもしれませんし、少なくとも体に影響があるようなものがグラスに残っていたとは思えません。しかし、これも疑念を呼ぶのです。気をつけなければなりません。
また、アルコールの設置などは継続するところが多いでしょう。この数については、あまり使われないと分かっていても、複数設置することをおすすめします。なぜなら、万全の対策をとっているという印象作りになるからです。小さなことの積み重ねが安心感につながるという発想で対策を取るようにしてください。
タイミングに合わせた適切な接客
接客についても、コロナ禍では大きな変化が求められました。店員とお客が会話を楽しんだり、大きな声を出すことが、必ずしも好意的には思われませんでした。特に飲食店では、お客は席に座っていて、従業員は立って接客します。こうなると、「唾が飛んでくる」などと言う人が出てきます。
この感覚はいずれ元に戻るのかもしれませんが、当面は気にする人もいるでしょう。マスクをするのはもちろんのこと、 会話を楽しんでよいタイミングなのか、控えた方がよいのかを考える必要がありそうです。
ただし、店舗によっては、お客と店員の会話は必要不可欠なものです。一時的に控えることはあっても、そのままずっと控えたままだと、「接客レベルが落ちた」という評価に繋がります。どのタイミングで会話を増やしていくかの判断は、重要なポイントとなりそうです。
注文の仕方を工夫する
コロナ禍で大きく広がったものの一つにモバイルオーダーがあります。お客が席に設置されたタブレットで注文したり、自分のスマホを使ってオーダーできたりするシステムです。
これは、店舗側にとっては従業員の効率配置につながります。またお客側にとっても、わざわざ従業員を選んで注文しなくてよいことで好印象。中には、モバイルオーダーがあるかどうかを店の選択の項目に挙げる人がいるほどです。
売上を上げるという意味では、好きなタイミングでオーダーができることにより、オーダー数が増えると言われています。この先、お客との会話を推奨するようになったときにも、効率的な人の配置は有効なもの。モバイルオーダーは、ぜひ導入したいものです。
席間のスペースと滞在時間の調整
新型コロナでは、ソーシャルディスタンスが叫ばれました、この影響で、店舗ではテーブルを間引いて営業したところもあります。また、4人掛けのテーブルでも、2人でしか使わないなど、人数制限をしたところもあるでしょう。
これは、早々に戻したいと考える店舗があるかもしれません。なぜなら席数は、売上に直結する問題だからです。
ただし前述のように、ソーシャルディスタンスが叫ばれたことで、パーソナルスペース(他人に近付かれると不快に感じる空間)が広くなったと言われています。
例えば、以前は平気だった電車の中での隣の人との距離。不快に感じる距離が広くなったと感じる人もいるでしょう。つまり、隣の席との距離が極端に近い店舗は、「なんとなく不快だ」「落ち着かない」と感じる人が多くなったのです。
これについては感覚的な問題であり、もしかすると元通りになるのには時間がかかるのかもしれません。こうなると、元々は席の間が狭かった店舗とはいえ、早々に元通りに戻してしまうのはよいこととは言えません。
そこで、ある程度は席数を戻すにしても、以前よりは少しは席の間隔を空けるようにします。その上で、滞在時間をコントロールすることで回転率を上げるという方法を選択する方がよいでしょう。実際、多くの飲食店が新型コロナを理由に滞在時間を「○分以内」としました。これを活用するわけです。
もちろん時間制限を設けたからといって、きっちりとそれを実行させる必要はありません。あくまでも、混雑時にのみ適用するルールとしていく方がよいでしょう。
客単価を上げる施策を考える
お客を早く取り戻すために、値引きをするという方法を取る店舗もありますが、これは正しいとは言えません。席数は減少し、団体の予約も平常通りに戻るのはまだまだ先。そのような中で客単価も下げてしまうと、経営状態は改善しません。
店舗では、「坪月商」という考え方があります。これは店舗一坪あたりどれぐらいの売上をあげているのかという指標です。アフターコロナでは、これをコロナ以前に戻すことを考えます。この点から言えば、席数が減った上に客単価が下がるのは危険。むしろ、この機会に客単価を上げる方法を考えるべきです。
もちろん、何も変えずに金額だけを高くすれば、よい印象は与えられません。そこで、何らかの付加価値をつけて、値段は上がってもお得感が増す方法を探って行きます。
付加価値とは、商品のクオリティをあげるだけではありません。例えば、 席と席の間に簡易的なすだれやロールカーテンを設置し、半個室にしてしまうという方法。
席の間を空けることはお客にとって好ましいことですし、プライベート空間になることで顧客の満足度はアップするはずです。本格的な個室化をしないのは、大人数の客にも臨機応変に対応するためです。
飲食店が活できる助成金も増えていますので、それを使うことも考えるとよいかもしれません。
まとめ
アフターコロナで一刻も早くお客を呼び戻し、売上を元通りに戻すために必要な方法をあげてみました。他にも、店舗の形態や特徴などにより、さまざまものが考えられるでしょう。
コロナで一番の煽りを受けたのは飲食店だと言われています。飲食店の元気がなければ、そこで働くアルバイトも、飲食しに来るお客も活気がなくなり、全体が影響を受けます。逆に言えば、飲食店が元気になることが、日本に活気を取り戻す方法なのかもしれません。
これまでの苦悩を1日も早く笑顔に変えるために、今から準備を始めてはいかがでしょうか。
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