新型コロナウイルスの影響により、さまざまな常識が変わると言われています。その中の一つに、接客サービスのあり方があります。ホテルや旅館などはその代表でしょう。
コロナ禍を経験したお客がどのような感覚を持ち、それに対応するにはどのようなことをすべきか。また、新しいサービスの実現に、どのようなシステムが必要なのかを考察します。
変わりゆくサービスのあり方
新型コロナウイルスは私たちの感覚に大きな影響を与えました。サービスは人によって行われるもの。これは長い間、サービスの基本中の基本と言われてきたことです。しかし、これが変わろうとしているのですから、大きな変化だと言えます。
数年前から、さまざまな仕事にITの波が寄せられてきました。その波はサービス面にも波及してきましたが、少なくとも日本では、あまり歓迎されているとは言えませんでした。
たとえば「変なホテル」のように、ロボット化自体を奇抜なアイデアとする業態はありました。また、ビジネスホテルなどがサービスを簡便化するために、タブレットチェックインを導入しています。しかし、おもてなしにかかわる部分にテクノロジーが取り入れられることはほぼありませんでした。
しかしコロナ禍では、人と接することが必ずしも歓迎されるわけではなくなりました。これによりシステムを利用することの利便性への認識が進み、これからはリアルに人と接しないことに付加価値を見つける時代になったように感じます。
では、利用者の感覚が変化する中、ホテルや旅館はどのような工夫をしていくべきでしょうか?
メリハリのあるサービスが求められる時代へ
サービスのシステム化と聞くと、アレルギー反応を起こす人が出てきますが、そこには大きな誤解があります。何も、すべてのサービスをシステム化すると言っているわけではありません。お客側が望む部分をシステム化し、人が関わった方がよい部分はさらに強化していこうというのが正しいシステム化の考え方です。
人との接触を完全になくしてしまっては、必要なサービスが届けられないということに変わりはありません。
たとえば、今の飲食店やコンビニでは、入店時の声かけすら好ましくないという風潮がありますが、これはコロナ禍に限ったことでしょう。一般化はしないと考えられています。
しかし、飲食店でのオーダーは各テーブルに設置されたタブレットや、自分のスマートフォン経由でエントリーすることがますます多くなります。なぜなら、店員を呼んだり、焦って注文する必要がないからです。
ここには人の感覚の変化があり、オーダーエントリーに関しては、人の温かみの有無以上に、利便性を追求する人が多くなったせいだと言えます。しかし一方で、すべてのサービスから人のあたたかな関わりがなくなってよいと考えているわけではありません。
困ったときには助けてほしいし、個別対応はしてほしい。それは人が関わることでしか実現しません。ある意味、少ない関わりでサービスの良し悪しを決める、繊細な時代になったといえるのかもしれません。
部屋掛けも可能なホテル専用のシステム
ではそのような、時代のニーズに即したサービスを実現するには、どのようなシステムを導入すればいいのでしょうか。
今はホテルや旅館などに向けたモバイルオーダーサービスもいくつか登場しています。イメージとしては、飲食店などで導入されているような、入店してからQRコードなどを読み取ることで専用サイトにアクセスさせ、そこでオーダーが可能となるシステムに近いものと考えればよいでしょう。
具体的には、今まではフロントで伝えていた食事の指定や、館内の売店で購入していたお土産物をネットショップを利用する感覚で使えるようになります。もちろんお客のスマホを利用するだけでなく、各部屋にタブレットを設置する場合もあります。
どのようなことができるのか、poscubeのホテル向けのモバイルオーダーを参考に見て行きましょう。
モバイルオーダーシステムによるコース料理の対応
ルームサービスを頼みたいとき、メニュー表を見てフロントに電話連絡をしなくても、スマホから注文できるようになります。注文時間を設定するのはもちろん、パンかライスかなどを細かく指定することも可能です。
ホテルの基幹システムと連携し部屋掛けを可能に
モバイルオーダーと基幹システムを連携するため、宿泊者ごとの管理が可能となり、館内での食事やショッピングの会計を部屋掛けにすることができます。つまり、お客は財布を持ち歩かなくてもよく、ホテル側は金銭授受を減らすことができるわけです。
では、これらを導入することでどのようなメリットがあるのでしょうか?
お客側とホテル側、双方のメリットを見ていきましょう。
モバイルオーダーシステム導入でお客が感じるメリット
まずはお客のメリットから見ていきましょう。
1.周りの目を気にすることなくオーダーできる
最近は周りの人を気にしながらの手続きや買い物を不得意とする人が増えています。「焦らされている感じがする」という人もいれば、「列に並んで待つことが苦手」という人もいます。これらのわずらわしさは、モバイルシステムを活用することで解消されます。
2.時間を気にせずいつでも買い物ができる
ホテルに行ってお土産物を買おうと思ったら、朝早くて(または夜遅くて)開いていなかったということがあります。日中はバタバタと忙しい人も多く、館内で買い物ができなかったというケースもあるでしょう。
このような場合、モバイルシステムで買い物ができるようになっていると、手が空いた時間を有効に使うことができます。
3.知りたい情報を調べられる
最近は情報がとても重要視されます。食べ物であれば、アレルギー情報を見たい人もいれば、原産地情報を知りたい人もいるでしょう。しかし、これらを店舗で確認するのは困難です。
その点、モバイルシステムであれば、店舗側が用意した詳細な情報にアクセスできて安心です。
4.外国語にも対応可能で安心できる
海外旅行に行き、現地の言葉が分からないために買い物に手間取るなど不便を感じたことがあるでしょう。これと同じ体験を日本に旅行するインバウンド客も感じています。それをクリアできるのもモバイルシステムのメリットです。
定番の英語はもちろん、中国や韓国など特定の国からの旅行者が多いのであれば、その現地の言葉に対応したものを用意しておけば、満足度が上がります。
5.部屋掛けで会計のわずらわしさがない
館内での買い物のとき、いちいち現金を払うことに面倒さを感じている人も多くいます。特に今はキャッシュレスの時代。館内を回っているとき、「カフェでお茶でも」と思っても、現金を持っていなければ部屋まで戻るしかありません。
その点、部屋掛けで精算するシステムが採用されたモバイルシステムを導入すれば、その都度、会計をする必要はなくなります。財布は持っていなくても、スマホは常時携帯するのが一般的。スマホで対応できることはメリットしかありません。
モバイルオーダーシステム導入でホテル側が感じるメリット
続いてはホテル側のメリットです。
1.スタッフの有効な配置が可能になる
売店やフロントに多くの人を配置する理由は、お客への応対に時間を要するから。しかし、多くの人がモバイルシステムを使うようになれば、売店などのスタッフを減らすことができます。
これは単純に人件費を削減することにつながったり、各スタッフに支払う給与水準を上げることで、よりレベルの高い人材を確保できたりすることを指します。
2.部屋掛けによる会計の簡略化
売店やレストランで食事をした時、部屋掛けができるのはホテルの便利なサービスのひとつでした。これに対応したシステムを使えば、これまでと同じサービスを提供できます。
今はスマホを持ち歩かない人はいません。お客が使うモバイルシステムに個人を識別するQRコードを設定しておけば、面倒な手続きを簡略化できます。データは基幹システムと連携することで、退去時の精算が可能になります。
3.売上アップが見込める
お土産を買うにしろ、食事を頼むにしろ、対面であると相手を気遣うのが日本人の特徴。待たせると悪いからとの理由で急いでしまい、後になって、あれも頼めばよかったと考えることもあります。その点、モバイルシステムを使えば、気軽にオーダーできるため売上アップが見込めます。
4.外国語が話せなくてもサービスを提供できる
外国語で対応できるスタッフを雇うのは大変ですし、人件費の負担も気になります。また、外国語対応ができるように教育を行うには、時間とコストがかかってしまいます。そこでシステムに外国語対応のページを設ければ、必要な情報を的確に伝えることができるようになります。
また、インバウンドの対応を印刷物でまかなおうとするホテルやレストランもありますが、あれもこれもと渡されても、どれを見ればよいのかわからず、戸惑っているケースを見かけます。しかし、モバイルシステムに取り込んであれば、必要な時に必要な情報にたどり着くことができます。これにより顧客満足度は確実にが上がります。
5.顧客管理をデータ化することで、おもてなしレベルを向上させる
ホテルではリピーターに快適な空間を提供するため、顧客ごとの嗜好を把握することが重要となります。モバイルシステムを顧客管理システムに連携することで、来店履歴の把握などと合わせて管理できるようになり、おもてなしレベルをさらに向上することができます。
まとめ
お客にとってもホテルにとっても、メリットが多いモバイルシステム。これからのサービスのあり方に対応し、大きな変化をもたらす可能性があることが伝わったでしょうか?
おもてなしを重要視する日本は、人によるサービスが最重要だと考えてきました。しかしスマホを使え慣れた人々は、システムを使う便利さに慣れ、人を介することに不自由さを感じることも出てきています。
また、コロナ禍では減少しているものの、今後は間違いなくインバウンドは増えていきます。彼らに十分な対応をするためにも、モバイルシステムを導入することが必要だと言えます。
多くのシステム会社がホテル向けのシステムを開発しています。ホテルによってサービスのあり方が違うように、必要とするシステムも違うはず。人との接することが敬遠されがちな今だからこそ、最適なシステムの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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参考サイト
https://www.hotelmanagement.net/tech/how-to-give-a-contactless-experience-a-human-touch