最低時給が3000円超に!カリフォルニア州のファストフード従業員最低賃金アップのインパクト

カリフォルニア州内で営業する主要ファストフードレストランの従業員の最低賃金を1時間20ドル(約3,000円)に引き上げる法案が可決した。ギャヴィン・ニューサム州知事の肝煎りで可決した法案だが、飲食店の現場では賛否両論を呼ぶ状況となっている。この法律の施行により、カリフォルニア州の飲食店はどのような影響を受けるだろうか。今後の展開などについて考察する。

ファストフードレストラン従業員の最低賃金を1時間20ドルに引上げ

現地時間の2023年9月28日、カリフォルニア州内で営業する主要ファストフードレストランの従業員の最低賃金を1時間20ドル(約3,000円)に引き上げる法案が可決した。賃上げの対象となるのはカリフォルニア州内で営業する主要ファストフードチェーンレストランの従業員で、2024年4月1日以降、労働の対価として1時間当たり20ドルの賃金を受け取ることになる。

カリフォルニア州は最低賃金が全米でも最高クラスに高いことで知られており、米労働省労働統計局によると、カリフォルニア州のファストフードレストランの従業員の平均時給は16.60ドル(約2490円)だ。それが4月1日に3.40ドル(約510円)引き上げられ、平均的な労働時間を働けば年収で41,600ドル(約624万円)を稼げるようになる。55万人いるとされるカリフォルニア州のファストフードレストランの従業員にとっては正に吉報だろう。

賃上げを強行したニューサム知事

ファストフードレストランの仕事は、アメリカでは長らく「高校生が人生で初めてする仕事」であるという認識が一般的だった。仕事は基本的に単純労働で、高校生が空いた時間にパートタイムで行う、時給が安くて当然とされる仕事という認識だ。しかし、ニューサム知事によると、それは「はなからこの世に存在しない、空想の産物」だ。ニューサム知事によると、ファストフードレストランの仕事は、マイノリティなどの低所得者の「犠牲」の上に成り立っており、「犠牲」に対しては「正当な対価」を支払わなければならないという。

確かに、カリフォルニア州は生活コストの高さも全米トップクラスで、特に近年はインフレや高金利の影響などもあり、家賃や食料品などの価格が総じて上がり続けている。今回の賃上げは、もはやエッセンシャルワーカーとなったファストフードレストランの従業員が、カリフォルニア州で生活するための最低限度の収入を確保するための必然の策だったのであろう。

キオスク端末への移行など、飲食店の省人化が加速する?

この賃上げが現場に与える影響については様々な見方が出ている。まず指摘されているのが、最低賃金以下で働く労働者の増加だ。カリフォルニア州では、不法移民などを最低賃金以下で雇用する飲食店が少なくない。また不法移民の中には最低賃金以下でも働きたいという人が少なくなく、実際に働いている。大手ファストフードレストランのフランチャイズ店でもそうしたケースが見つかっており、労使協議で問題提起されている。

また、多くの人が予想しているのが飲食店における「省人化」の加速だ。実際に多くのファストフードレストランチェーンにおいて注文受付スタッフをキオスク端末に切り替える動きが加速している。カウンターの注文受付スタッフをキオスク端末に切り替えることに加え、ドライブスルーの注文受付スタッフも、AIを使ったオーダリングシステムなどに切り替える動きも加速している。今回の賃上げを機に人間のスタッフをリプレースする機運がさらに高まるだろう。

さらに、調理スタッフの一部も、調理ロボットに切り替えられる可能性がある。すでにフライドポテトを揚げるロボットや、ハンバーガーのパティを焼くロボットなどが実際に導入されている。賃上げを機にロボットに切り替えようと経営サイドが判断したとしても不自然ではない。

ファストフードレストランでの食事はすでに「贅沢な行為」に?

ところで、今回の賃上げによりファストフードレストランの価格が上昇すると見込まれているが、一体いくらくらいになるのだろうか。2024年4月1日以降のメニュー価格について、マクドナルドのクリス・ケンプチンスキーCEOは、今のところ具体的にいくらになるかは決まっていないものの、「値上げをせざるを得ないのは確実」としている。

例えばロサンゼルス市内のあるマクドナルドでは、セットの「ビッグマック・ミール」が10.19ドル(約1,528円)、「マッククリスピー・ミール」が9.59ドル(約1,438円)、「フィレオフィッシュ・ミール」が9.39ドル(約1,407円)となっている。賃上げ率は20.48%なので、仮に同店のレイバーコスト比率を30%とした場合、価格に上乗せすると全体のコストを6.144%押し上げる可能性がある。レイバーコスト比率がさらに高い場合はそれ以上だ。

賃上げ後の新価格は、「ビッグマック・ミール」が10.82ドル(約1,623円)となる可能性があり、すでに高いとされる水準をさらに押し上げる形となる。さらに、カリフォルニア州ではファストフードレストランでの食事の際、平均で8%程度の消費税を支払う必要もある。カリフォルニア州においては、ファストフードレストランでの食事はすでに「贅沢な行為」なのだ。

一方、日本の飲食業界は?

一方で、日本の飲食業界はどうだろうか。日本でも最低賃金の賃上げ改定が続いている。2023年も10月から東京都が1,113円に、神奈川県が1,112円に、大阪府が1,064円に、愛知県が1,027円にそれぞれ引き上げられた。全国で39円から47円という過去最高の引き上げ額となった新最低賃金は、我が国の飲食業界にも大きな影響を与えている。

賃上げを吸収するために日本の飲食店も、価格の値上げ圧力を受けている。しかし、安易な値上げは客離れを呼びかねず、多くの経営者は頭を痛めている。

また、日本でも飲食店の「省人化」を進める機運が高まっている。接客スタッフの代わりにモバイルオーダーを導入したり、接客ロボットや配膳ロボットを導入する店舗が増加している。また、会計もモバイルで行える店舗なども増えてきており、日本の飲食店の「省人化」は確実に進行している。「最低賃金の値上げと、それによる省人化の進行」は、日本とアメリカの飲食業界にとっての共通トレンドであるようだ。

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関連サイト
https://time.com/6318512/california-minimum-wage-fast-food-workers/
https://www.foxbusiness.com/economy/mcdonalds-chipotle-hike-menu-prices-california-gov-newsom-approves-fast-food-minimum-wage