今は生活のあらゆる面にITが導入され、利便性が求められるようになりました。飲食店も例外でなく、さまざまなシステム化が進んでいます。その象徴的なものがオーダーシステムでしょう。最近ではテーブルにタブレットを設置し、お客が自分で注文を入力するスタイルが一般化しました。
そして、その進化系として注目されているのが、お客のスマートフォンを使ってオーダーできるモバイルオーダーシステムです。
今回はこの最新のシステムを紹介しつつ、店舗とお客にとってどのようなメリットがあるのかを見ていきます。
飲食店は注文を聞くことからサービスがはじまる?
注文を聞くという行為は、飲食店で欠かせないことのひとつです。スタッフとお客が直接関わる最初の行為として、店舗の印象に関わる重要なことだと位置づけられ、「笑顔をたやさずに・・・」などと言われてきました。
また、伝票はさまざまな役割を果たします。まずは注文を口頭で聞き、その内容が書かれます。その伝票は厨房でのオーダー管理に使われ、その後、一旦お客の手元に渡り、お会計時にはその内容を見てレジに打ち込まれるという重大な役割を担います。
中にはモニターを使わず、伝票による管理の方が使いやすいと出力する店舗もありますが、どちらにしろ、全体的なシステムとして活用されていることに変わりはありません。
しかしこのシステム化は、作業を効率化するシステムとしてはとても優秀だったものの、客席で苦戦する新人アルバイトなども多く、サービスを提供する最初の機会としては不十分な面も。
そこにはオーダーエントリーが専用端末によって行われることや、アルバイトが短期間に入れ替わることなど複雑な要因が絡み合っています。システム化とサービスの充実はなかなか難しいものだと感じてきた店舗も少なくなかったことでしょう。
スマホの登場が生活を変えた
その一方で、さまざまなITデバイスが進化しました。その代表がスマートフォン。今となっては生活になくてはならない存在となっていますが、iPhoneが登場したのは2007年のこと。まだ十数年しかたっていないのは驚きです。
また、多くの人がスマホを使って通販システムを使いこなせるようになりました。たとえばAmazonで買い物をする場合、何万点もある商品数の中からお目当ての商品を探し出し、ときには他の通販サイトと値段を比較したり、詳しい商品情報をメーカーサイトから得ながら、注文を完了させます。
このような背景もありスマホやタブレットに抵抗がある人が、高齢者も含めてかなり減って来たと言えます。
小規模店舗でも気軽に導入できるようになったタブレットによるオーダーエントリー
抵抗がなくなる人が増えたことで、各テーブルにタブレットが置かれ、そこから注文できるというシステムが個人経営の飲食店にも広がりだしました。POSレジ機能のひとつとして、タブレットを使ったオーダーエントリーシステムが提供されるようになったことも大きく影響しているのは言うまでもありません。
これは、高騰する人件費を相殺するものとして注目を浴びるほか、お客の側としても、「スタッフを呼んで注文するよりも自分のペースが守れる」と好意的にとらえる人が多いと言われているのです。
もちろん、タブレットに入力された注文内容は、スピーディにキッチンに伝わります。
さて、これが今、さらに進化を見せています。
なんとテーブルにタブレット置いておくのではなく、お客のスマホを使って注文を可能にしてしまうのです。
数年前であれば抵抗がある方もいたかもしれませんが、今となっては抵抗を感じる方はなく、むしろ好意的に捉えることも多いでしょう。たとえば、新型コロナの世界的な流行で、誰が触ったか分からないタブレットに触れることに抵抗を感じる人が増えています。そうなると、自分のスマホで注文できるれば安心だ、という声があがって当然だと言えるのではないでしょうか。
確実に増えつつあるモバイルオーダー
では、スマホを使ったオーダー、つまり「モバイルオーダー」が広がりつつある例を紹介しましょう。
まずは、マクドナルド。2019年からモバイルオーダーをスタートしており、テイクアウトの事前注文システムとして利用できるだけでなく、店内でイートイン利用する場合でも利用できる独自のシステムとしてスタートしています。
また、すき家でも全国の店舗で導入が進んでいます。アプリで商品を選び、テーブル上のQRコードをスマホで読み取って注文と会計を済ませるもの。どちらもその利便性から、利用者が増えています。
もちろんこの例は莫大な費用をかけて独自システムを開発しているのですが、これが小規模の店舗でも利用できるようになっている点が注目すべきポイントです。
小規模店舗でも活用できるモバイルオーダーの具体的な流れ
では具体的に、モバイルオーダーを利用した場合にどういった流れなのか見てみましょう。
1.テーブルごとにQRコードを設定する
事前に各テーブルに固定のQRコードを設定します。テーブルにPOPを設置したり、カードを貼り付けるなどして、お客がコード読み込みをしやすいような工夫が必要です。
2.お客の来店。QRコードの読み込み
3.お客様のスマホから注文が入る
注文が難しいお客には、スタッフが注文を聞いて対応することも可能です。
4.POS連携
注文したオーダーは注文伝票プリンターから出力。また、お客のスマホには、注文商品のステータス表示がされます。
オーダー確定後のキャンセルは、スタッフに伝えるようになっているのもポイント。これにより、キッチンの混乱を防ぎます。
5.注文商品の提供
お客に注文商品を提供する際に、キッチンに出力された伝票を持って行きます。
6.会計
お客が持ってきた伝票を使ってPOSレジで会計をします。注文内容はすでに回収しているため、一品一品のオーダーを打ち込む必要はありません。
モバイルオーダーのメリット
このシステムには店舗側、お客側、双方にメリットが大きいと言われています。それぞれに見ていきましょう。
店舗側のメリット
1.客単価の向上
今までお客様はスタッフを呼んで注文をしていましたが、スタッフがなかなか捕まらずに注文ができないなどのことが無くなり、お客様が好きな時にすぐに注文可能なことで、お客様1人当たりの注文数が向上することが見込めます。
2.人手不足の解消とマンパワーの有効活用
また、お客とのコミュニケーションを取る時間も増えます。
3.端末等の導入コストを抑えられる
注文はお客のスマホから行われるため、店舗側でタッチパネル等の初期投資の費用を抑えることができます。そのコストはキャンペーン等に充てることが可能です。
4.多言語に対応できる
コロナ禍で現状は外国人が少なくなっていますが、観光地など通常は外国人客が多いお店にとって、英語、中国語などの言語メニューは大きなメリットとなります。
5.お客のデータを管理できる
いつ、どんなメニューが多く注文されているのか。どの商品の組み合わせが多いのかなど、さまざまなデータを把握でき、メニュー開発などに役立てることが可能となります。
お客側のメリット
1.ゆっくり商品を選び、自分のタイミングで注文ができる
初回の注文はもちろんのこと、追加などを頼む際もスタッフを呼ぶ必要はなく、好きなタイミングで注文ができます。
2.衛生面での不安解消
3.インバウンド顧客の利便性
外国人のお客にとっては日本語以外の親しみがある言語で注文できることは、安心できると感じるはずです。
4. 合計金額など、いつでも確認できる
これまでは伝票は来るまで分からなかった合計金額を、いつでも確認することができます。多くの人は一定の予算の中で食事をしたいと思っていますが、タブレットを使って確認はしにくいもの。これは自分のスマホだからこそできるメリットとなります。
このようにモバイルオーダーは店舗側、お客側の双方にとってメリットが大きいことから、今後は導入店舗は増加していくと考えられています。
まとめ
お客のオーダーをお客自身のスマホから行うモバイルオーダーが、小規模店舗でも気軽に利用できるようになっています。店舗にとっては、モバイルオーダーを導入することで確保できた時間を、サービスの質の向上に役立てることができ、信頼関係に発展させ、再来店につなげることが可能。
大きな可能性を持ったモバイルオーダーを早々に導入し、新たな展開に役立ててみるのはいかがでしょうか。
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