仕入れはどこから?アメリカの寿司店のサプライチェーンとは?

アメリカの調査会社NPDグループが実施した調査によると、2017年時点のアメリカには647,288店の飲食店が存在する。中でも日本食を提供する飲食店の数は1970年代頃より増加し続け、今日までに22,452店を数えるまでになっている。

 

増え続けるアメリカの日本食レストラン、寿司店の人気は安定

特に寿司店の人気は安定していて、カリフォルニアやニューヨークなどを中心に全米で4,000店程度の寿司店が本格的な寿司を提供している。

アメリカを訪れたことがある人の中には、現地で寿司を食べたことがある人が少なからずいるだろう。筆者は大分前にロサンゼルスに住んでいたが、日本からお客が来るとよく現地の寿司店へ連れて行った。連れて行かれたお客の反応は上々で、異口同音に「日本で食べる寿司とほとんど変わらない」と、そのクオリティの高さに驚いていた。

そんなアメリカの寿司店だが、仕入れなどのサプライチェーンはどうなっているのだろうか。筆者は、ひょんなことからその実態を知る機会に恵まれた。



仕入れの主体は「魚屋」

まず、アメリカの寿司店へ流通している魚のほとんどは日本から輸入されている。その事実を知る前の筆者は、アメリカにも旧築地市場のようなパブリックの卸売市場があり、そこで寿司用の魚が売買されているものと思っていた。そして、おそらくバイヤーのような業者が存在し、寿司店のために卸売市場で魚を仕入れているものと考えていた。

しかし、実際は、アメリカの寿司店で供される魚のほとんどは日本からチルドか冷凍の状態で輸入されている。その輸入業務を行っているのが、現地の関係者が「魚屋」と呼ぶ業者だ。

「魚屋」は、旧築地市場、現在では豊洲市場に出店を持ち、そこで日本の卸売業者同様マーケットから魚を仕入れている。仕入れた魚は冷凍かチルド処理が施され、直ちにアメリカへ空輸される。空輸された各種の魚は「魚屋」の加工施設へ持ち込まれ、切り身などに加工される。アジやサバなどの青魚などは、チルドの状態のまま寿司店へ届けられる。

なお、「魚屋」の多くには日本人、または日本企業が少なからず関与している。「魚屋」は、ロサンゼルスなどに住む日本人に向けてオープンする寿司店の増加とともに二人三脚で成長してきた。「魚屋」の存在なくして、アメリカの寿司店が高品質の魚を仕入れることは不可能だろう。

 

「輸入業者」もサプライチェーン構築に一役

また、マグロやブリなどの大型魚を冷凍して日本から輸入している「輸入業者」も、アメリカの寿司店のサプライチェーン構築に一役買っている。「輸入業者」とは、日本から食料品を輸入している日系輸入業者の事をいう。「輸入業者」は自前の加工施設を持たず、輸入した魚を寿司店へ直接届けるか、「魚屋」に販売する。「魚屋」に販売された魚は、「魚屋」が加工して寿司店へ届ける。

なお、最近はアメリカ現地のレストラン卸業者の中にも、日本から寿司用の魚を輸入するところが出てきているという。ほとんどが豊洲市場などで魚を仕入れ、日系輸入業者と同様に寿司店か「魚屋」に販売しているそうだ。ただし、これはあくまでもレアケースで、サプライチェーンの主役はやはり日系の「魚屋」と「輸入業者」だ。

ところで、「魚屋」も「輸入業者」も、いずれも寿司店が多く存在するエリアに多く存在している。特にロサンゼルスとニューヨーク(ニュージャージーを含む)に多く、連日日本からの空輸便を受け取っては地域の寿司店へ配達している。豊洲市場から始まるロジスティクスが、ロサンゼルスとニューヨークを経由してそれぞれの地域の寿司店にまでつながっているのだ。

 

独自に進化してきたアメリカの寿司店のサプライチェーン

アメリカの寿司店のサプライチェーンとは、いうなれば現地に住む日本人のニーズから、「日本で食べる寿司と同じクオリティの寿司が食べたい」というニーズから生まれ、寿司店の数が増加するにつれて「魚屋」「輸入業者」の数が増え始め、プレーヤー全員が相互にフィードバックしながら善循環的に拡大してきたのだろう。とどのつまり、日本人が日本人のために始め、旧築地市場から始まる鮮魚のロジスティクスが発展拡大するかたちで形成されてきたのである。

それゆえ、アメリカの寿司店のサプライチェーンは、あくまでも日本の物流の枠組みの中にあるといっていいだろう。これは、アメリカに豊洲市場なみの水産卸売市場が誕生しない限り、覆されることは絶対にないだろう。仕入れの大元が豊洲市場であるという点においては、東京の寿司店もロサンゼルスの寿司店もまったく同じなのだ。

一方、あえて両者の違いを挙げるとすれば、ロサンゼルスの寿司店は、東京の寿司店のように職人が直接市場で魚を仕入れることができない点だろう。ロサンゼルスの寿司店は、仕入れについては「魚屋」に依存せざるを得ない。魚の仕入れという、ある種職人的なスキルと経験が求められる仕事に関与できないという点は、アメリカの寿司店に負わされた大きなハンディキャップであるといえるだろう。

 


参照:
https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/12ba5703b261d87f/restaurant_usala201503.pdf


ライタープロフィール:
前田健二
東京都出身。2001年より経営コンサルタントの活動を開始し、新規事業立上げ、ネットマーケティングのコンサルティングを行っている。アメリカのIT、3Dプリンター、ロボット、ドローン、医療、飲食などのベンチャー・ニュービジネス事情に詳しく、現地の人脈・ネットワークから情報を収集している。





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