ハラルとは?飲食店経営者が知っておきたいハラルの基本

最近、日本に住むムスリム(イスラム教徒)の男性から都内にハラルレストランをオープンさせたいという相談を受けた。バングラディシュから来日して5年になるその人によると、東京にも最近ハラルマートやハラルレストランが少しずつ増えてきたが、中には本当にハラルなのか怪しいものが少なくないそうだ。また、日本人の飲食店経営者の中にもハラルに関心を持ち、実際にハラル料理を提供する店も出てきている。本記事では、日本の飲食店経営者を対象に、ハラルの基本について解説する。

ムスリムとはどういう人達なのか?

ハラルについて説明する前に、まずはムスリムという人達について説明しておきたい。ムスリムとは、アラビア語で「イスラム教徒」のことである。イスラム教は、7世紀初頭にサウジアラビアで生まれた、唯一神アッラーを信仰する宗教である。なお、ムスリムが信仰する唯一神アッラーとは、キリスト教徒やユダヤ教徒が信仰する「神」と同一の神である。イスラム教は、預言者ムハンマドが受けた神の啓示をまとめた「コーラン」と、アッラーの言行を記した「ハディース」、「旧約聖書」の一部などに基づいて信仰が営まれている。

アメリカの調査会社ピューリサーチセンターによると、2020年時点の世界のムスリム人口は19億人で、全人類に占める割合は24.7%となっている。ムスリム人口は、主に東南アジア、中東、北アフリカの諸国に多く存在するが、中でも東南アジアのムスリム人口が世界最大となっている。国別ではインドネシアが世界最大のムスリム国で、その数2億3100万人となっている。ピューリサーチセンターは、世界のムスリム人口は2030年までに22億人に増加し、全人類に占める割合も26.4%へ増加すると予想している

ハラルとは何か?

では、続けてハラルについて説明したい。ハラル(Halal)とはハラールとも呼ばれ、アラビア語で「合法」という意味である。イスラム教では生活全般において戒律があり、食物についても「食べてよいもの」と「食べてはいけないもの」が詳細に定められている。例えば、「食べてはいけないもの」の筆頭が豚肉とアルコールで、豚肉やアルコールそのものだけでなく、豚肉から抽出されたエキスを使ったスープや、豚肉が保存されている冷蔵庫で保存されていた食材、豚由来のたんぱく質を原料にしたサプリメントや化粧品なども「非合法」とされる。アルコールについても、ビールやワインなどのアルコール飲料は無論、調味料としてのみりんなどもご法度だ

さらに、イスラム教では食肉に使う牛などのと殺の仕方も細かく定められている。と殺を行う人がムスリムであることが求められるのに加え、食肉の処理方法や保存方法などについても細かい規定がある。そうした規定を漏らさず満たした食材が「ハラル」であり、そうした食材を、イスラム教の教えに従って調理した料理が「ハラル料理」なのだ。

ハラル認証を受けるには?

Halalマーク例

では、一般的な日本の飲食店がハラル認証を受けるにはどうすればいいだろうか。通常はイスラム教の専門家で組織された認証機関から認証を受けるのが一般的だ。日本では、一般社団法人ハラル・ジャパン協会、宗教法人日本ムスリム協会、宗教法人イスラミックセンター・ジャパン、NPO法人日本ハラール協会などがハラル認証を行っている。申請方法や認証にかかる費用などは団体ごとにそれぞれなので、興味があればそれぞれの団体に相談すると良いだろう。

飲食店でのインバウンドの対策

 

ハラル認証飲食店紹介①「麺や帆のる」

ところで、ムスリムの訪日客の増加に伴い、ハラル認証を受ける「ハラル認証飲食店」が増加している。そこで、ハラル認証を受けた飲食店の事例として、ムスリムに人気の「ハラルラーメン店」と「ハラル焼肉店」を紹介する。

麺屋帆のる」は、東京都恵比寿、東京都大塚、大阪府なんば、ジャカルタで四店舗を運営するラーメン店である。四店舗のうち、恵比寿店となんば店がハラル認証を受け、完全ハラルラーメン店として運営している。ハラル認証を受けた鶏肉、ハラルと認められた醸造所で作られた醤油、ハラル認証工場で作られた麺を使うなど徹底しており、連日在日ムスリムや来日ムスリムのお客でにぎわっている。

メニューは看板メニューの鳥白湯麵のほかに、から揚げ麺、焼肉ラーメン、餃子、カレーライスなどもあるが、すべてハラル対応となっている。訪日ムスリム客に人気のウェブサイト「Halal Navi」で、2018年と2019年の2年連続で人気ランキング1位を獲得。訪日ムスリム客の間で認知が広がっている。

ハラル認証レストラン紹介②「浅草 すし賢」

浅草 すし賢」では外国人観光客の多い浅草で、ハラル対応を寿司を楽しめる。
料理に使われる全ての食材は米から魚、醤油までハラルになっており、2015年にムスリム対応はじめる前からムスリム客に限らず海外からの観光客に人気のスポットとなっている。
今はコロナで落ち着いているものの、コロナ前はマレーシアなどのムスリム国からの訪日客が多く訪れていたという。また、インドネシアやタイからの訪日客も増加していたという。在日ムスリムコミュニティのリピート客とともに、訪日ムスリム客の誘致に成功している。

アフターコロナのインバウンド客増加を見通して

我が国における新型コロナウィルスのパンデミック開始前の数字となるが、2019年度における主要ムスリム国であるマレーシアとインドネシアからの年間訪日客数は、マレーシア501,700人、インドネシア412,800人で、前年からの伸率はそれぞれ7.1%、4.0%となっている。いずれも過去最大の数字で、新型コロナウィルスのパンデミックが仮になかったとした場合、翌2020年度には引き続き増加するものと予想されていた。

東南アジアのムスリム国においては、近年旅行先として日本の人気が高まってきており、新型コロナウィルスのパンデミック収束後には改めて多くの旅行客が日本へ来日すると予想される。増加するムスリム訪日客に対応すべく、ハラル認証の取得を検討してみるのも面白いのではないだろうか

参考
https://livejapan.com/ja/in-tokyo/in-pref-tokyo/in-asakusa/article-a0001981/
https://jhba.jp/halal/certification/