飲食店がご当地料理を出すとき、とるべき施策と成功のコツ

飲食店がご当地料理を出すとき、とるべき施策と成功のコツ

全国旅行支援が2022年10月に再開され、人の動きが活発になりました。コロナ禍で様々な制約を受けてきた飲食店も、この機会に再起しなければなりません。
飲食店は差別化が重要ですが、そのひとつとしてご当地料理を提供するという方法があります。
今回はご当地料理で集客するコツを「ご当地」と「ご当地以外」の2つに分けて考えます。

ご当地料理とは郷土料理? ご当地グルメ?

ご当地料理と聞いて、どのようなものを思い浮かべるでしょうか。

郷土料理をイメージする人もいれば、最近になって流行りだしたご当地グルメをイメージする人もいるでしょう。

今回のテーマではこれらを明確に分けるものではありませんが、一般的に、郷土料理は特定の地域に伝統的に伝わるもので、風土に根ざした調理法や食材を使用するもの。またご当地グルメは近年になって、例えばB級グルメなどとして注目を集めたことをきっかけに、特定の地域に定着したものを指します。

まずは郷土料理やご当地グルメの例をいくつか挙げてみます。筆者の分類なので、イメージの違いがあるかもしれませんがご容赦ください。

郷土料理
秋田県 きりたんぽ
群馬県 生芋こんにゃく料理
茨城県 そぼろ納豆
埼玉県 ぼたん鍋
和歌山県 めはりずし
兵庫県 ぼっかけ(すじこん)/釘煮
香川県 讃岐うどん
広島県 牡蠣の土手鍋
宮崎県 地鶏の炭火焼き/冷や汁
鹿児島県 つけあげ(さつまあげ)/さつま汁

ご当地グルメ
新潟県 イタリアン(スパゲティ風焼きそば)
静岡県 静岡おでん
京都府 黒丹バーガー
広島県 尾道ラーメン
宮崎県 チキン南蛮
長崎県 佐世保バーガー

ここに書いたのは極一部。日本全国には実に様々なものがあります。

他にも、同じ名前でありながら、内容が違うものもあります。例えば、お正月に食べる雑煮。基本的に関東は角餅(切り餅)、関西は丸餅を使用します。

味付けにも違いがあり、東日本は醤油ベースのすまし汁、西日本は味噌ベースが多いようです。

具材も様々で、その理由は冬場に各地域で用意できる食材を使用したからです。意外な例では、宮城県の焼きハゼ、広島県の牡蠣、新潟県のいくらや鮭、長崎県のブリなど、海の幸を使用する地域があること。餅も香川県ではあんこ餅を入れるなど、まさに郷土の味というわけです。

ご当地料理をその地域で提供するコツ

では、ご当地料理を飲食店で売る場合、どのようにすればよいのでしょうか。当然ながら、ご当地で売る場合と、それ以外の地域で売る場合で、まったく違った施策が必要となります。

まずは、ご当地料理をご当地で売るケースから考えます。

ご当地料理は、他の地域から見れば珍しくても、その地域に行くと同じ料理を提供する店舗が多くあり、お客としてはどのお店を選べば美味しいものが食べられるのかが分かりません。

例えば、「仙台に行って牛タンを食べたい」と現地に行くと、専門店がたくさんあり、迷ってしまうというのが観光客の本音でしょう。

では、自分の店舗が選ばれるためには、どうしたらよいのでしょうか。
美味しい商品を出すことは当然ですが、それだけでは集客にはつながりにくいものです。

お客に知ってもらうには3つのポイントがあります。

1. 地域の観光マップや雑誌など印刷物に載せてもらう
2. インターネットを活用する
3. 個性があり、入りやすい店舗を作る

順番に見ていきましょう。

地域の観光マップや雑誌など印刷物に乗せてもらう

地方を紹介する全国区の雑誌もありますが、ここに掲載されるには運か、多額のお金が必要になるので、あまりおすすめはしていません。

一方、多くの地域で観光協会などが「観光マップ」を用意しています。これは地域振興の目的で作成されるもので、その中に飲食店紹介も載っていることが多くなります。ここに掲載されることが確実な集客につながりますし、狙い目です。

これらの印刷物を参考にするのは、年齢が高い層が多いと言われています。有名な観光地を効果的に回りながら、美味しいものを食べたい。この欲求を表したのが観光マップというわけです。

地域によりますが、このマップに有料広告を掲載することで、地図上に乗せてもらえたり、大きく表示してもらえたりするケースがあります。もちろん費用対効果は十分に考慮しなければなりませんが、一考の価値はあります。

また、自分で紹介マップを作ってしまうという方法もあります。筆者の知り合いは、「できるだけ安く効果的な宣伝をしたい」と考え、自分で賛同者を集め、近隣情報に特化した観光マップを作りました。

アイデアはいろいろあるはずです。一見さんの「どの店に入ったらいいのかわからない」を解消するためには、まずは露出することが大切なことを考えてください。

インターネットを活用する

今の時代はインターネットを使ってどこに行くのか決める人が多いもの。 またサイトをブックマークしておくことで、現地に行ってから再度表示させ、行き方を地図に表示させることもできます。

ここで重要なのは店舗を紹介するWEBサイトの存在です。しかし、「自分たちでWEBサイトを作っても見てくれる人がいない」 という方もいるでしょう。

ですが、それぞれの地域には「おすすめ飲食店ランキング」のようなサイトを作っているページがあります。そこに掲載されるには公式サイトがあることが基本になるので、露出を増やすにはWEBサイトは欠かせません。

「人手もコストもない」という店舗は、ぐるなびや食べログを自社で管理できるようにする方法があります。毎月、経費を払う必要がありますが、数万円と手軽なことがほとんど。店舗が撮影した料理写真を載せることができるだけでなく、近くの店舗紹介コーナーで積極的に紹介されるなど特典も多くなります。予約システムを利用できることもメリット。ぜひ検討してみてください。

個性があり、入りやすい店舗を作る

観光客は計画的にどの店に行くかを決めず、「その地域に行って気に入った店を利用しよう」と考えている人も多くいます。

このようなお客を取り込むには、店舗の雰囲気づくりが最重要です。

コストをかけて、絢爛豪華な店が必ずしも求められるわけではありません。清潔感はもちろんですが、そのメニューと店の雰囲気があっていることが重要で、入りやすい雰囲気も大切です。

また、店頭にメニューブックを置くなど、コスト感がつかめると安心して利用してもらえます。

さらに言えば、店舗で働く従業員の接客態度も重要なポイント。旅行中に再び訪れたいと思ってもらえるからです。

筆者の例を紹介します。仙台に行ったとき、繁華街から少し離れた牛タン専門店に入りました。最初に接客してくれた女性従業員のほっこりとした雰囲気が気に入り、料理も美味しかったために翌日の夜も訪れ、最終日の昼にランチを食べに行きました。さらには合計5万円分のお土産を各所に発送してもらったことがあります。

地域ならではの言葉遣いで心和ませてくれる接客は、それだけで感動を与えられます。

ご当地以外でご当地メニューを出すコツ

次に、ご当地料理を別の地域で提供する方法です。実は、これがご当地以上に売れる店になることもあります。

例えば、誰もが知ってる「たこ焼き」。
筆者は関西出身なので、至る所でたこ焼きを買っていました。もちろんスーパーのフードコートでもたこ焼き屋は必ずあります。

しかし5年ほど前に帰省したとき、近所のスーパーのフードコートに行って驚きました。「銀だこ」があったのです。これまでご当地のたこ焼き屋さんがあった場所に・・・。

銀だこの正式名称は「築地銀だこ」。1997年に群馬県のスーパー内のテナントとして創業し、翌年東京に進出。東京では あっという間に、「たこ焼きといえば銀だこ」となり、今や関西にも進出するほどになりました。

ここにはご当地メニューゆえに、現地では個人店レベルで味を競い合い、チェーン店化しないという背景があります。

これは、丸亀製麺も同じ理屈です。丸亀市は讃岐うどんの本場、香川県にあります。しかし、丸亀製麺は兵庫県加古川市が一号店であり、今でも丸亀市には出店していません(香川県内にも2022年11月現在、高松市の1店舗のみ)。創業者が丸亀市出身というわけでもありません。

これは、ご当地ではなかったからこそ急拡大したと言えるでしょう。つまり、ご当地に関係なくても売れる店は作れるのです。

では、ご当地以外の場でご当地メニューを出し、成功するコツは何でしょうか。ここでも3つにまとめてみました。

1. 味を知り、極める
2. 独自のアレンジを加える
3. 料理と合致する店作り

味を知り、極める

ご当地メニューとして出すわけですから、ご当地で出している味、食材の特徴、その料理を作った文化などを正しく理解する必要があります。

「ご当地ではこのような食材を使っているんですよ」
「この料理の始まりは江戸時代で・・・」
などのうんちく話は、料理の深みとして歓迎されます。

また、食材は現地のものを使った方が、味が増すことが多くあります。現地の漁港に水揚げされる鮮魚を仕入れたいからと、毎日何時間もかけて現地に行く人がいます。それが無理でも、現地の漁師と組んで、毎日配送してもらっている飲食店もあります。

やり方はいろいろあります。ご当地の味をできる限り再現できるよう、工夫を考えてみてください。

独自のアレンジを加える

味を加えることが重要な場合もあります。

中には、「現地の味は個性的すぎるからアレンジするので、本場の味は知らなくても平気」と考える人がいますが、それは土台をしっかりしていないところに家を建てるようなもの。

アレンジを加えるにしても、まずはベースをしっかりと知ったうえで、正しいアレンジを加えてください。

またアレンジをするならば、 販売する地域にあった味付けに寄せることがヒットのコツかもしれません。例えば、東北では醤油の味が濃かったり、関西では出汁の味が好まれたり。それぞれの地域には、それぞれが慣れ親しんだ味わいがあります。それに合わせるのもおもしろいものです。

料理と合致する店作り

店舗の内外装や雰囲気作りは、ご当地をイメージできることが基本です。もちろん、その料理を出していることを分かりやすく伝える必要があります。なぜなら、それが一番の差別化になるからです。

ここでも例を挙げます。

以前、沖縄料理を出す店舗をサポートさせていただいたことがあります。その店舗はショッピングモールの最上階にある飲食店街に出店していたのですが、ターゲット客にあわせ、オシャレな雰囲気の店舗づくりをしていました。店主の話では、「沖縄のリゾートホテルをイメージした」との話でした。

しかし、客足は今ひとつ。そこでリニューアルすることになります。

観察していると、多くのお客が店頭に置かれたショーケースを見て、「沖縄料理の店なんだ」と言い、去っていました。つまり沖縄料理を出す店に見えなかったのです。

そこで、沖縄っぽさを出すために内装を変更。費用はあまりかけられなかったので、沖縄の古民家をイメージできるよう、シーサーの大きめのオブジェを店頭に設置し、店内と店頭の壁の一角に赤瓦を置きました。また、ショーケースにもイメージしやすいように変更しました。

料理は沖縄出身の料理長が担当していたので味は文句なし。ただオシャレなイメージを追求しすぎていたので、少し庶民的な雰囲気に修正してもらいました。

その結果、売り上げは前年対比で120%以上を約2年に渡ってキープし、その後も安定した経営を継続しました。残念ながらコロナ禍で、ショッピングモール全体が苦戦することとなりテナントを撤退しましたが、新しい店舗は一層、沖縄の古民家をイメージできるようにして、経営は順調のようです。

もちろん、斬新な雰囲気の店舗は絶対にうまくいかないとは言いませんが、かなり難しいと考えた方がよいでしょう。

成功の最大の秘訣は正しい売れ筋把握

ご当地メニューを違う地域で販売する場合、ご当地と売れ筋商品が異なるケースがよくあります。それにも関わらず、売れ筋でない商品に力を入れ続けるケースはよくあり、これはチャンスロスにつながります。特に感覚だけで経営をしている場合は危険です。

こうならないためには、どの商品が売れているかを正しく把握する必要があります。まずは思い込みを捨て、客観的なデータを見るべきです。また、季節により変動するケースもあります。

これらを把握するにはPOSレジなどを使うとよいでしょう。今はレジを打つだけでデータを取得し、分析に役立つ情報を提供してくれます。価格もそれほど高くないので、検討することをおすすめします。

まとめ

日本には全国各地にご当地料理があります。これらをうまく取り込んで、飲食店経営にいかす方法を紹介しました。

成功したいなら、それぞれのご当地料理の背景などの理解を深めることからはじめたいものです。ご当地で売るのと、それ以外の地域で売るのでは戦略が違ってきます。また、売れ筋も変わってきます。

ぜひ正しい見極めをして、効果的に取り組んでください。