これからの飲食店の酒メニューを考える。ビールからカクテル、日本酒まで新しいあり方

新型コロナウイルスの影響を受けた飲食店への救済措置として店頭でのお酒の販売ができるなど、飲食店でのお酒の楽しみ方が大きく変わったと言われています。
しかし、その前からも多くの変化が見られていました。以前は居酒屋での飲み会といえばビールが定番。「とりあえずビール!」と注文するのが一般的でした。しかし今は、ハイボールやサワー、ロングカクテルとさまざなま酒類で乾杯をしています。
ではビール離れが止まらないのかと言えば、クラフトビールは売り上げを大きく伸ばすなど、複雑な状況となっているのです。
この記事では、多様化の進む現在の飲食店での酒類のあり方を探っていきたいと思います。

 

世間で騒がれている「ビール離れ」の原因は?

まずは、近年のお酒の飲まれ方の変化を見ていきましょう。

世間ではビール離れが進んでいるというのが一般的な認識になっています。確かに一時期ほどの勢いはありません。以下の表は、ビールの国内消費量の推移を表したものです。

※国内ビール消費量推移(ビール酒造組合サイトのデータを基に編集部で作成)

見事に右肩下がりです。

ある居酒屋で「OBを囲む会」が開催されたときのこと。大学の現役生が、長老たちを囲み教えを乞う会なのですが、長老が「とりあえず人数分のビールを」と注文するのが恒例となっていました。ところがある時、若いスタッフが長老の言うことを聞かず、「ビール以外の方!」と声をかけたところ、4割はハイボールなどその他のお酒、3割はノンアルコールになったそうです。
時代を象徴した事例です。
もっとも、翌年も長老は人数分のビールを頼んだようですが…

 

酒税法とビールメーカー、汗と涙の平成合戦

なぜこうなったのでしょうか?
その理由の一端は酒税法にあるのかもしれません。

1994年、高い税金により高価になってしまったビールに変わる商品として発泡酒が登場しました。麦芽の使用料を抑えることで安い酒税の酒として販売することができたのです。

ところが、発売当時の発泡酒は見た目はビールでしたが、味は今一つ。ビールに変わる製品とは言えませんでした。その後、発泡酒の味が改良され、ビールと変わらぬ売り上げを記録するようになると、発泡酒の酒税が上げられ、安さを売りにできなくなります。

それを受け、ビールメーカーは第三のビールを発売します。麦芽の使用量をさらに下げ、さらに低い税率の商品を開発したのです。ビール会社の血のにじむような努力と意地がうかがえます。

この間、世間の不景気と重なり客単価を少しでも下げたかった居酒屋を中心に、発泡酒をビールに変えて販売する動きがでてきました。家庭でも同じように、ビールに変えて発泡酒という動きが出てきます。その結果、「値段はそこそこでも、おいしいものではないのがビールだ」という認識が広まります。そして、現在のビール離れにつながったのです。

ちなみに、ビール関連の酒税は2026年までに段階的に一本化されることが決まっています。ビールは減税となる一方、発泡酒や第3のビールは増税になります。平成の終わりとともに、ビール類の酒税の歴史も終わったと言えるのかもしれません。



ビールに代わって台頭してきたハイボール

さて、このように圧倒的なシェアを誇っていたビールが失速する間に、ビールに代わって力を発揮してきたのはハイボールです。サントリーが角ハイに再注目を集め、ブームを生み出した結果、在庫が底をつきかけるほどとなりました。ウイスキーはビールと違い熟成期間が必要なので、ブームが来たからすぐに増産とはいかないのです。

するとサントリーは居酒屋を中心にトリスに力を入れ、これまた成功。今では他社もハイボールに力を入れ、居酒屋の新しい定番を作っています。飲食店としても原価率が悪いビールを売るより、水物の代表でもあるハイボールが売れてくれた方がありがたいという一面もあり、このブームを後押ししてきました。

ちなみに、日本のウイスキーはジャパニーズウイスキーと呼ばれ、世界中が求めるブランドウイスキーに成長しました。スコッチウイスキー、アメリカンウイスキー、アイリッシュウイスキー、カナディアンウイスキーと並び、世界5大ウイスキーと呼ばれています。中でもサントリーの山崎は品薄な状態が続いており、飲み屋では仕入れられない状況が続いているほどです。

また、最近はレモンサワーもひそかなブーム。レモンをたっぷり入れて飲むのがオシャレだとか。時代は移り変わっているのですね。

 

会社の付き合い飲みから、気の合う仲間との飲み会へ

さて、最近のお酒を取り巻く状況の中で、もう一つ注目すべき変化があります。それは職場での飲み会の機会が大幅に激減したことです。一昔前は、上司に誘われると断れなかった飲み会も、今では興味がなければ行かないのが定番。「俺が若い頃は、何十人と集まって毎晩飲み歩いたものだ」と寂しい愚痴を言う上司を横目に、若者の飲み会は仲間同志にシフトしました。

こうなってくると、お酒の飲み方にも変化が出てきます。

上司と連れ立って行くお酒の場では、上司が「ビールでいいよな」と言えば、「ハイ」と答えるしかない雰囲気がありました。また、お酌をする文化から、どうしても飲み会はビンビールか日本酒が定番でした。ところが、状況が変わったことで、新たな味わいを個人で求めるの飲み方が流行ってきたわけです。

 

進化したビール好きが支える第3次クラフトビールブーム

この新しい飲みの習慣がクラフトビールブームを誕生させました。クラフトビールとは、小規模な醸造所がつくる、個性的なビールのこと。原料や製法にこだわり、多様な味が楽しめます。

元々ビールをキンキンに冷やして飲むという文化は日本が作ったもの。日本のビールは世界でも美味しいと言われています。「とりあえずビール」と大衆的なビールを飲む機会は減ったものの、ビール好きは新たなビールを模索しはじめたのです。

今のクラフトビールブームは第3次。第1次ブームは規制緩和により、ビールの醸造免許を得る製造量が2000キロリットルから60キロリットルに変更された94年から。2000年代後半に第2次ブームがありました。

2019年3月時点でビール製造免許場数は全国で410軒。そのうち、300軒以上が小さな醸造所だと言われています。消費量減少に四苦八苦する大手を尻目に、小さな醸造所が個性派ビールを丁寧に作り、ファンを増やしていったということです。

ヤッホーブルーイング製品

ブームをけん引するヤッホーブルーイングは飛ぶ鳥を落とす勢いで成長を続けています。最近では、「よなよなエール」や「水曜日のネコ」などはスーパーでも見かけるようになりました。

このクラフトビールのブームを受け、キリンビールやアサヒビールもクラフトビール製造会社の買収を進めています。「ビールはアサヒスーパードライだ」「キリンラガーだ」と大衆化されたビールを求めなくなった代わりに、個人の趣向をビールにもいかす時代がきたといえるのかもしれませんね。

 

これからの飲食店がするべき酒対策

この流れは飲食店でも活かすべきです。飲食店ではこれまで、ビールは1種だけということがほとんどでしたが、この機会に新しい取り組みをすべきだと言えます。

個性的なビールを取り揃える

では、どのようなビールを取り揃えればよいのでしょうか?

一つはクラフトビールという選択肢があるでしょう。ただ国産のクラフトビールは商品特性上、保管が難しく、管理コストが高くなるものが多くあります。無濾過だったり非加熱だったりと、常温で扱うと劣化してしまうのです。賞味期限が短いことも扱いを難しくさせています。これらの問題をクリアした日本製造のクラフトビールはすでにスーパーでも並んでおり、真新しさを感じにくいかもしれません。

それなら、海外のクラフトビールに注目してみるのも面白いでしょう。海外の製品は容器も華やかでおしゃれ。並べておくだけでもフォトジェニックな空間演出になります。

EVER BREWが輸入するビール

例えば、EVER BREWではベルギーやアメリカの小規模醸造所のいくつものクラフトビール、フランス、スペインからはワインを輸入して直営のレストランや通販サイトで提供する他に、飲食店、酒屋などへの卸事業も行っています。

飲食店で活用することを前提に試飲をする場合、飲食店に卸をしている酒販店か、一般販売もしている輸入元を活用するのがポイント。気に入ったビールが見つかったのに、それを安定して入手できないというのでは話にならないからです。

国産ビールであれば、何らかのツテを伝って入手できるかもしれません。ツテがなくても、酒造メーカーから直接仕入れることもできるでしょう。しかし、海外ビールについては1店舗で入手することは難しいので、安定的に仕入れられるパートナーを探すことが重要となります。その点、EVER BREWなら輸入を一手に行っているので安心できます。

家飲み用にオンラインショップがあるので、自分で飲んで味を試し、コンセプトにあったビールを取り揃えてみるのも面白いかもしれません。
EVER BREW ONLINE:https://online.everbrew.co.jp/

 

日本酒なら酒蔵とつながってみる

個性的な酒を取り揃えるのは、これからの飲食店に欠かせないことです。酒類の充実は居酒屋だけではなく、どんな飲食店でも重要なことに変わりはありません。

どうせこだわるのなら、酒蔵と直接つながってしまうのも賢い選択だと言えます。こだわりの酒を酒蔵の思いも一緒に、自分の店を通じて世に広めるなどというのは、夢があっていい話ではありませんか。

オンライン日本酒市

酒蔵と直接つながりたいのであれば、クラウドファンディングサイトMakuakeのイベント企画、「オンライン日本酒市」を活用する手があります。
オンライン日本酒市:https://www.makuake.com/event/online_nihonshuichi_2020/

この企画はコロナショックでダメージを受けた酒蔵と消費者を直接つなげるという趣旨のもと開催されたもので、大きな盛り上がりを見せています。

クラウドファンディングの特徴は、出品者(今回で言えば酒蔵)と出資者が交流を持つきっかけが作れること。日本にはたくさんの酒蔵がありますが、知り合いになろうと思うとなかなか骨が折れます。その点、クラウドファンディングを介することで交流はたやすくなります。

オンライン日本酒市内で紹介されているのは個性的な酒を作る酒蔵ばかり。新しい試みで製造された新商品なども多く見ることができます。

日本酒と聞くと、昔からの味わいを繰り返し作り続けているような印象を持つ方も多いかもしれませんが、先進的な酒蔵は試行錯誤を繰り返し、新しい味わいを世に出し続けています。そういった情報を先んじて知り、共に広めるのは飲食店としてもやりがいがでてきます。

ちなみに、このサイトで紹介されているのは日本酒がメインですが、中にはシェリー酒を扱う酒蔵もあり、レパートリーは豊富。思いを共有できそうな酒蔵を見つけてみてはいかがでしょうか。

 

まとめ

多くの店で販売される定番商品を取り揃えていればお客が来るという時代は終わりました。店舗のコンセプトに会う個性的な商品を扱い、お客の嗜好にあった商品を一緒に探していくような店舗が、これからは求められるのかもしれません。
また、価格競争に巻き込まれがちな定番商品とは違い、個性のある商品は価格を自由に設定できる点も魅力のひとつ。これからの飲食店の生き残りを考えるのであれば、個性的なお酒を揃え、個性的な店舗にしていくことを考えてみてはいかがでしょうか。

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