毎年11月1日が「世界ヴィーガン・デー」であることを知っている人は少ないだろう。世界ヴィーガン・デー(World Vegan Day)とは、イギリスに本部を置くヴィーガン・ソサエティが発足50周年を記念して1994年に開始したもので、ヴィーガンの啓蒙と振興を目的とした日だ。
盛り上がりを見せる世界のヴィーガニズム
改めてヴィーガン、またはヴィーガニズムについておさらいしておこう。ヴィーガニズム(Veganism)とは、動物由来食品または動物由来製品の使用を一切拒否する哲学または活動の事である。その哲学の信奉者であり実践者をヴィーガン(Vegan)と呼ぶ。
ヴィーガン・ソサエティは、ヴィーガンになることを推奨している理由を「動物の命が身勝手に奪われることを防ぐため」としている。多くの人が動物の命を奪いたくないという理由からヴィーガンになっているが、中には、肉アレルギーや乳製品アレルギーが理由でやむを得ずヴィーガンになっているという人もいるそうだ。
乳製品の代替品の人気が高まる
ところで、ヴィーガンは動物由来食品の使用を一切拒否しているため、当然ながら牛乳は飲まない。そんなヴィーガン達の間で、牛乳などの乳製品の代替品の人気が高まっているという。ここでいう代替品とは、牛乳であればココナッツクリームや豆乳あるいはアーモンドミルク、モッツァレラチーズであればビタミンBを配合させた豆腐、パルメザンチーズであればドライイーストといったものだ。実際に、ヴィーガンの人口が増えているアメリカやイギリスでは、スーパーマーケットなどで販売される代替乳製品の数が相当増えてきているという。
活性炭を使った料理もトレンドに
ロンドンのあるファーストカジュアルレストランは、活性炭を入れたブラッククロワッサンの販売を開始した。ブラッククロワッサンの原料はヒマワリ油、ソイフラワー、バーリーフラワー、砂糖、レモン汁、そして粉末活性炭だ。見た目がいかにも活性炭という感じだが、売れ行きは好調だという。
そして、アメリカのヴィーガンレストランも活性炭を料理に積極的に取り入れている。あるピザ専門レストランは、ドウの生地に粉末活性炭を混ぜ込んだブラックピザを提供している。活性炭のデトックス効果を期待する、多くのヴィーガン達の支持を集めているという。
エディブルフラワー、ジャックフルーツも人気食材に
さらに、ジャックフルーツの人気も高まっている。ジャックフルーツ、日本ではパラミツとも呼ばれる熱帯果実は、普通に果物として食されるほか、ベトナムやタイなどでは炒め物の食材としても使われている。ヴィーガンの世界では、肉と非常に似た触感のこの果物が古くから好まれてきたが、最近になって人気が改めて高まっているという。
ヴィーガン・ソサエティによると、ジャックフルーツのバーベキューは「まるで本物の豚肉」のような味と食感なのだという。豚肉を食べたいのなら豚肉を食べればいいじゃないかなどと筆者は邪推してしまうが、肉に飢えたヴィーガン達は、このジャックフルーツをもって自らを慰めているのだろう。
増え続けるヴィーガン人口
筆者は、命には動物と植物の隔てはないとする立場をとる者だが、それでもヴィーガン達の哲学とライフスタイルには敬意を表する者でもある。一説によると、イギリスだけでも60万人ものヴィーガンが存在するとされ、その数は年々増加しているという。
ヴィーガン人口が世界的に増加する中、ヴィーガン達が求める食のトレンドが、大なり小なり日本にも影響を与えるのは間違いないだろう。日本でも、複数のヴィーガンレストランが営業を始めていて、インバウンドの外国人客が通い始めているという。一般の飲食店においても、ヴィーガン向けの料理を用意しておくことで、ヴィーガンのお客を取り込むことは可能だろう。日本の飲食店経営者も、そろそろそうしたアイデアやマインドを持ち始めてもいいかもしれない。
参照:
https://www.verdictfoodservice.com/insight/world-vegan-day-trends-restaurant/
https://www.vegansociety.com/go-vegan/why-go-vegan
ライタープロフィール:
前田健二
東京都出身。2001年より経営コンサルタントの活動を開始し、新規事業立上げ、ネットマーケティングのコンサルティングを行っている。アメリカのIT、3Dプリンター、ロボット、ドローン、医療、飲食などのベンチャー・ニュービジネス事情に詳しく、現地の人脈・ネットワークから情報を収集している。
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