チャウナウ(ChowNow )は、ベアー・スターンズ、リーマン・ブラザーズ出身のクリストファー・ウェブと、不動産投資家のエリック・ジェフが2011年に立ち上げたベンチャー企業だ。19歳の時からベアー・スターンズでファンドマネージャーの仕事をしていたウェブは、同時に10歳の時から知り合いのレストランでアルバイトをする飲食業界好きな少年だった。
25歳になった年に母親から電話があり、知り合いのレストランに投資をしないかと誘われ、生まれて初めて飲食業に投資をした。それから本業の金融業のかたわらに飲食業にも携わるようになり、多くの飲食店、特に小規模な零細飲食店が経営に苦労している実態を知るようになった。さらに、当時台頭し始めていたサードパーティーのフードデリバリーサービスが飲食店から最大で40%ものフィーを徴収している実態も知り、零細飲食店の多くがコスト倒れして赤字になっている現状を目の当たりにした。零細飲食店が利用しても赤字にならないオンラインオーダリングプラットフォームを提供したい。ウェブはそのミッションを実現するため、友人のジェフとチャウナウを立ち上げた。
チャウナウの仕組み
チャウナウの仕組みだが、いたってシンプルだ。チャウナウは飲食店用のオンラインオーダリングプラットフォームをSaaS(Software as a Service)ベースで提供している。飲食店は自社のウェブサイトにオンラインオーダリングシステムを組み込んだり、マーケットプレースを利用したり、スマートフォン用専用アプリを利用したりできる。オンラインオーダリングプラットフォームを提供するという点ではサードパーティーのフードデリバリーサービスと同じだが、違いは、サードパーティーのフードデリバリーサービスが注文ごとに20%から40%程度の一定のフィーを徴収する一方で、チャウナウのオンラインオーダリングプラットフォームはフィーを一切徴収しない点だ。注文ごとにフィーを徴収しない代わりに、チャウナウは飲食店から月額99ドル(約13,860円)から149ドル(約20,860円)のサブスクリプションフィーを受け取っている (契約期間が長い方がサブスクリプションフィーが安くなる)。チャウナウは、オンラインオーダリングプラットフォーム運営にかかるコストのすべてを、このサブスクリプションフィーで賄っているのだ。
オンラインオーダーの多くは「テイクアウトのオーダー」
チャウナウは、サードパーティーのフードデリバリーサービスを利用している飲食店が受け取るオンラインオーダーの多くが「テイクアウトのオーダー」であり、サードパーティーのフードデリバリーサービスは、デリバリーが必要ない「テイクアウトのオーダー」に対しても、20%から40%程度のフィーを飲食店から徴収していると主張している。お客がオンラインで注文して自分で取りに来てくれるのであればデリバリーにかかるコストは必要ないはずだが、なぜかサードパーティーのフードデリバリーサービスはフィーを徴収しているという。
なお、サードパーティーのフードデリバリーサービスとは違い、チャウナウは自前でデリバリースタッフを抱えていない。チャウナウは、チャウナウを使ってオンラインオーダーをするお客の多くは「テイクアウトのオーダー」をするという前提に立っている。チャウナウのオンラインオーダリングプラットフォームを利用している飲食店でデリバリーの提供を希望する店に対しては、店のスタッフにデリバリーをさせるか、専用スタッフを雇うことを勧めている。
お客からの支持も集めるチャウナウ
多くの零細飲食店の支持を集めているチャウナウだが、お客からの支持も集めている。チャウナウによると、お客がサードパーティーのフードデリバリーサービスを利用すると、サードパーティーに対するコスト負担が必要になるが、多くの場合、飲食店が価格にそのコストを上乗せしているという。 その結果、価格が値上がり、その価格を支払うことで結果的にお客が負担することになるという。一方で、チャウナウのオーダリングプラットフォームではそうしたコスト負担が必要ないため、お店は値上げをする必要もなく、お客もコスト負担をする必要もない。
飲食店の多くは、チャウナウとサードパーティーのフードデリバリーサービスを併用しているが、チャウナウでオーダーをした方が安くなるケースもあるため、チャウナウはお客からの支持も集めているという。 チャウナウを利用している飲食店の中には、サードパーティーのフードデリバリーサービスを経由して注文してきたお客に対して「(サードパーティーのフードデリバリーサービスは)フィーが徴収されるため、チャウナウで注文してください」と書いたメモを貼り付けている店もあるそうだ。
日本にも同様の企業が生まれるか?
チャウナウは、サードパーティーのフードデリバリーサービスが飲食店とお客に対し、許容できる以上のコストを負わせていることへの反発から生まれたと言えよう。実際に、サードパーティーのフードデリバリーサービスが徴収するフィーの高さについて疑問を呈するケースが増えてきているのは間違いないだろう。一方で、サードパーティーのフードデリバリーサービスを導入すると売上が10%から20%程度増加するという事実もあり、サードパーティーのフードデリバリーサービスそのものが否定されるべきではないだろう。
ところで、日本でもチャウナウのような企業が生まれるかについてだが、これは大いにあり得るとすべきだろう。日本でも、サードパーティーのフードデリバリーサービスを利用すると赤字倒れになる零細飲食店は少なからず存在する。そうした零細飲食店を対象にした、チャウナウのような仕組みを提供する企業が生まれる可能性は低くないと考える。その日は、思いのほか早くやってくるかも知れない。
参考サイト
https://www.businessinsider.com/guides/tech/what-is-chownow
https://www.linkedin.com/pulse/100-million-orders-counting-how-we-got-here-whats-ahead-webb/