配膳ロボットの価格と導入で得られる飲食店のメリット

経営をする上で大きなウェイトを占めるようになった人件費。このため、ビジネススタイルの変更を余儀なくされる業種が多くなっています。

飲食店も例外ではなく、人件費対策として配膳ロボットの導入を進めるところが増えています。配膳ロボットに関しては、すかいらーくグループで積極的に導入が進められていることで体験済みだという方も多いでしょう。

では、この配膳ロボットを小規模チェーンや個人店で導入できるのでしょうか?

今回は、配膳ロボットを導入するのにどれぐらいの費用がかかり、どのような効果が期待できるのかについて掘り下げて行きます。

配膳ロボットとは?

配膳ロボットはその名の通り、食事の配膳を行うために開発されたロボットです。飲食店はもちろんのこと、病院やインターネットカフェなどでも導入されています。

配膳ロボットの導入が急速に進んだ背景には、コロナ禍で人と人との非接触が求められたことが大きいでしょう。これにより人を介さないサービスが受け入れられ、定着しました。

配膳ロボットは基本的に、数段の台が設置されています。そこにグラスや皿などが置けるようになっていて、指定した場所へ運びます。お客が配膳ロボットから注文した商品を受け取ると、自動的に指定した場所に帰って待機します。

配膳ロボットの多くは、音や音声を出すことができ、タッチパネルが搭載されているものも。これにより、配膳ロボットが通ることを知らせたり、注文内容を知らせたりできます。

配膳ロボットの耐荷重は30〜50kg程度というのが一般的。配膳はもちろん、使い終わった皿やグラスをまとめて運ぶこともできます。

おすすめの配膳ロボット

続いて価格です。「決して安くはないだろう」と予想をしているでしょう。

数年前まで、1台あたり、200~300万円しないと機能がともなわないと言われていました。しかし昨年、高性能でありながら100万円を切るロボットが登場しました。

また、助成金の対象になっているので、必ずしも全額を負担しなければならないわけではありません。購入せず、リースを使っているところも多いようです。

ここでは小~中規模店舗でも導入可能なものを3つ紹介します。

なお、複数のバージョンを用意しているところもありますが、代表的なもののみを取り上げます。興味があれば、各サービスページをご覧ください。

スマート配膳ロボット Romine S1

高精度位置決め機能、自動充電回帰機能、自動障害物回避機能など基本的な性能は保持しつつ、本体価格100万円(税別)の大台を切った配膳ロボット。

■基本スペック
音声機能:あり
ディスプレイ:あり
サイズ:幅:500mm,高さ:1300mm
積載重量:最大10kg/段
価格:<買取>99万円(税別)
製造メーカー:ロボットバンク株式会社

https://www.robotbank.jp/product/350.html

BellaBot(ベラボット)

ネコ型のフォルムが特徴の配膳ロボットです。シーンに合わせて表情を変えられるのが特徴で、簡単な会話でコミュニケーションが可能。トレーに載せる商品に合わせて速度設定ができるので、汁物なども安定して運べます。
■基本スペック
音声機能:あり
ディスプレイ:あり
サイズ:565mm×537mm×1290mm
積載重量:最大40kg(トレー1枚あたり10kg)
価格:問合せ
製造メーカー:Pudu Robotics

https://www.elmo.co.jp/product/robot/bellabot/

Servi(サービィ)

最短60cmの幅があればスムーズに通り抜けが可能で、スペースの小さい店舗でも導入しやすいタイプ。シンプルな操作で指示を出せるように設計されています。

■基本スペック
音声機能:あり
ディスプレイ:なし
サイズ:462mm✕486mm✕1046mm
積載重量:最大30kg(上段/中段:最大10kg 下段:最大25kg)
価格:<買取>問合せ/<レンタル>月額99,800円
製造メーカー:ソフトバンクロボティクス

https://www.softbankrobotics.com/jp/product/servi/

導入には補助金の活用を含めて検討する

配膳ロボットの導入を考えるときは、補助金の活用も視野にいれるのがよいでしょう。

補助金は時期のほか、自治体によっても違いがあります。代表的なものでは、「事業再構築補助金」が採択されやすくなっています。

事業再構築補助金は、事業規模や業種によって補助内容に幅があります。例えば、「最低賃金枠」は、最低賃金の引上げの影響を受け、その原資の確保が困難な特に業況の厳しい中小企業等を対象としたもので、補助率が引き上げられています。

具体的には、補助率は多くが3分の2のところ、「最低賃金枠」の中小企業者等に該当すれば4分の3まで上がります。

助成額は、以下のようになっています。

[最低賃金枠の最大補助額]
【従業員数5人以下】100 万円~500 万円
【従業員数6~20 人】100 万円~1,000 万円
【従業員数21人以上】100万円~1,500万円

現在、第10回が受け付けられていて、期日は6月30日。これまで途切れることはなかったので、今後も継続することはほぼ間違いありません。

他にも、以下のような補助金も検討するとよいでしょう。

● 「小規模事業者持続化補助金」小規模事業主の販路開拓を目的とする
● 「ものづくり補助金」生産性向上のための設備投資を支援する
● 「IT導入補助金」ITツールを導入することで業務の効率化・売上アップを図る

配膳ロボットを時給換算してみる

配膳ロボットの導入を左右するのは、費用対効果だと思います。高いコストを負担しても、それだけの効果が見込めるならと考えるのは当然です。

配膳ロボットは当然ながら、週5日しか働けないなどということはありません。そして、8時間勤務したら休憩1時間などということもありません。ドッグにもどって充電する必要はありますが、空いた時間に勝手に戻って充電するので、あまり意識する必要はないと思ってよいでしょう。

では仮に、店舗の営業が、月に30日、1日あたり12時間だったとします。30日×12時間ですから、月間の”勤務時間”は、360時間となります。

配膳ロボットの価格は、先に紹介したネコ型配膳ロボットの仲間でもある「KettyBot(ケティボット)」で試算してみます。

このロボットを5年リースする場合、保守サポート費込みで月額利用料4万4300円となります。
この額を360時間で割ると123円。つまり、時給は123円ということです。
これは驚くべき数字ではないでしょうか?

配膳ロボットができること

では、配膳ロボットができることを改めて見てみましょう。

料理やドリンクを客席まで自動で運ぶ

配膳ロボットは、料理やドリンクを台にのせれば、登録された場所に自動で料理やドリンクを運べます。スタッフは他の作業に注力することができるので、回転率があがります。

また、料理を運ぶ際、重いものや運びにくいものでも安定して運べる特徴を持っています。そのため、宴会などで大量の料理を運ぶときや、バースデーケーキなど絶対に落としてはならないものを運ぶときにも安心です。

食事後の食器を大量に運ぶ

配膳ロボットは配膳だけでなく、下膳した食器類を運ぶのにも適しています。宴会などの場合、大量の食器を運ぶのに洗い場とテーブルを何往復もすることがありますが、その時間を大きく短縮できます。年末など、忘年会で次のお客が来ている場合などは、特に実力を発揮しそうです。

人手不足の解消

飲食業界は慢性的な人手不足。そこで、配膳ロボットを導入することで、最少の人員で業務を進められるようになります。

お客側にしても、少人数で忙しく働くスタッフばかりだと追加注文をしにくく、チャンスロスになります。数少ない従業員でも効率的に余裕をもって行動できれば、このようなロスは防げます。

また、人手に頼りすぎない業務体制が整えば、新人教育、シフト・労務管理、その他のバックオフィス業務に割くことが可能となります。

ファミリー層へのアピール

配膳ロボットを導入しているところはまだ少数。そのため、店内でロボットが働いていること自体にエンターテインメント性があります。さらに、簡単なコミュニケーションがとれるとなれば、ファミリー層を中心に話題となることでしょう。

また、店内をスムーズに動き回る姿を撮影し、顧客が撮影をしてSNSに投稿するケースもあります。この動きは数年は継続するものと予想されます。

安全性の問題はないのか?

配膳ロボットを導入する際、コスト面と並んで心配されるのは、「人やテーブルにぶつからないのか?」という点です。

これについては、技術革新がサポートしてくれます。

多くの配膳ロボットは、内蔵カメラやレーザー光によるセンサー機能が搭載されています。これにより、人やテーブルなどの物を認知しながら歩行するので、どこにもぶつからずに移動することが可能となります。

もちろん、人間ほどのスピードで人をよけることはできませんが、前から人が近づいてくれば避けたり、止まったりするので事故につながるようなことは避けられます。

ちなみに、配膳ロボットは店内の配置をあらかじめ記憶させることで、自立走行しますが、これには主に、SLAM(スラム)というシステムが導入されています。

SLAMとは、Simultaneous Localization and Mappingの頭文字をとったもの。現在地の認識と店内全体の配置を記憶するためのシステムといえば分かりやすいでしょう。

この機能のおかげで配膳ロボットは、店内の決まったルートだけを走るのではなく、常に最短距離で目的地まで辿り着きます。すごいものです。

さらに広がる飲食店DX

DX(デジタル・トランスフォーメーション)という言葉をさまざまなところで聞くようになりましたが、飲食店でもこの変化が起こっていることは理解いただけたかと思います。そして、さらに先に進んでいます。

例えば、大正の複合施設「タグボート大正」(大阪市大正区三軒家西1)にある、すし店「未来鮨 江戸前スタンド とろ安本店」では、ドリンクの注文から提供までをロボットが行うサービスが始まっています。

これは、来店客が各自のスマートフォンを使ってモバイル注文をすると、ロボットがドリンクを自動でつくり、配膳ロボットに移し、テーブルまで運ぶというもの。ドリンク製造の作業内容は、グラスを冷やす、氷を入れる、酒を入れる、マドラーで混ぜるなど。ハイボールは約1分20秒で作ることができ、14種類のドリンクに対応しているそうです。

このドリンク製造ロボットは「Robo-TENDER(ロボテンダー)」。これにソフトバンクロボティクスの「Servi(サービィ)」を連携させています。

これからは、人に頼らなくても問題ない部分と、人にしかできない部分を明確に分け、よりよい店づくりを目指す時代になっていきそうです。

まとめ

飲食店でつきものの人不足と人件費高騰。この2つを同時に解消してくれる配膳ロボットの導入は、さらにサービスの向上や話題作りと、さまざまな効果が期待できます。

導入に費用が必要ですが、価格は随分と安くなっています。また、補助金を利用したり、リース契約にするなど、店舗にあわせた導入方法で、賢い導入を探し出すことからはじめてはいかがでしょうか。