テレビのニュースや新聞、雑誌で目にすることが多くなった「SDGs(エス・ディー・ジーズ)」。飲食店ではまだ取り組みをはじめているところは多いとは言えませんが、だからこそ今のタイミングで取り組むことで、環境意識の高い店舗だと評価を得ることにつながります。
ここでは、飲食店でできるSDGsの取り組みについて説明します。
「SDGs(エス・ディー・ジーズ)」とは?
「SDGs」とは、「Sustainable Development Goals」の略称で、「持続可能な開発目標」を指します。2015年9月の国連サミットで、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標として、全会一致で採択されています。
と言われても、今一つピンときませんよね。わかりやすく言い変えるなら、「未来の地球環境保全と社会にとってよい行動に、世界中が取り組みましょう」と言った感じになります。
ここ数年の象徴的な動きとしては、海洋プラスチックごみで世界の海が汚染されているということから、レジ袋が有料になり、エコバッグを持ち歩くのが推奨されるようになりました。また、スターバックスのプラスチック製ストローが紙製に変わりましたね。今後は、プラスチック製のスプーンやフォークなども有料化の動きがあります。これがまさしくSDGsの動きなのです。
飲食店が取り組めるSDGs 5つの視点
SDGsの動きが叫ばれるようになったのはつい最近のこと。こうなると、「大手の動きを見てからでいいのではないか?」と考える飲食店も出てきます。
しかし、このタイミングだからこそ取り組みをはじめれば、世間の評価を得られます。実際、若い世代を中心に、環境への取り組みへの興味は上がっています。そして敏感な店舗は取り組みをはじめていて、高い評価を得ています。つまり、今こそチャンスと言うわけです。
しかも、SDGsの取り組みは単なるきれいごとではありません。飲食店が取り組みやすいものも多く、経営数値が改善するものもあります。ここでは、5つの視点で取り上げてみました。
1.食品ロスの削減
国の文化によっては、料理は食べきれないほど作り、もてなされた側は残すのがマナーとされているところがあります。しかし、日本は昔から「食べ物を粗末にしない」と教えら、この思想が深く根付いています。
その上で、商品切れを起こさないためにとたくさんの仕込みをするのではなく、「売り切れたメニューは販売終了」という方法をとるのもよいでしょう。商品切れが顧客離れにつながらないように、「SDGsに気を使っている」とアピールすればイメージアップにつながります。
また、食べない人が多い刺し身のツマや飾りのパセリなどは、思い切って使わないようにします。これは原価を下げることにつながります。
お客の意識も高まっているので、持ち帰り用のパッケージを置いておくのも印象がよいです。これであれば、客単価が落ちることも防げます。
従業員に教育する際も、「もったいない。食品を捨てるな」というより、「SDGsのため」という方が印象がよいのは間違いがありません。
廃棄分を最小限にしようとしても、どうしても発生してしまうのがフードロスの特徴です。これを何とかしたいと思うなら、フードシェアリングを利用する方法もあります。これは飲食店で料理が余ってしまったとき、廃棄するのではなく、欲しい人に提供しようというものです。今はアプリも開発されていて、「TABETE」などがこれにあたります。
このアプリのよいところは、無料で分けるのではなく、有料で希望者に購入してもらところ。食材を捨てるということに拒否感を感じる従業員の精神的な負担も軽減でき、店舗側の満足度も高いようです。
2.プラスチックごみの削減
プラスチックごみ削減は、SDGsの目標の「13:気候変動に具体的な対策を」「14:海の豊かさを守ろう」「15:緑の豊かさも守ろう」につながります。
飲食店でできることは、店内で使っているスプーンやフォークをリユース可能なものにすること。そして、テイクアウトなどリユースができない場合は、紙製品など自然に返るものにすべきです。
また、持ち帰り容器もエコフレンドリーな紙製容器にするとイメージアップにつながります。今は耐水、耐油性の紙製容器も多くあります。
さらに、レジ袋を有料にするだけでなく、マイバッグを持参した人に何らかのサービスをするのもかしこい方法です。たとえばスタンプをためていき、一定の量がたまると環境にやさしいグッズをプレゼントすればリピート率も上がり、意識の高い店として評判も上がることが期待できます。
「きまりだから何かをやる」のではなく、積極的に取り入れることでメリットに変え、経営の武器にするというわけです。
3.トレーサビリティが明確な食材を使う
トレーサビリティとは、食品がどこで作られ、どのように流通し販売されたのかを把握するための仕組みのことです。最近はスーパーなどで、野菜のパッケージに生産者の名前や顔写真が印刷されているのを見かけます。こうすることで消費者は安心感を得ることができるわけで、これがトレーサビリティのわかりやすい事例でしょう。
特に飲食店では海外から輸入されてくる食品を使うことが多くありますが、その国ではどのような農薬や食品添加物が使われているかが分かりません。それを知ることが、お客の体を守ることはもちろん、地球環境を守ることにもなり、店舗の信頼につながるというわけです。
また、食材に関しては開発途上国で生産しているもの、たとえばバナナやコーヒー豆、茶葉、チョコレートなどにも注意が必要です。未成年が教育を受けさせられず、強制的に働かされて生産していたり、対価が正しく生産者に払われていなかったり、生産性を上げるために農薬や成長促進剤が使われていのかはしっかりとチェックしたい点です。
これを証明する普段として、「フェアトレード」と呼ばれる制度があります。これは、開発途上国の原料や製品を適正な価格で継続的に購入することにより、立場の弱い開発途上国の生産者や労働者の生活改善と自立を目指す「貿易のしくみ」をいいます。
出典:FAIRTRADE JAPAN
フェアトレード商品を使うことで、原価は上がるかもしれません。それにより、商品の価格も上がるでしょう。しかしそれは客単価が上がることを意味し、それにSDGsを正しくPRするようにすれば、お客の評価を得ることにつながります。
4.サステナブル・シーフードを活用する
世界中につながっている海洋環境の改善は、一カ国だけでできるものではなく、だからこそ大きな問題となっています。海の生態系が崩れていることは多くの人が知っていること。SDGsの目標でも「14:海の豊かさを守ろう」と設定されています。
つまり、海の生態系や自然に配慮した漁業で収穫された水産物を使うこともSDGsにつながるということ。これを「サステナブル・シーフード」と呼びます。
「サステナブル」とは、「持続可能」という意味。つまり、将来もずっと水産物を摂取し続けられるように、水産資源や環境に配慮されたものを摂取しようということです。
日本には、サステナブル・シーフードと関係が深い認証が2つあります。
ひとつはMSC認証。水産資源や海洋環境に配慮し、適切に管理された持続可能な漁業に対する認証制度で、この認証下で行った漁業で収穫された天然の水産物には、「海のエコラベル」が貼られています。
もうひとつは、ASC認証。これは、環境への負荷を最小限にし、地域社会にも配慮した養殖業を認証するもので、この環境下で収穫した養殖水産物には、ASC認証マークがつけられます。
マクドナルドは環境に配慮した経営を行うことを推進している企業です。そして定番メニューのフィレオフィッシュにはMSC認証のものだけを使い、パッケージにMSC認証が印刷されています。
5.雇用の創出
これまでは食品に関することをお伝えしてきましたが、実は、雇用の創出もSDGsのひとつです。身近なところで言えば、学生はアルバイトをすることで生活が成り立っていました。ところがコロナ禍でアルバイト先がなくなったことで、学校を辞めるケースが増えています。これは貧困の下につながるものであり、これを防ぐのは立派なSDGsなわけです。
つまり、アルバイトをカットすることが、何人もの人の生活に影響する可能性があるわけです。飲食店経営者がスタッフの雇用を守ることは、単純にそのアルバイト個人の生活が守られるというだけに収まらないことを知っておく必要がありそうです。
まとめ
人類は急速な経済成長をしました。その恩恵を最も受けたのは先進国であり、間違いなく日本もその一員です。排出された二酸化炭素は地球環境を悪化させ、将来の温暖化という大きなツケを突きつけています。また水産資源の減少は年々問題となっていて、このままでは将来、十分な食品を得ることができないと言う学者もいます。
このような状況で、環境負荷を軽減するのは非常に重要なこと。SDGsは国連のサミットで採択されましたが、最終的には企業や個人がどのような取り組みをするかにかかっています。まずは小さなことでもよいので、どのような取り組みがSDGsにつながるか、考えてみてはいかがでしょうか。
参考リンク
関連記事
ピンバック: 「訳あり食材」を食品ロスにせず飲食店に販売するフードメイブンのビジネスモデル | 飲食店経営PRO