アメリカでロボットウェイターの導入が静かに進んでいる。注文を受け、料理や飲み物を持ち運びするロボットウエィターに実際に遭遇するシーンがアメリカで一般的になってきている。しかし、飲食店の現場においてはロボットウェイターについて賛否両論あり、今後さらに導入が進むか見方が分かれている。今回は、アメリカの飲食業界におけるロボットウェイターの現状につき、今後の展望も含めて考察する。
導入が進むロボットウェイター
カリフォルニアに拠点を置くロボットウェイターメーカーのベアーロボティクスによると、同社は2021年にロボットウェイターの販売を開始し、これまでに全米44州のレストランに1万台以上を販売したという。ベアーロボティクスのロボットウエィター「Servi」は、大手ファミリーレストランチェーンのデニーズやマリオットホテルなどにも採用され、活躍シーンを着実に増やしつつある。
テキサス州に拠点を置く別のロボットメーカーのリッチテック・ロボティクスのフィル・ツェング氏も「特に大手レストランチェーンは、今後可能な限り人間からロボットへの切り替えを進めてゆくでしょう。数年のうちには、ロボットウエィターを多くの飲食店で目にするようになるはずです」と予想している。
ロボットウェイターの導入が進む理由
アメリカの飲食店でロボットウエィターの導入が進む最大の理由は飲食業界の人材不足だ。アメリカでは、2020年春から始まった新型コロナのパンデミックにより多くの飲食店が営業停止を余儀なくされた。多くの飲食店労働者が職場を去り、そのまま戻ってこなくなった。飲食業界の人材不足はいまだ続いており、多くの飲食店オーナーが頭を悩ませ続けている。
ロボットウェイターに対する肯定的な意見
ロボットウェイターに対する肯定的な意見で多いのは、ロボットウェイターはコストパフォーマンスが良いという意見だ。上述のザイ氏によると、ロボットウェイターを導入することで、ウェイター・ウェイトレスの数を半分に減らせるという。
ロボットウェイターはお客の側にとってもメリットがある。その最大のものはチップだ。ロボットウェイターがどれだけ丁寧な接客をしてくれようとも、お客はチップを支払う必要はない。昨今のアメリカではチップのレートが大分上がってきているので、チップを支払う必要がないのは大きなメリットだ。
ロボットウェイターに対する否定的な意見
一方、否定的な意見だが、これは特に現場の人間のスタッフが多く口にすることで、ロボットウェイターは、職場の環境によっては柔軟に対応する能力が乏しく、場合によっては「使い物にならない」というのだ。特に多くのお客が集まる繁忙店においては顕著で、「カオスな環境でロボットウェイターはお客に対応できない」という。
ロボットウェイターは今後さらに普及するか?
文字通り賛否両論あるロボットウェイターだが、今後さらに普及するだろうか?筆者の予想は、「今後さらに普及する可能性が高い」だ。上述のヌードルレストランのザイ氏が説明するように、ロボットウェイターは、正しく稼働して人間をリプレースできた場合に大きな経済的価値を生む。アメリカの飲食業界では給与コストの上昇が続いており、特にインフレによる賃上げ圧力が高止まりで推移すると予想される今後、ロボットウェイターが生み出す経済的価値は、飲食店にとっては非常に大きなメリットとなるだろう。
個人的には、ロボットウェイターは、アメリカにおいては今後、ファミリーレストランやコーヒーショップなどのチェーン系レストランや、ホテルのレストランやバーといった「静かな店」を中心に導入が進み、五年もすればかなり一般的になっていると予想する。その頃には、お客と対話して二足歩行するヒューマノイドタイプのロボットウエィターなども登場してくるかもしれない。飲食店の利用者の一人として、ロボットウェイターの今後に大いに注目したい。
関連リンク
https://www.cbsnews.com/news/robot-waiters-restaurants-future/
https://www.servicerobots.com/blog/robot-waiters/