アメリカのカリフォルニア州では2021年6月に飲食店の営業が完全再開し、ポストコロナ時代のリスタートを切った。その後、感染力の強い新型コロナウイルスの感染拡大により一部マスク着用は義務となっているが、ソーシャルディスタンシングの規制は撤廃され、「ニューノーマル」を取り戻した飲食店にはお客が戻りつつある。現地の最新情勢をお伝えしつつ、緊急事態宣言が全国で解除された2021年10月1日以降の日本の飲食店の今後を予想する。
営業を完全再開したカリフォルニア州の飲食店
長期間に渡ってテイクアウトとデリバリーだけの営業を余儀なくされた多くの飲食店が廃業に追い込まれた。カリフォルニアレストラン協会によると、カリフォルニア州の7万6千店の飲食店のうち30%がこれまでに廃業し、180万人の飲食店従事者が職を失ったという。ある業界関係者は、カリフォルニア州の飲食店が完全に復活を果たすまでには、まだ相当の時間がかかるとしている。
客の戻りは順調、賑わいを取り戻しつつある飲食店
6月15日のリオープニングに際し、前日夜にカウントダウンパーティーを企画したところSNSなどで情報が拡散し、数百名の客が集まる大騒ぎとなった。当日集まったお客の一人は、「まるで新年のカウントダウンのようだ」とした上で、「本当に新年が来たようだ。飲食店の営業が完全再開してとてもハッピーだ」とコメントしている。
多くの店舗が人材不足に直面
飲食店がリオープニングに喜びの声をあげる一方、多くの飲食店が人材不足に直面している。ロサンゼルス近郊の街サン・ゲイブリアルでアジアンファストフード・カフェ「ボポモフォ・カフェ」(Bopomofo Cafe)を経営しているフィリップ・ワング氏は、「人材不足は、ポストコロナを迎える飲食店が抱える構造問題です」と指摘する。ロックダウン期間中、同店はスタッフの大半をレイオフし、必要最小限の人材での運営を余儀なくされた。2021年春ぐらいから6月頃にリオープニングされるという噂を聞き、オンライン求人サイトでスタッフの募集を始めたものの、再開までに一人も応募者がなかったという。人材不足に対応するため、ワング氏は営業時間の短縮やメニューの簡素化を余儀なくされている。
人材不足に対応するため、飲食店の中には時給をアップしたり、健康保険を提供するなどのインセンティブを用意するところも出てきている。しかし、多くの飲食店は、長く続いたパンデミックにより経済的に苦しい状況にあり、そうした対応も難しいのが現状だ。リオープニングに沸くカリフォルニア州の飲食店にとって、この人材不足の問題が当面の悩みの種となっているそうだ。
カギはワクチンの接種率
飲食店の営業が完全再開した直後の2021年6月21日時点(カリフォルニア現地時間20日)のカリフォルニア州のワクチン接種率は60.02%、完全接種率48.11%となっている。特に高齢者層の接種率が高く、65歳以上の人では接種率87.32%、完全接種率73.48%となっている。50歳から64歳までの年齢層では接種率74.81%、完全接種率62.07%となっている。
新型コロナウィルス感染症による死亡率が高いとされる高齢者層へのワクチン接種が、相当程度進んでいることがわかるが、特に高リスク層へのワクチン接種とそれに伴う感染者の減少が、カリフォルニア州に「ニューノーマル」をもたらしたことは明らかだろう。
日本の飲食店のリオープニングはいつになるのか?
カリフォルニア州の飲食店が営業再開した2021年6月15日時点の日本のワクチン接種率は18.2%、完全接種率6.8%、日本とカリフォルニア州では人口に3.21倍の差があるとはいえ、当時の日本の接種率はかなり低いと言わざる得なかった。
カリフォルニア州でも接種率が40%を超えてから感染者が激減したとされ、日本でもそのマイルストーンに到達したところでの感染者数の減少は想定されることであった。飲食店の業務再開は引き続き一定の感染対策が求められるものの、楽観的な筆者は、今年の師走を迎える頃までには、日本の飲食店も完全再開が見込めると見ている。
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参考
https://abc7.com/restaurants-coronavirus-pandemic-covid/10663697/
https://vdata.nikkei.com/newsgraphics/coronavirus-japan-vaccine-status/
ピンバック: ワクチン接種義務化はアメリカの飲食店復活の救世主となるか?| 飲食店経営PRO