世界的にも「フレキシタリアン」が増加している。可能な限り肉食を避け、野菜中心の食生活を志向する人が、特にミレニアル世代やジェネレーションZと呼ばれるアメリカの若い世代において増えているという。フレキシタリアンの食生活を支える「プラント・ベースド・フード」と、フレキシタリアンの実態をご紹介する。

 

増加する「フレキシタリアン」

フレキシタリアン(Flexitarian)は、Flexible(柔軟な)とVegetarian(ベジタリアン)を組み合わせた造語だ。基本的にはベジタリアン(菜食主義者)だが、時には肉や魚も食べる「柔軟なベジタリアン」という意味だ。アメリカにおいては、フレキシタリアンは「出来るだけ肉食を避ける人」「肉を食べる量や回数を減らそうとしている人」というニュアンスでも使われている。なお、アメリカの市場調査会社が昨年行った調査によると、回答者の36%が自分はフレキシタリアンであると答えている。

フレキシタリアンは、特にミレニアル世代(1980年代から2000年頃までに生まれた世代)とジェネレーションZ世代(2000年以降に生まれた世代)の若い世代に多く、フレキシタリアン人口における割合がそれぞれ30%と32%となっている。特にジェネレーションZ世代の79%が、「プラント・ベースド・フード」を最低週に1度は食べていると答えている。

「プラント・ベースド・フード」とは?

ところで、「プラント・ベースド・フード」とは何だろうか。「プラント・ベースド・フード」(Plant based food)とは、直訳すると「植物由来食品」となる。前にご紹介したヴィーガン料理とほぼ同義で、卵、チーズ、牛乳などの「動物由来食品」は含まれない。ハーバード大学医学部のキャサリン・マクマナス教授は、「プラント・ベースド・フードとは、野菜や果物に加え、ナッツ、種、オイル、全粒穀物(ホールグレーン)、豆などを活用したヘルシーダイエットのための食べ物」であると説明している。

ところで、「プラント・ベースド・フード」だけしか食べない人はヴィーガンと呼ばれている。一方、「プラント・ベースド・フード」を志向しつつ、時折肉、魚、卵などを食べる人がフレキシタリアンである。食生活や食べ物そのものに関心を持たず、基本的に何でも自分が食べたいものを食べる人はオムニボア(Omnivore)などと呼ばれている。なお、上述の調査結果によると、回答者の53%が自分はオムニボアであると答えている。

注目すべき「代替肉」

ところで、「プラント・ベースド・フード」の中でも注目すべき食材の筆頭は、何と言っても「代替肉」だろう。前に別の記事でアメリカの代替肉メーカーの「ビヨンドミート」と「インポシブル・フーズ」をそれぞれご紹介したが、両者ともにコロナ禍でも業績を伸ばしている。

ビヨンドミートが発表した2020年度第三四半期決算によると、同期間中の売上高は3億484万ドル(約320億円)で、対前年比で52.9%の大幅な増加となっている。飲食店向け販売が対前年比で4%の増加に留まる一方で、小売の売上高が対前年比で114.5%も増加している。ビヨンドミートの代替肉は、スーパーの「精肉売り場」で普通に売られるようになってきている。

ビヨンドミートのライバルのインポシブル・フーズも好調だ。同社は最近、小売向け卸価格を20%値下げし、「牛肉に価格的に対抗する」戦略を打ち出している。同社の代替肉はウォルマート、セーフウェイなど全米17.000店のスーパーマーケットで売られており、売上も右肩上がりで伸びている。同社の代替肉は、流通における「規模の経済を実現」したとしており、今後市場がさらに広がると見込まれている。なお、同社はビヨンドミートに続き、年内のIPO(新規株式上場)が噂されている。

「代替魚」も注目

ニューウェーブ・フーズ 代替エビ料理
ニューウェーブ・フーズ 代替エビ料理

また、「代替魚」を製造する機運も高まっている。サン・フランシスコに拠点を置くスタートアップ企業のニューウェーブ・フーズは、エンドウ豆や海藻などを原料にプラント・ベースド・フードの「エビ」を製造している。同社は最近大型の資金調達を成功させたが、調達した資金を製造設備の拡充に投じるとしている。

なお、「代替魚」の製造を行う会社は、アメリカ以外にヨーロッパでも続々と立ち上がっている。筆者が確認したところでは、これまでに「キャビア」「フィッシュアンドチップス」「ツナ」「マグロの赤身」「サーモン」などがプラント・ベースド・フードとして製造され、市場に流通している。筆者は、水銀やマイクロプラスチックなどによる海洋汚染問題に敏感な消費者が多いヨーロッパで、先行して「代替魚」の市場が広がると予想する。また、アメリカでもツナやエビといった、アメリカ人が普段よく食べる食材を中心に市場が広がると予想する。

アメリカの「代替肉」市場は、すでに「規模の経済を実現」したフェーズに突入したが、「代替魚」市場も、「代替肉」市場を追いかけるようにして拡大するだろう。「代替魚」が、アメリカの普通の寿司屋で使われるようになるまで、それほど時間はかからないかも知れない。

フレキシタリアンとプラント・ベースド・フードがトレンドに

新型コロナウィルスのパンデミックが続くアメリカでは、主要都市を中心に飲食店への営業制限が未だに課せられている。一方、ニューヨークやサン・フランシスコなどの一部の都市においては、飲食店の屋外営業が許可されるなど、「コロナ後」を見据えての動きがわずかだが始まったようにも見える。

ところで、これからのアメリカを担うジェネレーションZ世代は、アメリカのどの世代よりも環境意識が高いとされている。ある調査によると、アメリカのジェネレーションZ世代の73%が、10%のプレミアムを支払ってでもエコフレンドリーなブランドを購入すると答えている。ジェネレーションZ世代の多くの者がフレキシタリアンであることは、決して偶然ではない。フレキシタリアンとプラント・ベースド・フードが、コロナ収束後のアメリカの飲食業の新たなトレンドになるだろう。

アメリカのトレンドが日本にも波及

ソイモス野菜バーガー
ソイモス野菜バーガー

そして、アメリカで進行中のこのトレンドは、日本にも波及してきている。日本でも環境保護意識と健康志向の高まりを受け、代替肉などを使った料理を提供する飲食店が増えている。代替肉のハンバーガーを提供する大手としてモスバーガーのソイモス野菜バーガーをはじめとして、焼き鳥、コロッケ、麻婆豆腐、カツ重といった、日本ならではのプラント・ベースド・フードを提供する店も出てきている。

日本には、精進料理というほぼ完全なプラント・ベースド・フードが古くより存在しているが、各種の代替肉や代替魚などの登場を得て、まったく新しい日本初のプラント・ベースド・フードが生まれてくるかもしれない。あるいは、従来の精進料理をさらに昇華させた、まったく新たな精進料理が生まれてくるかもしれない。日本という国こそ、「フレキシタリアン」と「プラント・ベースド・フード」というワードが、自然にマッチする気がする。日本においてもコロナ収束を見据え、新たなトレンドの広がりに注目したい。

参考URL:
https://plantbasedfoods.org/marketplace/consumer-insights/
https://www.prnewswire.com/news-releases/flexitarianism-on-the-rise-in-us-reports-packaged-facts-301154622.html

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