シリコンバレーにインポシブル・フーズ(Impossible Foods)という変わった名前を持ったスタートアップ企業がある。インポシブル・フーズとは、直訳すると「ありえない食品」という意味だが、同社は植物由来の肉や乳製品という、従来では「ありえない食品」を製造している会社である。
インポシブル・フーズというスタートアップ企業
前に別の記事でヴィーガンについて書いたが、ヴィーガンが「動物の命が身勝手に奪われることを防ぐため」という理由で動物由来食品を食べないということを説明した。一方でインポシブル・フーズは、畜産を地球上の重大な環境問題とするが故に肉や乳製品の摂取を拒んでいる。同社によると、全世界の畜産は地球の半分の土地を使用し、さらに水資源の四分の一と大量の植物を消費している。畜産とは、エコシステムとしての地球のサステナビリティを脅かす極めて危険な産業なのだ。
インポシブル・フーズが開発したインポシブル・バーガー
インポシブル・フーズの技術者達は、植物由来のヘムを大豆の根に含まれているレグヘモグロビンと合成し、肉のような質感を獲得することを目指した。最終的には遺伝子操作したイースト(酵母)を媒体にしてヘムとレグヘモグロビンを大量合成することに成功し、「植物由来肉」の製造にたどり着いた。そして2016年、「植物由来肉」が世界で初めてニューヨークのレストラン「モモフク・ニシ」で提供されることとなったのである。
植物由来肉のお味は?
また、多くのヴィーガンのYouTuberもインポシブル・バーガーを食べた感想をYouTubeに投稿している。五年前にヴィーガンになったというあるYouTuberは、インポシブル・バーガーは明らかに肉ではなく、まったく肉の味がしないとコメントしている。別のYouTuberは、インポシブル・バーガーは肉というよりも、サーモンパティのような味がするとコメントしている。
多くの人が食べ物としての味は悪くはないとはしているものの、「肉の代替品」としては疑問符が付くとしているようだ。しかし、ひとつの食べ物としてはおいしいという評価が多い。個人的には、インポシブル・バーガーを食べられる機会があれば、ぜひ食べてみたいと思う。
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植物由来肉市場の今後
消費者の反応がまずまず良好というべき中、インポシブル・バーガーは着実に市場に広がっている。インポシブル・フーズによると、インポシブル・バーガーは現時点で、アメリカ、マカオ、香港の5,000以上のレストランで提供されている。昨年には大手レストランチェーンのホワイトキャッスルでの提供も始まり、同チェーンの377店舗で提供が始まっている。
レストランでの提供に加え、年内にはアメリカ国内のスーパーマーケットでの販売開始も予定されている。スーパーマーケットでの販売が始まれば、インポシブル・バーガーの消費が一気に進む可能性が高い。
ところで、インポシブル・フーズにはグーグル・ベンチャーズなどの著名ベンチャーキャピタルや、大手金融機関のUBS、そしてビル・ゲイツなどが総額で3億7200万ドル(約409億円)もの巨額の資金を投資している。インポシブル・バーガーという画期的な食品が評価されているとともに、インポシブル・フーズという会社そのものが、特にその事業の将来性が高く評価されているのだ。
ところでインポシブル・フーズの日本での展開についてだが、筆者の手元には確たる情報はまだない。一方で、この種の新しいもの好きの日本人がインポシブル・バーガーに手を出さないことはないだろう。筆者の予想では、早ければ年内にも日本にインポシブル・バーガーを提供する店が登場すると予想する。インポシブル・バーガーは、もしかすると今年の日本の飲食業界を賑わすニュートレンドになるかもしれない。
参照:
https://techcrunch.com/video/impossible-foods-updates-its-plant-based-meat-recipe/
https://www.bbcgoodfood.com/howto/guide/what-does-impossible-burger-taste
ライタープロフィール:
前田健二
東京都出身。2001年より経営コンサルタントの活動を開始し、新規事業立上げ、ネットマーケティングのコンサルティングを行っている。アメリカのIT、3Dプリンター、ロボット、ドローン、医療、飲食などのベンチャー・ニュービジネス事情に詳しく、現地の人脈・ネットワークから情報を収集している。
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