アメリカで家庭料理を地元コミュニティに供給するShefというマッチングプラットフォームの利用が広がっている。プロの料理人ではなく、主婦などの一般の人が作る普通の家庭料理が簡単に食べられることから人気となっているようだ。2019年にサンフランシスコで事業を開始し、現在までにアメリカ主要11都市で事業展開するまでに急成長している。投資家も注目のShefをご紹介する。
Shefというスタートアップ企業
Shef(シェフ)は、2019年にアルヴァン・セレヒ氏とジョーイ・グラシア氏の二人が立ち上げたスタートアップ企業だ。セレヒ氏は、オバマ政権時代にホワイトハウスで技術アドバイザーを務めていた経歴を持つ異色の人物だ。自分自身も移民の子であるとするセレヒ氏は、アメリカに渡ってきた多くのアフガニスタン難民が職に就けず経済的に困窮しているのを見て、彼ら彼女らに仕事を提供することを目的にShefを立ち上げた。Shefという社名は、通常のChefに「彼女」のSheを組み合わせて名づけたそうだ。なお、Shefに登録しているシェフの75%が女性だ。
Shefのビジネスはそのビジネスモデルとともに社会的意義が高く評価され、Shefにはこれまでに多くの個人投資家やベンチャーキャピタルなどから1億230万ドル(約133億円)もの巨額の資金が集まっている。その中には著名投資家のオデル・ベックマン・ジュニアやアンドリーセン・ホロヴィッツなども含まれている。
Shefの仕組み
一方、利用者の方はShefのホームページで自分の地域コード(郵便番号のようなもの)を入力すると自分の地域で注文可能なシェフと料理が表示される。料理はレビュー数や評価が高い順に表示されるが、「インド料理」「地中海料理」「中南米料理」「イタリアン料理」などのカテゴリーで検索することも可能だ。なお、ロサンゼルス地区で検索したところ、「日本料理」のカテゴリーも存在していた。ちなみに「日本料理」のカテゴリーでは、「日本風チキンカレー」「日替わり弁当」などが販売されていた。
なお、Shefでは、注文は原則として事前予約性となっている。つまり、一般的なフードデリバリーとは違い、リアルタイムでの注文はできない。Shefでは最短で翌日配達で、その場合の注文締め切り時間は前日午後9時となっている。また、Shefで提供される料理は冷凍または冷蔵の状態で配達される。
Shefでどれくらい稼げるか?
Shefでは、食材の仕入れもすべてシェフが行うので、シェフの手取りから食材コストを賄う形となる。例えば仕入れコストを30%とした場合、食材コストは300ドル(3万9,000円)となり、残りは400ドル(約5万2,000円)となる。
Shefによると、多くのシェフが週に1,000ドル程度の売上をあげており、中にはそれ以上の売上を得ているシェフもいるそうだ。複数の人気メニューアイテムを持ち、リピーターを確保できれば、相応に稼ぐことは可能なようだ。
州によっては自宅で営業できない州も
Shefでは、シェフは自宅のキッチンで調理して出荷するが、州によってはそれができない。Shefが誕生したカリフォルニア州では、2013年にカリフォルニア・ホームメイドフード法が施行され、家庭で調理したホームメイドフードの販売が可能になった。テキサス州においても、カリフォルニア州と同様、ホームメイドフードの販売が可能だ。
しかし、ペンシルバニア州、オハイオ州、ミシガン州などではホームメイドフードの販売は原則禁止されている。Shefでは、ホームメイドフード法が施行されていない州においては、州から営業許可を受けた施設で調理することを推奨するとしているが、採算性や利便性などの点から現実的には難しいだろう。
日本でも同様の仕組みは普及するか?
ライドシェアリング大手のUberが、日本の固い法律の壁や規制に阻まれて日本市場に参入できなかったように、Shefも同様に日本市場に参入できない可能性が高い。Shefのようなプラットフォームを日本に普及させるには、思い切った規制緩和や法律改正が必要だが、そうした大胆なアクションを取れる人材は少ないだろう。Shefが急成長しているアメリカを見るに、日本でスタートアップ企業が誕生しづらい理由を改めて認識できたような気がした。
関連サイト
https://shef.com/
https://easycowork.com/make-money/shef/