飲食店に来て欲しくないものは、モンスタークレーマーとゴキブリとネズミだと言った経営者がいました。おもしろい意見であり、的を射ていると思います。
ゴキブリは一匹見つけたら百匹潜伏していると言われますが、根絶は難しいもの。ネズミはプロでも短期間にシャットアウトできません。
では、どうすればよいのか?
今回は、飲食店に欠かせないネズミやゴキブリの対策について考えていきます。
不衛生な店舗がもたらすダメージ
画像がSNSで公開されたのですが、カエルが生きていたこともあり、やらせを疑う人が出るなど、大きな騒ぎになりました。
結局は丸亀製麺側が自社の責任を認め、「日頃ご利用いただいておりますお客様のお気持ちを最優先した」としてサラダミックスを使用した商品の販売を中止。ホームページで、サラダミックスの製造工程を公表しました。
この商品は販売をはじめたばかり。斬新な商品だと言われ、各方面から注目が高かっただけに、残念な結果となりました。商品開発にかけた時間、広告宣伝にかけた費用。さらには、丸亀製麺への信用を失ったことで、相当大きなダメージとなりました。
そして、もう一つ。
昨年7月。大阪王将 仙台中田店において、「店内にナメクジやゴキブリが発生している」と、元従業員がSNSで訴えました。
この店舗はフランチャイズでしたが、店舗で野良猫を飼うなど、通常の飲食店では考えられない状態で営業をしていました。最終的にはこのフランチャイジーが経営していた別の店舗を含め、契約解除となっています。
飲食店は、美味しい商品が食べられること以前に、衛生的であるという絶対的な保証があるものとして、お客は来店しています。そのため、上記のケースはどちらも、健康被害に及ばなかったから問題はないとはならず、経営者に大きなダメージを与えることになりました。
衛生害虫・衛生害獣とは?
ある飲食店の集まりで、ゴキブリ駆除の話をするのに、「衛生害虫」という言葉を使ったところ、「衛生的な虫ってことですか?」と聞かれたことがあります。確かに、衛生とつくと、衛生的なものと誤解する方がいるのも仕方がないことかも知れません。
飲食店で特に対策を講じるべき害虫は、細菌などを媒介する虫。具体的には、チャバネゴキブリやクロゴキブリ、ハエ、ダニ類が中心となります。
また、衛生害獣とは、「ヒトに害を及ぼす哺乳類のこと」を指します。飲食店ではネズミが問題となるケースが多いですが、他にもイタチやハクビシン、アライグマが店内に住み着いていたという例もあります。
飲食店は静かになる時間帯が少なく、スタッフが物音に気づかない特徴もあり、エサもあることから、害獣の被害にあいやすいといわれています。
飲食店はネズミやゴキブリにとって天国
ネズミやゴキブリが住みやすい環境とは、エサが豊富で、暗く、湿度と水のある場所。さらに冬でも 暖かく、誰もいない時間帯があるといえば、まさに飲食店は最適なわけです。厨房はもちろんのこと、食材をストックしている倉庫も、格好のすみかとなります。
しかも多くの飲食店は、単独の建物ではなくビルであり、両隣も飲食店ということが多くなります。そうなると、自店だけが対策をしたところで、万全の対策にはならないのが頭の痛いところです。
例えば、ビルに複数の飲食店が入っていて、 断熱性のあるコンクリート造り。侵入経路は 複数あり、玄関や窓の隙間だけでなく、換気扇の通風孔や天井板の上など、いくつもの侵入経路と住処となる場所があれば、狙われない方が不思議です。
自分の店舗の中に、ネズミやゴキブリの巣があると考えるとぞっとしますが、見たことがないからと安心せず、必ずいるものとして対策をすることが大切です
ネズミやゴキブリによる被害とは?
ネズミやゴキブリがいることで、どのような被害が発生するのかを見ていきましょう。
健康被害
もっとも危険なのは、菌を体中につけてまき散らすという点です。考えられるのは以下の菌です。
・サルモネラ菌
・大腸菌
・赤痢菌
・チフス菌 など
どれも食中毒を引き起こす原因菌。もちろん、貯蔵している食材をネズミがかじった場合は当然ですが、食材の上をネズミやゴキブリがはい回っただけでも食中毒を発生させることがあるので注意が必要です。
さらに、フンや死がいも問題です。フンは乾燥し、細かくなって舞い上がり、アレルギーの原因にもなります。
食品ロス
しかも、袋をかじって中身を出し、おいしくないことが分かるとそのまま放置。当然、かじられた食材を使うわけにはいかないので捨てることになります。しかも、穴を開けて放置されるため、中身が床にまで垂れ、掃除が大変です。
また、商品切れを起こすこともあり、チャンスロスにもつながります。
機器のトラブル
また、電化製品の隙間にゴキブリが入り込むことで、基盤がショートして故障になることもあります。
飲食店のオーダーエントリーシステムと連携したPOSレジでは多くの精密機器を利用しており業務に影響する場合もあるので特に注意したいところです。
最新の機器では害虫対策に侵入防止や内部保護を施しているものもあり、POS機器の買い替えを検討しても良いかもしれません。
ヒトへのトラブル
ある飲食店で、事務所でアルバイト達が大騒ぎになっているので、店長が見に行ったら、逃げ場を失ったネズミが、人に噛み付いたという話がありました。昭和の頃は、ネズミが眠っている赤ちゃんの耳をかじったという話があったらしいのですが、最近でも、そんなにアグレッシブなネズミがいるんだと驚きます。
なぜ噛み付いたのかわかりませんが、ネズミとしても身を守るのに必死だったのかもしれません。噛みつけば傷口から雑菌が入り、健康被害につながる可能性もあります。
お客絡みの問題
他にも、ネズミやゴキブリを動画に撮り、SNSで拡散してしまうこともありえるでしょう。その時たまたまだったとしても、デジタルタトゥとして長期間に渡って記録が残ります。そしていつまでも、風評被害に悩まされることとなります。
飲食店ではゴキブリは根絶できないとか、ネズミはビル全体の問題だからうちだけでは対策できない、などとは言っていられないわけです。
ゴキブリの駆除対策
例えば、ゴキブリの場合、見かけたらすぐに踏んだり叩いたりして殺し、殺虫剤を振りかける。このようなことに必死になっている人を見ますが、ゴキブリは一匹みたら百匹住んでいると言われるほど多く潜んでいます。このような対策ではゴキブリの繁殖力に負け、あっという間にゴキブリ天国、雑菌天国になることでしょう。
何より、換気が悪いところで市販の殺虫スプレーを使いすぎると爆発の可能性もあります。また、食材にかかって、他の健康被害を起こす可能性も。
対策としてベストなのは、専門業者に依頼すること。専門業者であれば、効果の高いベイト剤(毒餌)を使うなど、効果はてきめんです。
他にも、衛生害虫ではないのですが、田んぼが多い場所にある店舗が、夜になると明かりに誘われて虫が集まる例がありました。
この場合、光が外に漏れないようにロールカーテンを設置し、二重ドアにして、害虫の侵入を防いだ例もあります。これは集まってくる虫にもよりますので、やはり専門業者に相談するのがよいでしょう。
ネズミの駆除対策
衛生害獣の駆除は、駆除業者に頼むしかありません。
ネズミは壁に穴をあけて巣を作ることが多く、巣を放置すれば、さらに食い荒らされてしまうので、防鼠工事が必要です。鼠穴を塞ぎ、二度と入ってこられないように対策を施します。
被害を広げないためにやるべきこと
今現在、ゴキブリもネズミも見かけないからといって、安心してよいわけではありません。店内で見かけなくても、外には必ずいます。いつでも入ってくる可能性があるので、緊張感を持って対策を立てましょう。
特に、以下のことを心がけてください。
●食材を適切に保管する
●調理台や床下に食材を残さない
●グリストラップは定期的に掃除する
●天井の穴やダクトの隙間をガムテープなどで塞ぐ
●ネズミやゴキブリを見かけたら、すぐに対策する
また、食材は倉庫などにそのまま置かず、プラスティックのケースに入れ、フタをするようにすると万全です。
食材を段ボールのまま保管しているところもありますが、これは避けるべきです。なぜなら、段ボールは温かくやわらかいので、それ自体がゴキブリの巣になりやすいからです。段ボールで納品されたら、速やかに中身を出し、空いた段ボールは店外に置くようにするのが理想です。
まとめ
飲食店がやるべき、衛生害虫・衛生害獣対策をまとめました。
何より怖いのは、健康被害と風評被害です。特に最近は、動画を撮影してSNSに投稿するケースが増えていて、店舗が気づいたときには手遅れになっていることもあります。
最近のPOS機器では害虫の侵入防止を
厨房はお客から見えないから問題ない・・・と考えず、常に細心の注意を払って対策し、侵入を防ぐことで大切な店舗とお客様を守りましょう。